ザ・ウォーキング・デッド in Japan   作:永遠の二番煎じ

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馬に乗った謎の武装集団があきらかになる。


死生活

馬に乗った東岡たちは騎乗しながら寄ってくる感染者を駆逐していた。

東岡たちは国道を乗馬で駆け抜けて××県に入った。

中田はその後ろをバイクで走りながら考えた。

(どこに向かってるんだ?こいつら安全地帯を知らないのか。)

 

××県の県道をしばらく走ると競馬場が見えてきた。

 

関係車両入口の門が勝手に開き、入るとトラックにはキャンプがあった。

競馬場は元々馬の脱走防止で3メートルの柵があるが感染者が入って来れないよに出入り口をほとんど塞いでいる。

ざっと中田が見たところ数百人はこの競馬場内に避難している。

競馬場の難民を守っている兵士は100人程度である。

 

東岡は馬から降り、迷彩服を着た人に状況を説明していた。

その人はバイクから降りた中田と斉藤に話しかけてきた。

「私は大堀だ。安全地帯から来たそうだな。」

「俺は中田だ。こいつは斉藤だ。」

斉藤は中田に紹介されたとき嫌な表情を浮かべた。

 

中田は安全地帯がるのにここに籠城していることを疑問に思った。

「大堀さん、安全地帯には行かないのか?」

「ああ、ここに残ってる数百人は移動させれないからね。」

 

すると東岡が割って入って来た。

「曹長、病院にあった抗生物質持ってきました。」

「よくやった東岡、さっそく必要としている人々に届けてやれ。」

東岡は馬鎧に装着していた袋を持ってキャンプを周った。

 

「曹長?」

「ああ、俺は元陸上自衛隊の陸曹長だった。」

「そうだったのか、だから数百人の難民をこの小さな競馬場で守れてるんだな。」

「君たちは安全地帯に帰るのか?」

 

すると斉藤が重い口を開いた。

「ええ、ここより快適ですから。」

「じゃあ、なんで安全地帯の外にいたんだ?」

「・・・」

斉藤は物資調達の目的で外に出ていた。

 

安全地帯は元々原住民の自給自足で成り立っていたために、兵士になるか安全地帯を出て高価なものを調達するしかなかったのである。

 

森下のような身体障害者はかろうじて責任者の上野が守るのを安全地帯で約束していたのである。

だから青井や森下と違って無職の中田と斉藤は外で感染者の目を忍んで物資をあさっていたのである。

 

「やつら(安全地帯の役人や兵士)は結局本当の意味で守ってくれてはないだろ?」

「だが、広いし海もある。それに夜はゾンビを気にせず眠れる!」

「いや、上野三等陸曹は危険だ。何千もの命を見捨てたからな。」

曹長はそう言って建物の中へ入って行った。

 

「中田さんと斉藤さんは今日は泊って行ってください。明日ここに残るか、出て行くか決めてください。」

兵士Aはそう言って競馬場を見回りに行った。

 

「何言ってるんだ?」

「どのみち今日は泊るしかないわね。それに安全地帯の案内書にもクーデターについては書いてなかった・・・」

 

ZDAY32日目早朝・・・

騎手控室で陸曹長は四人で作戦を立てていた。

「東岡、石油の入ったコンテナを狙え。」

「中央と三番バリケードの間ですか?」

「そうだ、他は陽動で一番バリケードを襲撃するぞ。」

みんなが作戦を立てた後、東岡だけを呼び止めた。

 

「東岡、頼りにしてるぞ。お前は俺の部下の隊員に匹敵するぐらいの責任能力と判断力があるからな。」

「いえ、自分が盗賊に襲われた時助けてくれたのは曹長ですから。」

 

その頃俺は三番バリケードの第一バリケードで畑辺チーフの指示で感染者を自動小銃で撃ち倒す練習をしていた。

俺と訓練兵は二メートルの高さのコンテナの上から立って30メートル先の感染者に向かって発砲していた。

(ついに日本も銃社会か?)

俺は自動小銃(89式小銃)で感染者の頭を撃ち抜いた。

「いいぞ、青井!さすが地獄で生き抜いてきただけあるな!」

 

生田を見てみると集中した面持ちで次々と数百メートル先の感染者を撃ち倒していた。

「ふうー。」

 

「生田すげーな。」

「そんなことないわ、青井くん。」

俺は銃の腕に尊敬した。

 

「大丈夫だ、青井。お前だって練習すれば次々と撃ち倒せるようになるさ。」

「私だってまだ一週間しか撃ってないから。」

生田は謙遜していた。

(俺は別にゾンビが群れてなければ鋭利な武器で十分だが・・・)

 

畑辺は訓練兵から銃を回収した。

「次は昼から例の高校で体術訓練だ。」

畑辺はそう言ってコンテナから降りて自転車で第一バリケードから安全地帯に戻った。

 

俺は赤いSUVに生田を助手席に乗せ、家まで送った。

生田を家に降ろそうとして、自分の拠点に帰ろうとした時であった。

「ねえ、青井くん。よかったらランチしていかない?」

「ああ、そうだな。ここ三日外食にインスタントばっかりだったから・・・てかご飯作れるのか?」

「それは失礼よ。」

生田は微笑みながら家に入った。

俺も生田に自宅に招いてもらった。

 

生田の家は黒のストレート屋根で外壁は灰色のコンクリートだった。

近所は空き家である。

隣人はきっとどこかに逃げたのだろう・・・

「お邪魔します。」

「どうぞ。」

生田は長袖長ズボンの体操服から着替えて下はジーンズの上はカーディガンで黄色いエプロンで台所に立った。

 

「そういえば家族は健在か?」

この質問は俺にとって避けられない質問だったから知り合って早めに聞いた。

「この三角州で父も母も発症して私が・・・」

彼女は黙り込み黙々とたまねぎを切った。

 

「俺はゾンビが湧く前に両親は他界したよ。同僚も多分あの日に大半が死んだよ。両親が羨ましいよな。もうこんな地獄にはいないからな。」

俺はそこそこ元気で語った。

 

「そうね、私たちもなんで生き残ったか分かんないけどきっと意味があるのよ。」

彼女は泣いていたがそれがたまねぎが原因かそれとも他なのかは分からなかった。

 

俺は話題を変えた。

「俺は25だけど、生田は?」

「あなたと一緒。」

「今日ゾンビを始末した数か?」

俺はジョークを言った。

彼女は泣きながら少し笑った。

 

彼女が作ったのはチャーハンであった。

「チャーハンか。他人の手作りは久々に食べるな。」

俺は大匙のスプーン一杯にチャーハン乗せ食べた。

 

「俺のより1,5倍はおいしい。」

「なによそれ。」

俺はカップルみたいなやりとりを生田としていた。

 

兵士Aは出入り口で中田と斉藤に聞いた。

「残るのか?」

「残るわ。」

「斉藤!残るのか?」

中田は斉藤が残る選択に驚いた。

 

なぜなら競馬場は安全地帯と違い、全てが質素だからである。

夜は懐中電灯、ろうそく。

食べ物は外から持ってきたものを兵士が貯蔵していて守っている。

安全地帯はもう安定してきてはいるが競馬場はいつ反乱がおきてもおかしくない空気。

 

「だって責任者なんかうさんくさそうだし。」

「俺は安全地帯に戻るぞ。」

 

兵士Aは門番の仲間に無線で出入り口が安全か聞いた。

「残念だが今は発症者が外に群がっていて危険らしい。」

兵士Aは立ち去ろうとした。

 

すると中田は兵士Aの前に立ちはだかった。

「待て、冗談だろ?」

「本当だ。仲間が物資を調達しに帰って来たと同時に出してやる。」

 

それは日が沈むころに暗闇の中に放り出されるという事だ。

(くそっ、兵士にならないと安全に外には出れないってことか。)

 

斉藤は中田と兵士Aがもめてる間に東岡のテントに行った。

 

東岡はテントで重火器の手入れをしていた。

「斉藤さんから来るとは珍しいな。二、三週間前くらいは俺を置いて出て行ったのに。」

「あれから、もう一度あなたの拠点に行ったけど死んだかと思ったから。」

「俺も斉藤さんがまだ生きてるなんて信じられないよ。」

「大島君に坂下さんもみんな死んだから・・・もしかしたらあなたも。」

「ああ、拠点は感染者の大群が押し寄せてきたからガス爆発で家を燃やしたんだ。一体でも多く駆逐してやったよ。」

「でも無事でよかった。」

斉藤は目に涙を浮かべながら言った。

「たしかに古い友人は斉藤さんだけだ。でも斉藤さんはあの時俺が人を殺した冷酷な印象になっただろ?」

「あなたが正しいとは言えないけど、でもこれからはそうしなきゃいけないって分かった。」

斉藤は東岡の背中に抱きついた。

抱きつかれ思わず抱き返すと黒髪から桃色の香りがほのかにする、

そして腰に回した手にさらさらした斉藤の髪が柔らかい。

 

そこに陸曹長が東岡のテントに来た。

「お!悪かったな。」

陸曹長はテントから空気を読み、去った。

 

東岡は斉藤の方を向いた。

そして斉藤の両腕をつかんでいった。

「俺は確かにあの時おかしかった。子供みたいに銃を振り回してた・・・だが、今は曹長に助けてもらって俺には守るべき人や仲間が数百人できた。友達を二人失って正気じゃなかった。斉藤さんはもう一回友達に戻ってくれるのか?」

斉藤の目から涙が頬をつたう、そしてうなずいた。

 

東岡は斉藤が去った後すぐに高所にあるアナウンス室に行った。

陸曹長はアナウンス室から競馬場や発症者を眺めてた。

「東岡、さっきは邪魔したな。」

「いえ、曹長。なにか用件があったんじゃないんですか?」

「さっき、中田が俺の部下になりたいと言ってきた。どう思う?」

「多分安全地帯に戻りたいんでしょう。でなきゃあ外なんて出たくないですからね。」

 

陸曹長は一息つき東岡の顔を見た。

「私は中田が部下に入ればいいと思うのだが。なるべく円滑に物事を進めたい。」

「ではここに連れて来ましょうか?」

「頼む。東岡。お前は後から入った仲間で唯一信用できるからな。」

 

中田と斉藤は競馬場の客席で状況を話していた。

「俺ここの兵士になるよ。一度入ったら難民はここで骨を埋めるしかないらしいからな。」

「そう、私は残るわ。」

「東岡、見つかったもんな。確かに安全な場所はいくつもありそうだが、信用できる人間もそれくらいの数だもんな。」

 

すると東岡が来た。

「中田、志願についてだ。ついてこい。」

「噂をすれば東岡、兵士にしてくれるのか?」

 

中田は東岡によってアナウンス室に連れて行かれた。

「やあ、中田くん。君は兵士になって脱出したいんだろ?」

「大堀さん、さすがここのトップですね。」

東岡は黙ってドアの前で聞いていた。

 

「東岡にも初めて話すが俺がなんで上野に追放されたか教えてやろう。まあ厳密には追放ではないんだが。」

 

最初安全地帯を指揮していたのは陸曹長であった、しかしZDAY14日目に船で全国から来た何千もの難民の受け入れに三等陸曹の上野は反対した。

 

また他の隊員や在日米軍も物資が当時不足したために受け入れの賛成派は少数であった。

少数派は事態の収拾がつかないと思い安全地帯を離脱、何千もの難民を××県に誘導し上陸させたが運悪く感染者の大群に遭遇し、たどり着いた辺境の要塞が競馬場だった。

 

上陸からの競馬場までの移動の生存率は20パーセントであった。

 

「だから追放者だとか見張りが安全地帯で言ってたのか。」

「俺たちは追放者扱いか、まあクーデターではないがそんなものだ。だから東岡がついてきた時はうれしかった。安全地帯には行かずに競馬場に来てくれたんだからな。」

「曹長・・・曹長がいなければ今の自分はいませんから。喜んで弾除けにもなります。」

東岡は曹長に対して狂信的な忠誠心を持っていた。

 

「中田くん、君にもこれくらいの忠誠心を私いや守っている難民に命を捧げる覚悟があるなら兵として採用しよう。」

 

中田は真剣な顔で考えた。

「そんな話安全地帯では聞かなかった。まあ、そんなに人と関わらずでてきたからな・・・」

「来るもの拒まずだ。」

「じゃあ、二人だけ安全地帯からここに連れてきていいか?」

「いいだろう。早くこっちに連れて来いよ。」

 




競馬場は空間的に閉鎖的だと作者の偏見と独断で勝手なイメージで書きました。

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