ザ・ウォーキング・デッド in Japan 作:永遠の二番煎じ
トラックの荷台に乗せられる・・・
Uターンするとトラックのはるか後ろの暗闇の中で大きな金属音に身をびくつかせる。
島津「大丈夫よ。あなたを殺す気はないわ。」
島津はナイフを一緒に荷台に乗っている武装した女性に渡す。
女兵士「無事でよかったです。」
島津「ええ、今度は置いていかないでね。」
と話の内容は酷い出来事なのに笑いながら会話する。
島津「寝てもいいわよ。」
そう言われ、油断してはいけないと思いながらも今日の緊張感が解けてつい寝てしまう。
朝太陽の日差しが急に瞼を熱くする。
小さいまなこを開くとテントの中にいた。
後ろには大きな白いコンクリートの建物が立っていて前に運動場が見えるが運動場トラックが囲むようにビニールハウスがある、その向こうには木造の建物がある。
上野「初めまして、上野総一だ。ここの管理、まあ校長と思ってくれ。」
上下森林迷彩服で筋肉質で腰に銃が刺さっている校長何て見たことないが、
久保「久保文香です。私殺されるんですか?」
と悟ったように質問する。
高笑いした後、
上野「僕はここの校長だ。それに君を殺す理由なんてない、むしろ未来を託すぞ。」
と久保の肩をトントンと叩き、大きな白いコンクリートの中に入って行く。
上野の後ろにいた上下迷彩服の顔が整った美青年が話しかける。
?「僕は羽田佑一だ。君を紹介して周るように責任者に任されてるんだ。」
さわやかな笑顔を見せる。
久保「ここは学校ですか?」
羽田「うん、そうだよ。まずは目の前のビニールハウスを案内しよう。」
羽田はビニールハウスに歩き出し、後ろをついて行く。
ビニールハウスの中で作業する人々が片手の指くらいいる。
羽田は麦わら帽子を被った中年のタンクトップにジーンズを履いた男に話しかける。
?「おお、羽田くん。新入りか?」
首にかけてあるタオルで汗をぬぐう。
久保「久保文香です。」
羽田「この人は猪野大地さん、作物班の班長だ。」
猪野「よろしく、いろいろ手伝ってもらうから。そんときはお願いね。」
と雌犬を見る獣のような目つきで久保を見る。
そんな目つきを気にせず、
羽田「今は何が育ってます?」
猪野「じゃがいもだ。掘ってみろ。」
羽田は言われた通り掘る、両手でしかも素手で。
羽田「食べごろですね。」
実ったじゃがいもをまじまじと見つめる。
猪野「そうだろ、香辛料さえ調達できれば味も楽しめる。」
土まみれの手を掃いながら、
羽田「そうですね、いいですね。」
とくったくのない笑顔で素直に喜ぶ。
羽田「お邪魔しました。」
ビニールハウスの外に出る。
思い出したかのように、
羽田「ゴメンね、楽しくなって忘れちゃったよ。」
久保「いえいえ、全然大丈夫です。」
と苦笑い。
またかも思い出したこのように、
羽田「そうだ、君の役割を紹介するよ。」
久保「役割ですか?」
羽田「ああ、発症者と無縁の君にぴったり・・・かもね。」
と最後さわやかに笑って誤魔化す。
木造の建物に入る、古い下駄箱があり、一部は腐っている。
羽田「ここは戦後まもない頃に立てられた校舎なんだ。この北に立つ校舎は新しい校舎なんだ。」
丁寧に説明しながら幅の狭い廊下を歩くと他の教室とは別格に大きな教室に足を止める。
土で汚れた手で木造のドアを開けると、四人の年齢一桁くらいの子ども達が羽田を囲む。
「羽田兄ちゃん。」
「羽田くん。」
と甲高い声で興奮する子ども達。
?「羽田、ちゃんと手を洗ってから入るんだ。本が汚れる。」
どうやらここは図書室らしい。大きな机の上にノートが置いてある。
羽田は図書室から出て行き、手を洗いに外へ。
?「私はここで子供に勉強を教えている、本郷文太です。」
還暦に見える男性は身なりが整っており、上野よりよほど校長っぽい風貌だ。
久保「久保文香です。」
児童1「じゃあ文香先生。」
そう言われまんざらでもない顔の久保。
本郷「私はかつて高校教諭だったんだ、君は高校生くらいだね?」
久保「はい。」
本郷「一緒に未来ある子供を育てよう、まあ君も未来だがな。」
と言い低い声で上品に笑う。
児童4「じゃあ一緒にこれから毎日ふみ先生と遊べるの?」
羽田「その前に挨拶周りがあるんだ、久保さんは。」
児童は挨拶周りという言葉にポカンとする。
図書室を出る時、羽田は一礼する。
それを見て慌てて久保も一礼する。
子どもたちがドアガラスから手をふる。
羽田は久保を新しい校舎に連れて行く。
再び運動場を通り、真っ白の下駄箱を通り、廊下を左に西に進む。
奥から技術室、コンピュータ室、音楽室とある。
羽田「技術室は発症者対策に使う道具を作る部屋だ・・・あそこはいいや。コンピュータ室と書いてあるが僕たち対処班では監視室と呼んでいる教室だ、校門やフェンスに監視カメラを設定していてそれが監視室でモニタリング出来るんだ。」
羽田はコンピュータ室に入る。
羽田「真子、異常なしか?」
?「ええ、異常なしよ。その子遭難者?」
すぐに久保に気づく。
羽田「ああ、・・・まあそんなところだ。」
?「あ、そう。」
久保「あ、あの、久保文香です。」
?「あ、自己紹介まだしてなかったね。東堂真子よ。」
PC画面を見る男性が2人いるが、こちらを見向きもしない。
東堂「羽田は彼氏だから取らないでねー」
と茶化す。
羽田「余計なことを。」
気おくれしたように言う羽田。
コンピュータ室を出ると同時に技術室からも上下森林迷彩の男性が出てくる。
羽田「武村・・・」
空気が殺気立つ。
武村「おお、これはこれは次期校長。」
白々しくどこか馬鹿にしながら言う。
武村「上野さんは素晴らしいリーダーだ、君と同じで正義感があふれていらっしゃる。」
羽田「今度、真子に手をつけたらお前をここから追放してやる。」
今迄温厚だった羽田が武村にカバのように牙を剥く。
胸元を掴み、表情で威嚇する羽田。
武村「正義の羽田くんはそんなことで追放しないでしょー、愛しの真子ちゃんだって欲求不満だったんだよん。」
ふざけ続ける武村。
羽田「クソ野郎!!!」
一発顔にコブシを浴びせる。
ゴム鉄砲のゴムが放たれたかのように武村は殴られた衝撃で飛ぶ。
武村「そうやって正義のヒーロー気取ってるやつは絶対暴力を振るう、自分の良し悪しの基準でな・・・」
武村は胸元を整えて東に歩いていく。
羽田「醜い部分を久保さんに見せてしまったよ。」
久保「・・・」
その頃屋内プールで・・・
プールで猿轡をしたゾンビ30体ほどがひしめき合う。
水槽の高さだけではゾンビが溢れるのでさらに50cmの薄板で補強している。
これによってゾンビは水槽を上がれずに鳥籠の中で突っ立ている。
それをプールサイドで見る上野・島津・武村。
上野「外には常に盗賊団がいると国民に言っているが本当に出てくると脅威だ。」
島津「青井和成はあなたと対話したがってたわ。」
上野「それでも殺された仲間の為にも青井和成・生田優香・斉藤加奈は消さないといけない・・・」
武村「では息の根を止めに。」
上野「ああ、国民を守るために手を汚さないとな。」
この判断に島津は納得はいかない。
燃えるような夕日が沈むころ、監視カメラにゾンビがフェンスの金網に引っ付き虫のように掴む。
監視室からトランシーバーで、
東堂「発症者一体南フェンスに確認。」
対処班は正門近くの、置いてある細い竹槍でゾンビの頭を突く。
羽田に久保の寝床を案内される。
木造校舎の一年生の教室で畳が置いてあり、教室の真ん中には石炭ストーブが置いてある。
羽田「加入者はしばらく信頼を得るまでここで寝てもらう。」
教室の隅には毛布と枕だけある、窓は割れていてフェンスの監視カメラがなければ逃げれるだろう。
黒曜石のように暗い教室が外の対処班の電灯がたまに天井を照らす。
すると夜に人影がカラカラとドアをスライドさせ、誰か入ってくる。
得体のしれない何かなので、あまりの恐怖に声が出ない。
窓を開けて助けを求めようと脱出を試みようとすると、
最言「文香さん、助けに来ました。」
小声で最言が話しかける。
久保「最言くん?」
最言は黒ずくめで、口元を布で隠して野球帽をかぶっている。
久保「森下さんは無事なの?」
最言「はい、近くで待ってます、寺に帰りましょう。」
ガラガラと今度は大きなスライド音がした。
猪野「久保さん、ちょうど手伝ってほしかったんだ。」
汚い声で甘える猪野。
久保「何をですか?」
猪野「まあ、俺の部屋に来てくれ。」
ウーと備え付けられた拡声器からサイレンが鳴る。
舌打ちをした後
猪野「今は発症者なんてどうでもいい、俺が居なくても対処できるだろ。」
久保を押し倒して左手で口を塞ぎ、右手で器用にジーンズを降ろす。
うめき声が窓から聞こえる。
ロッカーに隠れていた最言が猪野に向かってタックルする。
猪野は鈍く転がり、足をくじく。
猪野「痛てえ・・・」
外で銃声が鳴りはじめた頃、
最言「大丈夫か?」
久保「・・・」
脂ぎった男性に襲われかけて大丈夫であるはずがない。
そのとき足を掴まれる。
猪野「この野郎!!!」
そのまま引きずり最言を殴る。
何回も何回もパンチングマシーンのように最言を殴りまくる。
すると猪野は肩を負傷して転がる。
久保は最言が猪野と揉みあった時に落とした銃を拾って安全装置を外して撃ったのだ。
久保はタコ殴りにあった最言に手を貸す。
猪野「お前ら二人とも殺してやる。」
窓際で負傷した猪野がホルスターから銃を構えるが、無数のゾンビが割れた窓外から手を伸ばして窓外に引っ張り出す。
猪野は叫ぶことなくゾンビの餌となった。
最言と久保はあっけにとられるが脱出を試みる。
運動場の方に逃げると、人々が向かいのコンクリートの校舎に避難する。
最言「駐車場に森下さんが待ってます。」
北の校舎でなく西の駐車場に向かう。
サイレンが鳴る五分前・・・
監視室に正門にいる対処班から報告が入る。
報告を受けて見る監視カメラにはどこからともなく雲のようにゾンビが集まってくる。
東堂「増援を送ります。」
閉ざされた正門から警備班の二人が無数のゾンビ相手にカービンライフルを撃ちまくる。
サイレンが鳴りはじめ、
監視カメラの目を潜って、正門の外に隠れていた生田がゾンビに気を取られている警備員を撃つ。
正門を外から開けて、ゾンビを招く。
砂時計のようにゾンビが正門から侵入すると同時に生田も上野暗殺のために潜入する。
南の正門から突破したゾンビは木造校舎の中に入ったり、周りを歩く。
サイレンを聞いて飛び起きて運動場に集結する人々。
運動場の朝礼台に立つ上野、その立ち姿は勇ましさを彷彿とさせる。
上野「戦える者はこの学校を守るんだ。女子供や高齢者は避難しろ。」
男たちは鎌や鍬、竹槍を持って南に向かう。
朝礼台から降りる上野は羽田に遺言のように告げる。
上野「もしもの時は頼むぞ。」
羽田は敬礼した後、避難民を誘導する。
上野は武村を連れて、ゾンビ討伐に加勢しに古い校舎に行く。
闇が包み込む中でゾンビを倒すのは容易ではない。
人々は噛まれながらも勇敢に戦う。
「うう。」
「噛まれたのか?」
「ああ、だが今は目の前のことをやるんだ。」
鎌で首を刎ねたり、鍬でゾンビをこかし頭をぶっ潰したりする人々。
そこに上野や対処班が銃で応戦する。
「校長が来たぞ!」
男たちの間で士気が高まる。
トランシーバーで東堂に確認する。
羽田「どこが安全だ?」
東堂「駐車場はもう無理だわ、裏門から逃げるのが最良の選択だわ。」
羽田「責任者を置いてはいけない。」
トランシーバーをオフにする。
羽田は北のコンクリートの校舎に避難民を誘導する。
ライフルを構えて寄ってくるゾンビに技術室で作った手製の銃剣を頭に向かって突き刺す。
転倒する子どもに手を貸す羽田。
羽田「大丈夫か?さあ立つんだ。」
生田はバイオリンが入りそうな箱から鉄の部品を組み立てスナイパーライフルを完成させる。
体育館の吹き抜けの二階通路から銃口を向ける。
ゾンビに向かって銃撃する上野をたまたま暗視スコープに捉える。
狙いを済ますと後ろから島津が腰に向かって体当たりする。
生田は体勢を崩すも、折り畳み式ナイフを腰から出す、暗闇に銀色に光る刃。
暗闇の中で意志を持ったかのように動くナイフが島津を襲いかかる。
無数の乾いた声が二階を登ってくる。
生田は銃口が出ている窓から無理やり飛び降りる。
スナイパーライフルを廊下に向けて暗視スコープで頭を狙撃する島津。
島津は後ろから上野に噛みつこうとするゾンビにヘッドショットする。
体育館から上野を掩護する。
ゾンビに押されていた上野たちは次第にゾンビに対して満潮の潮が引くかのように巻き返し始める。
侵入源の正門を無事閉めて、学校敷地内の残りのゾンビを駆逐する。
夜が更けて朝の陽が顔を出す。
屋内プールのゾンビは農園襲撃に使用されたものです。