智「俺がパイロットに!?」   作:ぽかんむ

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立ち上がるオレンジのロボット

都内から少し離れたところに位置する小さなアパート。そこの一室に智(10)が独りで住んでいた。

 

 

智「ここをこうして......」

 

 

散らかった部屋の床にあぐらで座り、ドライバーでネジを回している智。趣味の電子工作に勤しんでいるようだ。

 

 

瀬玲奈「また何か作ってるの?」

 

 

鍵の開いていたドアからずかずかと足を踏み入れた彼女は瀬玲奈(10)。彼の幼馴染みで隣に住んでいる。

 

 

智「まあな。今度彼女にプレゼントをあげようと思ってるんだ」

 

瀬玲奈「ふーん。それなに?」

 

智「これ? 人工知能を持つ小型のロボットだよ。名前はプリン。見てくれはゆるキャラっぽいけど頭はいいんだからね?」

 

 

智はそういいながら半径7cmほどの球体型のロボットを見せた。

 

 

瀬玲奈「相変わらずロボット好きね......何か質問していい?」

 

智「何なりと」

 

瀬玲奈「今夜の夕食何がいい?」

 

プリン『今日はスーパーで鶏肉、卵が半額だからチキン南蛮は?』

 

瀬玲奈「凄い!」

 

 

感心しながら智にプリンを返した。

 

 

智「その程度で驚かないでよ。それはただの知識でしょ? プリンは思考力も抜群......」

 

 

突如地響きのような物が聞こえた一同。揺れはどんどん大きく、近づいているようだ。

 

 

智「なんだ!?」

 

プリン『危険 危険』

 

瀬玲奈「すぐに逃げよう!」

 

 

一目散に家を出て逃げる二人。そのとき目撃したのは18mほどの異形な姿をした"なにか"であった。

 

 

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"なにか"のコックピット内。

 

 

謙吾「我が軍最新鋭のモビルスーツ、エルレイドの性能は凄まじい! 負ける気がしない!」

 

オペレーター『今回の目的は我々の存在を広く知らしめる為の一種のパフォーマンスですので、徹底的に破壊活動をするのではなく広範囲に攻撃してください』

 

謙吾「了解!」

 

 

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智「あれは......ロボット!? 凄い......」

 

瀬玲奈「いいから早く逃げるよ!」

 

智「う......うん」

 

 

街を破壊するエルレイド。そこに戦闘機が三機現れ機銃で攻撃を仕掛けるがエルレイドの装甲に歯が立たない。

 

 

智「あれはなんだ?」

 

 

二人が走っていると前方にこれまた18mほどの大きさのものを発見。

智は直感からこれもロボットではないかと察した。

 

 

智「憧れの......夢にまで見たロボットが目の前に!」

 

 

今の時代工場などではロボットは日常的に使われている。

しかし幼い頃からガンダムやエヴァンゲリオン、スーパー戦隊を見て育った彼にとってロボットはただの機械ではなかった。

 

 

智(あれに乗ればあのロボットも倒せるかもしれない......)

 

 

思うが早いか智は瀬玲奈を置き去りに全速力で向かっていった。

 

 

瀬玲奈「ちょっと!?」

 

 

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智「何処に乗り込めばいいんだ?」

 

 

宛もなく各部分に触れていく智。何気なく腹部を触ったときつまみのようなものを発見。

 

 

智「ここからハッチを開くのか!」

 

 

大振りに開けた先にはシンプルにして洗練された空間が広がっていた。

 

 

智「もしや現実でこんな体験が出来るなんて......」

 

 

早速椅子に座りレバーを前に倒す。しかし動かない。

智も確かに違和感は感じていた。何故ならロボットは非常に動かすのが複雑、それをたかがクレーン車程度の操作で動かせるのは少し疑問だった。

 

 

智「......となると運転には別の要素が必要なのか? 例えばアシストするなにかとか......」

 

智「もしかして......人工知能!? プリン、運転のアシスト出来るか?」

 

プリン『まったく未知の領域のためわからない』

 

智「頼む」

 

プリン『了解した』

 

 

プリンが機械に働きかけるなか智は再度レバーを前に倒す。

するとオレンジ色の翼を生やしたロボットは立ち上がった。

 

 

智「立った! 凄い!」

 

 

オレンジの機体はややぎこちないものの、一歩一歩踏みしめるように前へ前へ進んでいく。

 

 

智「それにしてもあんなに立派な翼があったのに飛べないのかな?」

 

プリン『現状はまだ無理みたい。これは未完成品のよう』

 

智「なるほどね......」

 

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エルレイド内

 

 

謙吾「なんだあのモビルスーツは?」

 

オペレーター『モビルスーツ? 得体が知れませんし破壊してください』

 

謙吾「了解!」

 

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敵軍基地

 

 

オペレーター「敵軍のモビルスーツでしょうか?」

 

朱艇(しゅうてい)「だが大した性能ではないだろう。エルレイドとエリートパイロットの謙吾ならばとるに足らん」

 

慎司「......」

 

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オレンジのモビルスーツ内

 

 

智「あのロボットがこっちに向かってきてる! 望むところだ!」

 

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戦闘機Aコックピット

 

 

猛「あれはリザードン、どうして起動しているんだ? 一体誰が操縦しているんだ!」

 

猛「総員に連絡する。リザードンは敵に奪われた可能性があるから攻撃しろ!」

 

戦闘機BCパイロット「了解」

 

 

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三機の戦闘機はリザードンに対しても砲撃するも効果はない。

やがて三機は諦めたのか、戦闘から離脱した。

 

 

智「何だったんだ? うおっ!?」

 

 

エルレイドは両腕を刀のように変形させ降り下ろす。

プリンのお陰で何とかかわすも初めての感覚に動揺を隠せない智。

 

 

智「これが戦い......」

 

 

リザードンはエルレイドの腹部を殴ろうとするが腕で受け止められる。

両モビルスーツではリーチに差がありすぎた。

 

 

智「プリン! なにか手は無いの?」

 

プリン『待って......構造を把握しきれない......』

 

智「うわっ!」

 

 

エルレイドの蹴りが命中し吹き飛ばされる。その度に機体は大きく揺れる。もちろんコックピット内も例外ではない。

 

ついで左腕からの斬撃。慌てて腕でガードを試みるも切断されてしまった。

 

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謙吾「所詮は雑魚か! さっさとくたばりな!」

 

 

モビルスーツの扱いに手慣れている彼にとっては一連の流れも作業に過ぎない。

 

 

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プリン『あれ? これ......』

 

智「なにか見つけたのか?」

 

プリン『火炎放射機が搭載されてる』

 

智「それだ! ぶっぱなしてくれ!」

 

 

立ち上がれないリザードンに一歩ずつ近づくエルレイド。

そのとき口から炎が発射された。

 

 

謙吾「なに!?」

 

 

突然の、そして予想外の攻撃方法は判断の誤った謙吾にもろにヒット。その機体を燃やしていく。

 

 

智「やった......」

 

謙吾「ああああああああ!!!! 助けてくれ!!」

 

 

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オペレーター「そんな!」

 

朱艇「馬鹿な......こんなことあり得ない!」

 

慎司「なるほど......面白い」

 

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何とか死闘を征した智。そこへ先程離脱したはずの三機の戦闘機が現れた。

 

 

猛「リザードン、確保」

 

 

その合図で網のようなものが垂れ下がり、リザードンは囲まれた。

 

 

智「何々なに!?」

 

 

好奇心から勝手にロボットを操作してしまったことを今更反省する智。

このあと彼に待ち受けることなど誰も知らない。

 

リザードンを吊らし三機の戦闘機は何処かへと去っていった。




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