弓塚さつき(憑)の箱庭生活【完結】   作:ホワイダニット

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6000字を越えた三話。
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はい、これが私のギフトです。

「な、なんであの短時間で”フォレス・ガロ“のリーダーと接触してしかも喧嘩を売る状況なったのですか!?」

「しかもゲームの日取りは明日!?」

「しかも敵のテリトリー内で戦うなんて!」

「準備している時間もお金もありません!」

「一体どんな心算があってのことです!」

 

黒ウサギの詰問が嵐のように次から次へと飛び出す。

 

「さつきさん、聞いているのですか!?」

「ムシャクシャしたのでやりました。反省も後悔もしてません」

 

「黙らっしゃい‼」

 

黒ウサギは何処から出したのか、ハリセンでさつきを叩こうとするがさつきは一歩下がることで回避する。

 

「別にいいじゃねえか。見境なく選んで喧嘩売ったわけじゃないんだから許してやれよ」

 

十六夜が黒ウサギをなだめる。

 

「い、十六夜さんは面白ければいいと思っているかもしれませんが、このゲームで得られるものは自己満足だけなんですよ?この“契約書類(ギアスロール)”を見てください、しかも我がコミュニティから参加するのはさつきさん一人だけなんですよ」

 

黒ウサギはギフトゲームに参加するのがさつきだけであることを不安に感じていた。

 

 

***

 

 

「それじゃコミュニティに帰ろうか 」

「あ、ジン坊っちゃんは先にお帰りください。ギフトゲームが明日なら“サウザンドアイズ”に皆さんのギフト鑑定をお願いしないと。この水樹の事もありますし」

 

さつき以外の三人は傾げて聞き返す。

 

「“サウザンドアイズ”?コミュニティの名前か?」

 

「YES。”サウザンドアイズ”は特殊な“瞳”のギフトを者達の群体コミュニティ。箱庭の東西南北・上層下層の全てに精通する超巨大商業コミュニティです。幸いこの近くに支店がありますし」

 

「ギフト鑑定というのは?」

 

「勿論、ギフトの秘めた力や起源などを鑑定することデス。自分の力の正しい形を把握していた方が、引き出せる力はより大きくなります。皆さんも自分の力の出所は気になるでしょう?」

 

同意を求める黒ウサギに四人は複雑な表情をで返す。思う所はそれぞれあるが拒否する声はなく、黒ウサギ・十六夜・飛鳥・耀・さつき・レンの六人と一匹は“サウザンドアイズ”に向かう。

 

”サウザンドアイズ”に向かう一行は桃色の花を散らす並木道を歩く。

 

「桜の木・・・ではないわよね?花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けているはずがないもの」

 

「いや、まだ初夏になったばかりだぞ。気合いの入った桜が残っていてもおかしくないだろ」

 

「・・・・?今は秋だったと思うけど」

 

「私の所は冬でした」

 

十六夜・飛鳥・耀の三人は顔をみ合わせて首を傾げる。

 

「皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されているのデス。元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系など所々違う箇所があるはずですよ」

「へぇ、パラレルワールドってやつか?」

 

「近しいですね。正しくは立体交差並行世界論というものなのですけども・・・今からコレの説明を始めますと一日二日では説明しきれないのでまたの機会ということに」

 

ちょうど目的の店に着いたらしい。商店の旗には、蒼い生地に互いが向かい合う二人の女神像が記されている。

“サウザンドアイズ”の支店には日が暮れて看板を下げる割烹着の女性店員に、黒ウサギは

 

「まっ」

 

「待った無しです御客様。うちは時間外営業はやっていません」

 

黒ウサギは悔しげに店員を睨みつける。

 

「なんて商売っけの無い店なのかしら」

 

「ま、全くです!閉店時間の五分前に客を締め出すなんて!」

 

「文句があるならどうぞ他所へ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」

 

女性店員は黒ウサギ達の文句に店への出禁を言い渡す。

 

「出禁!?これだけで出禁とか御客様舐めすぎでございますよ⁉」

 

「なるほど、”箱庭の貴族“であるウサギの御客様を無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますますので、コミュニティの名前をよろしいでしょうか?」

 

「・・・・う」

 

言葉に詰まる黒ウサギ。

 

「相手が“ノーネーム”であることが解っていながら名前を

 

「いぃぃぃやほぉぉぉぉぉ!久しぶりだ黒ウサギイィィィ!」

 

さつきが店員に言い返えしていると店の中から着物風の服を着た真っ白い髪の少女が奇声をあげながら黒ウサギに向かって爆走し、黒ウサギに抱きつきというフライングボディーアタックをかまし黒ウサギと一緒に反対側にある浅い水路まで吹き飛んだ。

 

「きゃあ━━━・・・!」

 

遠くなる悲鳴の後にボチャンと水路に落ちた。

 

「・・・・おい店員。この店にはドッキリサービスがあるのか?なら俺も別バージョンで是非」

「ありません」

 

「なんなら有料でも」

「やりません」

 

十六夜は女性店員とコント、白夜叉は黒ウサギにセクハラ、なにこれ。近くで見るとカオスなんだけど。

 

「し、白夜叉様!?どうして貴女がこんな下層に!?」

 

「そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるだろに!フフ、フホホフホホ!やっぱりウサギは触り心地が違うのう!ほれ、ここが良いのかここが良いのか!」

 

白夜叉は黒ウサギの胸に顔を埋めながら胸を揉みしだき始めた。

 

「し、白夜叉様!ちょ、ちょっと離れてください!」

 

黒ウサギは白夜叉を引き剥がし頭を掴んで投げる。

 

「ホラよ」

 

十六夜は飛んできた白夜叉をさつきにパスした。

 

「ちょ!」

 

さつきは飛んできた白夜叉を抱きしめるように受け止める。

 

「なんと、おんしも黒ウサギに負けず劣らず良い胸をしておるの!・・・もしやおんしこれは着痩せか!」

 

「!?!?!!」

 

白夜叉は受け止めたさつきの胸に顔を埋め感触を堪能しさつきをパニックにする。

 

「いやぁぁぁぁ!」

 

さつきは白夜叉の頭を掴むと顔を真っ赤にしながら吸血鬼の力でアイアンクローをした。

 

あぁぁ!忘れてた白夜叉はセクハラ変態駄神だった‼

初対面の娘にも平気でセクハラするオヤジだったの忘れてた!女だけど‼

 

「ぬぉぉぉぉ⁉割れる割れる割れるおんし止め、すまぬ謝る!だから放してくれぇぇぇ!」

 

白夜叉の絶叫が響き渡る。

それを聞いたさつきは白夜叉から手を放し地面で頭を抱える白夜叉を自身の胸を守るように抱きながら変質者を見るような目で睨む。

 

「オーナー、今のは流石に擁護できません」

 

「そうね、今のは弓塚さんが正しいわ」

 

女性店員と飛鳥の二人も白夜叉にフォローをしなかった。

 

「まさか私がアイアンクローを受ける日が来るとは」

 

「それで。貴女はこの店の人?」

 

「おお、そうだとも。この“サウザンドアイズ”の幹部様で白夜叉様だよご令嬢。仕事の依頼ならおんしのその年齢の割に発育がいい胸をワンタッチ生揉みで引き受けるぞ」

 

白夜叉が懲りずに飛鳥にセクハラ発言をすると後ろから威圧感を伴った指の鳴る音がする。

 

「と思ったが商売人たるものそんな事ではいかんな」

 

白夜叉は舌の根も乾かぬ内に前言を撤回する。

 

黒ウサギが水路から上がってきた。

 

「うう・・・まさか私まで塗れる事になるなんて」

 

「因果応報・・・・かな」

 

『お嬢の言う通りや』

 

「まあいい。話しがあるなら店内で聞こう」

「よろしいのですか?彼らは旗も持たない“ノーネーム”のはず規定では」

 

「“ノーネーム”とわかっていながら訪ねた性悪店員とちょっとスキンシップが行き過ぎた私からの詫びだ。身元は私が保証するし、ボスに睨まれても私が責任を取る。いいから入れてやれ」

 

白夜叉と女性店員のあとに続いて六人と一匹は暖簾くぐった。

 

「生憎と店は閉めてしまったのでな。

私の私室で勘弁してくれ」

 

全員が座るのを確認すると口を開いた。

 

「もう一度自己紹介しておこうかの。私は四桁の門三三四五外門に本拠を構えている“サウザンドアイズ”幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女である」

 

「はいはい、お世話になっております本当に」

 

「その外門って何?」

 

「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。数字が若いほど都市の中心部に近く、同時に強大な力を持つ者達が住んでいるのです。外門を上から見たらこうゆう感じですデス」

 

黒ウサギが箱庭の外門を上から見た図を簡単に書く。

 

「・・・・超巨大タマネギ?」

 

「いえ、超巨大バームクーヘンではないかしら?」

 

「そうだな。どちらかといえばバームクーヘンだ」

 

「そういえば、最近バームクーヘン食べてないかも」

 

そんな見も蓋もないような感想にガックリと肩を落とす黒ウサギ。だが対照的に白夜叉は呵々と哄笑を上げて二度三度と頷いた。

 

「さて、それで?水樹を持っておると言うことは蛇神の試練をクリアしたのだろう?一体誰が、どのようなゲームで勝ったのだ?知恵比べか?勇気を試したのか?」

 

「いえいえ。この水樹は十六夜さんがここに来る前に、蛇神様を素手で叩きのめしてきたのですよ」

 

自慢げに黒ウサギが言うと、白夜叉は声を上げて驚いた。

 

「なんと⁉クリアではなく直接的に倒したとな⁉ではその童は神格持ちの神童か?」

 

「いえ、黒ウサギはそう思えません。神格持ちなら一目見れば分かるはずですし」

 

「ねえ、白夜叉はその十六夜が倒したって蛇神と知り合いなの?」

 

「知り合いもなにも、アレに神格を与えたのはこの私だぞ。もう何百年も前の話しだがの」

 

それを聞いた十六夜達が白夜叉に勝負を挑み。白夜叉はそれを面白半分に受ける。

 

「おんしらが挑むのは“挑戦”か?━━━それとも”決闘(・・)“か?」

 

すると部屋にいた者が居たのは白夜叉の私室である和室ではなく白い雪原に凍る湖畔━━そして、水平に太陽が廻る世界だった(・・・・・・・・・・・・・)

 

白夜ですか、なんとも私殺しな場所に転移してるんでしょう。もし私が太陽を曲りなりにも克服していなかったら私死んでますよ。

 

「今一度名乗り直し、問おうかの。私は”白き夜の魔王“━━太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが挑むのは、試練への”挑戦”か?それとも対等な決闘か?」

 

周りを見渡し納得がいったのか。

 

「参った。やられたよ。降参だ、白夜叉」

 

「そうか、それは試練を受けると言うことだな、他の童達も同じか?」

 

「・・・・ええ。私も試されてあげてもいいわ」

 

「右に同じ」

 

「その童には私も含まれているのかな?」

 

「いや、おんしは含まれておらんよ」

 

「そう」

 

白夜叉は試練として勇気を試すゲームを記す。

 

「ねえ白夜叉、このゲーム私の名前が書かれてないんだけど?」

 

まさか私だけ別ゲームなんて事無いよね。

 

「おんしには個別で試練を受けてもらうゆえ心配するでない」

 

ですよね~。

 

「おい待てよ白夜叉。なんでメイドだけ個別なんだ?」

 

「なんでか・・・・それはのおんしらの中でこの娘が一番強いからだの。文句は聞かんぞ?この娘の試練はおんしらより数段上の内容だからの」

 

「そうかよ、それじゃメイド様の実力とやらを見させて貰おうじゃないか」

 

三人の試練は耀が受ける事になり無事に試練を乗り越える事に成功し、耀は新しい力を試練の相手であるグリフォンから受け取った。

 

「試練をクリアしたおんしらには”恩恵(ギフト)“を与えねばならん。ちょいと贅沢だがコミュニティ復興の前祝いとしては丁度良かろう」

 

白夜叉が柏手を打つ。すると五人の眼前に光り輝く五枚のカードが現れる。

 

コバルトブルーのカードに逆廻十六夜・ギフトネーム”正体不明(コード・アンノウン)

 

ワインレッドのカードに久遠飛鳥・ギフトネーム“威光”

 

パールエメラルドのカードに春日部耀・ギフトネーム

生命の目録(ゲノム・ツリー)

“ノーフォーマー”

 

トワイライトオレンジのカードに弓塚・B・さつき・ギフトネーム

死徒二十七祖(ロード・オブ・ヴァンパイア)

枯渇庭園(ドレイン・ガーデン)

”千年城・ブリュンスタッド“

朱い月(ブリュンスタッド)

MELTY BLOOD(メルティ・ブラッド)

”ゲイ・ボルク×二“

全て遠き理想郷(アヴァロン)

約束された勝利の剣(エクスカリバー)

 

ミッドナイトブルーのカードにレン・ギフトネーム

夢魔(ナイトメア)

MELTY BLOOD(メルティ・ブラッド)

 

それぞれの名とギフトが記されたカードを受けとる。

 

「ギフトカード!」

 

「お中元?」

 

「お歳暮?」

 

「お年玉?」

 

「商品券?」

 

「ち、違います!というかなんで皆さんそんなに息が合っているのです⁉」

 

「ここは乗ったほうがいいかなって」

 

「そのギフトカードは、正式名称を”ラプラスの紙片“、即ち全知の一端だ。そこに刻まれるギフトネームとはおんしらの魂と繋がった”恩恵(ギフト)“の名称。鑑定は出来ずともそれを見れば大体のギフトの正体が分かるというもの」

 

十六夜は自身のギフトが不明になっていることに満足し白夜叉はギフトカードがエラーをおこした事について思考を始める。

 

「白夜叉、私まだ試練を受けてないんだけど貰っていいの?」

 

「ん?おお、そうだなさておんしが受ける試練はこれだ」

 

『ギフトゲーム名”白夜への自己の証明“

・プレイヤー一覧 弓塚・B・さつき

 

・クリア条件 白夜の地平からの脱出

 

・クリア方法 己のギフトを使い白夜の地平から脱出すること

 

敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の元ギフトゲームを開催します。

”サウザンドアイズ”印』

 

 

白夜の地平からの脱出か、なら武器三つは使えない。MELTY BLOODは恐らく戦闘系、朱い月はそもそも私じゃ使えない。枯渇庭園は周りを巻き込むから・・・千年城か。

 

『千年城・ブリュンスタッド』

 

さつきが言葉を紡ぐと白夜が夜に変わり星が瞬き、太陽は月となり、雪原は草原に変化し、凍った湖畔は巨大な城に変わった。

 

「なんと⁉私のゲーム盤を上書きするとは」

 

「へぇ、これはこれで雄大・・いや荘厳な場所だな。これがメイド様のギフトか?」

 

「ええ。これは私のギフトの一つ”千年城・ブリュンスタッド“。私が住んでいた場所」

 

「ブリュンスタッドじゃと‼おんしまさか朱い月の眷属か⁉」

 

「えっと眷属というよりは孫みたいなものかな?」

 

私の親元のロアの親元がブリュンスタッドだから孫でいいよね。

「おい、俺達にも分かるように説明しろよ」

 

十六夜に説明を求められて落ち着きを取り戻す白夜叉。

 

「そうだな、箱庭には二つの吸血鬼が存在しておる。 一つが太陽の主権の一つ、蛇使い座のドラクレア。

二つ目が月の主権一つ、朱い月の名を冠するブリュンスタッドだ。

ドラクレアが騎士と呼ばれるのに対しブリュンスタッドは月姫と呼ばれておる。」

 

(しかしあの天然娘に孫がおったとはの。何もなければよいが)

 

「じゃあメイドはメイドじゃなくてメイド姫だったって訳だ」

 

「あのさぁ十六夜そのメイド呼び何とかならない?私いつもメイド服着てる訳じゃないんだけど」

 

「じゃあ孫姫だな」

 

孫姫・・・まあいいか。

 

***

 

 

「今日はありがとう。また遊んでくれると嬉しい」

 

店から出た黒ウサギ達七人と一匹は店先で再戦を誓い”ノーネーム“に向かった。

 

****

 

「この中が我々のコミュニティでございます。しかし本拠の館は入口から更に歩かねばなりません。この近辺はまだ戦いの名残があることをご容赦ください。」

 

黒ウサギ達は敷地内に入ってその光景に息を飲んだ。

 

「・・・おい、黒ウサギ。魔王のギフトゲームがあったのは━━今から何百年前の話だ」

 

「僅か三年前の話でございます」

 

「ハッ、そりゃ面白いな。この風化しきった町並みが三年前だと(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「・・・・断言するぜどんな力がぶつかってもこんな壊れ方はありえない。「あり得ます」・・なに?」

 

「あり得ます、この惨状は私の庭と同じです」

 

「どういうことだ?孫姫の庭と同じってのは」

 

「私ならこの惨状を数分で再現できるということです。もう行きましょう、ここは見ていて辛い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この惨状を作り上げた魔王━━━━それを数分で再現できると言った孫姫・・・ハッいいぜいいぜいいなオイ。想像以上に面白そうじゃねえか・・・・・・・!」

 


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