好きって言いたい 作:お金の無駄使い
読者様に向けての投稿はこれが初めてになります。
同じく俺ガイルの小説を、現在書いている【時間の無駄使い】さんと話しまして、【無駄使い戦線】と銘打って、一部協力してssを書く事になりました。
これからよろしくです。
文化祭から数ヶ月。
ウチは現在、いわゆる『ボッチ』だった。
最初こそ庇ってくれていたゆっこや遥は、巻き添えを喰らわんとする様に離れていった。
ウチはその時初めて知った。
──所詮、人間関係など自己保身の為に構築する“もの”でしかないのだ、と。
皆表面で取り繕って、中身などまるでない。殻。
ヤドカリの様にその殻を纏い、いざという時に備え、そして古くなったら──要らなくなったら捨て去る。
所詮、その程度のものでしかなく、それ以上の関係など往々にして無いものなのだと、今回の件で思い知らされた。
だからウチも諦めた。
そんなものを作る事に意味は無い。
人の盾は確かに有効だけど扱い辛い。
しかも、下手をすれば自分が誰かの盾になる。
そんなの±0で意味は無い。
──だから、ウチはボッチになった。
* * *
ボッチになると決めてから一ヶ月と少し。
今現在のもっぱらの話題は修学旅行だった。
だけどボッチには関係ないイベントではあるので、ウチはひたすら自分の席で本を読んで居た。
修学旅行も休むつもりだった。
積立金を払いはしたが、別に行かなければ返って来るのだし、行く必要もなかった。
必要がないと言うのは、ウチは現在、毎月の月末の少しの期間を除いて実家で一人暮らしの状態だからで、それに由来していた。
父は幾年も前に海外へ単身赴任し、ウチと母親だけだったところを、今度は母が国内の別の場所へ異動になった。
その異動先が大阪で、毎回月末には帰って来てはくれるが、何にせよ仕事が忙しいらしく、こっちに帰って来ても仕事をやって居た。
以前ウチが大阪に行こうか、と提案したら何故か全力で否定された上、お説教が始まったので、それ以来その話はしていない。
──そんな訳で、大阪にある母の家を頼れば簡単に見て回れるのでわざわざ修学旅行で行く必要もなかった。
だから机で本を読んで居たんだけど──。
「相模」
ウチはその日、急に後ろから声を掛けられた。
……一番、声を掛けて欲しくない奴に。
「…比企谷……。…何?…何の用よ」
「………あー、…その、何だ。……平塚先生からのお達しがあってな…」
比企谷は煮え切らない感じに口をモゴモゴとさせる。
それが、ウチを余計に苛立たせた。
「用が無いならどっか行ってくんない?ウチ今本読むのに忙しいから」
「…俺みたいな言い訳すんなよ……。…はぁ。……いいか、よく聞けよ。……俺と相模、あと由比ヶ浜と小田原の四人で修学旅行の班組めってよ。……文句は平塚先生に言ってくれ。因みに言っとくが、由比ヶ浜関係で既に三浦が敗戦してるぞ」
「………は?」
意味が殆んど分からない。
まず小田原って誰?…ってかウチが比企谷と組む?
「……あ、あともう一つ。──拒否したら多分死ぬぞ?」
「…………………」
「…じゃ、伝えるだけ伝えたからな」
比企谷はそれだけ言って、去ってしまった。
結局ウチには、何が起こっているのか──何が起ころうとしているのか、まるで分からなかった。
──そして翌日。総合的な学習の時間。
「よし!前回決めた班で集まれ!…教室右前から順に──だ」
平塚先生のその言葉により、一斉に動き始めるクラス内。
…ってか、班の番号何番なの?…昨日の比企谷そんな事言ってなかったような……。
「…相模、こっちだ」
「ひっ!?」
「…んな驚くなよ。……傷ついちゃうだろ」
「…なんだ、比企谷か……。…何?」
「昨日、班番号伝え忘れてたから。俺たちは四だ」
「あっそ。…そもそもウチまだ行くとも言ってないんだけど」
「……あ……」
「…何でそんな顔してんの?」
ウチが返答した瞬間に、比企谷が終わりを悟ったかの様な顔をしたので訊いて見たのだが、返答は予想外の方向から帰って来た。
「…ほう。相模は休むつもりかね?……私の手から逃げられると思っているのか?」
──後ろから聞こえたその声は、平塚先生のものだった。
* * *
それから形容し難い何かがあって──
「由比ヶ浜結衣です!皆よろしくねー」
「
「…比企谷八幡だ……」
「さ、相模南です……」
「「「「……………………」」」」
取り敢えず班員の名前を知っておこうという事で、全員の自己紹介が始まった。因みに結衣ちゃんが比企谷がうんたらとか言ってたから原因は比企谷だと思う。
そして、それが終わった直後の、沈黙。
「じゃ、じゃあ、行きたいとことか、ある…かな」
あの結衣ちゃんですらやり辛そうにしているこの空気。
ウチを含め、結衣ちゃん以外が全員重い雰囲気を纏わせている。
「行きたいとこ?……家だな」
「却下!…ヒッキーバカなの?」
「お前よりは成績良いがな…」
「う、うるさいし!…ってか、バカなのは否定しないんだ」
──と思ったら結衣ちゃんと比企谷が急にポンポンと会話し始めた。
「…私は、伏見稲荷大社に行きたいなー」
そこへ便乗するかの様に小田原?が話し始める。
「伏見稲荷大社かぁ…。そう言えば私行ったこと無いなー。小田原さんは?」
「梨穂南でいいよ。…私は今のところ一回だけあるよ?」
「さがみんは?」
「えっ…?」
「いや、だからさがみんは何回あるの?」
「………ウチも、まだない」
「そ、そっか。…ヒッキーは?」
「中学ん時に一回だけだな。…家族旅行で行くはずだったんだが俺は忘れられてた」
「……
「…あー、えっと、小田原さん…だっけか?…俺は
急にウチに会話が振られて来たかと思ったら今度は比企谷が二人と会話を始める。
「……………………」
それがどうにも、気に食わなかった。
──ウチが比企谷に劣っている。
そんな風に感じたからだとは思うけど。
でも、比企谷に勝とうとしている自分が居たことに驚いた。
確かに、文化祭前のウチならそういう事に敏感だった。
けど、今はそんなのどうでもいいハズだ。
だから現に、ウチは周りを気にする事なく読書してるし、あの頃のウチが見たらバカなんじゃん?とか言うほど周りの空気に合わせない。
意識的に合わせていないのではなく、ただただマイペースなだけ。
そんなウチが、どうして比企谷に──。
「…ねぇ、比企谷」
「…んぁ?…んだよ」
「…放課後時間ある?」
「……部活あるから無理だな」
「そ。…分かった」
気付いた時には、比企谷との会話が終わっていた。
でも、これで目標はできた。
“比企谷と話せば何か分かる”。
──ウチはまた、他人を頼ろうとして居た。
そして時間は流れ行き、放課後。
「ヒッキー、部室行くよっ!」
「お、おい!?由比ヶ浜、引っ張るなっつの!」
ゆっくりと一人帰り支度をして居ると後ろから聞こえて来る声。
結衣ちゃんが比企谷を引っ張って奉仕部へと向かって行ったのは容易に予測出来る。
「…ねぇねぇ、相模さん」
──と、そこへ誰かが急にウチに声をかける。
振り返って見てみると、そこに居たのは小田原さんだった。
「……何?」
「いや、ちょっと相模さんに確認して置きたいんだけど──」
そこまで言ってから、アゴに人差し指を当てて考える素振りを見せると、
「……相模さんって、文化祭の時の比企谷君とのいざこざをどう捉えてるの?」
「…………は?」
──何を言い出すかと思えば、急に訳の分からない事を言い出した。
比企谷とのいざこざ?
それってつまり、あの屋上の──。
…アレをどう捉えてるのか?
そんなのそのままに決まってる。
逆にそれ以外に捉え方なんてあるの?
そもそも当事者ですらないのに何でそんな事を…。
──だけど、ウチが何かを言う前に、小田原さんは
「──成る程ね。…その
明らかに含みのある言い方。
その裏に隠された真実は表情からは見抜けない。
「……な、何よ…」
「ううん。何でもないよっ!…気にしないでいいからね?」
「…じゃあ、さっきの質問は何だったのよ…」
「ああ、それも気にしないでいいよ?…意味がないって分かったし」
「え…?」
「あ、私もう帰るから。…相模さんも早く帰ったら?」
小田原さんは、ウチに何も言わせないままに、何故か機嫌良さげに帰って行ってしまった。
「…何だったのよ……」
ウチは、しばらく椅子に座り続けていた。
* * *
椅子に座り続けていても仕方がないので、取り敢えず済ませてある帰り支度を持って、本日のイベントを果たしに因縁のあの場所へと向かう。
特別棟へ足を運ぶのは授業以外では久しぶりで、記憶が曖昧だから正確性には欠けるものの、恐らくあの一件以来だろう。
そして今回も、前回と同じ場所を目指し、階段を上っていた。
階段を上り、ある階の突き当たりまで行ったところにあるその部屋の前まで行くと、何度か深呼吸をする。
そして──
「失礼します」
ノックと共に、ウチは文化祭以来となる奉仕部の部室へと、足を踏み入れた。
不定期で適当にゆっくり進めていきますので、長い目で生暖かく見守ってくれると嬉しいです。
尚、無駄使い戦線で検索して頂ければどちらの作品もヒットしますのでお願いします。
それから感想に寄せられたのでもういっちょ。
このSSでは、平塚先生は比企谷のクラスの担任として扱います。
他にも気になるところ(この先の展開に関係ない細かいところ)があればよろしくです!
更にもう一つ。
相模の一人称はセリフ・地の文問わず、『ウチ』で統一します。
しかし、クセで『私』って書いちゃうので、後で直してるんですが、もし直ってないところがあったら誤字報告をお願いします。やり方が分からない人は感想に書いてもいいですよ。(アンケートにはならないよね?)