ザ・ウォーキング・デッド in Japan 作:永遠の二番煎じ
これから始まる物語までに死んだ家族の数は数えきれないだろう。
家族・・・ここでの家族の意味は同じ集団生活の仲間のことである。
斉藤・東岡・大島・坂下は安全を求めて、全国各地を周っていた。
そして現在途中で出会った信頼できる生き残った生存者たちと集団で行動していた。
東岡が六階建のマンションの屋上で街を見張っていた時である。
このマンションは二階から上しか使えないように全ての一階に通じる階段をタンスや電化製品で塞いでいた。
大島は白いタオルのようなものを持ってきた。
東岡「大島、そんな汚いタオル持ってきてどうしたんだ?」
大島「これで仲間を見分けるんだ、最近じゃあ別の敵対グループがスパイとして入っていることがあるからな。」
東岡はスナイパーライフルで街を見渡しながら、
「それは名案だな、俺達ぐらいでかい集団は他にいないからな。」
大島は恥ずかしそうに、
「じゃあさあ、ついでに俺たちの集団名も決めとかないか?」
東岡は意外な反応を見せ、
「それもいい案だな、で?お前はどんな名前にするつもりなんだ?」
大島「日本隊、新日本国、日本自由連合とか?」
東岡は鼻で笑った後、
「全部日本が入ってるな、シンプルに渡り鳥でよくないか?」
大島「『渡り鳥』か、いいな!」
大島は気に入ったようだ。
大島は機嫌よく屋上から去った。
こうして四人率いる『渡り鳥』という集団となった。
そして『渡り鳥』の人々には日の丸の腕章をするように義務付けた。
『渡り鳥』という集団の命名の意味は常に移動することの意味も込められていた。
四人は五階の部屋で移動会議をしていた。
その部屋の前のインターホンの下に幹部会議室とチョークで書いてある。
斉藤「もうこのマンションに来て一週間経つわ。」
坂下「加奈の言う通りだわ、移動しよう。私いつ発症者の大群が襲ってくるか心配だし。」
東岡「問題は子供たちをどうやって移動させるかだな・・・ここを気にいっているようだしな。」
東岡はあからさまにここで籠城したいという態度が出ていた。
大島「じゃあ東岡はここを守ればいい、俺はしばらく安全な場所を探してくる。」
大島「斉藤、来てくれないか?」
大島は斉藤に何か話したがっているのを察知して斉藤は、
斉藤「分かった、ついていくわ。」
大島「あと、物資調達班から小林・鈴木・金井・伊藤の四人を連れて行っていいか?」
東岡「大型トラックでも使う気か?好きにしろ。主将。」
六人は拳銃とサバイバルナイフを携帯してから二階のマンションの一室のベランダからカーテンの縄で降りた。
大島があらかじめ用意した軽トラに乗って六人は次の『渡り鳥』の棲家を見つけに走り出した。
大島は運転席・斉藤は助手席に乗り、後の四人は荷台に乗った。
大島「なあ、もう本土は盗賊がいたりして危ないからどこか島を目指さないか?」
斉藤「島?でも今の拠点のマンションから遠いわよ、それに船は?」
大島「船なら見つけた。大型客船をな、それにあとはバスを見つけて移動するだけだ。」
斉藤「だからあの四人を連れてきたのね、海を移動するってこと?」
大島「ああ、そういうことだな。」
そういう会話をしているうちに市営バスが何十台も止まっている場所についた。
金井「おいおい、俺はトラック運転手だぞ?それに新しい拠点を探すんじゃないのか。」
大島は降りて金井に頼んだ。
「頼む、バスとトラックは似たようなもんだろ?」
すると小林が、
「じゃあ、俺が金井にバスの操作方法教えるから、それでいいだろ?」
大島「じゃあ、あのバスで教えてやれ。」
大島は一部焼け落ち、ガラスがすべて割れたバスに指を指した。
小林「分かった、ボス。」
小林と金井は廃車と化していたバスに向かって行った。
大島「周りに注意しろよ!」
伊藤「俺たちはどうするんだ?」
大島「残りで使えそうなバスを探す、発症者には気をつけろ。」
斉藤「手分けして探すの?」
大島は頷いた。
鈴木「まじかよ。」
鈴木は嫌そうにしていた。
伊藤は一台のバスの中を窓から覗き見ようとした。
バスの窓は曇っていた。
伊藤はおそるおそる近づき斜め上の窓を見ると、いきなり感染者が窓にへばりついて見てきた。
伊藤は無意識に後ずさりした。
大島が伊藤の後ろから、
大島「このバスは感染者専用らしいな。」
伊藤「うわ!いきなり驚くな。」
大島「そんなことより、ドアが開いてるバス探すぞ。」
鈴木は車内が空のバスを見つけ、そのまま中に入って様子を確認した。
「これなら、運転出来るな。」
鈴木が外に出ると横から感染者に襲われた。
「うわ!」
鈴木は倒れ込み、覆いかぶさるように感染者が首を狙って顎を動かしている。
鈴木は両手で感染者の両腕を掴むので精一杯であった。
一瞬の出来事であった、矢が感染者の頭を射抜いた。
感染者は頭が矢で持っていかれバスの側面に張り付いた。
斉藤「大丈夫?」
弓を持った斉藤は駆け寄り鈴木をおこした。
鈴木「ああ、助かった。」
鈴木は鍵が刺しっぱなしのバスのエンジンをかけた。
鈴木「OK、ガソリンもそこそこあるからこのバスは走れるな。」
大島「みんな、集まってくれ。途中経過報告だ。」
六人は軽トラックの前に集まった。
大島「金井、バスは運転できそうか?」
金井「ああ、なんとか。」
斉藤「鈴木と一緒にバスを一台見つけたわ。」
大島「俺と伊藤でガラスは全部割れてるが二台見つけた。」
小林「てことは、あと一台だな。」
鈴木「あと一台どうするんだ?ボス。」
大島は考えた、
「よし、三台でなんとかしよう。」
金井「じゃあ俺が来た意味あったのか?」
大島「ああ、もしもの時のための代役だ。」
伊藤・鈴木・小林はそれぞれバスに乗り、運転し始めた。
大島・斉藤・金井は軽トラに乗った。
軽トラが先に道を先導して走った。
金井「バスは車幅的に遠回りしないとマンションまでたどり着けないな。」
大島「ああ、国道を通るってのは分かってる。問題は他の集団や発症者の群れに襲撃されたらやばいってことだ。」
すると廃車の障害物があって軽トラは通れるがバスは通れない幅であった。
廃車は見事に側面が地面につき、シャーシ(車の裏側)が見える。
大島は面倒くさそうに軽トラから降りた。
「こいつを路側帯に移動させるぞ!」
六人はシャーシを思いっきり押した。
シャーシが天を向き、ガシャー!と音が響いた。
すると車の陰に隠れていた感染者たちが姿を現し始めた。
大島「よし、面倒なことにならないうちに出発だ。」
再び大島は先導し始め、無事マンションに戻った。
大島と斉藤は幹部会議室に行くと、東岡が
「話は坂下から聞いたが、俺に相談してくれてもよかったんじゃないか?」
大島「リーダーは俺だ。俺が決める。俺が正しいと思ったことも。」
すると東岡が激しく反論した。
「いや違うな!今やこの集団も100人規模だ。家族の意見を聞くべきじゃないのか?」
大島は自信げに
「いいだろう、じゃあ無記名投票で決めようじゃないか。」
幹部会議室が投票所となり翌日一日かけて投票が行われた。
投票箱の前には斉藤と坂下が座っていた。
坂下は誰が投票したかをメモ帳に書いていた。
斉藤「あの二人昨日以降一言も話してないみたいね。」
坂下「まあ、ほっとけばいいんじゃない?いつものことでしょ。」
確かに今や100人の集団を四人でまとめているがここまで守る人が増えるまで家族にするかしないかでもめていたのは大島と東岡であった。
マンションを砦にしてから、難民たちが駆け込み、この一週間でマンションに住んでいる人が四倍に膨れ上がった。
人数のせいか少数で活動する盗賊たちも近寄れない集団の規模になっていた。
だが問題は外でなく家族の食料問題であった。
そして開票が行われた。
斉藤「移動に21票。多分マンションに来る前に共に戦っていた家族だね。」
坂下「大島君にはどう説明しよう・・・」
坂下は困った。
大島「やっぱりそういう結果か。じゃあしばらく滞在しよう。」
大島はがっかりしてこれからを考えながら去って行った。