笑顔は太陽のごとく… 《用務員・長門編 完結済》   作:バスクランサー

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前書きに書くことない…。

あ、明日テストだ。
…まあいっか。

すみません、比較的長めですが本編どうぞ。


長門と軽雷巡の町観光

 ーーー第35鎮守府 正面玄関

「ただいま戻ったぞ、提督。」

「おかえり、長門。買い出し今日もありがとう」

 用務員として、今日は買い出し。人数が増え、食堂担当の間宮と鳳翔が前より格段に忙しくなったことで買い物に行けることが少なくなり、その反動で私が行くことが増えた。ただ、町の人はいつも優しいし、たまに割引とかもしてくれたりするため、買い物は苦ではなく寧ろ一種の楽しみと化している。

 何より、帰った時の提督の「おかえり」がとても心身に染みるのだ…。

 と、そこへ。

「提督ー!」

「提督さーん!」

 快活な声二つ。爽やかな汗をかきながらやって来たのは…

「おお、阿武隈に阿賀野。遠征ありがとうな。どうだったか?」

「きちんと予定数の資材を手に入れられました!全員無傷で、途中索敵は1度だけ弱い反応がありましたけど、すぐ消えました。今日は駆逐艦のみんなも、とてもとても頑張ってくれました!」

「提督さん、資材は遠征艦隊全員で既に倉庫へ運んであるよ!でも、もうほとんど資材倉庫の限界に達してるけど…」

「阿賀野、備えあれば憂いなしだ。来るべき戦いは、いつ来るか分からないからな。その時のためにも、今のうちに確保できるだけしておきたいんだ。だから、これからも頑張ってくれるか?」

「はい、もちろんです!」

「阿武隈も、頑張ります!」

 提督がゆっくり休むよう伝えると、2人は駆けて去っていった。元気がいいな。

「それで、長門。帰投のタイミングと被ったとはいえ、キリが悪くなってしまったな。そっちの方は、どうだったかい?」

「ああ、頼まれたもの、ここに全部買ってきたぞ。」

「いつもありがとうな、長門もこれからもよろしく」

「ああ!」

 私は買った品を食料庫に運ぶ。そうだな、小腹が減ったし、ついでに何か食べるか。

「すまん、失礼するぞ」

「いらっしゃいませ!あら、長門さん!」

「いつもありがとうございます!どうぞこちらへ!」

 席へ案内され、メニューを渡される。今日は…この生クリームプリンにでもしておくか。

 食堂の妖精さんに注文を言い、しばらくすると、間宮が頼んだプリンを持ってきた。ん?2つ?誰かほかに頼んだ者がいるのか?

「はーい長門さん、それから木曾さん!ご注文の生クリームプリン、お待たせしました!」

 ほう、木曾だったか。と、斜め前にいる彼女と、不意に目が合った。

「長門さん、こんにちは。長門さんも生クリームプリンか、奇遇だな。」

 こやつ結構男前だな。

「ああ。せっかくだし、移動してもいいか?」

「ああ、構わん」

 木曾の前にプリンのトレーを持って移動する。

「この鎮守府はどうだ?」

「あぁ、とても過ごしやすいよ。みんなの仲がいいし、装備や資材も充実している。それに、長門さんも優しいですし」

「あぁ、それは、どうも…」

 と、木曾が不意にこう言った。

「もしよければ、今度の休みの時、新しく着任した軽巡のみんなを連れて、長門さんにこの町を案内してほしいんだが…」

「私で、いいのか?」

 私は咄嗟にそうとしか答えられなかったが、木曾から

「いや、なんだかんだで俺の中だと、長門さんが一番町のことを知っているかな、と思ってな…忙しかったり、行きたくなかったりしたら断ってもいいんだが…」

「いや」

 遠慮しがちに言う木曾に、私は断言した。「この町の観光なら、私が是非ガイドさせてもらうとしよう」

「本当か!?ありがとう…!」

 それから木曾とは、プリンを食べつつ、雑談などで時間つぶしをした。どうやらこの彼女も甘党だったようで、スイーツの話などで色々と盛り上がった。木曾、乙女。

 とりあえず今度の休みに、町の観光をすることになり、私は色々とプランを立てることにしたーーー

 

 ーーー数日後

「じゃあ行ってくるぞ、提督」

「「「行ってきます!」」」

 玄関で、私は提督に挨拶。その後には阿賀野、阿武隈、木曾の3人。

「うむ、気をつけてな。楽しんで!」

「了解!」

 私は敬礼を提督に返し、鎮守府の門を外へとくぐった。小道を抜け商店街に出る。

 実を言うと、商店街で買い物したくらいしか私もこの町で観光(というか生活の一部)をしていないため、こういう機会は結構嬉しいし、胸踊る。

「長門さん、最初はどこ行くんですか?」

 阿武隈が、いかにもワクワクしている口調で聞いてくる。

「えーと、まずは楽器屋だ。楽器の体験ができるようなんだ。。」

「そんなのがあるんですか?」

「どうやらここの町の特産品の木材が、色々と楽器に使われているようなんだ。」

「わぁ、阿武隈、楽しみです!」

 というわけで、商店街の通りの1つをしばらく歩き、その施設の前に到着。

「こんにちは〜」

 ドアを開け、木の温かみ溢れる店内に入る。と、カウンターの奥から1人の老人が出てきた。

「おや、そこの鎮守府の艦娘さん。ようこそ、わが楽器店へ。ここの主、春夫です。よろしく。」

「こちらこそです。その、ここで楽器体験が出来ると聞いて…」

「そういうことでしたか。分かりました、では2階へどうぞ。私についてきてください」

 店奥の階段を登ると、ところ狭しと楽器用品の置いてある棚が並べられた1階とは対照的な、広々とした部屋に出た。

「こちらのメニューから、体験する楽器を選んでください。尚、体験の方は九十分、その間こちらのメニューにある楽器をどれでも好きなだけ吹くことができます。それから、管楽器を体験する際、こちらで渡すセットで、歯を磨いてからの体験となります、ご了承を」

 店主曰く、清潔に楽器を吹くため、だとか。確かに直接口をつけ吹く訳だからな…

 とりあえず、メニューの種類はかなり豊富なようだ。何を体験しようか…ん?

「では、春夫さん。こちらのバスクラリネットとやらを、体験させてほしいのだが…」

「分かりました。ほかの皆さんは?」

「私は…マンドリンギターにしようかな」

 と阿武隈。

「私はこのピッコロを!」

 と阿賀野。

「俺は…ビブラフォンとかいうこれを。」

「かしこまりました。少々お待ちを」

 しばらくして、彼は私と阿武隈、阿賀野にそれぞれ楽器ケースを、分けて木曾にはビブラフォンを運んできた。

「まずはバスクラリネット。このリードと呼ばれる、薄い木の板をマウスピースに取り付けて音を出します。」

 ほ、ほう。

「このとき、リードを、マウスピースの真ん中につけ、上の黒い部分とリードの隙間が髪の毛一本くらいなら大丈夫です」

 なるほど…

「これくらいか?」

「はい、それでいいでしょう。あとはこんな形の口にして、下唇を巻いてください。」

「こうか?」

「はい。では、マウスピースを楽器に付けて、今の口の形のまま、中に息を入れてください。」

 言われるがままに息を入れてみるが、何か詰まったような感覚でなかなか音が出ない。

「息をまっすぐ入れて、口が膨らまないように吹いてください。」

 と、

 

 ブォー…

「おお、出た!出たぞ!!」

「こんな感じです!」

 楽しい!これは楽しい!夢中になって吹いていると、隣から、

 

 ピロロロロロ

「私も出た!」

「おお、その調子です!」

 阿賀野のピッコロの高い音。なかなか綺麗だな。

 

 ジャラン…ジャラジャラン…

「このマンドリンギター、音がいい!」

「気に入って頂けたようで何よりです。」

 阿武隈もすっかりハマっている。

 

 ポォオォオォオォン…

「ほぉ、ビブラフォンという名の通り、ビブラートするんだな、これは」

「中のモーターが、叩く部分の下の管を開け閉めすることで、ビブラートするのです。」

 

 私たちは他にも色々な楽器を体験させてもらい、楽しい時間を過ごした。

「ご利用ありがとうございました。楽しんでいただけましたか?」

「もちろんです。また来ますね!」

 笑顔で手を振る店主に別れを告げて、私たち一行は楽器店を後にした。

 

 その後も。

 この前吹雪と買い物に行った時、子供たちとの争いに負けたあの駄菓子屋でらお菓子をたくさん買ったり。

 金剛おすすめの茶葉専門店で、世界の色々な茶を試飲したり。

 気付けば、もう昼過ぎになっていた。

「そろそろ、どこかでお昼ご飯にしないか?長門さん」

「そうだな…時間的にもいい頃だ。」

「わーい!おっひる〜おっひる〜」

「どこで何食べます?」

 と、色々と話しながら通りを歩いていると…

「ん?」

「どうしたんですか?…あっ!」

「なんかいい匂いがするぜ…!」

「あっちの方からみたいです!行ってみましょう!」

 いい匂いに釣られ、走ったその先には…

「あれは…?」

「パン屋、さん…?」

 目の前には、おそらくトラックだかバスだかを改造したのだろう1台の車。かつて走っていたという、ブルートレインのような美しい青の車体。そして、運転席後ろがなんと、パン屋の販売ゾーンになっているではないか。

「ほう、パンの移動販売車か」

 車の周りには人だかりが出来ていて、買い終えた人々は笑顔でパンを頬張っている。

「せっかくだし、昼飯はここにするか!」ーーー

 

 ーーー「いらっしゃい!ベーカリー北斗星へようこそ!」

 おそらく年齢としては高齢の方なのだろうが、店主の男性はとても若々しく、眩しい笑顔で挨拶をしてくれた。

「そうだな…私は小倉あんぱんとベーグル、牛乳で」

「私は…同じものを!」

「私は卵サンドにしようかな…あと、烏龍茶を」

「俺は…メロンパンとクロワッサン、飲み物は同じく烏龍茶で」

「はいよ!準備するから、ちょっと待っててな!」

 店主は注文を受けると、素早く準備を始めた。手際よく、四つのトレーに並べられていく品物。そして…

「ほい、全員分の品物だよ!」

「ありがとうございます!」

 私は代金を支払い、品物を受け取る。

「そこら辺に机と椅子を用意してるから、良かったらそこで食べていきなさい」

「では、お言葉に甘えさせてもらうとしよう」

 私はちょうど空いていた所に腰掛け、トレーを机にのせる。そして、焼きたてホカホカのパンを1口、口の中に放り込んだ。

「むぐむぐ…う、美味いっ、これは美味すぎる!」

「ほんとだ!」

「絶品です、手が止まりません!」

「やるなこれ!間宮や鳳翔のともタメ張れるぞ!」

 香ばしいパンの味に頬が落ちそうだ。どのパンもとてもとても、美味しいのだ。あっという間に食べ終わって、トレーを返却しに行くと、店主が話しかけてきた。

「嬉しいねえ、気に入ってくれたようで何よりだ!ところで…」

「ん?」

「君たちは、そこの艦娘さんかい?」

「あ、ああ。そうだな」

 すると、店主は陳列棚から大袋を取り出し…

「この星の海の平和を守ってくれていつもいつもありがとう。これは、鎮守府のみんなに分けていってくれ。お土産だ!」

 袋の中には、たくさんのバターロール。

「いや、こんなに!?代金は…」

「そんなもの要らん!いつものお礼と思って、受け取ってくれ!」

「あ、あぁ。ありがとう!」

 店主の熱意に押され、私は袋を受け取った。

「また来てくれよな!」

 元気にそう言う店主に手を振って、私たちは別れを告げた。

 ちなみに、もらったパンは鎮守府で、その夜のメニューの一品となり、みんなに美味しく頂かれたーーー

 

 ーーー夜 ベーカリー北斗星

「よいしょ、よいしょ…」

 明日の営業に備えて、夜のうちにできる仕込みをする店主。と、

 

 プルルルルルル プルルルルルル

 

 車に備え付けてある電話が唐突に鳴った。手を洗い、受話器を取る。

「はい、ベーカリー北斗星」

「星司兄さん、夜遅くすみません。

 矢的猛です」

「おお、猛!久しぶりだな…どうした?」

「はい、実は…」ーーー

 

 ーーー「ふぅ…」

 矢的猛と電話を終えた店主ーーー北斗星司は、車外へと出た。

 遠く輝く夜空の星、その下には夜の海がどこまでも広がっている。

「…深海棲艦によって制海権を喪失した海域での、マイナスエネルギーの急速増大、更に謎の宇宙線も観測か…悪い予感がするな」

 北斗はそう呟き、自身の両の指に嵌っている指輪を見つめたーーー




というわけで今回もありがとうございましたm(_ _)m

評価や感想の方もよろしくお願いします!

また次回です!

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