女神世界の新生世代   作:Feldelt

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第17話 脱出

俺たち4人はただひたすら広い倉庫の中に蔓延るモンスター相手に

無双ゲー並みの吹き飛ばしっぷりを見せながら進んでいた。

が、スタミナが切れつつある。

 

「倒しても倒してもキリがない...武器を研ぐ時間くらいよこしなさいよ!」

「でも砥石もってなーい。ていうか、ノワールがボケるなんて珍しいね!」

「そこは...魚を渡してあげるんです!」

「ねぷっ!?白ちゃんまで!?」

「疲れてるんです...!」

 

ご覧の通り、あの白ですらボケ始めた。

 

「アクセルレインとか使えたら...」

「あれって実体矢じゃなきゃダメな奴じゃない!」

「ハチミツちょうだーい!あともう疲れた~、倒しまくって、やくめでしょ!」

『まさかの地雷(ですか)!?』

 

あの3人がここまで疲弊するほどの量。

絶対、何かからくりがあるはずなんだ...

 

「ぐ...かくいう俺も...あんまりスタミナ無いんだよなぁ...うらぁ!」

 

シアンさんの剣と俺自身の剣と二刀流で無双する。

黒、二刀流って言ったらあいつが出てくるだろうけど、残念ながら俺は

そんなに運動神経、というか反射神経はよくない。

 

「お兄ちゃん!そっち微妙に多い!」

「んじゃぁ、退くか...」

 

4人が束になる。減らないなぁ...

ん?減らない...?そうか...

 

「どこかでモンスターが作られている...」

『え?』

「いや、確証は無いんですけど...俺はそう思います。」

「そう...あれ?"俺"?黒君、一人称変わった?」

「お兄ちゃんは怒るとこうなるんです。」

 

そう。なんでかは知らない。ついでに言うと、怒ると僕自身の力も

少し強化されてそうな気がする。

 

「そうなのね...白、貴女、その矢を拡散させることは出来る?」

「余裕ですね。と、いつもなら言いますが...今はちょっと厳しいですね。

 なんせ体力がもうそろそろリミットなんで。」

 

白がそう言うのと俺の転生鎧装が光り始めたのは同時だった。

あ、鎧自体は光ってない。俺の変身するデバイスの方。

これは半分、てか確実に機械だから能力と言えるのか、という素朴な疑問を

常に持ってる俺でも、今この瞬間でやってくれるのはありがたかった。

 

何でかって?

 

それはこの転生鎧装がこういう風に光る時は、転生鎧装が進化する時だからさ。

さぁ、今回はどんな進化がやって来る...

 

「やってくれ、白。今すぐに。」

「お兄ちゃん!?何か策があるの?」

「当然。だからやってくれ。」

 

進化...この力を解放する!

 

「ネプテューヌさんも変身しておいてください。ノワールさんは白を抱えてくれますか?」

「そこまで言うなら...刮目せよー!」

「やぁ!白!今よ!」

「一気に行きますよ...《アルテミスバレッジ》!」

 

白の拡散矢が俺の前方をクリアにする。

その隙に俺は鎧から黒い羽を顕しながら突撃する。

 

「いっけぇぇ!!」

 

モンスターを羽で吹き飛ばしながら一気に奥まで突き進む。

 

「せぇぇい!」

「やぁ!」

 

ネプテューヌさんとノワールさんも追随する。

ちゃんと白は抱えられてるな...

そう思った俺は目の前にドアらしい物を見つける。

 

「行けるはず...《バーチカルクロス》!」

 

瞬間、ドアを破壊してなんとか俺たちはどうにか脱出した。

モンスターの大群は倉庫から出れないらしく、開かれたドアの前で

立ち往生していた。ざまぁみろ。

 

『ふぃー...』

 

全員長い息をついてぐったりする。

イライラも少しは落ち着いた...

 

「ひどい目に遭いましたね...」

「うん、そうだねお兄ちゃん...ガナッシュ...絶対許さない。」

「白、それは私のセリフよ。けど、こんなことするくらいならまだ何か

 目的があるはずよ、私たちをあの程度のモンスターで倒せる筈がないもの。」

「うーん、7コスト以下の呪文を墓地から唱えるとか?」

「目的分からないじゃないですか!あとそれ最近一枚制限入りました!」

「おおう、やっぱ黒君のツッコミは安定するね!」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ...それよりまずシアンの

 ところに帰ってどうするか考えないと......まずいわ、シアンが危ない。」

 

ノワールさんが気づく。僕も気づいた。まさか...そうだとするなら...

 

「悪魔案件じゃないですか...完全に!」

「もう許さないわよガナッシュ...いいえ、アヴニール!あいつら絶対...

 絶対...ぶっ潰してやるわ!黒!あと頼むわよ!」

「えぇ!?ちょ、ノワールさん!?」

 

颯爽と駆け出したノワールさんにはもう僕の声は届かないだろうな...

いやそれよりも...この二人...白はスタミナ切れでネプテューヌさんは...

 

「(´·ω·`)」

「そんな顔されても困りますよ!?あと顔文字ネタは7章辺りのはずです!」

「そして黒君、君の次のセリフは!」

『こんな状況でよくふざけていられますね!』

「...ハッ」

 

上手いくらいに乗せられた...

この人人身掌握は上手だなぁ...

 

「それよりなんでシアンが危ないの?」

 

どうやら、それ以外はからっきしらしい。

 

 

----------

 

 

「...ほう、醜悪だな。」

 

ラステイション工業地域、インダストリアル7.1が一台のマシンによって

荒らされている様を審判の悪魔は仲間である光からの通信で見ていた。

 

『どうするよ、悪魔。まさかここまでなんて私も思ってなかったし。』

「すぐ向かう...だが、恐らく黒の女神もそこに現れるだろう。光、君は

 製作元であるアヴニールの社員を探せ。排除しろ。」

『了解。』

 

通信を切られた悪魔はゆらゆらと立ち上がり、後頭部をかきながら

仮面の下の素顔を怒り一色していた。

 

「あぁ、全く...人というものはつくづく愚かだ...私を含め...

 愚か以外の何者でもない...!」

 

拳を机に叩きつけ、呼吸を整える。

 

「ゆくか...最高規模の、粛清としよう...」

 

審判の悪魔は飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、「第18話 共闘、悪魔と女神」

感想、評価等、お待ちしてます。

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