笑顔は太陽のごとく… 《用務員・長門編 完結済》 作:バスクランサー
筆者、リアルでうつ病かもしれません└(՞ةڼ◔)」
テンションやら文やらおかしくなっているかもですが、ご容赦を…
すみません本編どうぞ。
「落ち着いて!慌てないで避難してください!」
「こちらです!押さないで!」
パニックになった町は、逃げる住民でごった返していた。吹雪と私で、商店街のスタッフや客たちを必死に避難誘導する。
「レイ、私の元を離れるなよ!」
「は、はい…!」
レイの事も、この人混みの中はぐれないように、しっかりと確認する。
怪獣の方を見ると、その周りで時々小爆発が起こっている。どうやら艦娘と空軍の共同攻撃が始まったようだ。
しかし、奴の勢いは依然として止まらない。これはまずい、とにかくまずは逃げ遅れた人がいないか確認しなければーーー
ーーー怪獣攻撃側
「敵に弾幕を張らせないで!」
「奴の武器は砲撃だけではありません!口から放たれる電撃光線も、記録によると十分な脅威です、気をつけてください!」
海の浅い底を歩き、迫るエレキングに向けて、先行して艦娘たちが攻撃する。が…
「えっ!?」
「どう…なってるの!?」
頭部を狙って勢いよく撃たれた砲弾。しかしそれは、正確な狙いのはずだったのに、エレキングの頭部を逸れるような軌道を描いて、不発に終わってしまった。
「なんで砲弾のルートが!?」
動揺が走る艦娘。そこへ、
「大丈夫か!我々が援護する!」
空軍の戦闘機小隊だ。
「全機、ミサイル攻撃開始!」
「「「「了解!」」」」
次々と、戦闘機下部から放たれるミサイル。深海棲艦やアーストロンの出現を受け、ごく最近開発された新型強力ミサイルだ。
しかし次の瞬間、ありえない現象が起きた。
なんと、ミサイルの軌道までもが、デタラメに逸れたのだ。いくら強力でも、当たらなければ意味がない。ミサイルのいくつかは海面に落ち、艦娘たちに迫る。なんとか全員かわしたり、相殺したりなど対処はしたものの、攻撃が通じないということが、焦りを起こさんとする。エレキングはさらに、全身の砲塔からの射撃を仕掛けてきた。
「まずいぞ!」
「くっ…!」
エレキングの砲撃により、艦娘たちの数人は中破状態に追い込まれる。さらに砲撃を辛くもかわした戦闘機のうち、続けざまに放たれた三日月型の光線が2機に直撃。幸いパイロットは脱出に成功したものの、機体は炎上しながら墜落していった。
「前がダメなら、後ろからなら…!」
後ろからの攻撃を試みようとエレキングの後ろに、数人の艦娘たちが回り込む。が…
「砲撃、かい…きゃああぁっ!?」
なんと、海面から巨大な物体が突如として浮かび上がり、艦娘たちの砲撃を阻止してしまった。エレキングの武器の一つ、太く長い尻尾だ。
「くそっ!空軍よ、尻尾を狙ってくれ!」
「了解!」
戦闘機が見事な飛行で高速旋回、そしてジェットエンジンを唸らせ一気に距離を詰める。
「目標ロックオン!ミサイル発射用意…」
ところが。
「はっ…うわっ!?」
「どうしました!?」
「計器に異常発生!全機能、正常に作動しない!」
「何だって!?大丈夫か!?」
「我々は平気だが、機体はこれ以上の飛行は不可能だ!すまん、戦列を離脱する…!」
悔しそうな小隊長の声が、無線機を通じて艦娘たちに伝わってくる。その通信は近くの者同士だったのだが、何故かひどいノイズが入った。
そのノイズを聞いた時、響の頭に閃光が走る。
「分かった…磁力操作だ!」
「…え?…あっ!!」
そう。響の読み通りだった。
エレキングはその身にほとばしる膨大な電気エネルギーを、磁力操作に利用していたのだ。
自身に対する対策をさせないために、観測施設のカメラに向かって強力な磁力波を放ってダウンさせたり、今現在進行形で進んでいる戦いにおいても、砲撃やミサイルに対し、頭部に磁力によるバリアーを張って、金属製である砲弾を逸らせたり、ミサイルの誘導機能を麻痺させたり、さらには戦闘機に磁力波を発射することで、計器を狂わせ撃ち落としたり、と言った具合だ。
「そういうことか…よし!」
ランドマスケッティから、提督が指示を出す。
「通常の砲撃では勝ち目はない!戦闘プランを変更する!正規空母、軽空母、及び航空戦艦の艦娘は、磁力波の影響を受けないように距離を置いて、艦載機によるレーザー攻撃!」
「「はい!」」
「戦艦の艦娘は陸に上がって、住民の避難誘導だ!駆逐艦や巡洋艦の艦娘は、ありったけの魚雷で攻撃!もし弾切れになったら避難誘導組に合流しろ!こっちも全力で援護する、何としてでも進行を食い止めろ!」
「「「「了解!」」」」ーーー
ーーー「長門、もうすぐそっちに陸奥たちが合流する」
「急いでくれ!商店街に来ている客はまだたくさんいる!我々だけでは手に負えない!」
提督との通信をしながらも、私は必死に手を回して、住民たちに逃げるべき方向を伝える。そうしているうちに、視界に入る人の数は数える程となった。
「よし、人の波がようやく引いてきたか…」
と、
「おかあさぁーん!どこぉー!だずげてぇー!!」
子供の泣き声!?まだ逃げていなかったのか!
「吹雪!行くぞ!レイも!」
「は、はい!」
「…はい…!」
子供の所に駆け寄る。どうやら逃げている最中、親とはぐれてしまったようだ。
「ぼく!大丈夫か!?」
私たちの存在に気づいた子供は、涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、こちらに駆け寄ってきて…私にぎゅっと引っ付いた。
「お姉ぢゃぁん!怖がっだよぉー!」
「よしよし、よしよし…」
前に提督が傷ついた仲間にしていたように、私は子供の頭を優しくなでた。よかった、少し落ち着いてきたようだ…。
「あのね、怪獣からね、逃げてたらね、おかあさんがね、いなくなっちゃってて…」
大泣きしながらも、子供は私達に今の状況を何とか訴えてきた。相当怖かったのだろう…
「そうかそうか…大丈夫大丈夫…」
私は子供を抱き寄せつつ、周囲を伺う。怪獣はもう少しで陸に上がって来そうだ。…ん?
「…レイ?どうした?」
そばにいたレイが、とてもこわばって、思い詰めたような表情になっている。その時…
ズガーーーン!!
キィィィイイイイッッッ!
地に走る大きな揺れ。エレキングが、とうとう上陸してしまった!
「ぎゃぁぁぁああああ!!」
大声で叫び、パニックを起こす子供。その時…
「レイ!?」
なんとレイが、私の元を離れ、怪獣の方へ猛然と駆け出したのだ!
「レイ、レイ!!どこへ行くんだ!?戻ってこい!!そっちは危険だっ!!」
くそっ!この状況で子供を放っておくわけにもいかない…!
「長門さん!」
「吹雪!?」
「この子は私が避難所へ連れていきます!長門さんはレイさんを追ってください!!」
「頼む!!」
子供を吹雪に任せ、私はレイを追った。
「レーーーイ!!」ーーー
ーーーレイを視界から見失わないよう、私は必死で追いかけた。それにしてもレイは、何をするつもりなんだ…!?
レイが近づいた事で、エレキングはその存在に気づく。エレキングを見上げるレイ、おそらく今両者の目が合っている。と、唐突にレイが叫んだ。
「…こっちだ、化け物!」
なんとレイは、エレキングに自分の場所を自ら知らせるという行為に出た!…あいつ、たった1人でエレキングを引きつける気か!!
「落ち着け、レイ!」
「長門さん…!?…駄目です!戻ってください!こっちに来ては駄目です!」
「そんなこと言っている場合か!!」
私はすぐにレイと間を詰め、抱きかかえる。
「離してください!長門さん!」
「誰が離すかっ!!」
なんでここまでして…!
「フフフ…愚カ者ドモメ、逃ガスカァ!」
エレキングは深海棲艦の声で叫び、三日月型の光線でこちらに攻撃をしてくる。
「くっ…!」
私は走った。海の近くの道を、必死に走った。が…
「はぁ、はぁ…うっ…!?」
しまった、この最悪のタイミングで発作が…!!
「うっ、ぐぅっ…!!」
「長門さん!?」
発作の弾みで転んで、投げ出されたレイがこっちに駆け寄ってくる。くそ、とにかくまずは早く薬を…!
「フンッ!!」
しかし、エレキングは私の状況を知ってか知らずか、思い切り地を踏み鳴らした。私の手から薬の容器が離れ、空へと投げ出される。
「長門さん、大丈夫ですか!?」
「レイ、その薬を…取ってくれ…うぅっ!」
「は、はいっ!」
レイが薬の容器を取ってくる。幸い視界中の距離だったため、すぐに持ってきて、私の口の中に薬を放り込んでくれた。
しかし、もうエレキングは目の前まで迫っていた。薬は飲んだが、発作の反動はまだ収まらず動けない。そして奴の顔、深海棲艦の目がこちらを見下ろしてきて…
「トドメダァ!2人マトメテ、死ヌガイィィッッッ!」
エレキングの口が裂け、放たれる三日月型の光線。視界がその光で真っ白になってーーー
ーーードカーーーーーン!!!!
その場所で、大爆発が起きたーーー
ーーー…う、うぅ…
一体どのくらいの時が経ったのか。私は目を覚ました。ここは…天国か…?
「危なかったな、長門、レイ。」
聞き覚えのある声が、私の意識を急速に呼び戻してくる。
「あなたは…北斗…さん?」
「私の識別が付くようなら、大丈夫なようだな。レイよ、君も大丈夫か?」
「…は、はい…」
ゆっくりと起き上がるレイ。
「一体、私達はどうなって?」
どうやらここは、海のそばの古い空き家の影のようだ。まだ体が、やつ地ならしを感じている。
「簡単に言えば、私がすんでのところで救出した、といったところかな。」
「いや、その…」
とりあえず、その疑問は一旦置いておくことにして、私はレイに聞く。
「レイ。
さっきはなんであんな真似をした?」
「…」
レイは俯いて答えない。
「レイ…頼む。何故だ」
私が問い詰めると…レイはその口をゆっくりと開き、言った。
「…私がいることで、あいつが来た…このまま私などがこの街にいたら…優しいこの町の人にまで、迷惑をかけてしまう…だから…だから、私が怪獣を引き付けて…」
「レイ…死んだらどうするんだ…!?」
「死んだら…死んだらその時はその時だよ…あいつは私を追ってきてるのだろうから…」
その一言が、私の心に火をつけた。
「レイ!お前、何を考えていたんだ!お前は、仲間達の思いを裏切るつもりか!?」
「私だってそんなことしたくない!」
大声を張り上げるレイ。その瞳には涙が。
「でも…あんな強いのが出てきたし…もしかしたら、もう、みんなは…」
レイ!そう声を出そうとした私を、目の前に突然伸びてきた腕が止める。
「…ここは、私に任せてくれないか?長門。」
「…北斗さん」
優しくも力強い笑みをこちらに向け、北斗さんは座り込んでいるレイの肩に手を当て、語る。
「レイ、レイよ」
「…北斗さん?」
「確かに、今のお前に、この状況は辛過ぎるほどだろう。怖いよな、レイ…」
「…」
無言、しかしゆっくり頷くレイ。
「うん。だがレイ、決して挫けてはいけない。君のことを信じている、仲間達のためにも…」
「…でも…私は今はもう…一人ぼっちだ…」
「レイ、決してそんなことは無いさ。」
「…え?」
北斗さんに目を合わせるレイ。
「…お前になら聞こえるはずだ。例え離れていても、お前のことを信じ、未来を信じて、懸命に生きている、お前の仲間の声が…」
「仲間の、声…?」
「ああ。
私もかつて、強大な超獣たちとの戦いの中で、大切な人と別れた…。共に苦しみ、笑い、戦った人と。
彼女は自分の使命を果たし、故郷へと帰っていったんだ。」
北斗さんはそういいつつ、空を見上げる。
「彼女と別れた時は、私だって辛かった。だが、俺は最後まで、襲い来る超獣たちと戦えた。
離れ離れでも、彼女の意思はいつも俺の中にある。変わらず一緒に戦っている、そう思えたからだ。
だからレイ、お前も、仲間を信じて、未来を信じるんだ。お前にも、きっと仲間達の声が、意思が、感じられるはずだ。」
「仲間達の、意思…」
レイは目をつぶった。私からは、レイが何を感じ取り、どう思っているのかはわからない。しかし、間違いなく今、レイは仲間達からの声を感じ取っている。そう確信できた。
「…聞こえました。北斗さん。
私のことを信じてくれる、仲間達の声が…」
「そうか。」
「はい。」
微笑むレイ、北斗さん。つられるように、こんな状況下でも、不思議と私の口角が上がる。
「そうだレイ。希望を捨てず、信じ続けるんだ。その心は、不可能も可能にするのだから。」
「はい、北斗さん…!」
よかった…レイが、また立ち直ってくれたーーー
ーーードカーーーン!
突然起こる爆発。どうやらすぐ近くに、エレキングの攻撃が着弾したようだ。爆風が吹き荒れ、隠れていた空き家が倒壊する。
くっ、こんな時に…!
「提督、状況は!?」
「悪いことに変わりはねえ!磁場のバリアーで思うようにこちらも攻撃できないっ!」
通信をしている提督、彼が操縦するランドマスケッティのファントンレールキャノン、さらに空母艦娘の艦載機のレーザー攻撃、明石の操るシルバーシャークGも、頭を狙えばバリアーで防がれ、後ろを狙えば尻尾で防がれ、胴を狙えば砲撃で相殺されるという歯がゆい状況が浮かぶ。
「長門さん、北斗さん!!」
レイの叫びで我に帰る。見上げると再びエレキングがこちらを見下ろし、不気味な顔を向けて来ていた。
「今度コソ、トドメダ!食ラウガイイッッ!!」
エレキングの全身の砲塔が不気味に光りはじめた。まずい、全力の一波を放つ気か!!
「どうすれば…!?」
必死に考えるが、答えが浮かばない。もう、詰んだのか…!?
その時。
「ここは、俺が行く…!」
「北斗さん!?」
目の前に現れた彼の背中。頼もしく、威厳を感じさせる背中。
一瞬、彼の両の中指に嵌っている指輪が、キラリと輝いた。
「北斗、星司さん…あなたは…!」
「…ふふっ」
悪戯っぽくこちらに微笑み、そして一瞬で、キリッとした表情へと戻る。
「夕子…行くぞ!」
彼は胸の前で両腕をクロス、そして大きく横に広げる。そして…
「ぬぅんんっ…ふんっ!!」
思い切り、北斗さんはその指輪ーーーウルトラリングを、強く、すばやくタッチさせた。
たちまち、リングが火を放ち、光が北斗さんを包み込んでいく。
そして、それとほぼ同時に、エレキングの砲塔から邪の光を放つ砲弾が何発も発射された。
が。
それよりも速く、北斗さんを包んだ光が空に舞い上がり、見る間に巨人の形を成していく。
この町に海から伸びる魔の手・エレキングの放った砲弾は…
「ウルトラ・ギロチンッッ!!」
眩い光に包まれた、巨人が放った無数の円盤ノコギリ状の光輪に、全ての砲弾は真っ二つに切り裂かれるように相殺された。
「ナン…ダト…!?」
巨人が着地し、立ち上がる。
その身にほとばしる光が収束していき、その姿が露わになっていく。
まるでモヒカンのような、しかし穴の空いた、独特のフォルムを有す頭頂部。
額と胸に輝く、青き星。
銀地に走る赤のライン。
提督が、艦娘が、空軍のパイロットたちが、避難所の町の人が、エレキングが、レイが。
誰もが見上げた、その視線の先。光とともにやって来た彼が、威厳をもってたたずんでいた。
自然と私の口からは、彼の名前がーーー
ーーー「ウルトラマンエース…
ウルトラマンエースだ!!」
というわけで今回も読んでくれてありがとうございましたm(_ _)m
感想や評価、よければお願いします!
この作品の完結まであと少し、改めてよろしくお願いしますm(_ _)m
また次回!