ザ・ウォーキング・デッド in Japan   作:永遠の二番煎じ

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シーズン2最終回。


家族

ZDAY35日目朝・・・

 

※パトカーは日本の白と黒の模様のクラウン。

 

父親はパトカーを感染者のいない山道の途中で止めた。

森下はパトカーの後ろで白いトラックの上に左手を置いて右手でナイフをぐるぐる巻きにして左手に固定していた。

その間母親が近くで赤ちゃんを抱っこしてあやすのを見ていた。

 

父親は森下に話しかけた、

「刑事さん、先日は本当にありがとうございました。」

父親は若干目に涙を浮かべながらお礼を言った。

 

「いいよ。」

森下は面倒くさそうに対応した。

「部下の分まで生きてくれよ。」

これは森下の助けた家族への頼みと願いだ。

 

父親はまるで森下を迎えるかのように、

「いえ、あなたもこれからは家族ですよ。」

 

森下は助けた家族から立ち去ろうとしていた。

「俺みたいな足手まといを家族にしてくれるのか?」

「ええ、あなたも生きるべきだ。」

父親は生きる希望を捨ててはいなかった。

 

森下は父親の牧師みたいな振る舞いに、

「言っておくが俺は刑事じゃなくなった・・・森下だ。」

「森下さんですか、下の名前は?」

「下の名前は別にいいだろ。そっちは三人まとめて教えてくれ。」

 

すると父親は家族紹介した。

父親は三浦壮介、母親はリコ、赤ちゃんは男の子で康介だ。

 

「じゃあ俺は三浦森下だな。」

「そういうことになりますね。」

森下の冗談を真に受ける父親の壮介。

 

森下は会話中に壮介の背後から静かに近寄ってきた感染者を左手のナイフで頭を突き刺した。

「ところでこれを壮介はなんて言ってるんだ?」

「死人(しにん)ですかね。」

「死人か。俺はゾンビって呼んでる。」

森下はナイフを頭から抜き、

「呼称は統一しとかないか?緊急時に聞き違いがあったら死ぬご時世だからな。」

 

「じゃあ発症者ってのは?」

「それは天国(世界が崩壊する前)だったころを思い出すからやだな。」

森下は冗談交じりに言って却下した。

 

すると康介を抱きながらリコが寄って来て

「何話してるの?」

「家族紹介してもらってたんだ。」

森下は話を逸らした。

壮介も逸らした森下に合わせた。

「そうそう、刑事さんは森下って名字らしい、ただ下の名前は教えてくれない。」

壮介は機嫌よく妻のリコに話した。

 

森下はパトカーの後部座席に戻った。

壮介とリコと抱えている康介もパトカー内に戻った。

 

壮介はパトカーを再び山道から郊外に向けて走らせた。

「で、どこに向かうんだ?」

「スーパーに行く予定なんだけど、どうします?」

リコは森下に他に行く場所がないか聞いた。

 

「食料調達か?」

「はい、それと康介の幼児食を調達したくて。」

森下はリコのズボンのガンホルスターを見た。

「弾はまだあるのか?」

「最後の装填した五発だけあるわ。」

 

すると山の傾斜側で自動小銃を持った兵士がガードレールにもたれて地べたに座っていた。

「こんなところで兵士が一人で死んでるなんて珍しいな。」

壮介は運転中であったためによく見なかった。

リコもたまに自殺した兵士の死体を見ていたので特に気にはしなかった。

 

「壮介、止めてくれ。」

壮介は森下に言われて兵士がもたれている場所から10メートル通り過ぎたところで止めた。

「俺になにかあったら置いていってくれ。」

「おい!」

森下は降りて兵士に近寄った。

運転席から壮介も森下を止めようとして降りて後ろをついていった。

リコはパトカーの中で周りに注意を払っていた。

 

義手の左手にナイフを装備していたがさらにズボン右から包丁をいつでも取り出せる備えをした。

壮介も警棒を右手に恐る恐る近づいた。

 

よく見るとアングロサクソン系のアメリカ兵であった。

森下はぼそっとつぶやくように、

「アメリカ兵か。」

 

壮介は森下の背中に向けて、

「なんでアメリカ兵って分かったんだ?」

 

「これでも俺は元警察関係者だからな。」

 

持ち物は自動小銃(M4A1)と拳銃(ベレッタ92)だけであった。

森下は頭を突き刺そうとした時、

「Wait!Wait!」

森下はその言葉を聞いて義手のナイフが止まった。

 

※ここからは日本語吹き替え字幕です。ただし外国人と言葉での意思疎通はしていません。

 

「○○県だけは行くな。引き返せ。銃を持った暴漢がはびこってる。」

だがこのアメリカ兵の言葉は森下たちには届かない。

 

「壮介、○○しか聞こえなかったけど、それ以外なにか分かったか?」

「森下さん、俺も○○しか聞き取れなかった。」

二人はアメリカ兵をどうするか困っていた。

 

「くそっ、通じないか。だったらジェスチャーだな。」

アメリカ兵は困っている二人にナイフ以外の装備一式を差し出した。

 

「くれるのか?」

森下はアメリカ兵の奇行を疑問に思った。

 

するとアメリカ兵は上半身裸になり背中の傷を見せた。

 

森下と壮介は反射的に差し出された銃を構えた。

「そうだ、助からない。撃ってくれ。奴らと同じにはなりたくない。」

 

森下は英語のニュアンスで察した。

「ナイフでもいいか?」

 

アメリカ兵も森下の日本語のニュアンスで分かり、

アメリカ兵はひざまずき、自分のサバイバルナイフを森下に渡した。

森下は右手で柄の部分を刃が下になるように握った。

 

「壮介、お前は先に戻っておいてくれ。見るのは俺だけで十分だ。」

「あ、ああ分かった。リコにも事情を説明しとくよ。」

壮介は見てはいけないものから逃げるようにパトカーに戻った。

 

アメリカ兵は無表情で。

「Good luck!」

森下は最後までアメリカ兵の目を見て、

「さんきゅうー。」

 

森下は渡されたサバイバルナイフを思いっきり降りおろしアメリカ兵の頭を躊躇なく刺した。

名前も知らない生きたアメリカ兵は発症することなく死んだ。

アメリカ兵はどうせ死ぬのならば感染者にならなければどんな死に方でもよかったのだ。

アメリカ兵はただ死んでいるのに自分が勝手に動き出すのが嫌であったのだ。

 

森下は処刑したアメリカ兵の前で十秒くらいぼーっと立っていた。

するとリコが大きな声で、

「死人が集まって来ましたよーーー。」

 

森下は我に返り、素早く自動小銃と拳銃と弾薬をパトカーに持って戻った。

「終わったのか・・・」

「ああ、ほら。」

 

壮介は再び車を○○県に向けて運転した。

感染者たちはアメリカ兵の方に群がって行ったのが最後にリコがサイドミラーで見た。

切ない顔をしているリコに森下は拳銃(ベレッタ92)と弾倉を渡した。

「これは森下さんのじゃ。」

「いや、使い方はまた撃って覚えればいい。リコにはベレッタのほうが使いやすい。俺の拳銃返してくれ。」

リコと森下は拳銃を交換した。

 

森下の回転式拳銃が再び手元に戻ってきた。

拳銃を手にした時初めて発症者を撃った記憶が蘇った。

 

「あと壮介にはこのアサルトライフル(M4A1)を持っておいてもらう。」

壮介はあかるさまに嫌な顔をして、

「俺は銃なんて必要ない。それに自動小銃は重い。」

「そうか、発症者の大群や盗賊にあえばこれが命綱に見えてくるぞ。」

 

森下は運転席の左横にアサルトライフルと弾倉を置いた。

 

真昼に山々に囲まれた小さな町に着いた。

感染者はいたが町の中心部のスーパーからはかなり離れた場所に数体確認しただけであった。

 

駐車場にパトカーを止め、リコはパトカーの周りの見張り、

壮介と森下はスーパーの中に入る準備をした。

壮介は一応自動小銃を肩にかけ、リュックを背負い左手に懐中電灯右手に金属バットを持った。

森下はズボン右のホルスターに回転式拳銃を収め、工事現場で夜によく使われる黄色の懐中電灯ヘルメットを装着し、リュックを背負い装着し右手は手ぶらにした、左手は今朝からナイフのままである。

 

スーパーの乗客用出入り口はこんなご時世なのに大きな板で打ち付けられ、入れない。

森下はガラス張りから中を懐中電灯で照らしたが、感染者は目視で確認できなかった。

森下と壮介は裏口から入ることにした。

 

「中には死人はいなさそうだ、行くぞ!」

だが森下がそう言いながら壮介の方を見てみると壮介の両手が震えていた。

「この震えは閉鎖された暗い空間に行くのが初めてなんだ。」

声さえも震えていた。

 

「壮介!!大丈夫だ。俺がついてる。あの時(ZDAY二日目パトカーごと感染者から逃がした時)だってそうだっただろ!今回もお前は生き残る、家族のためにも。俺は分からねーけどな!」

森下は壮介を激励すると裏口であろうドアを右足で蹴り壊し先陣をきって侵入した。

 

侵入してすぐ懐中電灯の光を周りに当てると空っぽの段ボール箱が無造作に散らかしてあった。

後から入った壮介であったがバットをリュックに入れ懐中電灯を口に加え、潜在的にアサルトライフルを構えていた。

 

二人は調理室のような場所に来た。

森下は小声で、

「このドアの向こうが売り場だぞ。」

壮介は相槌をうつ余裕もなかった。

 

森下はドアを音を立てずに慎重に開けると感染者が売り場一面にいた。

壮介は感染者の群れを見た瞬間すぐに自動小銃の引き金を引いたが弾はでなかった。

さらに壮介はパニックに陥り自動小銃を落とした。

ドン!!!と音が調理室で響いた。

 

その瞬間森下はドアをすぐに閉めたが、感染者たちはドアの方を向いている。

森下はさらに小声で壮介の方を向いて、

「落ち着け!大丈夫だ!銃を拾え。」

 

壮介は口に加えてた懐中電灯を右手に持ち替えた。

 

森下は壮介の奇妙な行動に対してジェスチャーでやめろと指示した。

次の瞬間壮介は全力疾走で裏口に向かい逃げた。

 

森下は再び売り場につながるドアの方を見た瞬間に感染者二体に噛まれそうになり、左手のナイフで感染者二体の頭を一気に額から深く斬り裂いた後、森下も全力で裏口に向かった。

 

パトカーの外で見張りをしていたリコは裏口から出てきた壮介のただ事でない様子を察して運転席に乗りエンジンをかけた。

 

壮介は助手席に乗り、

「車を出してくれ、感染者が中に大量にいた。」

完全なパニックを引き起こしていた。

 

「でも森下さんは?」

リコは冷静に壮介に聞いた。

 

壮介は間近で感染者を大量に見てパニックで森下を忘れていた。

すると森下が裏口から走って来て運転席にいるリコに言った、

「すぐ車を出せ。」

その後すぐ森下は後部座席に座った。

 

リコはすぐ車を出すと裏口から数十の感染者が出てきた。

壮介は合わせる顔がなかった。

「森下さん、本当にすいません。謝っても仕方ないですね・・・」

 

壮介は森下に殺されるくらい怒鳴られると思った。

だが森下は冷静に壮介に言った。

「お前が死人を大量に見た時、引き金を引いただろ?でも弾はでなかった、それは安全装置をはずしてなかったからだ。安全装置のことは言っておくべきだったな。」

 

「森下さん、俺の事怒らないんですか?」

 

森下は引き続き解説するかのように、

「たしかに普通は怒って当然かもしれない。だが今は仲互いしてる場合じゃない。俺たちは家族という名前のチームだからな。だから俺は助言しかしない。無駄な怒りはただ自分の体力を余計に削るだけだ。」

 

壮介は言葉が出なかった。

するとずっと黙って聞いていたリコが、

「私達をいつも守ってくれてありがとうございます。しかも壮介は三度も森下さんに救われました。」

「今朝のこと見てたのか。抜け目ない嫁さんだな。」

 

森下はチャイルドシートから康介を抱き上げ康介の変顔で遊んでいた。

 

三浦一家と森下は次に物資を求め郊外に向かった。

 

スーパーの中に感染者の群れがいたのは他の誰かかグループが事前に中におびき寄せ閉じ込めた、しかしそれを知らず森下と壮介は小さな小さなパンドラの箱を開けてしまったのだ。

 




シーズン3に続く・・・

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