智「俺がパイロットに!?」   作:ぽかんむ

4 / 15
復活の智 朱艇の思惑

一方そのとき猛達......

 

 

サイゼリア 夜

 

 

猛「いったいAIはどこなんだ?」

 

渚「一向に見つかりませんからね......」

 

泊待「あれから三日ですか......」

 

 

回想

 

渚「あの少年の詳細がわかりました。名前は雅拉(まさら) 智、年齢は十歳、エーデルアパートの四号室に住んでいます」

 

猛「わかった。早速今夜決行しよう」

 

 

 

 

智「zzz......」

 

猛(大家に無理を言って開けてもらったが......AIはどこだ?)

 

渚「こちら、ありません」

 

泊待「こっちもです」

 

 

部下が小声で報告し、猛も首を振りそれに応える。

 

 

智「ふにゃ......」

 

猛「まずい、一度撤退だ」

 

二人「了解」

 

 

回想終わり

 

 

 

渚「こんなことが続いていますからね」

 

猛「これではいかんな。作戦を変えねば」 

 

泊待「やはり実力行使しかないのでは?」

 

猛「そうだな。しかしまずは無駄を覚悟で交渉に行くか」

 

 

三人はその足で、事前に調べていた智の家に向かった。

家に着き渚が呼び鈴を押すと智が出てきた。その表情は未だ晴れてはいない。

 

 

猛「こんばんは」

 

智「こんばんは......俺に何の用ですか?」

 

猛「率直に言う、プリンを預けてくれないか? 勿論タダとは言わないが」

 

智「嫌です」

 

猛「そこを何とか......君の力があれば奴等にだって必ず勝てるはずだ」

 

智「しつこい、もう帰ってください。何を餌にしようと俺は釣られませんよ」

 

猛「......悪いが俺達だってそう簡単に引き下がれることではない。かくなる上は......」

 

智「えっ?」

 

猛「渚は智を押さえつけろ、泊待は俺と共にAIを探すぞ」

 

二人「了解!」

 

智「あっちょ! 離してよ!」

 

渚「君には申し訳ないが暫くおとなしくしてくれ」

 

智(どうする? どうすればこの場を何とか出来るんだ?)

 

 

猛、泊待は金属探知機を片手に家の中をくまなく捜索している。

このままでは見つかるのは時間の問題だ。

 

 

猛(どこだ......ん?)

 

 

猛が金属探知機を机の引き出しにかざしているとピーっと音がなった。

しかし二人が片っ端から開け、その中を探すが見つからない。

猛が別の場所を探そうとしたとき突然引き出しの底を次々と叩き出す泊待。

 

泊待「ここだけ音が違う......」

 

猛「そうか、二重引き出し! 子どもにしてはよく考えたものだ」

 

泊待「しかし......これをそのまま開けて大丈夫でしょうか?」

 

猛「そんな天才高校生がある日拾った一冊のノートを使って新世界の神を目指す漫画じゃないんだから......」

 

泊待「それもそうですね」

 

 

泊待が力を込めるとダミーの底は簡単にはずれ、中からプリンが姿を現した。

 

プリン『危険』

 

 

プリンは腕から釘を発射しそれが泊待の腹に直撃した。

智は万が一に備えてプリンを改造していたのだ。

たとえ釘とは言え高速で打ち出されるそれは逃げるチャンスを作るのには充分な威力である。

 

 

智「プリン、こいつにもやれ!」

 

プリン『わかった』

 

 

釘は渚の手の甲に当たり、その隙に智達は逃げ出した。

猛、泊待は智の後を追おうとするがプリンを探すために散らかした部屋がバリケードの役目を果たし数秒の猶予を与える。

 

智「どこに逃げようか」

 

プリン『適当に巻いたら瀬玲奈の家に逃げ込むことを進める。敵の意表をつこう』

 

智「うん!」

 

 

遠くから猛達の声が聞こえる。

しかしここは複雑に入り組む住宅街なので土地勘のある智がこの場を知らない猛達から逃れるのは比較的簡単だ。

 

 

智「はあ......はあ......巻けたかな?」

 

プリン『大丈夫なようだ』

 

智「それじゃ戻ろっか」

 

数分後、智とプリンは自宅の隣の瀬玲奈の家に到着した。

猛達に瀬玲奈のことは知られていないのでこれで安全なはずだ。

呼び鈴を押す智。すると瀬玲奈が出てきた。

 

 

瀬玲奈「あっ智!」

 

瀬玲奈の平手打ちが智の頬に命中。衝撃からよろける。

 

 

瀬玲奈「何なの? あれから毎日毎日うじうじして家に引き込もって! 学校にも来てないし」

 

智「ごめん......」

 

瀬玲奈「それで要件は?」

 

智「匿って!」

 

瀬玲奈「はあぁ?」

 

 

部屋に入る二人。そこで智は自分の身に起きたことを伝えた。

 

 

瀬玲奈「なるほどね、でも今ママ居ないし」

 

智「仕事?」

 

瀬玲奈「うん、そうだよ」

 

瀬玲奈「ところで智、あんたいつそれを彼女に渡すの?」

 

智「えっ? 今までの話聞いてなかったの?」

 

瀬玲奈「聞いてたけどさ、それとこれは関係なくない?」

 

智「大有りです!」

 

瀬玲奈「まあそれもそうか。そんなんで会いに行ったら愛想尽かされちゃうか」

 

智「そんなことない!」

 

 

二人が話し込んでいると足音が近づいて来た。それは段々大きくなり智は次第に怯え始める。

 

 

瀬玲奈「どうしたの?」

 

智「だって......」(見つからないんじゃなかったの?)

 

プリン『この音は』

 

 

玄関前でその音は止み扉が開けられる。

 

 

「ただいま......」

 

智「ギャァァァァァァァァァ!!」

 

「キャァァァァァァァァァ!!」

 

瀬玲奈「おかえりー。そんなに騒がないでよママ」

 

─────────────────────

 

 

智「いやー、すみません。久し振りですねおばさん!」

 

瀬玲奈ママ「あらあらすっかり大きくなって!」

 

 

彼女は瀬玲奈の母親で名前はサキ。

かつてはサイレーサーだったらしいがマイナーな競技であるため智は詳細を知らない。

現在は若干疎遠になっていたとは言え智が幼いときにはよく一緒に遊んでいたため自然に会話は弾む。

 

────────────────────────

 

瀬玲奈ママ「あらっもうこんな時間。お風呂入ってきなさいお湯覚めちゃうから二人一緒にね」

 

智・瀬玲奈「一緒に!?」

 

瀬玲奈「ヤダヤダ絶対やだ!」

 

智「ムリムリ絶対ムリ!」

 

瀬玲奈ママ「あらそう、昔はよく一緒に入ったのにね......」

 

瀬玲奈「それじゃ先に私が入ってくるね」

 

智「いってら」

 

瀬玲奈「覗かないでよね!?」

 

智「興味ない」

 

瀬玲奈「今日見ない? ってことは明日は見るの? 最低!」

 

智「は? なにいってんだこいつ」

 

瀬玲奈ママ「ところで智君......さっきの話だけど......誰かに狙われているの?」

 

智「......」

 

瀬玲奈ママ「私智君のこと本当の息子のように大切に思っているからね。何かあったら遠慮なく言ってちょうだいね」

 

智「......はい、ありがとうございます。もしなにか悩みがあったら相談しますね」(言えるわけ無いよな......)

 

 

─────────────────────────

 

 

その頃(午後10時頃) 敵軍基地

 

 

朱艇「慎司、今から行ってきていいか?」

 

慎司「どうしてだ?」

 

朱艇「よくよく考えたら夜の闇に隠れて奇襲仕掛ければ良いと思ったからだ」

 

慎司「辞めておけ、夜の方が警戒は強いはずだ。だからこそ今まで昼間に出撃してきたわけだしな」

 

朱艇「俺には作戦があるんだよ、任せておきな」(昼間にパラシュートで脱出したらバレる可能性あるからな......)

 

朱艇「それではな、文句はないだろ? それから翔太も呼んでおけ。多分あいつが一番気になっているからな」

 

慎司「ああ。気を付けろよ」

 

朱艇(翔太......これで貴様もおしまいだ)

 

 

朱艇は改造エルレイドに乗り込むと少し歩かせ母艦・ペリッパーに口から入り搭乗。

そして部下がペリッパーを発進させた。

 

 

数分後、ペリッパーが空中で静止し口を開きエルレイドが姿を見せる。

更にそこから飛び降り地上に着陸。

付近の家屋は崩れ、地震のような揺れが発生した。

 

 

智「なに? 地震......違うこの揺れは前に感じたことが......!」

 

瀬玲奈「どうしたの智? 地震が怖いの?」

 

智「モビルスーツ......あのロボットが攻めてきてる!」

 

瀬玲奈ママ「何ですって? 早く逃げなきゃ!」

 

 

三人は一目散に家から飛び出した。

振り向くと改造エルレイドは目の前まで迫ってきている。

 

 

住民「逃げろ!」  

 

智「そんな......また来るなんて......」

 

プリン『危険危険』

 

瀬玲奈「早く逃げるよ!」

 

瀬玲奈ママ「うわぁぁ!」

 

 

三人の上から瓦礫が降りてきた。全速力でこれを避けようとするが......

 

 

智「はあ......はあ......」

 

瀬玲奈「何とか逃げれた......ママ大丈......」

 

 

ふと振り向くとそこに瀬玲奈の母親の姿はなく、あるのは瓦礫の山だけだった。

 

 

瀬玲奈「嘘でしょ......ママ! ママ!」

 

智「そんな......! 何でだよ!!」

 

猛「見つけたぞ! AIを渡してくれ!」

 

智「こんなときになんなんですか!......プリンは持っていかないで下さい......」

 

猛「気持ちはわかるが......!」

 

智「僕が行きます!」

 

猛「えっ?」

 

智「何か問題ありますか? この前はあんなにスカウトしてきたのに」

 

猛「な......ないが......」

 

智「早く!」

 

猛「わかった......」

 

瀬玲奈「智......」

 

智「バイバイ瀬玲奈。敵を倒したら帰ってくるから」

 

瀬玲奈「うん! 約束だからね!」

 

──────────────────────

 

朱艇「リザードンがいないじゃないか!」

 

 

そこへ飛行空母が現れ、中からリザードンが登場した。

 

 

智「戦うことが罪なら......俺が背負ってやる!」

 

 

リザードンは火炎放射を繰り出した。しかしエルレイドは素早く右にかわす。

 

 

プリン『エアスラッシュを撃って』

 

智「了解!」

 

 

エルレイドにエアスラッシュが襲いかかる。

これを背中からシールドを取りだし受け止め、更に脚部ミサイルを発射しリザードンの右翼に命中し破壊した。

 

 

朱艇「勝てる! これなら!」(即席改造でここまで出来るとは翔太恐るべし。やはり危険な芽は先に摘まねば!)

 

智「強い......だけど俺は負けるわけにはいかないんだ!」

 

 

リザードンは両腕を近接戦武装 ドラゴンクローに変える。

エルレイドも腕を刀の如く変化。

 

 

朱艇「近接戦でエルレイドに戦いを挑むなんて頭がソノオの花畑か!?」

 

 

両機体の近接兵器が何度も激突し、激しい火花を散らした。

 

 

朱艇(こんなところで充分か。脱出だな)

 

 

朱艇がボタンを押すと機体の後方と背中のパラシュートが開いた。

彼はそこから落下して逃げ出し、コントロールを失ったエルレイドはドラゴンクローの猛攻に曝される。

 

 

智「こんな奴等の為に、これ以上誰かの涙は見たくない!」

 

 

機体の軽量化とは装甲を軽くする、すなわち防御力を下げることになる。

その事も影響しエルレイドは粉々に粉砕された。

 

 

智「やった......」

 

プリン『おつかれ』

 

──────────────────────

 

敵軍基地

 

 

慎司、呼び出しを受けた翔太、その知らせをどこかからか聞きつけ終結した翔太の部下たちがこの戦いをエルレイドのカメラ越しに見ていた。

 

 

翔太「そんな......!」

 

慎司「やはり小手先の改造で敵うほど敵のモビルスーツはやわじゃないか。だがパイロットはまだ未熟なようだな」

 

 

強者のオーラを漂わせる彼は不敵な笑みを浮かべる。

 

 

朱艇「はぁ......なんとか生き残ったぞ......」

 

 

朱艇はペリッパーに乗って帰還し、今彼らの元に着いた。

 

 

慎司「あの中でよく生きていたな。派手にやられていたようだが」

 

朱艇「まあな。それで朱艇、約束は覚えているよな?」 

 

翔太「......」

 

朱艇「覚えていないのか? だったら思い出させてやるよ」

 

朱艇「改造エルレイドはリザードンの前に敗れた。つまりお前は......処刑だ」

 

部下たち「そんな!」「待ってください!」「止めてください!」

 

朱艇「五月蝿い奴等だ。お前らも一緒に処刑しても構わないんだぞ?」

 

部下たち「それは......」

 

翔太「だ......だけど! 炎や翼カッターは完全に封じられました! 脚部ミサイルは翼を破壊できていました!」

 

慎司「そうだな。確かに翔太はお前の言い出した無理難題を見事に形に出来た。それを無視して結果のみを問えると思うか?」

 

朱艇「ぐぬぬ......」(仕方ない。ならば繁さんに取り合って......いや、利用して......)

 

──────────────────────

 

軍前線基地

 

飛行空母と共にリザードンに乗った智が帰還してきた。

 

 

智「その......協力してもいいですよ?」

 

猛「......っだそうだ」

 

泊待「それにしてもいきなりの心変わりだったよね? どうしたの?」

 

智「......以前、瀬玲奈に言われたんですよ。"その人は私達の街を滅茶苦茶にしたんでしょ? そんな奴死んだって構わないじゃん!"って」

 

智「そして今日......目の前でおばさんが......─俺小さい頃から親がいなかったのでおばさんは本当の母親のように思えてて─」

 

智「そのとき振りきれたんです。奴等は絶対に許さない、一人残らず駆逐するって」

 

華澄「そ......そう......」

 

 

智を除いた場の全員がこの思想に戸惑った。

しかし今の彼らにとって智は無くてはならない貴重な戦力であるため何も言うことが出来ない。

 

 

猛(ガキが背負うにはいささか重すぎる責任だったか......こうでもしないと自分を保てないのだろう)

 

智「あの......眠いんですけど......」

 

 

現在時計は12時を指そうとしている。

10歳の子どもにとっては大変な夜更かしであろう。

 

 

賢次「うん、そうだよね。むこうに仮眠室があるから思う存分眠るといいよ」

 

智「ありがとうございます......」

 

 

欠伸をしながらゆっくりとその場を去っていく智。

 

──────────────────────

 

同時刻 作業場

 

 

翔太が熱心にパソコンを操作している。

 

 

翔太(僕は間違いなく近いうちに消される......その前に出来ることといったらこれくらいしかない......)

 

翔太(朱艇め......お前はいったいどのような手を使って僕を消すつもりなんだ?)

 

翔太(凰城戸様に栄光あれ......!)




モビルスーツ紹介

No3,エルレイド(改)
概要
エルレイドを後付け武装によって強化した姿で、後にエルレイドの基本型になる。
武装
脚部ミサイル二門、強化リーフブレード、リフレクター
備考
機動力を上げるために装甲を薄くしているため耐久に難がある

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。