目の前の黒い方。
新月島を縄張りとしているらしく、追い出すために眠らせ悪夢を見せようとしてきたのだが上手く行かず。
精神攻撃をレジスト出来るようになってた俺に、目の前の方はお怒りになっているというわけなのだが…。
「……ちょっと静かにさせて、ピカチュウ」
『? ……了解』
〈な、なんだ! 黄色いねずm……!〉
いやぁ、怖い。
ホントにピカチュウ怖い。
悪夢見させてくるより怖いわー。
めだかボッ○スの都城○土だもんな。
それに加えて、とある第五位とか……洒落なんないです。
……まぁ良識があるぶん控えてくれてはいるけども。
「さて、黒い方。此処はあなたしか居ませんか?」
〈……(ブンブン)〉
親切なことに黒い方は勢いよく返事をしてくれる。
いやー優しいわー。
勿論結果は予想通りイエス。
「じゃあ次は、鉄が沢山とれる島ってどっち?」
〈……(フイ)〉
プルプル震えながらも腕で指さしてくれた。
それにしても全身震わせて寒そうだ。
自分が寒いにも関わらず親切にしてくれるなんて、ホント優しいなー……。
〈……〉
真っ黒な身体が青ざめているように見える。
……。
「……ピカチュウ解いてあげて」
『はぁ……《戻れ》』
〈アァ……こ、怖い……〉
黒いお方。
ダークライさんはピカチュウに恐怖したみたいだ。
……無理も無いかもしれないが。
「……いやうん、ごめん。ダークライ」
〈うぅ……怖いよぉ……〉
ダークライはヘナリと力無く地面に座りこむ。
『それにしても……なんたって急に苛々し始めたんだ、ご主人』
いや、ね?
ダークライには苦渋を飲まされてまして。
……くそぅ。今思い出しただけでも腹が立つ。
アイツ、ダークライで何度も完封しやがって……。
あともう少しだったってのに…!
『訳が分からん……が、とにかく誠心誠意キチンと謝るべきだと思うぞ』
「……うん」
〈こわいよぉ……クレセリアぁ……〉
新月島の開けた空間。
ダークライは泣いていた。
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ダークライ。
その存在は第四世代初期……ダイヤモンドとパールの時から確認されていた。
本編中でこそ登場はしなかったものの、今回向かっていたミオにて悪夢にうなされている少年が居た。
その子を救うために満月島……先ほど居た場所で三日月の羽根を手に入れに行くイベントで、それらしき存在は確認されている。
ダイヤモンド・パールでは通常手に入らないものとなっていたが、ある方法を使えば出会う事が出来るため捕まえれた。
その方法は――いや、これ以上はよそう。
あの場所もあの方法も。
……悲しい事件だった。
さて。
先ほどの三日月の羽根の持ち主、クレセリア。
彼女、は元来ダークライに対なすものとしてポケモン関連のゲームでは描かれている事が多かった。
それなのに。
〈ひっく……くれせりあぁ……〉
〈泣かないの! まったく。何時になったら……〉
急にやってきたと思ったらなんでダークライと幼馴染的なやり取り交わしてんだよ。
あれか。ポケモンって皆こんななのか。
ウチの炎二匹みたいに。
『ハァ……』
ピカチュウも頭を押さえて溜め息ついてる。
……いや、なんで俺の方見てもう二回目の溜め息つくかな?
明らかに俺にも呆れてる感じなんですが!
――あ、まさか。
ピカチュウお前俺がこの二匹、捕まえようとしてるだろうなぁ、とか考えてるだろ。
『……当たり前だろう?』
いやいや。
俺もそこまで外道じゃ無いって言うか……ねぇ?
『……今までの行動を振り返ってから言ってくれ。なぁご主人』
グフゥ……反論できねーですたい。
いやぁ、うん。ダンバルだけだもんなぁ……まともに手に入れたのって。
あぁいや、元メタモンもか。
思えば碌にポケモンバトルもして無いし。
してるとすれば手持ち達での大乱闘くらい。
……思考が反れた。
「……そのなんだ。ダークライ」
〈ひっぐ……?〉
「怖い思いをさせてしまって済まなかった。……完全に八つ当たりだった」
〈? それはどういった……〉
「いや、うん。……ダークライに似た奴に色々と恨みつらみがあってな」
頭を下げて謝る。
クレセリアには似た奴と言ったが、ダークライ自体に恨みが……。
いや、よそう。言っても
〈……そうですか……もう! アンタもくよくよしてないの!〉
ダークライをクレセリアはど突く。
落ち着いた様子のダークライは恥ずかしげにしていた。
〈……わかったよ……許してやる〉
〈ん? まだなんかあるでしょう?〉
〈こちらこそゴメンなさいっ!〉
なんか尻に敷かれている。
強く生きろよ、と言いたくなったがそんな事言える立場じゃ無いのでやめとく。
…………夫婦って、大体奥さんの尻に敷かれてる所が長く続くって聞くよ、うん。
夫婦漫才を繰り広げる二名に別れを告げ、メタングに乗る。
――そういえばダークライって性別なかったよな、と思い出すも気のせいとする。
目指すは、島自体が大きな鉄山であった島。
岩と鋼ポケモンのアイランド……こうてつ島へと宙に浮いた。
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こうてつ島に向かう途中、メタングのスタミナ切れという思わぬ事態が起こった。
幸いにもピカチュウ、ミュウのおかげで海上で墜落ということにはならなかったが、少々心臓に悪かった。
それと言うのも、何処かの電気ねずみさんがミュウがバリアーを張り、メタングへの搭乗者が固定されている事を良いことにレールガンの要領で進んだからだ。
バリアーによる保護によるため摩擦抵抗が無く、あるとしても空気抵抗のみであるために、ほぼ初速のまま。
Gは幸いにも掛からなかったが、それでも恐かった。
だってピストルの弾より速いんだぜ、あれ。
銃弾は、空気抵抗摩擦抵抗etc...と色々と初速より遅くなるが、ピカチュウによるレールガン改はそんな事知ったこっちゃ無い。
……思わぬ所で音の世界を体験したよ、うん。
ちなみにブレーキは普通に掛かった。
まぁそんな滅多と無い体験をしてやってきた此処、こうてつ島。
そのままミオに行けば良かったのだろうが、目立つのは避けたいため、こうてつ島から船に乗せてもらう事にしたからだ。
船着場に行って、次の便で乗せて貰うようにしたのは良いものの、少々手持ち無沙汰に。
……ちなみに、お前さんみたいなガキを連れてきたかなぁ、と船乗りのおにいさんに言われたが、誤魔化したのでよしとする。
さて。
それはそうと、こうてつ島にはある人物がいる。
ポケモンのゲームの中で多々ある逸話の内の一つ。
ポケモントレーナー――ゲン。
ある人物と同一人物では無いか、と
リオルの卵をくれるその彼が――……相棒らしきルカリオと共に、今目の前でバトルをしていた。
タイトル詐欺にあらず。
幼馴染とは本人達は言ってない。
馴染み深い仲であるのは確か。
馴染みと言えば安心院さんを思い出した。
ナツメちゃん可愛いよナツメちゃんっ!(自己暗示
…………でも彼女は可愛い。