ザ・ウォーキング・デッド in Japan   作:永遠の二番煎じ

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今回ほとんど台本形式です。


再出発

物静かな山の中にある神社で、

「和成、来るの?」

疑いの目で青井に何度も聞いている。

生田は亡霊を待っている気分になる。

 

「ああ、ゴルフバックの中身だけ無くなってたから生きている、と思う。」

だんだん自信が無くなりトーンダウンする青井。

 

神社の中で神を祀っている方向に対面して斉藤は正座して手相を上に向けて膝上で指先を合わせる。

周りには人骨が転がっている、しかし斉藤は瞑想状態になる。

 

数時間後・・・

 

青井と生田は銃を構える。

二人並んで歩いていてこちらに向かってくる。

青井と生田は安堵の表情を浮かべ、銃をホルスターに収める。

 

四人は再会して、互いに抱擁と握手を交わす。

青井「みんな、無事で良かった。」

生田「うんうん、まさか生きてるなんて思ってなかったよー。」

森下「そうだな・・・」

 

神社の騒がしさにゾンビが数体近寄ってくる。

森下「水を差されたな。」

 

近寄ってくるゾンビの頭に次々と矢が刺さる。

青井・生田・森下・久保は斉藤の弓矢の射るはやさに圧巻する。

 

青井「さすが弓道部だな。」

斉藤「弓道部じゃないけど、かなり練習はしました。」

森下「矢は銃弾と違って回収できるから便利だな。まあ俺は弓矢を扱えないが。」

斉藤はゾンビに刺さった矢を次々と脳天から抜いていく。

 

森下「そういえばお前らどこに住んでるんだ?」

青井「車中でやり過ごしてたよ。」

森下「そうか俺も一緒だ。軽トラックで2人でしのいだよ。」

青井「これからどうする?」

森下「とりあえず、安全な場所に移動しよう。」

 

5人は下山してそれぞれの車に乗る。

軽トラに森下と久保、軽自動車には青井・生田・斉藤が。

 

牽引する軽トラの後ろを走行する青井。

 

町は避けて常に下道を走り続ける。

すると軽トラが止まる。

 

前から森下と久保が軽トラから降りてくる。

青井も生田と斉藤を残して軽自動車を降りる。

青井「どうした、森下?」

森下「ガス欠だ・・・」

 

軽自動車に五人全員乗る。

青井「安全な場所ってあるのか?」

森下「この先に大きな敷地を持っている瓦屋根の家がある。」

生田「本当に?」

森下「昔、刑事事件で家宅捜索したことある。」

ちらほらと家が建っているがかつて田地であった場所が広がっている。

 

運転していると外壁が白塗りで鼠色の屋根瓦の大きな屋敷が見える。

黒い板塀に囲まれているようだ、周りにはゾンビどころが人の生活している気配もない。

屋敷前に車を止めて、青井・斉藤・森下が薬医門の前に立つ。

 

門は閉まっていて門の格子の隙間から見ると庭は荒れていて草が伸びまくっている。

青井「門はこのままでいい。」

軽自動車を板塀にギリギリまで寄せる。

青井は自動車の上に乗り、板塀に乗り移り庭に降りる。

森下と斉藤も青井に続き、庭に侵入する。

 

木の引き戸の洋錠の鍵穴を青井はスイス製ナイフのキーピックで鍵を解除する。

森下「手慣れてるな。」

青井「ああ、こうやって物色して生き延びてきた。」

斉藤は弓を構え、森下は片手で拳銃を構える。

青井はゆっくり音を立てないように引戸を引く。

 

土間に侵入し、森下が土壁をコンコンコンと叩く。

スーツを着たゾンビが出迎える。

斉藤は矢を射る、見事におでこに命中する。

青井と森下は死体を庭に出してから、五人は家に入る。

 

生田「和室しかないよ。」

青井「そうだな。」

青井は使い古されたかまどを見つける。

青井「江戸時代からリフォームされてないのか。」

森下「ああ、ここは明治から公民館として使われていた。だが殺人事件現場となり閉鎖されたんだ。」

畳はほこりがかぶり黄色からグレーにやや変色しつつある。

 

太陽が沈む頃、広間に円になって集まる。

召集をかけたのは生田であった。

生田「襲撃された農園について解決しましょう。」

青井「優香は反撃したいそうだ、正体も分からない相手に。」

生田は不服そうに。

 

森下「正体なら分かる。」

久保と斉藤は召集された時から無言で静かにしている。

 

青井「なんだって、それは本当か?なら話し合いに持っていくほうがいい。誰だ教えてくれ。」

森下「まあまあ、そう早まるな。相手は上野という人物だ。」

生田「上野総司令・・・」

 

すると真一文字の口を開く。

斉藤「決めつけるのは早いわ。」

森下「最初は俺も安全地帯のトップが頭によぎった・・・確かに、そうだな。」

久保「あの?上野総司令って誰ですか?」

 

森下「俺たちはゾンビが発生した時、瑠璃はその時いなかったが安全地帯に受け入れてくれた人物だ。」

斉藤「・・・」

青井「ああ、だが安全地帯は盗賊団に襲撃され崩壊した・・・」

久保「そうだったんですか・・・」

 

生田「昔の希望に浸る前に、反撃するかしないか決めましょう。」

それた話を戻す生田。

青井「よし、じゃあ反撃したい人は挙手だ。」

森下「多数決だな。」

すると森下と生田が手を挙げる。

 

生田「な!森下さんだけ!!」

てっきり斉藤も手を挙げると思っていた生田。

青井「・・・」

森下「俺は瑠璃を守りたい。だから少しでも危険な要素は排除したいんだ。みんなの意見聞かせてくれ。」

生田「そうよ、森下さんの言う通り。ゾンビはもちろん私達に攻撃的な人間も敵だわ。」

青井「気持ちは分かるが、やはり話し合いをもちかけるべきじゃないのか?」

斉藤「私はこの心友たちだけでゆっくり暮らしたい。」

久保「・・・正直分かりません。」

 

議論は拮抗して結論は出せずに解散し夜を迎える。

長テーブルのろうそくに火を灯している。

ナイフで木の枝をできるだけ円柱に削り、鳥の羽を先端に装飾する。

その作業がろうそくの光によって障子に造影されている。

 

斉藤「誰?」

生田「ばれたか。」

と明るい声色で答え、暗闇から障子を開けて部屋に入る。

斉藤は円柱にした棒の羽の付いた先とは逆の先端をナイフで削り尖らし始めた。

 

生田「矢作れるんだ!!すごいね。」

斉藤「・・・」

何の反応もしない斉藤。、

 

生田「ねえ、農園の時一緒に人殺したよね。」

偽善な態度をやめ、本題に。

斉藤「なんで反撃に手を挙げなかった。って言いたいんですか?」

生田「加奈ちゃん、すごいー、私の心の中分かるんだ。ならなんで?」

無表情で問う。

斉藤「私は追ってくる敵だけと戦います、死んでいようが生きてようが。」

生田「なるほど、自分さえよければそれでいいと?何回も助けてあげたのに。」

実際何回も助けてもらったが恩着せがましい。

斉藤「それは優香さんじゃないんですか?」

 

一方別の部屋で。

畳の上で2人は足を崩して話し合う。

森下「もし、こんな夜中に襲撃されたらどうする?」

青井「襲撃なんていつされてもおかしくない。それより瑠璃って誰だ?」

森下「また言っちまってたようだな・・・生き別れた娘さ。つい久保がそう見えちまうのさ。」

青井「そうか・・・だが反撃したって憎しみを生むだけだ。何のために反撃する?食料?燃料?情報が入った端末のためか?違う・・・憎しみが反撃を生む、ゾンビを殺すのとは訳が違う。」

 

翌朝再び広間に円になって多数決を取る。

青井「森下、優香、斉藤、久保・・・この決で今後の俺たちの生き方が変わる。」

手を挙げたのは森下と生田であった。

森下「・・・決まりだな。」

青井「よし、移動だ。」

 

五人は荷物をまとめて出発した。

 


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