女神世界の新生世代   作:Feldelt

23 / 38
第18話 共闘、悪魔と女神

一台のマシンが街をめちゃくちゃにしている。

通常の人間なら、こんなマシンを壊そうとは思いにくい。

何故なら、対抗手段を持ち合わせていないからだ。

 

なら、対抗手段を持つ彼女は、いや違うな。

対抗しなければならない彼女は、必ず壊そうとする。

そして必ず壊すだろう。

 

「見せてもらおうか黒の女神...君のその怒りを...」

 

審判の悪魔は、上空に佇んでいた。

 

 

----------

 

 

時は少し遡る。

黒達から離れ、一人インダストリアル7.1に向かったノワールは、

一台のマシンが街を蹂躙している様を目の当たりにした。

破壊衝動が沸き起こってくるが、その前にやることがある。

シアンや周辺住民の安否確認と避難誘導だ。

 

「許さないわよアヴニール...シアン!返事してシアン!」

「この声...ノワールか!ここは危ない!今すぐ逃げろ!」

「それはこっちのセリフよ!」

「私はこの工場を護んないといけないんだ。何も出来なくても、

 ここにいなければいけない!だからお前は逃げろ!」

「聞けないわね。はぁ、誰もかれも好き勝手言うわね...」

 

だが、ノワールはシアンの意思を尊重し、一人マシンへと向かった。

 

「待ってなさいシアン。壊してくるわ。」

 

 

----------

 

 

「ふはは、いいぞ、もっと壊すんだキラーマシン!」

 

荒廃化したインダストリアル7.1に不釣り合いなスーツ姿の眼鏡男。

見つけた、アヴニールのガナッシュね。

 

「そこまでよガナッシュ...今すぐそいつを止めなさい!」

「おや、誰かと思えば...どうやらあのモンスターの牢獄から

 無事脱出できたようですね。」

「当然よ。あの程度で私たちを仕留めようだなんて、随分お花畑な頭ね。」

「なに、足止めだけでも十分ですよ。」

 

こんなことだろうと思ったわ...私の国をここまでメチャクチャにした挙げ句、

この私の前で偉そうにふんぞり返っている。全く腹立つわ。

ここまで何も出来なかった、私自身にね!

 

「はぁ...じゃあとっとと壊させてもらうわよ。」

「何を言い出すかと思えば...今やラステイションの実権は私たちが握っているというのに、

 このキラーマシンを壊す?お花畑なのはそちらではないのですか?今この国には貴女を

 信仰している人間なんてほとんどいないのですよ?」

「えぇそうね。そうでしょうよ。だから何なのよ。」

 

私の中で何かが吹っ切れた。

今までのこいつらの仕打ちには確かに酷い目にあわされた。

けど、皮肉なものね。審判の悪魔なんてものがいなかったら、今頃転化してたわ。

 

「何...?」

「私は、私自身の意思でここにいる。私を信仰してくれている皆のために!」

「何を言い出すかと思えば...さっきも言ったでしょう。

 貴女を信仰している人間など居やしないと。」

「確かにね。けど、それはあなたの中の話よ、ガナッシュ。

 私は最近教会に戻ってきたばっかりよ。加えて軽く軟禁状態。

 それでも私は仕事をしていたけど、一つ気になった事を調べていたわ。」

「ほう、調べもの、ですか。」

 

それは一国の長には残酷過ぎて、けどこの状況に利用できる私の希望。

 

「えぇ。過去7年間に審判の悪魔に殺された人々の死亡届の枚数よ。

 ネプテューヌに会うまでの時点で、99822人。それでも、

 ラステイション全体の人口の数パーセントに過ぎないわ。

 それがどういう訳か、わかるわね。」

 

ガナッシュの顔に狼狽が見える。ふ、私を誰だと思っているのかしら。

 

「な、まさか...」

「そのまさかよ。私を信仰している人々は、悪魔に殺される事はない。

 つまり、私を信仰している人は、この国にはまだたくさんいるのよ!アクセス!」

 

変身して周囲を見渡す。被害はまだ狭い。そして上空に人影。

 

「ふーん、自分は高見の見物か...降りてきなさい悪魔!あなたにとっても

 こいつは邪魔でしょう?許せないでしょ?だったら、あなたにも悪い話

 じゃないと思うわ。こいつらをここまで放置した責任、取ってもらうわよ!」

 

私は空の人影に向けて豪語する。人影はすぐに反応した。

真っ直ぐ私のところへ降りてくる。

仮面を着けた、蒼コートの男。

 

「ほう、私をも味方につけるその胆力、実に策士と言えよう。

 ふむ、ならばその誘いに乗り、今宵、共闘しようではないか。」

「はっ、勘違いしないでよね。こいつを壊したら、次はあなたよ。」

「肝に銘じておこう。行くぞ。黒の女神よ。」

 

女神と悪魔、相反する2つの存在の共闘が始まる。

 




次回、第19話 「女神の在り方」

感想、評価等、お待ちしてます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。