今回からR-15タグ入れて行きます。
同衾らしい
段々と「温かい」から「暑い」に変わってきた日頃。
麦わら帽子を被ったナツメちゃんと手を繋いでカイナシティを歩いていた。
後ろには数人の研究員の姿があるが、いつもと少々様子が違った。
こんな様子を研究員に見られれば、水を得た魚のように茶化されることが必須だと思っていた。
……が、何故か彼等は、なにやら老衰した風でこちらを見ている。
現に、いつもならばカメラのフラッシュ音が連続でしている所、こっちむいて~と態々声をかけてき、まるで旅行に行った時の母親と父親のような様子だった。
そう、簡単に言うといつもの奴らの異常性が鳴りを潜めていた。
個人的にはずっとこうしていて貰いたいものだが、きっと恐らく無理だろうと予測する。
……だって暑さで頭をヤられているだけだろうから。
擬似的な賢者モードというか、なんというか。
それを証拠に目が虚ろだ。
きっとあの様子だからカメラで撮った写真もぼけている。
正気に戻った所で……あ、いや狂気に戻った所で嘆くのが目に見える。
「トウカくーん?」
「……あ、うん。どうしたのナツメちゃん?」
「ボーっとしてたよ。考え事?」
「あー、うん。ちょっとね。何か用でもあった?」
「ううん。何でもないけど……暑いからちょっと喉渇いたな、って今思った」
「そっか。自販機でなにか飲み物買おうか」
「うん!」
嬉しそうに笑う彼女は少し汗ばんでいる。
今日は気温も高ければ湿度も高いジメッとした日だ。
そんな暑い中手を繋いで歩けば、互いの体温で手は濡れる。汗で。
ちょっとその姿に劣情を抱いてしまう汚い大人の自分が嫌だと思う反面、こんな環境でも手を繋いでくれている事が嬉しいのは、惚れた弱みと言うかなんと言うか。
……支離滅裂だな、自分。
俺も頭ヤられてるのかもしれない。
「トウカ君何飲むの?」
「サイコソーダかなぁ……ナツメちゃんは?」
「じゃあ私もサイコソーダかなぁ……全部飲めないから半分貰ってもいい?」
「……うん」
俺バカだなぁ、と思いながら、こちらを見て来るナツメちゃんに微笑み、自販機へと二人で向かった。
カイナシティに我々の船が入って二ヶ月。
丁度ホウエンを出る日。
昼前に行ったナツメちゃんとのデートだった。
……ナツメちゃんに残りのサイコソーダを渡して、関節キスじゃん、とドギマギしたのは本人には内緒だ。
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船着場でマユミさんと別れの言葉を交わし、拠点の管理を改めてお願いして船に乗った。
ただ、まずは船長さんと相談。
ナツメちゃんと言う若干名が増えたためだ。
しかし船長さんからの返事は難しいようであった。
本人がテレポートが使えれば良いんだけどねー。
「やっぱり帰れないのナツメちゃん?」
「ごめん。帰れないみたい……」
そう謝るナツメちゃんはまじりっけなしに、やはり帰れないみたいだ。
思いあたる理由を聞いてみると照れながら、「トウカ君とまだ一緒に居たいから……かな?」との返答が。
ついつい思わず抱き締めたくなったが、抑えた。
「いやいや。気にする事は無いぞ。いやしかし……むう……乗せてやりたいんだがなぁ」
「……船長さん、なんでダメなんでしょう?」
「スマン……空いている部屋が無いんだ」
あー、それで難色を。
……どうしたものか。
「――お、そうだ。子供なら一人部屋に一人増えて「わぁああああ!」……何で駄目なんだ」
「いや、だって……その……」
「トウカ君?」
……解決案はあるのだ。
ナツメちゃんと同室になるという、生殺しのような案が。
いや、他にも俺が他の研究員のところと一緒に寝れば問題はなくなる……が、そうなったら今度は俺の身が危ない。
既に奴らは正気という名の狂気に戻ってやがるから。
「あーなるほど。……お嬢ちゃん。「ダメェエエエエ!」うるさい! コイツの部屋に入るかい?」
「え」
「ぅあ……そりゃないよぉ。嬉しいけどさ。嬉しいけど……」
「えっとそれは、船長さん。……トウカ君と同室…?」
「おう!」
「えっと……あの……はい、お願いします……」
駄目だ。終わった。
俺の理性、持つんだろうか…?
――というわけでやってきた、俺に宛がわれた部屋。
元々一人部屋だったため子供の俺にとっては広いが、今は凄く狭く感じる。
なんだこれ。
「えっと……不束者ですがよろしくお願いします……だっけ?」
「止めてぇー! 何処で覚えてきたの!? なんでベットの上で三つ指立ててるのナツメちゃん!」
「エリカが、えっと……好きな男の人と寝る時はしなさいって……」
あの怖い名門お嬢様の仕業か!?
ヤる事ヤって責任取れと言う事か!
確かに随分待たせたみたいだけどさぁ……でもそんなこと十三歳の子供に教えんなよ!
「トウカ君……男の子だよね?」
「なんで聞くかな。……ついてるよ。ナツメちゃんのお父さんと同じように」
「え、あ、うん……なら言わないと……」
「違うの! 使いどころが!」
「そんな怒らなくても……」
あう。
ナツメちゃん泣きそうになってる。
はぁ……怒鳴りすぎた。
「ナツメちゃんに怒ってるわけじゃないんだよ。……ただそんな事教えてた人に怒ってるんだから」
「うぅ……エリカに…? ぐすっ……三つ指立てて言うのってどういう意味なの?」
「え゛……あぁいや、それは……ナツメちゃんのお母さんに聞いて」
「……お母さんも私にするように電話で言ってた」
「お母さーん!?」
……やだ。なんだか外堀埋められてるような……。
いや、でも一回会っただけだよな? エリカ……さんと言いあのお母さんと言い。
なんで親+友人公認になってるんだ。
「はぁ……なんか一周して落ち着いた。そんな事してないで寝よう、ナツメちゃんも」
「え……その、……うん」
二人ともベットの隅に寄って少し離れて寝た。
眠ってる最中、抱きしめられた気がしたのは、きっと夢の中での出来事だった。
タイトル詐欺じゃないよ。
だって一緒に寝てるし(笑)
ぐいぐいと押してきてるナツメちゃん。
色々と危うかったり。
というわけでホウエンが終了。
ちょっと寄り道してシンオウです。