チートでポケモンのトレーナーらしい   作:楯樰

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色々注意。


当たったらしい

ミナモシティ。

マスターランクコンテスト会場のある都市。

海に面する都市でビーチは勿論、美術館と博物館、巨大デパートと観光名所が多々あるため、春夏問わず観光客も多い。

 

よくゲームの中ではコンテスト会場に入り浸り、マスターランクをクリアしてやろうと奮闘したものだ。

ちなみにラグラージが美しさの部門で優勝した。

あの時は嬉しさのあまり狂喜したのを覚えている。

他には一日一回、デパートの中で行われるくじ引きだとか。

一等がマスターボールで、よく四等のポイントアップが当たった記憶がある。

 

そんな俺にとっては懐かしい街の一つ。

そのミナモデパートに俺達は来ていた。

 

ぞろぞろと研究員を引き連れて買った家財道具はベット十台、マット(大)十枚、棚ニ個である。

ベット、マットについては各自好きなのを買い、棚については俺のお小遣いから出した。

コレが結構痛かった。

お財布に大打撃である。

 

さて、過去の痛みは忘れて行った一階受付で行われるくじ引き。

気分転換にやったのだが。

 

さて、やけにご機嫌なピカチュウさん。

『どうした、ご主人♪』

.……くじ引きの結果弄ったろ。

『……』

 

俺の手にあるくじと、受付でパソコンに映し出される番号をお姉さんの声。

引いたくじの五桁。

その五桁は本当に偶々(・・)お姉さんの読み上げる数字と一致していた。

 

 

『てへ☆』

テヘじゃないよ!

 

 

電気系統に異常に強いピカチュウのおちゃめを叱りつつ、マルチタスクを使いながら受付で注意事項の書かれた紙に目を通し、サインをする。

マスターボールを扱う際の注意事項、と言うのが薄っぺらいこの紙の題名である。

要所要所を簡潔に挙げるなら、要は「犯罪に使うな」という事だった。

寧ろ犯罪に巻き込まれる気がするのだけど。

……いかん、フラグが立った気がする。

まぁ、そんな些細な事は、今は遥か遠く彼方に投げ捨てよう。

 

契約書のような紙を受付のお姉さんに渡して現品を貰う。

受付のお姉さんから恐る恐る渡された、メノクラゲもしくはドククラゲのような外見のこのボール。

空気抵抗とか投げる時変化球になりそうだとか、そんな邪推はおいといて。

 

初代から一貫して公式チートなこのボール。

トレーナー諸君からは喉から手が出るほど欲しい一品だが、現実に持つとどうにも面倒くさい。

研究室の阿呆どもは、流石室長! と喚くし。……何が流石なのか教えてもらいたい所。

先程の受付のお姉さんはぽーっとした表情で惚けてるし。……ごめんなさいウチのピカチュウが。

ピカチュウは何でか拗ねるし。……なに? プレゼント? ……可愛い奴め。

 

 

そしてその中でも俺のライフをガリガリ削ってくれるこの方々。

 

殺してでも奪い取る、と鬼気迫る表情でやってきた蒼い装束のカルト集団。

――アクア団が俺の後ろで拗ねたピカチュウを前にのびてるんですが、如何したらいいんだろう。

 

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カルト集団――アクア団。

ゲームにおいて、ルビーでは正義の味方。サファイアでは悪の組織。エメラルドではサファイアと同様、マグマ団と並び悪事を働く集団とされている。

ルビーでは、陸地を増やそうと画策するマグマ団に対し海を守ろうとするのが彼ら。

サファイア、エメラルドでは海を増やそうとしていた。

 

しかしよくよく考えてみれば、共通して彼等は海を主軸に活動する組織。

海を司るカイオーガが彼等の手にあれば、どの立場としてもマグマ団に対し優位性があるわけで。

捕まえるためマスターボールを欲するのも話が通る。

ルビーでマグマ団がマスターボールを持っていたのも同じ理由だと思う。

 

ただ、別にそのマスターボールが俺のじゃなくても良いじゃないか。

挙句、アジトに置きっ放しにして主人公に持ってかれるし。

奪ってみたのは良いものの、藍色の珠で制御するほうが効率が良いとか思ったんだろうか。

 

……はぁ。

 

で、だ。

 

「勘弁して下さい……お望みがあれば聞きますので……」

 

現在、ミナモシティの沿岸の洞窟。

その中にある立派なアジトで俺とアクア団のボス、アオギリはお話していた。

アオギリが謝ると言う形で。

 

頭領(ボス)! こんなガキに頭下げること無い!」

「黙れ! お前はあのピカチュウの恐さが分からないからそんな事言えるんだッ!」

 

幹部の発言に震えながら怒鳴るアオギリ。

ちなみにピカチュウの被害者である。

いや、この人達が襲ってきたから被害者も加害者も無いんだけど。

ちなみに研究室の皆には先に帰ってもらった。

 

「(おい。頭領(ボス)が怯えてんぞ)」

「(あぁ、こんな様子見た事ない)」

「(怯えた頭領可愛いhshs)」

「(なにあの子、可愛い……)」

「(同意。テイクアウト出来るかな)」

 

アオギリの後ろで、扉から覗いているアクア団のメンバーらしき人達がコソコソと話している。

何人かから身の危険を感じさせられるが、気のせいと言う事にしておく。

 

「それで、どうすれば見逃してくれますか」

主にアオギリの視線は手元のピカチュウに向かっている。

牽制の意味も含めて出しているんだけども。

「えっと……そうですね」

……どうしたらいい?

『悪の組織だったか? なら慈善事業に転職しろとでも言えば良いと思う』

いや、うーん……それはソレでなんか違うと思うんだ。

なにしろ海を信仰してるんだし…………うーん。

 

「じゃあ一つ。―――作れますか? というかやれますか?」

「「「……はぁ?!」」」

 

俺の提案は終始黙っていた二人目の幹部さんも度肝を抜いたようで。

少々慌しくなる空気の漂ってきたアクア団だった。

 




アオギリさん好きな人達に謝罪をば。

組織って少なからず変態も集まると思うんだ。
それでは。

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