ザ・ウォーキング・デッド in Japan   作:永遠の二番煎じ

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今回の主な話は全てマンションの廊下で起こったことです。



変わらない人格

東岡はマンションの裏の非常口階段で斉藤に話した。

「最近、大島は自分がヒトラーになったかのような気分で指揮してる。お前はどう思う?」

「まあ確かに、満身創痍してふんぞりかえってるのはたしかね。」

斉藤も最近の大島のリーダーの資格を疑いはしていた。

 

「なあ、このままじゃあ家族が危ない。俺とお前で指揮らないか?」

斉藤は東岡の提案に驚きを隠せなかった。

「つまりクーデター?」

「ああ。」

 

その時、階段に空き缶がカラン・コロンと音を立てて落ちてきた。

「一つ上の階だ!」

東岡が叫ぶと、

斉藤はすぐに階段を上がり弓を構えた。

「止まりなさい!」

 

斉藤には女性の後ろ姿が見えた。

だが盗み聞きしていた女性は斉藤の忠告を聞かずに止まらなかった。

斉藤はやむ負えず、矢を放った。

 

見事矢が太ももに命中して女性がこけた。

女性は左太ももに刺さった矢を痛がっていた。

東岡も後から階段を上って来た。

そして東岡は先に近寄り誰か確認した。

 

女性は坂下であった。

斉藤は驚き、

「坂下さん!ごめんなさい!!今医療班呼んでくるから!!」

「待て!!!」

東岡は大声で斉藤を止めた。

 

「坂下さん、もしかして大島に言うつもりだったのか?」

東岡は冷静に質問した。

斉藤も少し離れたところで様子を見ていた。

 

坂下は矢の刺さった左太ももを抑えながら頷いた。

東岡は坂下をへの字に右肩に抱いた。

「さあ、早く坂下さんを医療班のところに!!」

 

すると東岡は斉藤の言葉を無視し、五階のマンション廊下から坂下を投げ捨てた。

東岡は冷酷な顔で斉藤の方に向いて、

「これで一人大島派は消えた。」

 

上層階の騒ぎに家族が集まって来た。

大島も来た。

「何があったんだ?」

大島は廊下を見て一瞬で把握した。

乾いていない血痕、坂下が身に着けていたペンダントが東岡の前に落ちていた。

 

大島は拳銃をホルスターから抜いて東岡に構えた。

「東岡、どういうことだ。説明しろっ!!!」

 

東岡もホルスターから拳銃を抜いて大島に向けた。

この光景を見た家族たちは見なかったかのように自分たちの生活空間に急いで戻った。

廊下には三人だけとなった。

 

「お前のせいだ!お前が自分に負けたから坂下は死んだんだ!お前に俺は撃てないだろ!!おおしまあああああ!!!」

大島は東岡の裏の顔を見て尋常じゃない狂気を感じた。

「東岡、お前がそんな奴・・・いやこの世界が変わったからか。だが家族を危険にさらすやつはここに置いとけない・・・」

 

パンーと一発の銃声がした。

 

大島は東岡に頭を撃たれ即死した。

「これで俺の集団だ。これから俺の集団だ。」

東岡は強面で独り言を言っていた。

まるで壊れた機械のように。

 

斉藤はナイフで後ろから思いっきり東岡の心臓を突き刺した。

東岡は仰向けに倒れた。

「斉藤・・・お前に・・・こんな勇気があるとはな・・・」

最後に膝枕のような形で斉藤は東岡を見る、呼吸の回数が少なくなっていく。

ハア、ハアと息を吸おうと口呼吸で。

長い結った髪が胸元に。

東岡は片手で包み込むようにポニーテールの先端を掴む。

 

斉藤に向かってなぜか喜の顔で東岡は息絶えた。

目に涙を浮かべながら東岡の最後を看取った。

斉藤はゆっくりと東岡の頭にナイフを刺した。

 

この事件後、斉藤は責任を取ってマンションから出て行った。

 

こうして斉藤・東岡・大島・坂下の四人の友情物語にピリオドがついた。

もしこんな世界でなければ四人にこんな悲劇は訪れなかっただろう・・・


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