五分ほどたったあと智を乗せたリザードンは地面に降ろされた。
付近の滑走路には先程の戦闘機と同型のものがいくつも並んでいる。
そこへ自分達を運んでいた戦闘機も離陸し、中から人が出てきた。
猛「降りろ」
如何にも怖そうな男の声が聞こえる。
智は恐怖のあまり体が震え出す。
智「俺は怒られるのか?......そりゃ俺が悪いけどさ......」
猛「早く降りろ、それとも降り方がわからないのか?」
しびれを切らした猛はハッチを開けた。
すると中の光景に驚愕する。
猛「ガ......ガキ?」
猛(どういうことだ? リザードンはパイロットの技量とAIの支援があって初めて操作が可能になる......現在そのどちらもないはずなのに......)
智「あのあの......ごめんなさい......その......」
猛「街を救ってくれてありがとう」
礼儀正しくお辞儀をする猛。
想定外の行為に智は言葉を失った。
猛「それから君の才能は素晴らしいものだ。なんたってAI無しですべて手動で動かしたのだからな!」
智「はぁ......」
猛「こっちに来るんだ。なに君は今回のMVPなのだから胸を張ってよい」
智「はい......」
軍の前線基地内部
華澄「君がリザードンを使って敵を倒したの? 凄いね」
賢次「おお!」
智「はは......ははは......」
猛「緊張もほぐれたか?」
智「ええ......まあ......」(余計緊張するわ!)
智「あの......ロボットの左腕斬られちゃったんですけど......」
猛「そんなこと気にしないでいい。そのぶん被害が軽くなったのだからな」
賢次「なによりさ、いきなりリザードンを操作できたのも凄いけど、それでパッと敵を殺せた度胸も凄いよね」
智「えっ? 殺す?」
華澄「何を驚いてるの?」
智(そうか......あのロボットも誰かが操作していたんだ......中に誰かがいたんだ......あのときは夢中でそんなこと何にも考えていなかった......)
猛「それでものは相談だが......我々に協力してくれないか?」
智「い......い......嫌だ! 誰かを殺すなんてしたくない! 俺は殺してなんか......!」
猛「そう言わないでくれよ。君には才能がある。今のままではまだ不充分だが鍛えれば最強になれるだろう」
智「嫌だ!!」
現実の恐ろしさに気づいた智は何をするでもなく震えながら床に座り込んでしまう。
智「来るなよ! 人殺し......!」
猛「......」
華澄「......」
賢次「......」
猛「......その通りだ。一般市民である君の手を汚させる訳にはいかない......だが......」
猛「だがな! 敵も味方も全員無事で、仲良くなんてことは不可能なんだよ。しかし君がもしあのとき行動を起こさなかったらもっと沢山の人が被害にあっていただろう......」
智「......」
華澄「大変! 敵のモビルスーツが!」
賢次「なんだって!?」
猛「くそ......どうすれば......」
プリン『プリンが手伝う』
猛「?」
智「プリン......」
猛「この......物体はなんだ?」
智「それはプリン......人工知能を搭載したロボットです......俺が操作したときもアシストしてもらいました......」
猛「プリンとやら、協力してくれるか?」
プリン「了解した」
華澄「だけどリザードンは今壊れて......」
猛「大丈夫だ。俺に任せろ」
プリンを手に持ち奥へと走って向かう猛。
そのあとすぐに基地の一部が飛び去った。
その光景はあたかも飛行空母とでも形容されるものだろう。
現場に到着すると空母は地上に降り、中からリザードンが現れた。
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兵士「そんな破損した機体でエルレイドを倒せるとでも思っているのか? ぶっ殺してやる!」
完全に舐め腐る敵方の兵士。だがその考えは即座に否定された。
猛「火炎放射でいいか」
猛がそれとなくフットペダルを押すとリザードンは口から炎を発射。
先程の戦闘を見ていた兵士はエルレイドをジャンプさせてかわすがその判断が命取りとなった。
兵士「あぶねぇ......?」
突如エルレイドの装甲が少しずつ切り刻まれていく。自由に動けないその機体は防ぐことが出来ない。
猛「翼から発射されるエアスラッシュの威力を思いしったか?」
ついに刃がコックピットに刺さっり、コントロールを失った機体は地面に激突した。
中の兵士が生き残っている可能性は限りなく低いだろうがそれに触れることはしない。
猛「ふー......」
役目を終えたリザードンは飛行空母に格納されると基地に戻ってきた。
猛「ただいま」
華澄「おかえりなさい」
賢次「お疲れさま」
猛「プリンありがとな。持ち主のもとに帰っていいぞ」
プリン『そうする』
智「プリン......おかえり......」
猛「じゃあな。自分のやったことが辛いのならば今日のことは忘れろ。だけど......そのお陰で助かった命があること、少なくとも俺達の命は救われたことは......覚えていてもいいと思うぞ」
智「......」
プリンを連れ無言でその場を立ち去る智。
その表情は相変わらず悲しげだった。
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