「卑王鉄槌ーーー極光は反転する」
黒い騎士王がそう唱えながら聖剣を下段に構えると、その聖剣にどす黒く、かなり多くの魔力が溜められている。間違いない、これは英霊がサーヴァントとして現界するなら必ず持つとされるものーーー宝具だ。
「!この魔力量……不味い!宝具だ!皆今すぐそこから退避してくれ!」
「相変わらずとんでもない魔力ね。黒くなって更に増したかしら?」
どういう訳か、一度あの宝具を見た事があるようなコルキスの王女メディア以外は余裕がなかった。片や、目前の死に恐怖を隠せず、動けないでいる者、また、戦場で持病らしき者が吐血した事に対して嘆いている者。メディアと比べて大変な慌て様だったーーーある2人を除いて。
その2人は目の前の尋常ではない魔力の高まりに確かに、余裕ではなかった。だが、それでも彼らは落ち着いていた。
隣の先輩(後輩)が傍に居てくれるから
「マシュ!」
「はい!先輩!」
メディアは確信していた。少なからずも自分にも余裕がなかった訳ではない。それでも、今の彼らならあの聖剣も止められると…
「光を呑め!『
「宝具、展開します!」
両者の宝具が真っ向からぶつかる。何者をも消し去ろうとする黒い聖剣と、自らの身体が待たなくとも絶対に守らなければならないーーー護りたいという想いの詰まった楯の様な巨大な魔法陣。ずっとこのままなのではないかと錯覚してしまう長い攻防の中、結果が現れ始めた。
「くっ…!」
「ハァァァァァア!」
楯が彼女の決して諦めないという強い想いにさらに応えるかの様に輝き、騎士王を宝具諸共弾き飛ばした。
「や、やったわ!あの聖剣を防ぐ事が出来た!」
「ハァ…ハァ…、やりました…所長、先輩。」
「あぁ…良くやったね、マシュ。ありがとう。」
「はい!…でも、真名までは分かりませんでした…」
そう、マシュは先程その力を授けてくれた英霊の宝具を開帳したが、その宝具、そして英霊の真名が分かった訳ではなかった。
「…そうね。真名なしで宝具を使うなんて不便でしょうし、勝手だけど、私がいい
「貴方の場合、宝具の擬似展開だから……そうね、『
「ロード・カルデアス……はい!ありがとうございます、所長!」
「あぁ、確かにマシュにピッタリの名前だ!感傷に浸るのも分かるけどまだ我慢してくれ!騎士王が、まだ生きてる!」
「そうっすよ、所長……ロマンの言う通り、敵はまだ終わってない……」
彼らの言う通り、騎士王はまだ生きていた。確かにマシュは彼女の宝具を弾き飛ばした。魔力量に限界があるが、それでも、マシュなら聖剣を防げると思い気が抜けていたのだろう。だか、それはーーー
「…知らずと、私も加減していた様だな。まぁ、良い。
さぁ、意志は示された。次は、その力を示してみよ!」
「…っ!沖田、いけるか?」
「はい、もう大丈夫です。マスター!」
沖田総司……新選組一番隊隊長にしてかつて、天才剣士とも言われた彼女だが、生前の戒めが今の彼女を苦しめていた。
天才剣士とも言われた彼女の死因は闘いによる戦死ではなく、病である。それによって、千駄ヶ谷で静養していたが、最後には新選組局長「近藤勇」の死も分からずに亡くなっていった…
そして、その病が今の彼女にはスキル「病弱 A」として現れている。効果についてはもはや言うまでもない。
「マシュ、メディア!戦闘準備だ!」
「了解しました、先輩!」「分かったわ、マスター」
各々が戦闘態勢に入った次の瞬間、騎士王は自分の周りに舞っていた砂埃を吹き飛ばしたーーー戦闘の狼煙だ
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…はっきり言って、防戦一方だった。騎士王が狼煙を上げて魔力放出でぶっ飛んで来たのをマシュちゃんがなんとか防いだが、そのまま弾き飛ばされてしまった。そのマシュちゃんを追撃しようとする騎士王をメディアさんが魔力弾を放つが、彼女の対魔力の高さからまるで効いていなかった。
ここまではいい。ぶっちゃけ予想通りではあった。アニメでもまるで効いてなかったし、ロケットみたいに飛ぶのも分かってた。だけど、何あれは?沖田さんの不意打ちが殆ど塞がれてるんだけど?
闘いを見ていても、間違いなく沖田さんに落ち度はない。絶好なタイミングで攻撃しているが、それが死角からの攻撃であっても騎士王をそれを弾き飛ばしていた。
おそらく、騎士王のスキルの直感だろう。星回収だけだったものが実戦ではチートスキルだったとは、ふざけている余裕もないし、真面目にやっても勝てるか分からない。そんな中、最も最悪な状況が起きてしまった…
「…コフッ」
そう、病弱だ。戦闘時以外なら正直発動しても全く問題はなかった。それが今、起きてしまった。
「ーーー失せろ」
吐血した沖田の隙を逃す筈もなく、騎士王はそのまま聖剣を振りかぶり…
「…!令呪をもって命ず…」
ーーーその聖剣を振り下ろした。
「〜〜!戻ってこい、沖田ァァァ!」
「マシュ!守りを固めて!メディア!援護を頼む!」
血だらけで今でも血を流している沖田を抱きながら藤丸君の指示を聞いたがまるで頭に入ってこなかった。
「傷を見せて!応急処置程度ならできるかもしれない!」
隣で所長が何か喋って回復魔術をしているが、血が止まる気配はない。
流れる血を見ながら、俺は自己嫌悪に浸っていた。
「……俺のせいで……」
沖田の病弱の恐ろしさは分かっていた。戦闘中に起これば間違いなく隙だらけになるって。
「俺がもっと早く……」
だからこそ、令呪を切るタイミングは大切だった。
なのに、俺は……
「俺のせいで……」
俺のせいで
「沖田が……」
死んじゃ……
ピタッ
そんな感じの乾いた音が聞こえた。
「ます……た…ぁ…」
そう言いながら、沖田が俺の頰に手を弱々しく当てていた…
「……!沖田!喋らなくていいから此処で……!」
必死に何かを伝えようとする彼女を見て、止める気が失せてしまった…
「……ますたー……貴方は、優しいですね……」
え……
「……貴方は人斬りである私と普通に接してくれました……」
「それに、今でも血だらけの私の身を案じてくれています……」
「……なにより、その刀。貴方は間違えてその刃のない刀を持ってきてしまったと言ってましたけど、本当はどうなんですか……?」
……その通りと言えば、その通りだった。俺はまだ、実物の刀を握った事すらない。カルデアに頼んで買って貰ったが、一度も振った事はなかった……
「……あぁ、ほんと、生前と何も変わらないなぁ……」
「……最後まで……闘いたかったなぁ……」
そう言いながら、沖田は涙を流していた……
それを見た瞬間、ある決心がついた
「……マスター、お願いがあります。私にもう一度闘わせてくれませんか……最後まで…闘いたいんです……」
「…その傷でか…?ダメだ。立つ事も出来ない今のお前じゃ藤丸君たちの足手まといだ。」
足手まといなのは俺の方だ
「でも」
でも
「一緒に闘う事はできる。」
引くわけにはいかない
「……?」
沖田が不思議そうな顔をしてるが、気にしない。そのまま騎士王を見つめ、流れる様に、沖田の刀を見つめた。
「……!マスター、無茶です…相手はサーヴァント…人の敵う者では「沖田」」
「ーーーーー」
「え……」
「頼んだよ、沖田。……所長!沖田の事お願いします。」
「……行くのね?」
「……ええ。やらなくちゃいけないんです。」
「……はぁ、分かったわ、こっちは任せてあんたは何処へでも行ってらっしゃい、馬鹿弟子。」
「……行ってきます」
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金属と金属がぶつかる高い音が聞こえてきた。おそらく、マシュちゃんと騎士王だろう。その音の方へ進むと、直ぐに止み、ドン、という音とともにマシュちゃんが落ちてきた。
「マシュ!メディア、騎士王を抑えてくれ!」
「分かってる!けど、大した時間稼ぎなんて……!」
「ふん、人類を救う者たちがこんなものとは……
やはり、私の見込み違いだったか……」
騎士王の攻撃を魔術で作った壁でなんとか抑えているメディアだが、直ぐに破れそうだった。
「……もう良い、消えろ。せめて、一撃で終わらせてやろう」
聖剣に魔力が溜まっていくのを感じ、直ぐにこちらも魔術を発動した。
(身体能力……全機能……活性化)
(魔力充填……100%………200%………300%)
「終わりだ………!?」
突然やってきた幾多もの斬撃波を防ぎながら、騎士王は下がっていった。その斬撃を出した者を見ながら…
「……先ほど斬り伏せたセイバーのマスターか。早々に死にたい様だな……あのセイバーと同じよう「黙れ」!」
「あいつは……沖田はまだ、死んじゃいねぇ…」
行くぞ、
「ここからは、俺たちの闘いだ!」
遅れて申し訳ない……
内容が全然思いつかんかったんや……