チートでポケモンのトレーナーらしい   作:楯樰

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・遠征調査+開始(カントー~ホウエン)
到着らしい


日差しの射す甲板には数匹いる、キャーキャーと鳴くキャモメの声。

カントーと比べ比較的温暖な気候のホウエン地方。

 

その海域にて現在、一隻船が進んでいた。

言わずもがな、我々一行である。

目的は配達兼遠征調査。

……しかし今はのんびりと各々が休息を取っていた。

ある者は読書。

ある者は手持ちのポケモンと遊んでいたり。

ある者は……どなたのかは知らないが誰かのアルバムを見てニヤニヤと。

最後の奴については詳細を省く。

……鬱になるので。

 

カントー、クチバを出港して早二日。

船長さん曰く、そろそろ陸地が見えてくるとのこと。

早く着いて欲しい。

 

『ご主人』

「どうした? ピカチュウ」

 

カタカタと腰のボールが揺れ、話しかけてくる手持ちの一番古い相棒。

 

『……あのナツメと言うのは、ご主人の……何だ?』

 

何って。……それは大切で大事な――。

 

『……そうか。いや、なんでもないぞ、ご主人!』

 

ピカチュウは無理やり作った元気を出したかのような声を上げ、それから黙り込んだ。

ようやっと口を開いたと思ったらこれか。

彼女は船がクチバを出てからずっと落ち込み、口も碌に開かなかった。

何故かは分からない。いや知らない。

ただ、ロコンがガーディを放ってピカチュウを慰めていた。

おかげでガーディが俺に八つ当たりしてくる。

 

確かに知らないというのは嘘になる。

でもどうしようもない。

こればっかりは知らない振りをするしかないから。

ロコンに頑張って貰おう。

 

……はぁ。

いや原因は全部俺にあるのは分かっている。

分かってはいるんだ……少しミュウで癒させて貰おう。

〈……どうするの、私眠いんだけど〉

〈トウカあそぼー〉

めんどくさがりで臆病なミュウと、甘えたがりで臆病なミュウ。

何で同じ性格なのにこんなにも性格が違うのだろうか。

……意味が分からんけど。

ちなみに始めが元メタモン、後が古代ミュウ。

ますます謎が深まるポケモンの世界である。

 

とりあえず姿をメタモンに変えてボールから外に出す。

うにょーん、となっているメタモン姿のミュウを膝の上に乗せて撫でる。

ひんやりとしてて気持ちいい。

今は悩み事は忘れて少し眠ろう……

「気持ち良いなぁ……」

〈……ねむい〉

〈うー………僕も眠くなってきた…〉

 

ミュウが眠り俺がまどろみながらも、船はゆっくりと、しかし着実に。

……目的地であるカイナシティに向かって進んでいた。

 

-------------------------

 

夕方。日が傾き、周囲を紅く染める頃合に船はカイナへと入った。

研究室の面々は初めて見るポケモンの姿に目を丸くさせており、何処の外国人観光客か、と問いたくなったのは仕方の無い事だろう。

やはりと言うべきか、どうやらポケモンによっては生息域を変える事が殆ど無いためである。

ズバット系統はどうにも幅広く洞窟と言う一点のみが生存条件らしく、かなりの地方で確認されているらしい。

 

逆に図鑑の生息地に不明と出ているものは、どうやら頻繁に生息地を移し変えるようで。

渡り鳥のような性質でも持っているんだろうかと思ったのは、何人か今までに学者の中でもいたらしい。

……しかし、残念ながら規則性が無かったため研究は取り消しになったらしいが。

 

「室長、世界って広いですね……」

「そうだな」

「此処からは室長だけ別行動……でしたっけ?」

「そうだな」

「こっちにはポロックと言うお菓子があるとか」

「そうだな」

「……コンテスト会場もあるとか」

「そうだな」

「室長結婚して下さい!」

「そ……戯けが、アグ○ス呼ぶぞ!」

 

油断も隙もあったもんじゃない。

もーやだこいつら。

誰だ結婚してくれとか言ったの。

お前等アブノーマル過ぎるわ。

 

「――おい、やめろって。室長には想い人がいるんだから」

「――そうだった。ナツメちゃん……だったか?」

「……なんでお前等知ってるの?」

「いや、奴らに聞いて……なぁ?」

「はいアイツらです」

 

指さすほうを見ると四人ほど固まってこちらを見ている。

あ、手振りながら微笑んでる。

こっちも笑顔で手を振り返しとこう。

 

「室長、それが原因って分かってます?」

「うん分かってる」

「……黒い、笑顔が黒いです」

 

アイツ等覚悟しとけ……。

ま、とにかく今は忘れとこう。

 

「とりあえず今からハジツゲタウンに向かい、当初の目的を果たす! それから調査活動及び拠点の確保だ!」

「「「「「りょーかいでーす!」」」」」

あ、一つ忘れてた。

「……その前にひみつのちからの技マシンを買っておこうか」

「えー……」

えー、って言うなよっ!

必要なんだよ、お前らぁっ!

 




某日某所。

「こちらアーボ。室長の後をつけたらラブってた。アーボックどうぞ」
「こちらアーボック。二十メートル地点会話の傍受に成功。どうやら室長は監視対象A・推定12歳を泣かせた様子。判決は?」
「ギルティ」
「ギルティ」
「ノットギルティ。室長が好き? ハッ! 私の方が万倍好きよ!」
「ショタコンお前は帰れ。で、どうする……我々以外にもあの二人を付けている者が一名。一度接触を図るか?」
「しかし室長の困っている顔は確かに可愛いと思うのだが……ちなみに接触するべきと私は考える」
「お前もか。ショタコン帰れ――しかし対象Aが泣いた今接触は危険」
「お前もだろう室長コンプレックス……仮にだが室長が涙を堪えている姿は?」
「萌える」
「抱き占めたくなる」
「お持ち帰りしたくなる」
「お前等最低だな。……ちなみに俺はそっとハンカチを差し出し涙を拭う」
「「「紳士や……紳士がおる……」」」
「その後お持ち帰り」
「「「お前もか…! 変態と言う名の紳士…!」」」


「うまい事やってますね。長く待ったんですから告白なりなんなりして貰わないと……愚痴を聞かされる私の身にもなってください。まったく…………それにしても何人か出歯亀がいるようです――通報しましょうか」


「接触対象αがなにやら通信機のようなものを……て、撤収だ! 奴め俺達の事に気づいてやがった!」
「最後まで聞きたかったなぁ……室長の告白……」
「くっ……仕方ないさ」
「良いから早くしろ! いつ捕まるか分からんぞ!」


「行きましたね……私も退散っと。……頑張れ、頑張れ」

――某日某所。
コッソリとナツメの姿を見守る、お嬢様は静かに立ち去った。

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以上、後書き使った裏話。

今回出来が悪かった。
罵るが良いさっ!(ガクブル

ピカチュウはちょっぴり鬱気味。
復活には少し掛かるかな?
それでは。

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