『また会おう』という願掛けと一緒にした約束。
彼と会ったのは、いつも私の泣いていた公園の指定席だった。
優しくて、頭の中は何処か大人っぽい。
でも年下で、笑う顔は子供っぽい。
それが彼だった。
何か隠し事をしていたようだったけど、それはいい。
ただ、嬉しかった。
ただ、楽しかった。
そんな彼とは経った一日会っただけ。
ただそれだけ……それでも彼は約束を憶えているのだろうか。
今は胸が痛かった。
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朝日がまぶしい。
「……またあの夢」
とても懐かしくて、暖かい夢。
そして起きたら私は泣いている。
あと寝癖も酷い。
「もう、一年になるんだ……」
誰に聞かせるわけでもなく、私は言ってみる。
今、流れている涙はあの時の涙じゃない。
……でも、前の涙より少し寂しい。
「今日も元気だして行こー」
いつもの掛け声。
泊まりにきたエリカちゃんからは「変」と一言で切り捨てられた。
……事情を話したら、顔真っ赤にしてたけど。
――……あ、だめだ。私も恥ずかしくなってきた。
「……うー!」
枕に顔をうずめる。
きっと顔真っ赤だ。
……早く戻れ早く戻れ。
「――ナツメー! 起きなさーい!」
お母さんの声がする。
あー! でもこのままじゃ行けない!
「ちょっとまってーっ!」
――トウカ君……元気にしているかな?
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私はタマムシシティにあるトレーナーズスクールの四年生。
最後の年になるこの学年になったばかり。
あの彼は此処へ入っていたら、今二年生くらいだろうか。
でも、去年入学式の日に見に行ってみたけど居なかった。
……頭が良かったみたいだから通わなくてもいいんだろう。
きっと入っていたら友達も多いんだろうな、と思う。
その点私は、
優しいエリカちゃん。
でもお家がお屋敷みたいで、黒い服着た恐い人とか沢山雇ってる。
初め、私には近寄らないように、と親に言われていたみたいだけど、それを「興味あります!」といって親の反対を突っぱねて私と接してくれている。
どうやら、ご両親も彼女のマイペースと一途な所には逆らえないようで。
渋々ながら、私と友達になる事を許してくれた。
「友達になるのも資格がいる」という事を教えてくれた子でもある。
トウカ君は友達というか、なんというか。
それ以上に大きい存在で、なにか違う。
お兄ちゃんというのでもないし、弟というのでもない。
エリカちゃんへの好きとは違う。
もっとなにか、こう別の……好き。
……うん、だめだ。顔真っ赤になってる。
「ナツメ? 顔真っ赤ですよ?」
「な、なんでもない! なんでもない!」
ホントにー? と顔を傾けるエリカちゃん。
解っててやってるから性質が悪い。
……裏表は無いんだけど。
「はぁ……もう、ナツメは今日も相も変わらず、トウカ君トウカ君……って」
「……ひどい」
でも自分でも言ってる自覚があるから、反論出来ない。……うん。
「はぁ……もう、そんなに落ち込まないで下さい。……さ、時間もそんなに無い事ですし、はやく食べましょう?」
……あ、思い出した。
今、昼休憩だった。
「……この乙女」
「ん? 何か言った?」
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スクールが終わって……今日はまっすぐ帰らず、大学の方からの道を通って帰る。
なんだか今日は良い事が有りそうな気がしたから。
「……さ、乗った乗った!」
大きい声が聞こえて足を止める。
丁度壁の向こう。大学の中で何かやってるらしい。
よくある事だ。
でのこの声は……確か、テレビにも出てた……オーキド博士?
なんだか胸がざわつく。
何かある。
そんな私の第六感が言っている。
バサリ、と何かが羽ばたく音がした。
ポケモンだろうか。
そうとしたら、かなり大きい。
羽ばたいていたなら空を飛んでいるはず。
そしてソレは空を見上げるといた。
黒い竜とでもいうのだろうか。
それが旋回している。
その上に二人。
一人は白髪のお爺さん、多分オーキド博士なのだろう。
そしてもう一人は少年が乗っていた。
いや、少年とは違う。
もっと小さい……私よりも幼い男の子。
――あんまり変わってないんだね。
誰かは此処からでは分からない。
でもそんな感情が私の中で巡っていた。
なんだか暖かい……あの夢のように。
なんだか懐かしい……あの時の記憶のように。
――もう、ちゃんと超能力使えるようになったよ。
何でこんな事を感じているのか、理解出来ない。
でも何故か伝えないといけない、そんな気がしている。
――だから…
「…会えるかな、トウカ君」
呟いてみたのは良いものの、少し恥ずかしい。
だって此処は大学だし。……トウカ君が居るわけないのに。
……早く帰ろう。
私は、いつの間にかちょっと流れ出てた涙を拭いて、通りのバス停へと向かって走った。
なんか、誰か見知った人が居たような……。
『どうした、ご主人?』
……ううん、なんでもない。
うん、気のせいか。
やっちまった。
何でこんなの書いたんだろう。……出来が凄く悪い。
反省はしていない。でも後悔はしている。
……ナツメが出したかったんだ!