那奈釜戸「ご苦労だった、雅拉」
雅拉「はい。ありがとうございます」
賢次「それで成果は如何でしたか?」
雅拉「いえ、その前にまずは会っていただきたい者がいます。よろしいですか?」
那奈釜戸「構わん」
雅拉「慎司を連れてこい!」
雅拉が扉に向かってこう指示をすると、部下二人が慎司と共に入ってきた。
その手には手錠が嵌められている。
賢次「彼は誰ですか?」
雅拉「名前は慎司。我々の敵、あえて名付けるならば凰城戸軍の幹部だ」
賢次「凰城戸?」
雅拉「敵の大将の名は凰城戸 幸成。実質的なトップは孫の繁」
那奈釜戸「それで慎司とやら、お前は今捕虜というわけだが......」
慎司「足掻くつもりはない。......殺せ」
那奈釜戸「そうはいかん。お前のモビルスーツ操縦スキルはかなりのものだったからな。お前さえよければ協力してはくれんか?」
慎司「......俺は凰城戸様の理想とする世界を実現させるために今まで尽力してきた。しかし繁なんかのために身を粉にして働きたいとは思わん」
慎司「雅拉......お前も噂くらい聞いたことはあるだろ? 既に凰城戸様は繁によって殺されているとかいう......」
雅拉「まあな。もっとも物的証拠がないだけで凰城戸が死んでいる......最低でも遠い場所に幽閉されていることはほぼ確定だろうが」
慎司「そうだ。だけど俺は諦めきれない。失業し、人生のどん底をさ迷っていた俺を拾ってくれたのは......今日まで生き長らえたのは......凰城戸様のお陰なんだ。それを裏切ることは出来ない......」
雅拉「だが翔太が朱艇によって殺された。次のターゲットはあんたじゃないのか?」
慎司「それは......! 」
賢次「どういうこと?」
慎司「凰城戸軍のメカニック担当リーダーだった翔太は有能だったがゆえに朱艇という名の男に殺されたんだ」
賢次「そんな......」
那奈釜戸「慎司......お前の気持ちはよくわかった。ならこう考えたらどうだ? 凰城戸 幸成に恩返しをするために、彼の名を使って悪事を働くものを倒すと......」
那奈釜戸「凰城戸はもしかしたらまだ生きているかもしれない。その可能性に賭けるんだ!」
慎司「......」
賢次「......」
雅拉「......」
慎司「利用される気はないが俺も朱艇にみすみす殺されたり、役立たずの繁の下で働かされるのは気に食わないからな。打倒繁軍の為に協力してやる」
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作業場
延寿「聞いた? 雅拉の奴スパイだったらしいよ」
妃和田「ほんと驚いたっすよ。俺達からの評判はともかく、信頼されているみたいでしたから」
区千葉「だがこれで今までの疑問も解決したな。俺達に無茶な要求、重労働、過度な罰則を課したのも結果的なモビルスーツ開発の遅れ、それに伴った兵力減少を狙っていたのならば辻褄があう」
石築「ところで新型モビルスーツはどうすればいいんだよ? とうとう繁さん直々に命令されてしまったからな......」
愚連「それに"これはお祖父様からの命令でもある"と言われましたしね......出来なかったら今度こそ首が飛ばされるのかな?」
花田「でももう俺達じゃ無理だよ......こんなとき翔太さんがいればな......」
多摩虫「そうだ! 1度翔太さんの使っていたパソコンを覗いてみるのは?」
古金「それは少し抵抗があるな......あれはプライベート用にも使っていると言ってたし。前に翔太さんに家族と旅行に行ってたときの写真とか見せられたし......」
常磐「だけど......翔太さんなら何かを遺しくれている可能性だってあるいは......」
愚連「やってみましょうよ! 賭ける価値はあると思います」
妃和田「どうします? リーダー」
区千葉「......やろう。最後まで絶対に俺達は諦めないぞ!」
「「「「「おぉーー!!」」」」」
区千葉がパソコンを立ち上げるとホーム画面には娘と思われる画像が貼り付けられてあった。
ファイルを調べると最終更新が翔太の死の数時間前を示しているものが見つかる。
妃和田「これすか?」
愚連「中を確認してみましょう」
区千葉(頼みます翔太さん......俺達に希望を......!)
念を押しながらそれをクリックする区千葉。
そこに書かれていたのは......
「メガシンカ?」
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賢次「それは何ですか?」
雅拉「翔太のパソコンを漁っていたら見つかったものだ。彼が密かに設計していたらしい新型エンジンと新素材を用いて作られるまったく新しいモビルスーツってところだろうな」
那奈釜戸「なんと!」
賢次「データはありますか?」
ポケットからUSBメモリーを取り出した雅拉は、それを賢次に渡す。
雅拉「その中に詰まっている。本当はあのパソコンからデータを消したかったが、ロックが厳しくてそれは叶わなかった」
慎司「ならば先にそれを完成させた方の勝ちだな。お互い居場所は知れ渡っているのだからな」
賢次「早速作業に取りかかります!」
賢次、はその場を去る。
猛「ただいま帰還しました!」
華澄「右に同じく」
智「あの......雅拉という人がいると聞いたんですけど...... 」
雅拉「おれだが...... 何かようかい?」
智「俺も雅拉なんです。雅拉なんてそう多い名字ではありませんし......」
雅拉「まさかお前...... 智か......? サキを知っているか?」
智「はい! まさか、俺の父親?」
雅拉「いや......その事についての詮索はするな」(止めておこう。真実を語るのは......)
雅拉「物事には優先順位というものがある。俺の正体なんかより今はもっと考えることがあるはずだ」
智「は......はい...... 」
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区千葉「これだけ揃っていれば俺達だけでも作れるはずだ。頑張ろう!」
「「「はい!!」」」
こうして両軍とも最終決戦に備えるための準備に取りかかった。
那奈釜戸陣営はリザードン、カメックス、フシギバナに改造を加える形で、繁陣営はエルレイドをベースとした新しい機体の開発及びまだ見ぬ繁の愛機への改造をしていく。
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10日後、敵軍基地では作戦会議が行われていた。
繁「この度の戦闘で我が軍はモビルスーツをすべて失ってしまった。そして雅拉の裏切り、慎司の殉職と有能な部下共も消えていった。だから奴等のモビルスーツの修復が終わっていない今に基地に乗り込む!」
朱艇「......しかし雅拉のガブリアスは今だ無傷。繁さんのモビルスーツ一機では危険かと」
繁「なんだと!? 何が言いたい?」
朱艇(あんたが権威を得るために祖父を必要としているように、俺にもあんたが必要なんだよ! この無能が!)
朱艇「......私は貴方の御身体にもしものことがあればいけないと思い、こう申し上げた所存です」
繁「そうか......ならばどうすれば!?」
オペレーター「あの......こういうのはどうでしょうか?」
繁「まあ聞いてやってもいいぞ」
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朱艇「ほう......」
繁「それだ! それならまず勝てるだろう!」
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そして1か月後......
賢次「テストも良好! 完成しました!」
那奈釜戸「うむ! よくやった!」
智「今までとは段違いだったぜ!」
猛「ああ」
華澄「凄いじゃない!」
慎司「賢次、エレキブルの修理の件については礼を言っておく」
那奈釜戸「それでは2日後、事前に知らせた作戦通りに決行だ!」
次回更新は3月27日です