「……どうしたの?」
考えをまとめ、とりあえず彼女の話を聞く事にした。
こんな所で泣くにも理由があるだろうし。
「……ひっぐ……ん……私ね、嫌われてるの……」
誰に? と口からでそうになったのを抑えて話を聞く。
「……みんなに『気味が悪い』って。……『化け物』だって」
「……それで?」
なにやら物凄い地雷を踏んだ気がするけど……気のせいだよね?
「……人の心が読めたり……聞こえたり。……手で持ったりしてなくても物が浮かんだり。お父さんは『お前は人には出来ない事が出来る』って。……でもこんな力、好きで手に入れたわけじゃないのに……うぅっ」
さっきより声を上げて泣く女の子。
オロオロとしているわけにもいかないので背中をさすってあげながら泣き止むのを待つ。
周りを見れば、さっきまで聞こえていた人やポケモン達の声が遠く聞こえる。
離れていくのは当たり前か。……うん。
可愛い女の子が泣いてるし。それを俺が慰めてるし。
……近づき難いわな。
「…………ありがとう」
「うん? 泣き止んだ?」
顔を上げた女の子は泣いてたので目のまわりが赤くなっている。
正面から見ると……やっぱり可愛らしい顔をしている。
将来美人さんになる事間違い無しって顔だ。
「…………恥ずかしい……」
「あれ? 僕、何か言った?」
今度は頬を染めて赤くなる。
……なんか言っただろうか? 俺。
「……私、人の心の声が聞こえるんだよ?」
「――あ」
うわ、失敗した。この子人の心の声聞こえるんだった!
可愛いだとか将来美人になるとか何言っちゃってんの俺!?
いや、嘘じゃないけど! 本心からだけど!
でも本人目の前にして言う事じゃないよー!?
「もーやめてー! 聞こえてるよ!」
「うがー! 何やってんの俺ェー!」
ほんのちょっとの中こんな感じに続いた。
でもすぐにどっちからともなく、二人して笑った。
無心無心無心。
「自己紹介しよう。君の名前は?」
「……私の名前はナツメ。えっとトレーナーズスクールに通う七歳。……君は?」
まだちょっと笑ってた時の余韻が残っているのかまだ涙の後はあるが、さっきよりかは明るい顔をしている。
そんな無邪気なところも可愛らし……っていかんいかん。また同じ事になる。
無心無心。
「僕……いや、精神年齢高いの分かってるみたいだからいっか。俺の名前はトウカ。五歳……それと超能力が使えます!」
「……嘘だよね?」
何に対して嘘と言ったのか分からないけど……どっちもホントのことなんだけどな。
「……その超能力が使えるって言うの」
「うーん……一番いいのはポケモンがいれば分かりやすいんだけど……」
「……家にケーシィいるけど、来る?」
俺が言うと女の子……ナツメちゃんは考える人みたくなって、言った。
幾ら元気付けるためとはいえ、なんだか騙してるようで申し訳ない気持ちになる。
超能力と言うか特殊能力だからなぁ……あ。
「――特殊能力?」
「……聞こえた?」
「うん……でも怒ってないよ? 私を元気付けようとしてくれたのはわかったから」
そう言って少し残念そうに笑う。
「みてみたい。トウカ君の特殊能力……だめかな?」
「そっか。……うん、それでもいいなら」
ちょっと空気が悪くなりながらも、ナツメちゃんの後に続いて家に向かった。
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ポケモンセンターの近くにナツメちゃんの家はあった。
表札には『エスパー親父の家』……と。
…………。
どうしよう。
凄く入りたくない……というか確かサイコキネシスの技マシンをくれる所じゃなかったけ?
「……良く分かったね。お父さんサイコキネシスの技マシンを作った人で、偶にくれたりするんだよ? ……まぁ、基本いいお父さんなんだけど」
なんだかナツメちゃん、すっごい苦笑いしてるんだけど。
「……あはは。ちょっと待ってて。部屋片付けたら呼びに来るから」
そういってナツメちゃんは家の中に入っていった。
…………もう考えてもいいか。
さっきまで思考駄々漏れ状態だったからまともに考えられなかった。
やっぱりナツメちゃんって……未来のヤマブキジムのジムリーダーナツメだよな。
結構ポケモンの中でネタにされてたけど。(女幹部みたいだとかSM女王っぽいだとか)
確かにヤマブキシティに住んでるから出会ってもおかしくは無いと思ったけど……幾らなんでもエンカウント早いよ……。
どーしよ。
このポケモンの世界……元々ゲームだとかアニメの世界だったなんてことが知れたら……どうなるんだろうか。
俺が転生者だと言う事、この世界の事。
知られないためにも、俺も超能力を使えるようになって読まれないようにするべきかな。
それかいっそのこと打ち明けるべき?
でも多分黙っていても、きっと俺の事だ超能力使えないと……ボロが出るに決まってる。
長い付き合いになるような気がするし……覚えるべきか、早めに打ち明けるべきか……。
「もういいよー……ってどうしたの? そんな難しい顔して」
「……ううん。なんでもないよ」
こんな思考、打ち切って上がらせて貰おう。
「おじゃましまーす」
「(何考えてたんだろ? ま、いっか) はいどうぞー」
そして俺はナツメちゃん家に招かれた。