チートでポケモンのトレーナーらしい   作:楯樰

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ヒント:『好きだった』『両想いだった』
主人公はちゃんと言ってますよ?


人間だったらしい

「……好きですっていったけど、でもそれはそれ。別にシロナさんと恋仲になろうだなんて思ってませんよ? 恋人を作るとしたら――……俺にとってはやっぱりナツメちゃんなんで」

「あうぅ……」

 

ひとしきり泣いて思考が纏まったおかげか、冷静になれた。

やっぱりナツメちゃんへの想いは変わらない。

 

確かにシロナさんは好きだ。

だけどナツメちゃんには及ばない。

それでいいじゃない……責任をとるだとかとらないだとか関係ない。

 

誰かに好意を持つことは自由なのだから。

 

……よし、理論武装完了。

抱きついてきているシロナさんを引き剥がす。

――にしても言いたい事言えて少しすっきりした。

 

『悪い奴だな、ご主人』

 

うるさい。

 

「……さ、ご飯食べに降りましょう。在らぬ疑いをかけられても面倒ですから」

「うぅ……! トウカ君ってホントに酷い人…!」

「何とでもどうぞ。嫌われることは覚悟してますんで。むしろ嫌ってくれたほうが楽で良いです。俺も嫌いになれますんで」

「……でもそんなところも」

「あーあー! 聞ーこーえーなーいーっ!」

 

シロナさんから逃げるように、俺は扉から飛び出て食堂に向かった。

 

 

「……絶対に諦めてあげないんだからね、トウカ君」

 

シロナさんのそんな言葉が聞こえた気がして、ぶるりと肩が震えた。

 

 

「……私の事悪女だ妖女だっていってるけどさ、あんた私よりよっぽど非道いわよ」

「……もっとこう、慰めてくれてもいいんじゃなかろうかメイドさん」

「そんなことするわけ無いじゃないの……お皿下げるわよ」

「……おう」

 

ふわふわと浮いて幽霊幼女が台所にいるミツバさんのところまでお皿を運んでいく。

早速新しい体にも環境にも慣れたようだった。

あ、そういや渡すものがあったんだけど……アイツ何処行ったんだ?

 

『ご主人、アイツならテレビの中だろ?』

『いえ、なんだか最近は研究員に悪戯して可愛がられてるらしいですよ? アイツら怖いって助けを求められました』

 

悪戯しようとして逆につかまったのか。可哀相に。

……というか、あいつら凄いな。下手したら死んでしまう電気量だってのに。……変態は恐い。

 

『ひっぅ……変態こわいよぉ……』

「あ、いた」

 

ふらふらと左右に揺れながらやってきたのはプラズマポケモン――名前をロトム。

それなりに長い間この屋敷に憑いているらしい彼は満身創痍の様子で、俺の目の前に来て早々前のめりに倒れた。

 

『なんで僕の体触っても平気なんだよぉ……あいつらぁ』

「まぁ、うん。なんかごめんな」

『……そういって僕を抱えるお前もだよッ!』

「よしよし……辛かったなぁ」

『無視なの!? ぐぅ……不覚にも気持ちいいのが許せない……っ!』

 

ピカチュウの電撃に慣れてる俺としてはロトム程度の電気ぐらいじゃ屁でもない。……ピカチュウのせいだ。

 

『私のせいにするな。……というかお前! 新参者の癖にご主人のひざの上にっ!』

〈そうだぞー! うらやまけしからん!〉

〈……う、うらやまけしからん〉

〈うらやまけしからーん〉

 

なんでか珍しく寡黙なミュウも含めてエスパー三匹が口々に言う。

……ミュウの二匹はまぁいいか。

ただ、最近進化したメタグロスよ……お前が乗ったら俺は圧死する。

体重を考えなさい体重を。

 

〈姉さん兄さん……父さんが冷たい……〉

〈元気をだして!〉

〈……なんで私が兄さんなのか甚だ疑問なんだけど〉

〈はぁ……大きくなったせいかなぁ……〉

 

相変わらずエスパーの三匹は仲がよろしいようで。

おぉ、そうだった。

 

「ほい、ロトム。取り返してきてやったぞ」

『あ……』

「お前の日記に……こっちはどれだかわかんないけどモーターな」

『……えっと、ありがとう?』

「何で疑問系なんだよ……」

 

持ってきてた鞄の中から取り出したのは、ギンガ団ビルを襲撃して手に入れた五つのモーターと古ぼけた日記帳。

……モーターの内一つは大切に持っていたらしいロトムのモノで、日記もまたロトムが持っていたもの。

いや、正確には――ロトムが生前から少しの間書いてた日記。

彼が友人と出会った頃からの事が綴られているのだ。

 

『いや、だって――もうあんまり覚えて無かったから』

「……そっか」

『でも、……うん。ありがとう』

「じゃ、約束通り……俺たちに協力してくれよ?」

『うぐぅ……まさか本当に取り返してくれるとは思って無かったのに……しまったぁ…!』

 

そう――このロトムは元々人間だったらしい。

トモダチになったロトムに誤って殺され、ロトムの特殊な電気を帯びた彼はそのままロトムになってしまった。

そしてその友達らしいロトムが急にいなくなってから、ずっとこの洋館にくる人たちをあの二人と驚かせて遊んでいたのだそうだ。

 

……その友達のロトムとの思い出の品を大切に持って。

 

でもあの素敵ファッションの方々何人かを引き連れてやってきたプルートが……偶々ロトムが落としたモーターと日記帳を拾って持って帰ったらしい。

それであのギンガ団ビルで研究をして何者かに襲撃されたという経緯だった。

 

それにしてもその何者かって……一体誰なんだ…!

 

『ご主人だろ』

 

……野暮ったい事言うなよピカチュウ。

 

ロトムの精神疲労を 『トキワの能力』で取ってやっていると目元の紅いシロナさんが降りてきた。

……まともに顔を見れず、気まずくなったのは言うまでも無い。

やっぱり辛いよー! ……ヘルプミー! ナツメちゃーん!

 

あとちょっと肉食獣のような目になってるのが恐いよー…!

 

 

 

 

「……はっ!? トウカ君に助けを求められた気がする……」

「はいはい。惚気は結構ですからねー」

「ちょっとエリカ酷い! ホントなんだってばー!」

 

-------------------------

 

さて、早いものでシンオウに来て一ヶ月が経った。

 

その間日常面では、割とまともに仲間になったロトムがピカチュウの指導を受けて、ウチの炎二匹同様、恐ろしいレベルアップを見せていたり、ピカチュウが余っていた四つのモーターで作った新しいモーターが恐ろしい特性を持っていたり。

後はメタグロスが6Vらしく相応に強くなってきていたりと微笑ましい成長を見せていた。

……でも一番普通なはずなのに周りに埋もれてしまって地味に感じてしまうのは如何なものか。

 

とりあえずピカチュウは自重しろと。

 

それから研究面での事。

一つがイーブイの新しい進化系統(リーフィア)の発見。

……大きな発見なのか、それとも多大な進化の可能性を秘めているイーブイとしてはそこまででもないのか疑問だが、遠征の大義名分は一応果たしたと言えるだろう。

 

それから二つ目。

多分これが一番の発見だと思われる――ゴーストタイプについて、だ。

 

先住居者のポケモン達、あと幽霊の二人にも協力を仰いだ結果わかった事なのだが――幽霊はポケモンでいうゴーストタイプに分類されるらしい。

 

いや、正確には幽霊の中にゴーストタイプが含まれると言ったほうが正しい。

 

……幽霊に『格闘タイプ』に分類される「波導」が効き、何故ゴーストタイプのポケモンに効かないのかは『魂』がむき出しか否かにあった。

――魂……つまり波導でいう『内気』を生み出すの存在になるのだが、これが『気』によって保護されれば効かなくなり、保護されていなければ格闘タイプが効くようになる事がわかった。

つまり幽霊の二人はポケモンの技、「みやぶる」及び「かぎわける」を使われたゴーストタイプの状態なのだそうだ。

だから格闘タイプのはずの波導が効いている、ということだった。

 

ともかく魂の保護が行われていない状態は危険、ということで「気」を扱えるようにするためにシロナさんの下、波導の基本を学んでいる。

しかしうまくいかず現状打開策を思考中だ。

なんでも内気の量が少ないんだとか。

 

勿論魂云々の話は口の堅そうなシロナさん、幽霊のメイドと執事の二人にしか知らせてはいない。

……だが、ちょっと世界的に大問題になりそうな発見であることは間違いない。

 

で、一つ問題なのがゴーストタイプのポケモンと幽霊の違い。

どう区別するべきかと問われたら、まずそれは魂の保護が出来るか否かになる。

 

つまり「内気」が多いか少ないかの違いなわけだ。

 

それから、

『内気が少なすぎればそのまま黄泉の世界に行ってしまうが、内気がそれなりに多く強い未練があれば幽霊になる。そして内気が途方も無く多く、未練があり、なんらかの外的要因があればゴーストタイプのポケモンになるんじゃないか』

……というのが自分の仮説。

 

例えば元人間のロトム。

彼の場合はロトムを驚かせてしまった事を後悔(、、)していた。

そしてロトムの電気を浴びて死んでポケモンになった。

 

――つまりロトムになったわけだ。

 

了承をとって試しに波導で攻撃したが勿論効かない。

しかし彼に波導の基礎を教えてみたが……「気」は操れなかった。

幽霊の二人ですら多少操れるはずなのに、だ。

 

逆に考えれば、

 

『ポケモンになり、ゴーストタイプという特性が付いたために気が練れないのではないか』

 

……ということ。

 

それなら納得も出来るのだが……何せ人からポケモンになったという事自体がまず無い。

……つまり検証の仕様がないのでお蔵入りになった。

 

 

「……と、結果が残せなきゃ意味無いんだけど」

「……そうよね。私も何度証拠が無いから認められないと言われてきたことか」

「!? 何で俺を抱いてるんですか!? つーか何時の間にぃっ!?」

「トウカ君がレポート書き始めてからだけど?」

「は、ははっ……なんか、もう……いいです」

「……♪」

 

あとそれから……最近シロナさんのスキンシップが激しい。

それから自重という言葉を忘れてきてるようなんですが……マジで勘弁して。

やっぱり俺も女の人って少なからず意識してるから辛いんだよっ!

 

うぅ! ナツメちゃんに会いたい…っ!

 

「……シロナさんの変態めっ。こんな子供の何処がいいと言うんだ…!」

「……全部?」

「このショタコン! 恥じを知れ!」

「……別にいいじゃないのショタコンでも……トウカ君だけなんだしぃ~」

 

あぁ、もう! この人吹っ切れやがった!

うわぁあああん! 頭が柔らかいものに当たって気持ちいいって思う自分が嫌だぁ…!

 

 




※ハーレムタグは入れない。これはハーレムではないから。

▶主人公のご卒業がアップを始めたようです。

とりあえず、不安に思ってしまった方ごめんなさい。
今後の課題は如何にシロナさんの魔の手から逃れることができるかです。

というわけで次回から「シンオウ地方後編」。
ようやくカントーへ戻れる折り返し地点になりました。

尚、ゴーストタイプ+ロトム云々の話は完全に捏造設定で盛ってますので色々と矛盾点があるかと。
その程度許してやんよ、というような寛容な心でお願いします……。

それとロトムについての日記は何処かにまとめサイトがあったと思いますので詳しくはそちらで。
詳しく書けずごめんなさい。

ではではまた次回。


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