ザ・ウォーキング・デッド in Japan   作:永遠の二番煎じ

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競馬場の悲劇以降・・・
青井和成と生田優香は全国を点々としていた。
終末世界の時間が進むにつれて秩序なき行いが人々を追いつめる。
青井と生田はいくつものグループに属していたが盗賊の襲撃や感染者の大群によって何人もの仲間が死ぬのを見てきた。
そして二人は集団に属さないように生き延びていた。



シーズン3
終わった世界が終わらない


競馬場の悲劇以降・・・

 

青井和成と生田優香は都市を避けて全国を点々としていた。

車は何台も乗り換え、度重なる感染者の群れ相手に使っていた銃火器もなくなった。

今はナイフを上手く使って二人で生き延びている。

俺は赤いナイフを常に所持している。

 

俺が運転している時、助手席から腰に装備しているナイフが見えたのだろう。

「そういえば、そのナイフいろいろな機能があるのね。」

「ああ、中田の形見だからな。あいつは俺にいいものを残してくれたよ。あいつはこれでゾンビを最後まで殺さなかった。」

 

「そうだったんだ・・・」

中田の死後に中田について話したのはこれが初めてであった。

俺は優香が気を使っているのがあからさまに分かったので、

「そんなに気をつかわなくてもいい。反省しても後悔はするなだ。」

少し微笑みながら言った。

しかし心の中には後悔を引きずって今も終わった世界を生きている。

 

すると生田はいろいろ質問してきた、両親のことであったり友達であったり恋人であったり。

「恋人は世界が終わるまでできなかったな。優香は元彼とかいないのか?」

「え!和成童貞なの~うける~。恋愛歴は秘密~。」

とこんな和んだ話をしているといつものように感染者が現れ、嫌な緊張感を与える。

 

こういう時はある程度距離を取り車で引き返していた。

今回もいつものように引き返した。

 

「これからどうするの?」

「今日は飯食べれないかもな。」

「そうかもね。」

生田はいつものように他人事のような返事をした。

 

「とりあえず安全そうな場所を見つけて食料を探そう。」

赤い軽乗用車を田園広がる道に走らせ、キャンプを探していた。

すると一台のキャンピングカーが田園の道にぽつんと止まっていた。

 

キャンピングカーからはお米の炊けたいい匂いがした。

軽乗用車をキャンピングカーの後ろに駐車した。

俺と優香は車を降りてキャンピングカーを覗いた。

すると猟銃を構えながら一人のおじいさんが出てきた。

「なんだ、日本人か?」

 

優香は俺の背中に隠れた。

「ええっと、もしよかったら食べるもの分けてもらえないですか?」

「ああ、もちろんだ。入りたまえ。」

 

キャンピングカーの中は思ったより広かった。

台所にはおばあさんがいた。

「ばあさん、この若者たちにおにぎりを握ってやってくれ。」

「はいはい。」

おばあさんは炊飯器からご飯をしゃもじで皿に乗せておにぎりを握っていた。

 

「さあ、二人ともそこに座って。」

俺と優香はキャンピングカー独特の備え付けられたソファに座った。

「ありがとうございます。」

俺たちはお礼を言って座った。

 

「最近じゃあ銃を持ってる日本人と外国人は信用できんからな。まあ私は所持しているがね。ほっほほっほ。」

急に陽気な感じのおじいさんになった。

「じゃあ俺たちが銃を持ってたらどうしてたんですか?」

 

「君たちだって銃を持ってなくても銃を持った老いぼれ二人くらい殺せるだろ。」

「・・・」

たしかにそうだが俺はそういう生き方は望んでいなかった。

 

「まあ、私の先見の目で君たちを招いたのだよ。君たちはこれから生きて行かねばならんからな・・・」

おじいさんは田園の泥で動けなくなっている発症者たちを見ていた。

 

おばあさんがおにぎりを弁当箱のようなものに詰めて持ってきた。

俺と優香はゆげが出ている米は何か月ぶりに見ただろうか。

優香は感動しながら、

「いただきます!」

優香は遠慮なくおにぎりを口にした。

 

「おい!お礼を言わないとだめだろ!!」

青井は代わりにお礼を言った。

 

「いいんだよ。若い子は食べ盛りだからね。」

おばあさんはニコリと笑った。

すると急に銃弾が飛んできた。

 

「窃盗団だ!」

おじいさんは運転席に行きしゃがみながら猟銃で応戦した。

おばあさんは急いで棚から弾薬を出していた。

 

俺たちはすぐに机の下に隠れた。

おじいさんは俺たちになんか言い放っていた。

だが蜂の巣にあっているキャンピングカーの中では声が銃弾にかき消される。

俺は「逃げろ!」という言葉だけ聞こえた。

 

「逃げるぞ!」

「え?」

飛んでくる銃弾や銃声で俺の声が聞こえない優香を無理やり手を引きキャンピングカーを脱出した。

青井と生田は軽乗用車に乗り込み、逃げ走った。

 

するとキャンピングカーが爆発した。

最後にバックミラーには大勢の感染者が爆音を聞きつけ、燃えゆくキャンピングカーに群がるのが見えた。

俺は何回こうした絶望の中の絶望から運よく逃げてきたのか。いまだに自分でも分からない。

 

生田は助手席で泣いていた。

俺は運転しながら左手で背中をさすってあげた。

優香の背中をさするのはこれで何回になるだろうか・・・

 

「また生きる理由が増えたな・・・あの老夫婦のように最後まであきらめず生き延びよう。」

「・・・うん・・・」

 

この数か月俺の周りで何人死んだのだろうか。自分が死神にさえ感じる。

 

青井は田園の近くの山道に車を止めた。

「今日はここで寝よう。」

「分かった。明日はどうする?」

「明日考えよう。」

「・・・そうね。」

 

翌朝目が覚め、運転席を下げた状態からもとに戻すと、

車の外で優香ともう一人優香と同じくらいの年の女性が話しているのが見えた。

俺は車外に出て駆け寄った。

「何してるんだ?ゾンビが群がってくるぞ。」

俺は少し叱りながら優香に聞いた。

「この女性の父親がキャンプのリーダーらしいよ。」

 

すると初めて会った女性が、

「初めまして、北谷彩香です。いきなり失礼ですがお願いがあるんですけど私のキャンプまで送ってもらえませんか?」

「え?」

俺は申し出に驚き色々考えた。

 

見かねた優香は、

「助けたら食料くれるって!!」

 

そんな明るく優香に頼まれたら選択は一つであった。

 

三人は車に乗り込み山を二つ越えた・・・

 

「ここがキャンプか。え?なにもないぞ?都市に近くないか?」

俺は状況が把握できなかった。

そこは河川沿いの砂場に一つだけ黄色いテントがあった。

近くに橋があるので橋を利用されれば他の好戦的なグループがくれば銃撃戦には不利な場所にあった。

 

土手を車で降りて適当にテントの近くに駐車した。

「彩香!」

と声が聞こえた方を見ると還暦風に見える男の人がテントから出てきた。

 

二人はハグしていた。

「お父さん。」

「彩香。よかった無事で。」

 

冷静になり、大谷彩香は紹介した。

「こちらの青井さんと生田さんに助けてもらったの。」

 

「ありがとう、青井君に生田さん。私は大谷宗雄、彩香の父だ。お礼に何かしないと・・・」

すると娘の彩香が提案した。

「この人たち食料が欲しいらしいわ。」

 

「食料か、食料なら移動したキャンプにある。よかったら来るか?待っててもいいが。」

大谷宗雄は俺が見る限り、約束は守る人間のようだ。

 

「キャンプも見たいから取りに行かしてもらうよ。」

「だったら俺と娘を車に乗せてくれるか?」

「ああ。」

 

宗雄はテントをリュックに収納し、トランクにいれた。

 

四人は車に乗り、宗雄が取り出した地図を見て郊外の高等学校に向かった・・・

 

車内で、

「別に俺のグループに入ってもいいんだぞ?」

「ありがたいですが、どうする優香?」

俺は優香の意見も聞いた。

 

「いえ、いいです・・・周りで人が死ぬのは見たくないですから。」

「そうか、だがそれはもう無理な時代だぞ。」

「まあまあお父さん。彼らには彼らの生き方があるから。」

「そうだな。」

俺はもくもくと運転し、娘の彩香が取り繕った。

 

「ところで二人は恋人同士なの?」

「うん。」

「へえ!じゃあ私と一緒だ!!私は結婚したんだ。」

「え?そうなの!」

優香は話に食いついた。

 

宗雄は聞きたくないような態度で窓をずっと見ていた。

それが分かったのが宗雄がバックミラーに映っていたからだ。

 

高等学校が見えてきた。

案外周りは田んぼに畑が多く、2,3階の教室や廊下の窓から見通しがよさそうだ。

 

正門前に車を止めた。

宗雄はドアミラーを下げて窓から顔を出して、

「おーい!大谷宗雄だ。開けてくれー!!」

すると門が開きすぐに車ごと入った。

 

校内は慌ただしい様子であった。

彩香は夫を見つけるとすぐに駆け寄って抱きついた。

遅れて宗雄が夫の春人に近づき状況を説明した。

 

「運動場にいた発症者は駆逐しましたが、まだ校内にいるようです。」

「了解した、俺は校舎裏を見てくる。」

そう言って宗雄はナイフを春人から貸してもらい一人で見回りに行った。

 

「君たちは父さんと彩香を助けてくれた人か?」

「ああ、一体何がおきてるんだ?」

「とりあえず発症者を駆逐してるんだ、家族を助けてもらってなんだが手を貸してもらえないか?」

「分かった。」

俺はタガ―ナイフを車から取り出した。

 

「優香、ここにいろよ。」

「彩香もだ。」

俺と春人は校内に行き、感染者の駆逐を手伝った。

ここにいる感染者は学生服を着た感染者だけでなく非難してきて感染したと思われる者もいた。

そこには自動小銃を持った人々が感染者に銃身で殴り倒したり、銃剣で眉間や目を突き刺してる光景が目に入って来た。

 

俺は弓を構えている春人に質問した。

「狙撃はしないのか?」

「狙撃すれば学校付近の発症者が音を聞いて近づいてくるからな。発砲はドンパッチになった時だけだ。」

すると廊下後方から感染者が近づいてくる。

俺はタガ―ナイフで後方から近づく感染者の顔を真っ二つや首から上を跳ね飛ばしたりした。

春人は前方から来る感染者を弓矢で頭を撃ち抜き倒していた。

 

校内にいた感染者は一体残らず駆逐した。

校庭に集まり、状況報告した。

「どうやら片づけたようだな、死体を集めて学校裏の焼却炉で燃やそう。あとは外を警戒するだけだな。」

リーダーの宗雄はそれぞれ配置につくように指示した。

一人の男が、

「俺噛まれたんだ、誰か助けてくれ!!」

急にパニックに陥った。

すると春人がナイフで後ろから心臓を一突きして殺した後頭にナイフを突き刺した。

 

「助かる方法はない、これしかな。」

春人は悲しさを抑えて殺した男を学校裏に運んだ。

 

俺も手伝い死体はすべて焼却した。

数か月こんなことをしていると人肉の焦げる臭いも慣れたものだ。

 

宗雄率いる移動型グループは30人編成だ。

宗雄の後釜は婿養子の春人だ。

宗雄は全員に運動場でキャンプするように指示した。

それはまだ校内に感染者がいる可能性がないとは絶対的に言えないからである。

 

しかし十人で交代して校内から周りを見張らなければならない。

 

俺は黄色いテントに行った。

「俺は明日出て行くよ。グループに迷惑をかけるわけにはいかない。」

「待て!青井。お前みたいにまっすぐな目をしたやつは日本がなくなってから見たことない。残ってくれないか?それに中年や未成年しか戦力にいない。俺は心配なんだ。春人は今病んでる。」

「だが俺には関係ない。」

俺はきっぱり断り駐車場に止めた自分の車に戻った。

 

「どこ行ってたの?」

「ああ、明日二人で出て行くと宗雄に報告してたんだ。」

「あ、そう。じゃあ明日出発ね。それより乾パン食べる?」

俺は缶に手を入れて乾パンを食べた。

 


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