カメックスのハイドロポンプを持ち前の素早さでかわしつつ、接近していくエルレイド。カメックスには近接用兵器が無く、殴る蹴るといった単調な攻撃しか出来無いため圧倒的に不利だ。
華澄『だったら......近づかせない!』
カメックスは地面に砲台を向けると、そこかられいとうビームを放った。地面が凍りつく。
朱艇「うおっ!? 転びそうだ......」
華澄『高速スピンで吹き飛ばす!』
回転しながら殻に籠ったカメックスは、凍りついた地面を利用して迫り来る。
エルレイドは避けることができない。
華澄(エルレイドは耐久が低い! 当たれば破壊も容易なはず)
朱艇(つるつるの地面がお前だけにメリットをもたらすわけないだろ?)
肘を展開して刀の形態にしたエルレイドはそれを地面に突き立てると腕を中心として、滑りやすさを利用して回転。
華澄(真っ向勝負って訳ね)
激しく回転している両機体が激突した。火花が舞い、お互いの表面が削れていく。
やがてエルレイドの動きが遅くなった。
華澄(勝った!)
朱艇(メガシンカはこんなものじゃないんだよ!)
脚部ミサイルを撃ち放つエルレイド。
それによりカメックスを吹き飛ばすことに成功した。
華澄(凍りついた地面が仇になったか......だけどこれは仕方がないこと)
朱艇(残りは一発......あの機体は確かに甲羅は固そうだが、腹部まで硬いのか?)
朱艇(もしも腹部の強度はそれほどでもない場合、ミサイルが"当たれば"撃破は可能だろう。しかしどう当てる?)
れいとうビームを繰り出すカメックス。エルレイドはそれを背中から取り出したシールドで防いだ。
華澄(れいとうビームが当たりさえすればモビルスーツだろうとその動きを止めることは出来る。だけどエアスラッシュを完封したあの盾がある限り当てることは不可能......)
華澄(......考えるのはやめよう。こうなったら火力を上げて粉砕する!)
スイッチを押す華澄。するとカメックスが光に被われた。
朱艇(なんだこれは? もしやメガシンカ技術は雅拉によって流されていたのか?)
朱艇(だけど俺はそいつの弱点を知っている......)
華澄(メガシンカが発動できるのは僅か1分。それを越えると機体はバラバラになってしまう)
朱艇(つまり1分間逃げ延びれば......!)
華澄(1分の内に蹴りをつけられれば...... !)
「『勝てる!』」
光が消えるとそこには、外見の変わったカメックスがあった。メガシンカの発動が完了したのだ。
華澄(ハイドロポンプ!)
朱艇(速い!)
シールドを取り出したエルレイドが攻撃を受け止めた。しかし水流は盾を貫通し、右腕ごともっていく。
朱艇(そんな! だがこれで終わると思うなよ!)
エルレイドは最後のミサイルを放ったが、カメックスの腹部を直撃するもまるで効いていない。
華澄(しまった! ミサイルの目的はカメックスの破壊ではなく反動を利用して素早く間合いをとること!? だけどどうして?)
朱艇(切り札は最後まで温存するに限る)
ボタンを押した朱艇。
華澄(そんな......どういうこと?)
朱艇(エルレイドの新たなる形態......それこそがこの分離システムだ!)
エルレイドが頭部、上半身、右足、左足に別れていた。頭部、上半身は宙に浮いている。
朱艇「一斉砲火!」
華澄『不味い! 殻に籠る!』
全身が開くとそこから現れたのは発射口。
放たれた高出力エネルギー波を懸命に耐える。
朱艇(いつまでそうしていられるかな?)
華澄『ふふふ......』
その場で回りだすカメックス。
朱艇(何を企んでいる? だが例え突進を仕掛けようと当たることはないと思うが......)
華澄(水圧の調整が勝利への鍵ね......失敗は許されない......)
華澄(渾身のハイドロポンプを受けてみなさい!)
華澄がレバーを引くとカメックスの四方から水流が噴出された。全方位攻撃となったそれをかわすことはできず、両脚部が最初に粉々になる。
朱艇(っち......だけどまだ手はある! あの攻撃は縦と横はカバーできても高さ、上下の動きにはついていけないはず...... !?)
朱艇の願いは無惨に裏切られた。
カメックスは回ることを止めると地面に向かって砲台から水を噴射し空中に飛びあがる。
朱艇(なに!? 突進なら防げるだろうが......いや待て......そろそろ時間だ )
華澄(殻に籠ってハイドロポンプ。これなら倒せるはず! あっ!)
メガシンカが解け、元の姿に戻ったカメックス。
四方にハイドロポンプをすることは出来なくなったが構わず突っ込む。
華澄『それならば! ロケット頭突き!』
朱艇(速い! こうなれば......)
朱艇「リーフブレードで迎え撃つ!」
カメックスの頭部とエルレイドの刃が激しくぶつかった。
華澄『うぐぐぐぐぐ......!』
朱艇「おおおおおおお......!」
朱艇(ここでメガシンカ! 胸部だけとはいえここで発動させれば勝ちは揺るがない!)
華澄(押されている......これじゃ......)
朱艇「誰かは知らんが優秀なパイロットだったと覚えておいてやろう」
朱艇はボタンを押した。するとエルレイドは眩しい光に覆われ......
華澄『メガシンカ? そんな......』
朱艇『ん? 熱い......まさか!』
機体は激しく爆発すると燃え上がる。
朱艇(何故だ!? まさか作業員の奴等も裏切っていたのか?)
「朱艇、この言葉を聞いているということはメガシンカのボタンを押してしまったか......」
朱艇(誰だ? いや......この声は翔太の部下の奴のか?)
区千葉「貴様は自分の地位を守るために、それを脅かす可能性のある者を次々と消していった。翔太さんもその一人......メガシンカ技術の原型を作ったのも翔太さんだった」
朱艇「そんなのでたらめだ!」
区千葉「我々は貴様の不当な処刑の証拠をすべて握った。翔太さんの件で証拠として挙げられた映像も加工に関わった者を洗いだし、すべてを吐かせた」
朱艇「なんだと? ふざけるな!」
区千葉「我々としては貴様がこのまま燃え付きようと悔いはないが、我々も鬼ではない。すべてを認めるのならば助け出してやろう」
朱艇「頼む! お願いだ! 認める!! 殺したのは俺だ! 何でもするから助けてくれ!」
区千葉「......」
朱艇「頼む! お願いします! あっ! 日が火がもうここまてで迫り来ている! 早くしてくれ!
区千葉「この言葉は事前に録音されていたものだ。従って貴様がどういった対応をしようと許すつもりはない」
朱艇「!? 嘘だ! ここから出してくれ!! 悪かった! 謝る! 助けろ!」
区千葉「加えてコックピット内には盗聴器を隠しておいた。それからかまをかけただけで証拠を握ったと言うのは嘘だ。貴様の最後にはお似合いの惨めさだな!」
朱艇「そんな!! 嘘だ! 俺はやっていない! 本当だ! 違う! ごめんなさい! もうしません! 嫌だ! 死にたくない! 俺はまだ死ぬわけには!!」
朱艇「死にたくない!!!!」
こうして朱艇はエルレイドごと業火に焼かれた。
一方でカメックスはその炎の影響はほぼ受けず、着地。
華澄『最後がよくわからなかったけどまあいいや』
カメックスは奥へ進む。
次回更新は3月31日です。