ザ・ウォーキング・デッド in Japan   作:永遠の二番煎じ

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シーズン1最終話。
彼らの安息の地は存在するのか?



安全地帯

三人は××県に向かうため、国道を走っていた。

斉藤「青井さん、さっきはありがとう。」

俺「いや、いいんだ。助け合いだろ。」

斉藤は後部座席でドアポケットに入っていた□□県内地図本を見つけた。

斉藤「助けてもらって図々しいとは思うけど、ここに向かうのお願いしていい?」

俺は感染者の少ない道で車のエンジンを切った。

俺は後部座席を向き、開いた県内地図本の斉藤が右手の人差し指と中指で指している場所を見た。

 

俺「川沿いの住宅街か?」

そこはかつて斉藤が東岡と一緒に拠点を構えていた場所であった。

斉藤「そこにはまだ別れた仲間がいるかもしれないから。」

斉藤は心配そうな顔で言った。

中田「斉藤が前そいつから自分で危険だから逃げたって言ってなかったか?」

 

斉藤「私だけだと手におえないけど今は三人いるから。」

中田「いや、やめておこう。俺たちがリスクをおかしてまで助けに行く必要はない。」

中田は俺達三人の安全を優先した判断だった。

 

斉藤「彼は一丁だけど拳銃を持ってる。」

中田「おいおい、ならなおさらやばいじゃねーか。」

中田は斉藤の仲間に会いに行くことに猛反対した。

 

俺は吟味して結論を出した。

俺「分かった、じゃあ行こう。斉藤がいれば向こうも仲間になるはずだ。」

中田「まじかよ。生存者と遭遇するのはゾンビと戦うよりリスキーだぞ?お前だって最初矢を向けたじゃねーか。」

斉藤「・・・」

俺「残念だけど多数決で決まりだな。だが拠点にいなかった場合は××県目指すぞ?」

斉藤「分かった、それでいいわ。」

中田「なんだよ、多数決はずるいぜ。」

中田もしぶしぶ了解した。

 

俺は再びエンジンをかけ、サブ目的地に走り出した。

 

訪れた町(東岡が拠点を構えてる町)はところどころ住宅が焼け落ちていた。

俺「ガス爆発でも起きたのか?」

火災している住宅も何軒か見た。

 

斉藤「そんな・・・」

斉藤は悲しそうな声でつぶやいた。

中田「どうした?」

中田は斉藤のつぶやきを拾った。

東岡の拠点は一階もろとも木端微塵になっていた。

斉藤「焼け落ちてたわ・・・」

 

俺「そうか・・・だが焦土戦でわざと焼いて逃げたのかもしれない。」

斉藤「そうね、私の目的は果たしたわ。もうこの県に用はないわ。行きましょう。」

中田「・・・そうだな。」

中田は斉藤にかける言葉がなかった。

 

三人は焼け落ちた東岡の拠点を後に再び××県に向かって走り出した。

感染者はZDAY二日目を境に徐々に数を増やし、今や都市部で大群を見ないことはなかった。

俺「これからも都市部は避けないとな。」

中田「そうだな、遠回りして都市は避けて田舎を走ろう。」

 

俺「だが俺たちは、斉藤以外にこの県であった生存者なんて見てないぞ。」

中田「俺はあの日から青井と斉藤しか見てないぞ、みんなゾンビになったか安全地帯に逃げたかだな。」

斉藤「死んでも頭をやらないと死者になるらしいわ。」

 

俺「本当か!それは初耳だ。」

中田「どうしてそんな大事なこと言わなかったんだ!!」

斉藤「まさか、あなたたちと長期に行動するとは思わなくて・・・」

 

すると一人の警察服を着た人が三人の乗った赤いSUVの車の前に立ちはだかった。

警部「俺は患者じゃない!」

俺は生きてる人間はひけず車を止めた。

 

中田「どうして車を止めたんだ!!!」

斉藤「・・・」

(ひけない気持ちは分からなくもない。)

警部「ありがとうよ!!!」

警部は機嫌よく後部座席に乗り込んだ。

 

警部は斉藤を見て驚いた。

警部「あの時の二十歳前後の四人組の女の子じゃねーか!これは驚いたな、まだ生きてたとは。」

警部は会ったことのある顔を見て安心した。

 

中田「斉藤、知り合いか?」

斉藤「あの日から二日目にワゴンから助けてもらった警察官よ。あと謎の病気の予防法と対処法を教えてくれたのもこの警官。」

中田「なら、安心だな。」

中田は皮肉を言った。

 

中田は警部の体を見ると左ひじから下がなかった。

中田「刑事さん、左手どうしたんだ?」

中田は痛そうな顔をして質問した。

 

警部「やつらに、いや部下に噛まれて、斬り落としたのさ。」

俺「噛まれた局部を切断したらゾンビにならなかったのか?」

警部「ああ、部下は全員死んだ、いや発症したが俺は発症せず生き延びた。」

 

警部「俺はもう政府組織の人間じゃない。」

警部はそう言って警察バッジと拳銃の入ったホルスターをドア窓から開け、投げ捨てた。

 

中田「今こそ銃が一番大事じゃないのか?」

中田は警部の行動に理解が出来なかった。

斉藤「・・・」

警部「心配するな、生き延びた盗賊が拾ってもあの銃の中に弾は入ってない。」

 

警部は所持していた警棒を俺たちに見せた。

警部「俺にはこれがあれば十分だ。それに今俺はバッジを捨て公務員を辞めた。俺の名字は森下だ。」

中田「よろしく、森下。俺は中田で、運転してるやつは青井だ。」

斉藤「・・・」

斉藤は森下にはまだ警戒心が強く、口を開かなかった。

中田「あんたを警戒している彼女は斉藤だ。」

 

森下「早速頼みごとで申し訳ないが、ここに行ってもらえるか?」

中田「またかよ、俺たちはタクシー会社じゃないんだよ。」

中田はストレスが溜まっていたから今日は精神が不安定だった。

森下は残った右手で器用に地図本を開き、場所を右手の人差し指で指した。

 

中田「三角州?海に面した都市部のど真ん中じゃねーか。」

森下「ああ、自衛隊や民兵がそこを盗賊や発症者から守ってるらしい。」

俺「そんな情報どこから手に入れた?」

森下「この目で見たんだ。三角州に続く橋の上には三つのバリケードがあった。」

 

俺「なんで、その時安全地帯に行かなかったんだ?」

森下「左ひじがないやつを通してくれると思うか?見られたら発症者と間違われて最悪射殺さ。」

斉藤「あんたたち政府組織は守ってくれなかった・・・」

森下「それは感染爆発初期の命令だ、いや最後の政府の命令だ。政府も秩序ももう崩壊してる。」

四人で安全地帯について話していると後ろから何かが猛スピードで近寄ってきた。

 

馬に乗った特殊急襲部隊(SAT)の防備をした20人くらいの人々が刀や弓を持って後ろから来た。

謎の武装集団は寄ってくる感染者の頭を矢で撃ったり、跳ね飛ばしながら馬を操っていた。

森下「逃げろ!!!」

俺は森下の声とともにアクセルを力いっぱい踏み急発進させた。

俺は見事謎の武装集団から逃げ切った。

 

中田「今日に限って生存者が多いぜ。」

森下「やつらはSATの防備をした盗賊集団だ。生きていようが死んでいようが立ってる人体の頭を刎ねる。俺は昨日それを見た。」

斉藤「そんなB級映画にありそうな演出をしてくるなんておもしろいわね。」

中田「まさに世紀末だな。まだ21世紀が始まったばかりなのに。」

斉藤と中田は後ろを見ていなかったためほとんど信じていなかったが、俺は乗馬してこっちに向かってくる人々はバックミラーで見えた。

 

俺「状況が変わったな、三角州(安全地帯)に向かうがいいか?」

中田「そうだな、馬乗って刀振り回してるやつ>鈍いゾンビより危ないぜ。」

謎の武装集団は国道から走って来たために俺は独断で三角州に行くことにした。

 

三人は田地に車を駐車して夜を乗り切った。

 

翌朝四人は海に面している三角州に向けて車を走らせた。

 

三角州(安全地帯)に向かう途中・・・

中田「なあ、森下。お前は健常者を殺したことあるか?」

森下「ねーよ。俺は県民を守る県警の警部だったんだぞ?」

中田「本当か?あの日から盗賊とか殺人が増えなかったか?」

森下「さあな、あの日から二日目で警視庁からの連絡、いや命令が途絶えた。」

 

俺「じゃあ、俺の一日前に失業してるじゃねーか。」

俺はバカにして笑いながら言った。

斉藤も少し微笑んだ。

 

森下「そうかもな・・・」

斉藤「あなたの部下は最後どうなったの?」

斉藤は真剣な表情で聞いた。

 

ZDAY16日目・・・

□□県とある郊外で運転しているパトカーの中で

巡査A「警部!もう二週間上層部からは命令が着ません!」

警部「ああ、だが発症者を殺し続けるんだ!!」

巡査A「畜生!!ついに俺達人間の時代は終わりか!!」

警部「殉職した巡査B・C・D・Eのためにも最後まで県民を守るぞ!」

 

運転していた巡査Aは路側帯にパトカーを停車し、襲われかけている県民を助けに我先にと突撃した。

警部も助手席から少し遅れて助けに行った。

先に行った巡査Aは県民をかばい、感染者たちに群がられ食われた。

「逃げてえええええええ!!!」

 

パトカーの方には20代の父親と20代の母親が走って来た。

母親の背中には1才の子供がおんぶ紐で締め付けられていた。

感染者たちは巡査Aの新鮮な肉に夢中だった。

 

父親「僕たち家族を助けてください!!!」

警部「さあ、パトカーに乗って!!」

母親はパトカーの後部座席に乗りおんぶ紐をほどき泣いている子供をあやしていた。

父親が助手席に行こうとした時であった。

警部は左手で父親の左手をつかみ、止めた。

「お前が運転しろ。」

「刑事さんが運転してくれるんじゃないんですか?」

父親は警部の言ってる意味が分からなかった。

 

「いいから、家族はどこも噛まれてないな?」

「はい、でも・・・」

「本当にいいから、俺は警察だ!お前らと違って車がなくても俺は奴らに噛まれない。」

 

父親はパトカーに乗り、感染者の群れと逆方向に走り去った。

警部「よくも俺の部下たちを全員殺しやがったな!!!」

警部はホルスターから取り出した右手の拳銃で巡査Aに群がって食ってる感染者たちの頭を次々と撃ち倒した。

感染者たちは音で新たな新鮮な肉に気づいた。

 

「巡査Aは父親が早く亡くなったから母親と二人暮らしだった。彼は母を守るために職業が安定した警察になったんだ。」

警部は泣きそうになりながら独り言を言った。

パン!!!

 

「巡査Bはさっきの家族と同じで小学生の娘が・・・」

パン!!!

 

「巡査Cは俺の代わりに食われた・・・」

パン!!!

 

「巡査Dは・・・」

パンパンパンパン!!!!!!

 

「最年長の俺だけが生き残った!!!なぜ俺が!!!」

警部は弾切れになった銃をホルスターに収め、警棒を右手に持った。

 

「おおおおおおおお!!!」

巡査Aから警部に目移りした感染者が寄って来た。

警部は次々と頭を潰し散らした。

気づくと警部の立ってる場所は死屍累々であった。

 

警部はしばらく頭がぼーっとした。

(銃を抜くか・・・)

警部は無意識に弾倉を入れ替え、右手で右側頭部に拳銃を当てていた。

(よし!・・・)

 

自分の頭を吹き飛ばそうとした瞬間、かつて巡査Aだった発症者はひざまずき両腕のない状態で左手の付け根にかぶりついた。

「ああああああああ!!!」

警部は反射的に巡査Aだった頭を拳銃を撃ち吹き飛ばした。

警部の左手が神経線や血管を出してぶらぶらしていた。

 

「そうか、巡査Aお前は俺に生きろと言う意味で噛みついたのか?」

警部は自分の悲鳴で近寄ってきた感染者を次々と持っていた拳銃で撃ち倒した。

警部は落ちてあった柄に血の付いた斧で左ひじから下を切断した。

その時警部の顔は鬼瓦のような表情であったが声には痛みを出さなかった。

 

「例え俺が最後の人間でもお前らには絶対殺させない。」

 

ZDAY29日目夕方ごろ・・・

 

俺「森下、安全地帯のすぐ外には着いたぞ。」

森下は青井の呼びかけでうわの空から戻った。

森下「ああ、そうか。すごいだろ?」

森下はまだ心ここにあらずだった。

 

中田「なんだこれ、橋以外から絶対入れないし出れないし、中で感染爆発したらもろ刃のつるぎだな。」

斉藤「まるで海の倉庫ね。」

 

車は三角州(安全地帯)から対岸に止めて様子を伺ったが橋以外には大型コンテナが隙間なく積まれ、高さは平均15メートル以上はあった。

 

俺(どうやったらこんな短期間で島全体ほとんどをコンテナで囲めるんだ?)

 

※橋はレインボーブリッジくらいの大きさをイメージしてください。

 

俺たちは安全地帯に続く橋に向かった。

橋から国道までの県道は障害物が歩道に避けられていた。

 

俺たちは橋の前の最初のバリケードで止まった。

最初のバリケードはコンテナが道の脇にあって大型トラック4台が通れるくらいの幅があった。

俺は手を挙げて運転席からゆっくり降りた。

民兵A「日常にようこそ。」

 

民兵B「噛まれたりひっかれたりしてないか検査していいか?」

四人はそれぞれ試着室みたいな独立した個室に連れて行かれた。

 

斉藤には女の民兵が目視で身体検査した。

民兵D「あなたどこも怪我してないのね。」

斉藤「ええ、処女ですから。」

民兵D「あなた、処女なの!見た目に似合わないわね。」

民兵Dはげらげら笑った。

 

森下「俺は噛まれた経験はあるが入れてもらえるのか?」

森下は自分が噛まれたが入れてもらえるかどうか心配した。

民兵C「もちろん、大丈夫ですよ。」

民兵Cは笑顔で答えた。

 

民兵C「この要塞には生き延びるために噛まれた部分を切除した人はたくさんいますから。心配いらないです。」

森下「お、おお・・・ならよかった。」

他にも重武装した民兵たちが数十人いたが、快く通してくれた。

 

四人は橋の道の脇に装甲車だけ置いてある第二バリケードでまた迷彩服を着た民兵に止められた。

四人は車から降ろされ、車を押収された。

 

そこから四人は橋の上を1キロメートル歩き、第三(最終)バリケードに到着した。

今度は安全地帯入口の脇のコンテナに乗った見張りの自衛隊員が何十人もいた。

隊員A「君たちの中には追放者も紛れていなかった、安全を求めてやってきたのだな。」

隊員Aは写真を何枚も見ながら言った。

 

中田「そうだ、島の外は地獄だった・・・」

中田は疲れ切った表情で言った。

隊員A「よく来たな!知ってる者や親族を失った悲しみは俺も分かる・・・彼らの分まで俺たちは生き抜こう!」

森下・斉藤・中田「・・・」

 

赤いSUVが第三バリケード手前に走って来た。

赤いSUVから民兵が降り、再び歩いて持ち場の第二バリケードに戻った。

隊員B「君たちは車で来たなら。それは君たちのものだ。安全地帯で自由に生涯を暮らすもいいし、出て行ってもいい。ここは刑務所じゃないからな。」

隊員Bはバリケードの三メートルの鉄板の扉を開けるよう無線機で他の人たちに指示した。

 

四人は最後のバリケードを突破し、発症者のいない安全地帯に赤いSUVで入った。

 




次回安全地帯の仕組みが明らかとなるか!!!
シーズン2に続く・・・

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