一話でお気に入りが18人と作者ちょっと感動しています。
「ジン坊っちゃーン!新しい方を連れてきましたよー!」
「お帰り黒ウサギ。そちらの女性三人が?」
「はいな、こちらの御四人様がーー」
黒ウサギが振り返るとそこに居るのは四人ではなく三人だった。
「・・・・・・え、あれ?もう一人いませんでしたっけ?ちょっと目つきが悪くて、かなり口が悪くて、全身から“俺問題児!”ってオーラを放っている殿方が」
「十六夜君?それなら“ちょっと世界の果てを見てくるぜ!”って言って走って行っちゃったけど」
世界の果てが滝じゃなければ私も行きたかったんだけどな~。
「なんで止めてくれなかたんですか!」
「だってものすごい目をキラキラさせた笑顔だったから止めたら悪いかなって。」
「うっ!・・・仕方ありません、ジン坊っちゃん。申し訳ありませんが御三人様のご案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「わかった、黒ウサギはどうするの?」
「問題児様を捕まえに参ります、事のついでにーー”箱庭の貴族“と謳われたこのウサギを馬鹿にしたこと、骨の髄まで後悔させてやります」
黒ウサギは怒りを現わにし髪を黒髪から淡い緋色に変え
「一刻ほどで戻ります!皆さんはゆっくりと箱庭ライフを御堪能くださいませ!」
黒ウサギはそう言うとものすごい速度で駆けて行った。
「・・・箱庭の兎は随分早く跳べるのね、素直に感心するわ」
飛鳥が黒ウサギの速さに感心する。
「そうかな?あれ位の速度なら私のいた世界にはそれなりにいたけど。」
アルクェイドさんとか師匠とか。私もあれ以上に早く動けるし。
「貴女のいた世界には黒ウサギと同等の方がいらっしゃるですか!?」
ジンが驚いたようにさつきを見上げる。
「いるよ、ほらそんなことより箱庭を案内してくれるんだよね?よろしくね、えーっと。」
「あ、僕はコミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。齢十一になったばかりの若輩ですがよろしくお願いします。三人の名前は?」
「久遠飛鳥よ。そこで猫を抱えているのが」
「春日部耀」
「弓塚さつきです」
三人はジンに自己紹介をした。
***
『お、お嬢!外から天幕の中に入ったはすなのに御天道様が見えとるで!』
「・・・本当だ。外から見たときは箱庭の内部なんて見えなかったのに」
「箱庭を覆う天幕は内側に入ると不可視になるんですよ。そもそもあの巨大な天幕は太陽の光を直接受けられない種族のために設置されていますから」
「それはなんとも気になる話ね。この都市には吸血鬼でも住んでいるのかしら?」
「いるよ~♪」
吸血鬼がいるのかという飛鳥の質問にジンではなくさつきが応える。
「なぜ弓塚さんが応えるのかしら?」
「えっ、だって私吸血鬼だもん。」
さつきは自身が吸血鬼であることをカミングアウトした。
「え・・・えぇぇ‼さつきさん吸血鬼だったんですか!?」
ジンはさつきが吸血鬼だったことに大声を上げて驚く、飛鳥と耀もさつきが吸血鬼と知り固まる。
「ちょ、ちょっと待ってください!吸血鬼は箱庭の外、太陽の光を直接受けられないんですよ、さつきさんは今しがた箱庭の外から来たじゃないですか!」
ジンが驚きから我に帰るとさつきが外から来たのに対して落ち着きを無くしながらも尋ねた。
「まあ、それはまた今度説明するから、ほらほら案内してね。」
さつきは無理やり話を終わらせて先を促す。
四人は身近にあった”六本傷“の旗を掲げるカフェテラスに座る。
すると注文を取るために店の奥から素早く猫耳の少女が飛び出して来た。
「いらっしゃいませー。御注文はどうしますか?」
「えーと「ちょっと待って」どうしたの?」
飛鳥が注文しようとするのをさつきが待ったをかける。
「この子もいっしょにいいかな?」
さつきは胸の谷間に手を入れ一匹の黒猫を取り出した。
「猫?」
「猫ですね」
「かわいい」
『子猫やな』
「子猫ですね」
店員含む四人と一匹の視線がさつきの腕で丸くなっている子猫に注がれる。
「レン起きて、お茶にしよう。」
すると子猫はムクリと起きあがり人間の少女に姿を変えた。
「「「・・・・・・・」」」
ジン達はもう何に驚けばいいかわからず沈黙してしまった。
さつきはレンを膝にのせてメニューをレンの前にもってくる。
「・・・・・・・」
レンはメニューの一点を指差しさつきを見上げる。
「えーと、紅茶を三つと緑茶を一つケーキセット一つ。あと軽食にサンドイッチを」
さつきは沈黙しているジン達を無視して注文を決めていく。
『ネコマンマを!』
一匹だけ思考停止することのなかった三毛猫が追加注文をする。
「はいはーい。ティーセット四つとケーキセット一つにネコマンマですね」
「三毛猫の言葉、分かるの?」
耀は店員が三毛猫の言葉を理解しているのか尋ねる。
「そりゃ分かりますよー私は猫族なんですから。」
「・・・・箱庭ってすごいね、三毛猫。私以外に三毛猫の言葉が分かる人がいたよ」
『来てよかったなお嬢』
耀は自分以外にも動物と意思疎通できる人がいることを喜んでいた。
「おんやぁ?誰かと思えば東区画の最底辺コミュニティ”名無しの権兵衛“のリーダー、ジン君じゃないですか。今日はオモリ役の黒ウサギは一緒じゃないんですか?」
品のない上辺だけの上品ぶった声がジンを呼ぶ。
あー、これがガルドなんちゃらか、原作の挿絵やアニメのほうがイケメンかな。
ジンも売り言葉に買い言葉であぁ~あケンカはじめたよ、まあ物理じゃないだけましかな。
ガルドもなんかジン君のコミュニティの現状を話してどうにか自分のコミュニティに引っ張れないか必死だし、余裕のない。
「どうですかレディ達。返事はすぐにとは言いません。コミュニティに属さずとも貴女達には箱庭で三十日間の自由が約束されています。一度、自分達を呼び出したコミュニティと私達”フォレス・ガロ“のコミュニティを視察し、十分に検討してからーーー」
うん、ガルドが〆に入ったね。
「結構よ。だってジン君のコミュニティで私は間に合っているもの」
飛鳥はカップの紅茶を飲み干すと耀に話しかける。
「春日部さんは今の話をどう思う?」
「別に、どっちでも。私はこの世界に友達を作りに来ただけだもの」
「あら意外。じゃあ私が友達一号に立候補していいかしら?」
「・・・・うん」
『よかったなお嬢・・・・・・お嬢に友達ができてワシも涙が出るほど嬉しいわ』
ホロリと泣く三毛猫。
「弓塚さんはどうかしら?」
「私もジン君のコミュニティでいいかな、血生臭い虎のコミュニティにはちょっとね」
「ちょ、ちょっと待ってくださいレデ
「
ガチン!ガルドの口がなにかに強制されたように勢いよく閉じる。
「・・・・・・!?・・・・・!??」
ガルドは口を開けることが出来ずに混乱する。
「私の話はまだ終わってないわ。貴方からはまだまだ聞き出さなければいけないことがあるのだもの。貴方は
飛鳥の言葉に力が宿り、今度は椅子にヒビが入るほど勢いよく座り込む。
「お、お客さん!当店で揉め事控えてくださーー」
「 ちょうどいいわ。猫の店員さんも第三者として聞いていってほしいの。多分、面白いことが聞けるはずよ。」
飛鳥が審問官よろしくガルドに質問し自白を強制させる。
そしてガルドは決定的なひと言を口にした。
「もう殺した」
その場の空気が瞬時に凍りつく。
「初めてガキ共を連れてきた日、泣き声が頭にきて思わず殺した。それ以降、連れてきたガキは全部まとめてその日の内に始末することにした。けど
「黙れ」
その一言でガルドが話すのをやめた。
しかしそれは飛鳥が発した言葉ではなくそのあまりにも冷たく恐怖をはらむかのようなドスのある声はさつきから放たれたものだった。
「ガルド、貴様にはギフトゲームをしてもらう。内容は貴様と私の一対一の殺し合いよ。勝利条件は相手を死に至らしめること、敗北条件は死ぬこと。賭けるものは貴様はコミュニティの完全解散、こちらは貴様の悪行の黙認。もしこの条件が飲めないなら今此処で貴様を塵に変えてあげる。」
ガルドは放たれた威圧による恐怖から勢いよく首を縦に振る。
するとガルドとさつきの前に二枚のギアスロールが現れた。
『ギフトゲーム名、”獣鬼の決闘“
・プレイヤー一覧、ガルド=ガスパー
・クリア条件、ホストである弓塚・B・さつきの討伐
・クリア方法、自身のギフトによるホストの殺害
・敗北条件、プレイヤーが死んだ場合
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、”フォレス・ガロ“はギフトゲームに参加します。
“******”印」
さつきはギアスロールを確認するとガルドに向けていた威圧を解いた。
「日時は明日、私がそちらに参ります、理解できたのなら明日のために準備をしなさい。」
ガルドは何度も首肯くと脇目もふらずに走って消えて行った。
「ふぅ・・・・まあ、やっちゃったモノは仕方ない!前向きに行こう」
どうやらさつきは自身のやった事に後悔も反省もしていないようである。
次話はさつきのギフトが判明します。
あと設定もいっしょに挙げます。