笑顔は太陽のごとく… 《用務員・長門編 完結済》 作:バスクランサー
春休みなんて無いことを最近悟りました。
休みが一日もない。辛い…orz
本編どうぞー。
ーーー「ふぁ〜…んん…」
朝、マルゴサンマル。私はいつもより少し早く起きた。隣には、まだ寝息をたててぐっすりしている陸奥。
「さて、と…」
陸奥を起こさないようにそっと床に降り、着替えて部屋の外に出る。
「とにかく、まずは掃除だな。」
私はいつもの場所から掃除用具を取り出し、
廊下の掃除を始めた。窓からは日の出ほやほやの真新しい朝日がすでに差し込んでいる。お、あそこにいるのは…!
「おはよう長門。今朝は長門もやはり、早起きだったか。」
「提督…おはよう」
うぉぉぉおお!キタコレ!早起きは三文の得!こいつぁ朝から縁起がいいわぁ!
「あ、長門さん。おはようございます」
お、響も早起きだったか。…なんか仲良さそうで嫉妬してしま…いやいや、ダメダメ…
「響も、おはよう」
自分の提督への好意に気づいて数日、今は何とかテンパらずに返せている。
「掃除、手伝うよ」
「僕も」
「あ、ありがとう2人とも。」
3人で、静かな朝の廊下を掃除する。季節は出会いの春である。今日新しくここに来るメンバーは、ヒトフタマルマルにここに到着するという。まだ提督、そして響、大淀しかメンバーは知らないが、その分楽しみだな。さて、とりあえずはここの掃除を済ませ、仲間達を気持ちよく迎える準備をするとしようーーー
ーーー早めの朝ごはんのあと、皆が集まったのを見計らい、食堂で提督が呼びかけた。
「みんなに、今日この奥で行う、歓迎会の準備をしてほしい」
実は先行して行った食堂の改装は、普段の食事スペースの他、実は奥の簡単な宴会場も含めてのものなのである。
というわけで、この後1時間ほどで宴会場を飾り付け、あとは…料理だ。
間宮、鳳翔、さらに手伝いとして金剛、比叡、響、陸奥、そして私も参加。多彩な料理を、タイミングを調整しつつ作らなければならない。結構これが大変なのだ。
「ヘーイ、デザートの生地が出来たデース!」
「ありがとうございます!冷蔵庫へお願いします!」
「お肉の下ごしらえ、気合い、入れて!やりました!」
「そこのトレーにお願いします!」
食堂の妖精さんたちも、フル回転で忙しそうである。しかし、ここで挫けるわけにはいかない。ここもまた、私の戦場だっ!!
「長門…すごく燃えてる…」
「なんか、調理のスピードが凄く速くなってますね…」
そして、時刻はヒトフタマルマル。既に元からいたメンバーはここ宴会場に全員が集合している。皆の状況も様々で、何となくそわそわとする者、並べられた食事に目を輝かせる者、興奮を抑えきれず周囲の仲間に話しかけている者…。と、
「お待たせしました!ただ今より、我が第35鎮守府の新しい仲間達の、着任歓迎会を行います!」
大淀が叫んだ。
宴会場の扉が開く。提督の先導で、総勢17人の艦娘が入場してきた。拍手に包まれる会場。
「それでは、みんな。私の立っている側の方から、自己紹介をしてくれ!」
「はじめまして、だな。日向だ。大本営時代に、既に航空戦艦に改装されている。皆、これからよろしく頼む」
「扶桑型の二番艦、山城です。私もすでに航空戦艦に改装済です。その、よろしくお願いします。」
「皆さんはじめまして、飛鷹型航空母艦、一番艦の飛鷹と、」
「同じく二番艦の、隼鷹でーす!」
「「よろしく、お願いします!」」
「妙高型重巡洋艦の一番艦、妙高です。皆様、妹たち共々、これから何卒よろしくお願いします。」
「妙高型重巡洋艦の二番艦、那智だ。色々とこれから世話になる、よろしく頼む。」
「妙高型重巡洋艦の三番艦、足柄よ!みんなと一緒に、全力で戦うわ!」
「あ、あの…妙高型重巡洋艦の四番艦、羽黒です、その…よろしく、お願いします」
「こんにちは、軽巡、阿武隈です!よろしく、お願いします!頑張ります!」
「木曾だ。大井姉さんが世話になったようまだな。ありがとう。既に雷巡に改装はされている、これからどんどん頼ってくれ!」
「軽巡、阿賀野です。みんなと仲良く過ごしていきたいです、これからよろしくです!」
「駆逐艦朝潮、着任しました!みなさんに追いつけるよう、精一杯努力します!よろしくお願いします!」
「朝潮型駆逐艦、大潮ですっ!アゲアゲで頑張ります!よろしくお願いします!」
「駆逐艦霰です…その、みなさん、よろしく…」
「陽炎型駆逐艦二番艦、不知火です。よろしくお願いします」
「陽炎型の八番艦、雪風です!しれぇ、みなさん、これからよろしくお願いします!」
「同じく陽炎型十番艦、時津風です!姉さんたち共々、よろしくお願いします!」
「以上の17名だ。みんな、色々教えたり、コミュニケーションをたくさん取って、仲良くやってくれ!それでは、新しく着任したみんなは、そこのテーブルの、どこでも好きな席に座ってくれ。」
「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」
提督は全員座ったことを確かめ、手に持ったグラスをかかげる。
「それでは、乾杯!」
「「「「「「「「「「かんぱーい!!!」」」」」」」」」」
あー、美味いんじゃー!料理も酒もとにかく美味いっ!
よし、皆もテーブルを離れてめぐり始めた頃だし、私も行ってみるかーーー
ーーーあるテーブルにて
「ヒャッハー!酒だ酒だー、祝い酒だー!」
「隼鷹、そんな飲みすぎないでよ…?」
「分かってるよ飛鷹!ぷはぁー、たまんねー!」
「よし、では私も貰おう」
「こんなに飲むのは久しぶりね!」
「那智、足柄?あなた達も、着任早々迷惑かけないよう程々にしなさい?」
「那智姉さん、足柄姉さん、少しはお水も…」
飲兵衛は飲兵衛で、隼鷹や那智、足柄がかたまっているな。その姉妹たちよ、頑張れ。うむ。
ーーーまた別のテーブル
「おいしー!」
「わーい、料理すごーい!」
「おかわり…んちゃ…」
駆逐艦の大潮と時津風、霰か。料理を気に入ってくれているようでよかった。
お?不知火と雪風、朝潮はもう第六駆逐隊のみんなと話している。早々と打ち解けてくれてこれまたよかったなーーー
ーーーまたまた別のテーブル
「…てなことがあったの。天龍ちゃんは本当におっちょこちょいで…」
「や、やめろよ龍田ぁ〜…」
「なるほどな…ふふ」
「姉妹の中がいいんですね!」
「私の阿賀野型の姉妹も、ここにいたらなぁ〜…」
「まあまあ、私達のこと、姉妹だと思って気軽に接してくださいね?」
「「ありがとうございます!」」
「俺はもう姉妹だけどな、大井姉さん…」
軽巡のところでは、木曽や阿武隈、阿賀野を交えてみんなでガールズトークか。いいものだな…
ーーー更に別のテーブル。
「大食い競争なら私が!」
「なにを、私も負けん!」
あ、熱いぜ…なんか赤城と日向が熱い…
「赤城さん、調子には乗らないでください…」
「あなたもよ、日向、バルジが付いちゃうわよ…?」
加賀、山城…うん、よくわかる。多分。
その後も色々と仲間達と話したり、コミュニケーションを取れた。
ただ。
不安要素が一つだけ…私のこの病気の事だ。皆がどういう反応をするか、今まで影で少し心配だった。皆にどのタイミングで言うか、もしくは言わずにおくべきか…
「はい、みんなちょっといいかー?」
提督が手を叩き、注目を集める。
「長門、少し来てくれ」
「私…か?」
提督に言われるがまま、私は彼の脇に来た。彼がこそこそと小声ではなしかけてくる。
「長門、君のことを話したいと思うが、いいか?」
「えっ…ああ、頼む」
OKを思わずしてしまったが、後々このタイミングで来たことが有難いと感じるとは…
「ここにいる長門は、実は戦闘には出ず、ここで用務員として日々を送っている。実は彼女は艦娘性超記憶障害という難病で、海に出ることができない。でもな、長門は毎日、みんなのために出来ることをしている。ここの飾り付け、今皆が食べている料理、そして、寮の増築工事も、彼女の協力なしには出来なかった。
他の所の彼女とは違うように思うかもしれないが、皆、長門のことをどうかよろしく頼む。」
「提督…」
「ほら、長門も」
提督に促され、私も挨拶をする。
「紹介に預かった、長門だ。提督の言う通り、病の影響で用務員として働いている。色々と気軽に話しかけてくれると嬉しい。その、うまく言えず恥ずかしいが…皆、よろしく頼む」
会場は数秒の沈黙、そしてーーー
「こちらこそ!」
「よろしく、お願いします。」
そんな温かい声。そして、大きな拍手に包まれた。みんなが、受け入れてくれたんだ、この私を。…いかん、涙出てきた…
胸が、熱いな…みんな、ありがとう…
私は嗚咽を漏らしながらも、感謝の気持ちをみんなに伝えられたーーー
ーーー歓迎会は無事に終わり、私は他の全員での片付けを済ませた。その後、今憲兵のいないこの鎮守府の見回りを簡単に済ませ、私は自室へ戻った。
陸奥は楽しみすぎたか、既に爆睡している。そんな妹を微笑ましく思いつつ、私はカーテンを少しだけめくり、祈る。
遠く輝く夜空の星に
私の、みんなの願いが、届きますように
「平和な海に、平和な星になって、みんなとずっと、笑顔でいたい」ーーー
今回も読んでくれてありがとうございました!
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