ザ・ウォーキング・デッド in Japan   作:永遠の二番煎じ

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前回までの登場人物の情報。
青井和成・・・生田・斉藤・森下と揉める。
森下信悟・・・左ひじが無く、生田を好きになりつつ、久保文香を娘に重ねる。
生田優香・・・心変わりが激しく情緒不安定。
斉藤加奈・・・常に冷静で人を見極める、空手や弓道に精通。
久保文香・・・最言を好きだが、自分自身はまだ気づいていない。
鈴木空親・・・末法思想でこの世界が一度滅びまた復活する最中であると思い込んでいる。
鈴木最言・・・平安宗修行僧で身のこなしが軽く、自分は何も殺生しないという平安教の教えが身に付きつつある。
島津志穂・・・森下のことや上野のことも知っている、上野の右腕で仲間からは教頭と言われている、シーズン4の鍵。
上野総一・・・前の安全地帯の責任者で現在は小規模のグループを率いて学校を拠点に統括している、仲間からは責任者、校長とも言われている。


リーダー

暑い日差しの中、

青井と森下は台車に腐敗体や焼死体を乗せて寺院の門の外に運ぶ。

森林に燃え広がらないように、芝生すら生えていない土の上に可燃ごみのように荷台から死体を降ろす。

空親は部屋にこもり取りつかれたように写経し、中華包丁を持つ生田と斉藤は島津を見張る。

 

最言と久保は燃え広がらないように草むら辺りを見回す。

手を合わして目を塞ぎぶつぶつと何か唱えている最言。

久保「何言ってるの?」

最言「魂を清めているんだ。」

そう言われてなんとなく久保も手を合わせる。

 

バチバチと鳴る炎に寄ってくるゾンビ。

森下は左ひじのナイフで前頭葉に刺した後、そのまま死体を引きずって炎の中に運ぶ。

青井と森下は燃える死体を見ながら、

青井「さっきはいきなり殴って悪かったよ、自分を忘れてしまってた。」

森下「ああ、俺こそ悪かったな。」

 

四人は火元が消えるのを確認して寺院に戻る。

最後に中から門を頑丈に閉める最言、

森下「なあ、お前が蔵からゾンビを放ったのか?」

肩と肩がぶつかるぐらい近寄って小声で最言にだけ聞こえるように問いかける。

 

最言「蔵の中にうつけ者がいたことは知っていました・・・それを隠していたことは謝ります。しかし信仰に誓って蔵から疫病を放とうとは思いません。」

真っ直ぐな目で森下に告げる。

 

森下「分かった、そういえば蚊も殺さないんだったな?」

最言「おっしゃる通りでございます、平安宗の信仰では殺生はいけません。」

森下「最近文香と仲良くしてるが、お前はゾンビを殺さず文香を守れるのか?」

最言「・・・信仰によって助けます。」

返答に詰まりつつもあくまでも平安宗として答える。

森下「もし出来ないなら文香から距離を置いてほしい・・・」

 

場面は島津を捕えた畳のある和室に変わる。

島津「私を解放すればあなたたちを助けてあげられる。」

生田「そんなこと本気で信じると思う?」

包丁をちらつかせる。

 

島津「私は善意で言ってるの。」

斉藤「私達をほっといてくれるならいいですよ。」

生田「ちょっと、加奈ちゃん勝手に口挟まないで。」

 

そこに青井が障子を開けて入ってくる。

青井「島津志穂さん、俺は安全地帯のとき上野責任者と会った事ある。農園を襲撃したのか?」

島津「・・・」

黙秘する島津。

 

生田「やっぱり、この女は農園襲撃したんだわ。」

青井「待て、待て。」

持っている中華包丁で近づく生田を青井は左腕で阻止する。

 

青井「優香、斉藤、二人にしてくれ。」

生田はむくれて出て行く、斉藤もどこか納得せず無言で出て行く。

少し隙間のある障子をぴたりと閉める。

 

青井「俺はこのグループのリーダーだ、上野責任者は対談できる人物だと信じてる。」

島津の目と合わして、見開いて真剣に話す。

島津「・・・分かったわ。その変わり犯罪者扱いはやめて平等にしてくれる?」

青井「いいだろう・・・ただしあんたが信頼できるまで寺院内で当分は働いてもらう。」

握手を交わして、島津を部屋から出す。

 

廊下で待っていた生田と斉藤は、

生田「和成、どうゆうこと?」

青井「交渉が成立したんだ。」

斉藤「強引ですね。」

青井「俺はグループを想って一番いい方法を試してる。」

珍しく声を荒げ感情的になる青井。

 

そこに森下が通りかかる。

生田「森下さん、言ってやって。」

森下「リーダーは和成だ・・・」

と言って通り過ぎる。

生田は飽きれてその場から去る。

斉藤「本当に交渉は上手くいきますか?」

青井「それは相手を信じるしかない。」

 

森下は久保を連れて涼しい森の中でゾンビへの護身術を教える。

森下「ナイフはこう持つんだ。」

ナイフの刃先をやや傾け、地面に向けて柄を持つ。

久保も柄を持ちナイフの刃先を真下に向ける。

森下「手に力を入れるんだ。」

 

アドバイス通りに強く握る久保。

森下はナイフの柄を拳を振り下ろすように持ってそのまま近くの幹に刺す。

森下「やってみろ。」

同じようにナイフを持ち、幹に刺そうとするが弾かれる。

久保「できないよ。」

弱音を吐く。

 

森下「体重をかけてみろ。」

言われた通りやってみるとナイフは幹に刺さる。

久保「やった。」

と口角を上げて笑う。

 

するとその幹に隠れていた島津が刺さったナイフを抜いて、久保を羽交い絞めにして目元に刃先を近づける。

森下「やめろ。」

島津「どうやら大事な娘さんらしいね。」

森下「頼む、たった一人の娘なんだ。」

助けを乞う。

 

島津「だったらナイフを捨てて。」

言われるがままナイフを捨てる。

島津「左ひじの義手ナイフも捨てなさい。」

森下「一体何をさせるんだ?」

右手で左ひじの義手を外し、地面に捨てる。

 

島津「私のホームに帰るのよ。」

森下は久保を人質に捉えられたまま、前を歩かされ軽自動車に向かわされる。

道路が見え森から藪に変わるときゾンビが一体来る。

森下「ナイフを貸してくれ。」

島津「あなたが噛まれても私は死なないから。」

後ずさりする森下。

だがゾンビに両肩を掴まれ押し倒される。

 

押し倒されたと同時に右手に収まらないごつごつした石を掴み、ゾンビのこめかみを砕く。

そのとき返り血が顔にかかる。

石を持ったまま立ち上がる。

鬼のような形相で島津を睨む。

島津はナイフを久保の喉に突き付けると、森下は血のついた石を捨てる。

森下は軽自動車の助手席に乗り、島津と久保は後部座席に乗る。

エンジンをかけてレバーを不器用に右手で操作する。

 

森下「俺はいいが瑠璃は殺さないでくれ。頼む、お願いだ。」

島津「・・・考えとくわ。」

森下は片手ハンドルでアクセルを踏む。

指定された場所を言われ、向かう。

 

寺院内で・・・

井戸の近くの洗面台で服を洗う二人。

青井「前は悪かった。」

斉藤「・・・」

青井「ちゃんと優香と向き合うよ。」

斉藤「・・・」

 

塀に不自然に梯子がかかっているのを生田が見つける。

そこに最言も居合わせる。

生田と最言は察する。

生田「油断してたわ・・・やはり殺すべきよ。」

最言「久保さんと森下さんが外で訓練してます。」

心配そうに言う最言。

 

井戸から服を持って母屋に帰る青井と斉藤を生田が見つける。

生田の話を聞いて、青井と生田は夕暮れ時の森に向かう。

森中で地面に赤く光るナイフと義手ナイフを見つける。

生田「殺してやる。」

生田の目が鋭くなる。

青井「それは状況次第だ、道路に行ってみるぞ。」

 

廃車が並ぶ道路、月が浮かんで来ようとしている。

青井「もう遅い、お前は帰れ。」

生田「やだよ、絶対殺してやる。」

青井「気持ちは分かるが、ゴルフバックを寺院に運んでおいてくれ。」

生田「でも・・・」

青井「誰も戻らなかったらお前が引っ張っていってくれ。」

青井は斉藤が島津を見つけた場所に向かって近くに乗り捨てられていた自転車で走って行く。

 

バスが横転していたために、遠回りしただけで意外と寺院に近い道路に戻ってくる。

島津に十字路の真ん中で軽自動車を停車するように指示される。

森下「こんなど真ん中じゃあゾンビに袋の鼠にされちまう。」

島津「ライトを消しなさい。」

ライトを消すと月明かりだけが周りを照らしている。

 

しばらくするとヘッドライトを点けた中型トラックが向かってくる。

ライトの中にぎりぎり入るくらいの位置の向かいに止まる。

逆光がまぶしく、荷台から降りてくる黒い人影のシルエットだけが見える。

シルエットには玩具には見えないしっかりとしたカービンライフルが形として浮かび上がる。

 

しっかりと引き締まった大声で、

「全員降りて手を挙げるんだ。」

三人は手を挙げて車から降りる。

人影が島津に気づく、

「教頭!!!」

島津「この女の子と一緒にトラックに乗せて。」

島津は久保と一緒にトラックの荷台に乗る。

 

トラックはUターンして暗闇に消えていく。

残ったのはカービンライフルを持った男二人と森下だ。

「名前はなんて言うんだ?」

「森下だ。」

「下の名前は?」

と聞いて二人の男がライフルを構えるのをやめた瞬間、森下は二人の男からは死角になっているドアからリボルバーのグリップを持ち、引き金を引く。

 

鈍く激しい響きが青井の鼓膜にも届く。

それを聞いてペダルを漕ぐ回数を増やすが、古タイヤがスピードについていけずにパンクする。

自転車を捨てて、銃声のあった方向に向かう。

 

森下は死んだ男二人から計4丁の銃を奪う。

森下「これでも昔は刑事だったんだ。」

と死体に話す。

 

二丁のライフルを片手に肩にかけて自動車に戻る。

銃身下に付いているライトを照らすと青井がいた。

森下「おお!!!びびったじゃねえか。」

青井「久保はどうしたんだ?」

森下「多分生きてるだろう、だから今から追いつく。」

青井「待て、夜は危険だ。」

森下「今からなら追いつける。」

 

口論していると車のフロントに暗くて分からないが、丸い何かが飛んでくる。

よく見ると・・・

 

青井「伏せろ。」

青井と森下は地面に張り付く。

車は爆発音とともに炎上する。

その赤い炎にゾンビが寄ってくる。

手榴弾を投げた壊死状態の男はゾンビに喰われる。

 

森下「野郎!」

青井は森下からカービンライフルとオートマティック拳銃を一丁ずつ取る。

八方から来るゾンビの頭を丁寧に撃つ。

炎上する車の前で自動小銃の弾丸たちが暗黒の空間に向かって脳天を撃ち抜き光線が斬り裂く。

 

青井「寺院に向かうぞ。」

森下は頷き、青井の後ろを護衛する。

銃身付属のライトで闇の深い森に向かって二人は走る。

銃声でゾンビをおびき寄せないように、立ちはだかるゾンビはリアサイトを持ちバッターのように振り払う。

 

真夜中の寺院で開門し燈籠を二つ端に置き、サブレッサー付きのアサルトライフルを持つ生田と弓を構える斉藤。

ゾンビが燈籠の光に導かれて近づいてくる。

生田が銃を構える。

斉藤「待ってください、弾の無駄です。」

弓を絞り、絶好の距離でゾンビの頭に矢を命中させる。

生田「群れて来ても弓で戦うの?」

斉藤「・・・」

矢をゾンビの頭から引き抜く。

 

最言が門にやってくる。

最言「見てください。」

三枚の写真を見せられる。

生田と斉藤は絶句。

最言「塀に立てかけてある梯子の向こう側に落ちてました。」

 

するとゾンビが数十体ほどよろよろと不規則に近づいてくる。

三枚の写真を最言から取り上げるようにポケットに入れる生田。

斉藤は置いてあるゴルフバックからサブレッサー付きの自動小銃を取り出す。

生田と斉藤はまるでジェンガの塔を崩さないように銃弾を正確に急所に当てる。

これには間近で見ている少年も感心する。

 

二つの赤白い光が見える。

青井「もう少しだ。」

森下「ああ。」

二人は拳銃に持ち替え、片っ端から寄ってくるゾンビを至近距離で撃つ。

 

生田「和成と森下さんが帰って来た。」

二人の男が福男になるために門を目指しているみたいに必死に走る。

二人は滑り込み地べたに倒れる、生田と斉藤が門を閉める。

ドンドンと外から壁を叩く音と唸り声が無数に聞こえる。

 

生田は森下の肩を持って介抱し、斉藤は青井に駆け寄る。

青井「俺は大丈夫だ・・・森下を運んでやってくれ。」

斉藤「分かりました。」

 

翌日昼下がりに目が覚める。

大広間から何か話し合う声が聞こえる。

いつも横で寝ている森下がいない、布団をたたんで和室から縁側に出て声のする大広間に歩く。

森下・生田・斉藤・空親が座布団に座って談合している。

森下「文香がさらわれたんだ、今日の夜襲撃に行く。」

斉藤「気持ちは一緒です、でももう少し冷静に対処を。」

生田「森下さんの言う通りよ。」

最言「と、と、とりあえずお、落ち着いてください。」

青井「おはよう。」

 

すると四人が静まる。

青井「急に身内のお通夜みたいにどうしたんだ?」

生田「これを。」

三枚の写真を青井に見せる。

そこには農園の時の青井・生田・斉藤がピンでそれぞれ写真に写っている。

斉藤「きっと敵がきますよ。」

森下「和成、昨日の件で分かっただろ。交渉なんてはなっからねえんだ。」

青井「来るなら説得あるのみだ。」

森下「いや、瑠璃を助けて上野も島津も殺す。」

青井「久保が生かされてるなら、まだ話し合いで解決できる。」

森下「だったら今回も多数決で決めようじゃねーか。招くか、お邪魔するか。」

 

青井「じゃあ説得に手を挙げてくれ。」

誰も手を挙げない。

森下「襲撃に賛成のやつ。」

生田が手を挙げる。

生田「加奈ちゃんと最言くんは?」

斉藤「私はこちらが数的不利な場合は迎え撃つ形の方が有利だと思います。」

最言「・・・斉藤さんの意見に賛成です。」

青井「おい、最言!お前の信仰は平和を信じる宗教じゃないのか?」

斉藤「最言くんに当たらないで。」

森下「お前は少しの間・・・リーダーという荷物を降ろせ。」

青井「争いは何も生まないぞ・・・」

森下「じゃあみんなの意見を総合的に判断して、迎え撃つ。」

青井以外のその場にいる三人が納得する。

 

夕暮れ時青井は黒い大理石の浴場に入る。

シャワーを浴びて、湯気の出ている熱湯がはったヒノキの浴槽に身体をゆっくり入れる。

もしかしたらリーダーというものが自分を追いつめたのかもしれない、そう考えながら白い湯船に顔をつける。

するとガラガラと誰か浴場に入ってくる。

青井「森下か?」

ぺたりぺたりとゆっくり足音が近づいてくる。

「私でした。」

浴槽を挟んで後ろから両手を青井の鎖骨あたりに絡ませる。

青井の耳に甘噛みする。

柔らかい唇が耳に快感を与え、もっちりした胸が青井の背中に吸い付く。

「仲直りのセックスか?」

「謝って。」

甘えるような声で耳元にささやく。

「確かに俺達最近気まずかったよな・・・」

「意見は違うけど、私達家族よ。」

「ごめん。」

浴槽を挟んでお互い舌を絡ませ合う。

 

墨汁のように黒い景色の中に薄明かりが漏れている学校・・・

丘から上野がいるであろう学校を見渡す。

戦場の兵士のような重装備の森下と生田。

森下「隠密に行くぞ。」

生田「ええ、二度と反撃できないようにしてやるわ。」

森下は最言に拳銃を渡す。

森下「さっき教えたとおり、安全装置を外して、引き金を引くだけだ。」

最言「あくまでも文香さんを助けるだけだ。人は殺さない、うつけ者もだ。」

森下「だったら急所を外せ、10発入ってる。今は信じてるだけじゃあ何も救えない。」

何かに葛藤しながらも最言は銃を受け取る。

 


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