チートでポケモンのトレーナーらしい   作:楯樰

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美人らしい

ポケモントレーナー、ゲン。

かつて自分がみた映画の登場人物で、映画を通して初めて伝説以外での主役ポケモンとしてその姿をなしたルカリオの主人たるアーロン。

ゲームで初めてポケモントレーナーたる、彼のその姿を見た時は「あのアーロンでは無いか」と勘ぐらせ、思考の渦に陥れてくれた。

 

なんせ被っている帽子、服の色……と、等々共通点が多すぎる。

年齢も不明な事も、やはり勘ぐらせる。

 

 

その人が今、ルカリオと共にバトルを目の前でやっていた。

相手はハガネール。

今は既に相手は気絶しており、何処かしびれている様子。

何かしら近寄って、殴った様子では無いにしろ触れて力を込めていたようなので、あれは発勁だろう。

 

……やっぱり、ルカリオはカッコいいな。

 

「んー……やっぱり誰か見てるな。……出てきなよ」

「え…?」

 

思考に耽っていたにせよ、自分は死角に居る。

なんだけど…………なんで分かったんだろう。

しかしまぁバレているのなら隠れる必要も無い。

疑問に思いつつも彼の前に姿を見せる。

 

「ほー……てっきり大人のような気がしたんだが」

「……こんにちわ」

「そうだね、こんにちわ。……きみ、名前は?」

「トウカです。あなたは?」

「ゲン、と呼んでくれ。……なんだか君から感じる波導は成熟したそれのように思うんだが……」

 

……はどう、ね。

やっぱり本人なのかな。

 

「気のせいでは? えっと“はどう”ってなんですか?」

 

少しとぼけた振りをして、聞けるようなら聞いてみよう。

……ちょっと使ってみたいっていうのがホントの所だけど。

 

「…………まぁそういうことに事にしておこう。どうやら赤の他人の僕が気軽に触れて良いようなことでも無いみたいだし」

「それも波導で分かっちゃうんですか?」

「ははは、まぁそうかな。……にしても君は知って居るだろう? 波導が何なのかを」

「いやぁ……“みずのはどう”とかポケモンの技くらいですかね?」

 

こ憎たらしい小僧だと自分でも理解しているのだけど。

……にしても俺、初対面の人にこの対応は無いんじゃなかろうか。

 

「ぶっ……ハッハッハ…! 面白いな、君!……!」

「……はぁ……ま、いいです。今に分かった事じゃ無いですから。というか考えてる事勝手に読まないで下さい」

 

初対面の人に考え読まれて笑われる自分……ないわー…。

 

「ふぅ……わかったよ。悪い人間じゃなさそうだし、君になら教えても構わないかな」

「波導を?」

「あぁ。……でもトウカ君。分かっているとは思うが使い方には十分留意してくれ」

「……はい。やはり呼ぶのはゲンの方がいいんですか?」

「さて、なんのことやら……」

 

……とぼけてはぐらかされた。

気になってたのになぁ……。

 

「ははは! ……まぁ、君の考えている通りだと思ってくれて構わないよ。じゃ、触りだけ教えておこう」

「……よろしくお願いします」

 

そうして船が来るまでの短い間。

俺とゲンさんは師弟の間柄になった。

 

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――さて、波導使いとしての教えを請い、それから一時間後。

現在の俺は船の上。

ゲンさん指導を思い返しつつ横になっていた。

 

教えて貰った波導の二通りある方法の内、一つを教えてもらって。

それは、神様転生の特典なのかは分からないが、馬鹿みたいに自分の中にあるらしい波導の源である『気』を直接使う技術。

「努力」に重ね、熟練した彼の指導あってなのか、ものの五分程でコツが掴めて習得。

 

この方法はポケモンの『はどう系の技』に通じているらしく、波導弾が出来るとゲンさんに説明され、実際に見せてもらった。

……アレは感無量でござった……。

自分でも出来無い事は無い。

しかし、おそらく後三日くらい頑張らないと出来そうに無いので精進せねば。

 

そして聞いた、思わず目を丸くさせてしまったもう一つの方法。

口頭で説明を受けたが、俺にとっては驚愕の事実ばかりだった。

 

それは、ある特殊な呼吸法で空気中の『気』を練り上げ、波導を体に流して使う方法。

この方法は基本的に『気』の量が多い俺や師匠であるゲンさんには必要の無い方法で、今回教わらなかった。

その概要とは、身体能力や治癒力の向上。

挙句には細胞の活性化により、体を若く保てるという恐ろしい技術だ。

ただ、才能ある人間でも習得にはかなりの時間が必要になる、と一応その技法を収めているゲンさんから聞いた話だ。

 

……。

 

……はぁ。

いや、なんとなく似てるな、とは考えてはいたけども。

教わらなかったがどう考えても例のアレ(・・)

やりたかったけど時間も無い事だし遠慮した。

 

 

〈……で、なにやってんの?〉

「…………この世界ってなんなんだろうな、と」

〈?? ……まぁ、とりあえず船降りたら?〉

「……うん」

 

ミュウに言われて船を降りる。

降りてすぐ、右手には巨大な建物……ミオジムがあり、さらに向こうにそれなりに大きい建物が見える。

確か……図書館だったけ。

割とシビアな内容の本が多い図書館だった気がする。

 

……と、泣いて研究員胴上げされて喜ばれる最中、場違いな事を考えていた。

どさくさに紛れて、ちょっと自粛しないといけない所を(まさぐ)ってきた変態には鉄槌を落とした。ご愛嬌である。

 

てめぇら、今度は波導混ぜてやっかんな!

 

-------------------------

 

船から落ちた時、割と真摯に「心配した」と言われて恥ずかしくなった一件も終わり。

研究員共々、空を飛んで目指したのは南東。

お爺ちゃんの大学時代の先輩、ナナカマド博士の研究所へ歩を向けた。

 

「なぁ、離して」

「「無理です」」

「……くれないのね」

 

と、過保護に手を引かれながらだ。

……良いじゃないか、帰ってきたんだからさ。

 

「……ん? 誰かいますね」

「あ、ホントだ……後姿は美人」

 

隣の二人がナナカマド研究所前に居る、後ろ姿からして恐らく女性に気づく。

帽子をしていてよくわからないが、(うなじ)の部分で判断するに、多分金髪の人。

……例の、比較的まともな二人に引き連れられている、リトルグレイのような自分は、ある人を思い浮かべていた。

 

振り返った彼女はこちらに気づいたのか、近寄ってくる。

顔は、変装用なのかぐるぐる眼鏡をしていて良く分からない。ただ端正な顔立ちだという事は分かる。

 

「えっと……」

「こんにちわ。……君が噂の博士君で間違いないかな?」

「……はい。アナタは?」

「えっと、ナナカマド博士に『来なかったら迎えに行くように』って頼まれたの。……でもちゃんと来てくれたから良かったぁ」

 

……?

 

「なぁ、お前たち……俺が船から落ちた事ナナカマド博士に言ったのか?」

「えぇ連絡しました」

「……自力で帰ってきた事は?」

「……すみません」

言って無いのね……まぁいいけど。

 

「……えっと態々有り難う御座いました……名前を伺っても?」

「そんな畏まらなくても……ま、いっか」

 

彼女は眼鏡と帽子を取り、中に仕舞っていた髪を降ろす。

 

「……私はシロナ。ポケモンに伝わる神話を調べている物好きなトレーナーよ。よろしく、博士君?」

「――――」

「……室長、急に固まってどうしたんですか」

 

――いや、シンオウチャンピオンを前にして固まるなと言う方が無理だろ……。

 

 




主人公強化回。
例のアレは……ジョジョと言ったら分かるだろう?
共通点は多いと思うのです。

皆さんご期待の彼女が登場。
デレるか否かは作者のみぞ知る。

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