女神世界の新生世代   作:Feldelt

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第9話 凛黒の刃、顕る。

一晩眠った後、シアンさんが僕たちへの頼み事の内容を話してくれた。

 

一応説明すると、シアンさんはこのインダストリアル7.1にあるパッセという小さな工場の

社長で、依頼内容は交易路に湧いて出たモンスターの殲滅だそうだ。

 

「子供二人含めた三人組にお願いするのは酷かもしれないが頼まれてくれるか?」

 

「よゆーよゆー!あの審判の悪魔ともやりあったわたしたちだよ!」

「やりあった、というよりかは生きて帰ることが出来たという程度です。

 そこのピンク髪の大人になり損ねた子供の戯れ言ですので気にしないで下さい。」

 

相変わらず辛辣な白の毒がネプテューヌさんに突き刺さる。

一気に空気が気まずくなっただろ、白!フォローする僕の身にもなって!

 

「こほん...わかりました。その依頼、承ります。」

「そうか、助かるよ。アヴニールのせいで商売あがったりなのにモンスターまできて

 正直もう限界だったのさ。」

 

アヴニール...聞き慣れない単語だな...とりあえず聞いてみよう。

 

「アヴニール...?それは一体何ですか?」

「ん?あぁ、アヴニールっていうのは実質、このラステイション全ての

 全権代理者といってもいいような大企業だ。売るものの値段は安く、

 種類は安い。それで市場を独占して、遂には国まで獲ったということだ。」

 

「あかねぇ、ここの女神様は、まともな女神じゃなかったの...?」

 

白が疑心暗鬼になっているがシアンさんはそれを否定する。

 

「いいや違う。ブラックハート様はただ、不在期間が長かっただけだ。」

 

茜さんが言っていた、守護女神戦争のせい、か...

だから、とシアンさんは言葉を繋いだ。

 

「工場の仲間の中じゃ、あの審判の悪魔に進言しようって言ってる奴もいる...

 事実、奴は掲示板を作って、そこにある情報を元に粛清をしているって情報も

 ある...悔しいが、アヴニールはそこまでヤバいバケモノみたいな会社なんだ。」

 

「...審判の悪魔に、か...大人というものはほんと、自分に出来ないことを

 他人に任せようとするんだね...悔しいだとか仕方ないとか、後ろ向きな

 言い訳はほんと耳に障る...自力でアヴニールを潰さないとって思わない

 訳だ...お兄ちゃん、別の宿を探そう。諦めて終わりの人には、私達が力

 を貸す価値は無いよ。あかねぇの、話を聞いた後じゃ...」

 

白が毒を越えた爆撃を開始した。

最初に言っておくとここまで白にスイッチが入ると論破するか逃げるしかない。

そして、ほぼ後者が選ばれる。

 

「私だってそうは思ったさ!けど、奴らには勝てる物なんて、何も...!」

 

「あ、そ...それじゃ潰れるよ、この工場。」

 

「っく...子供に何が...ッ!!」

 

『ストーップ!』

 

ヒートアップして場外大乱闘大暴走大暴動の大崩壊が起きる前に僕とネプテューヌさんで

両者の間に入る。ほんと、この子は妹じゃなかったら面倒極まりないよ...

 

「...止める必要があるの?お兄ちゃん。」

「あるね...一つ、宿代と朝食代は依頼の完遂をもってチャラとする。

 二つ、僕たちはアヴニールを知らない。おそらくは悪魔もだ。だから

 まだ悪魔も潰しには来れない。万が一でもデマだったら大変だからだ。

 三つ、だったらここで協力してレッツデリートアヴニール。オーケー?」

 

「...お兄ちゃんが、そう言うなら...」

 

良かった、おさまった...少し拗ねて頬を膨らませている白は可愛いが、

それは後に語るとして...って、僕は一体何を言っているんだ...

 

「とりあえず、黒君!白ちゃん!仕事に行くよ!」

 

このネプテューヌさんの号令で、一触即発に等しそうな状況から

僕とネプテューヌさんは逃げることが出来た。

 

 

----------

 

 

西風の吹く渓谷...それはまさしく山と風と谷があり、近くに腐った海があったとしても

風で守られてそうな、そんな場所だった。

 

「頭来てるから好き放題モンスター蹴散らしていい?」

 

と言った白は有無をも言わせずモンスター達を魔法で蹂躙している。

 

白は攻撃魔法の適性値が高く、魔法国家である夢見る白の大地(ルウィー)

女神候補生様にも匹敵するレベルらしい。(茜さん談。)

僕は補助魔法の適性が高いことを考えると、ルウィーの国民の血が僕たちに

流れてるのは明白なんだろうな...

 

「あーもー!白ちゃん!私にも出番ちょうだーい!」

「嫌です。巻き込まれたいのならどうぞ。自殺願望を止めはしません。」

 

そう言いながらもう、辺りは焦土と開拓の天変地異と言わんばかりの

荒れ模様...そりゃここら辺植物系モンスターが多いから火属性の魔法を

連発するよね...ただ、そう連発していると疲れるのは当然な訳で。

 

「お兄ちゃん、ネプテューヌさん。あとボスっぽい鳥だけなのでサクッと倒してください。

 私は10秒SPチャージと謳っているウイラーinゼリーを食べてるから。」

 

それ、食べるって表現するものなの?という素朴な疑問はさておき、

僕とネプテューヌさんはモンスター鳥と一戦交えることにした。

無論、変身して。

 

当然、特訓に特訓を重ねた僕と、戦闘センスはいいネプテューヌさんにかかれば、

終始圧倒してモンスターを倒すことができた。

感覚を鋭敏にする補助魔法は偉大だ...

 

が、その補助魔法のせいで、僕たちは少しばかり面倒なことに巻き込まれた。

 

何者かが草葉の陰から僕たちを見ている...どうする、泳がせるかそれとも

気づいていることを知らせるか...どっちも危険だな...

 

「そこで私たちをじろじろ見ているのは誰?ストーカーなら消し炭に、アヴニールなら

 素粒子レベルまで分解、それ以外の一般人なら...出てきなさい。」

 

白も気づいていた。が、その挑発で出てきたのはとんでもない人だった。

 

「私に気づくなんてね...貴女、まだ子供なのに鋭い神経してるじゃない。」

 

銀髪、黒色の変身したネプテューヌさんと似たコスチューム...

間違いない、この人は、ネプテューヌさんのことを知っている...

 

「凡人とは違うので。かくいう貴女も審判の悪魔と似ても似つかない強者の風格を持っている。

 オマケにネプテューヌさんと似たような服...もしやこの記憶喪失の知り合いですか?」

 

「白ちゃん...相変わらずの毒舌ね...」

 

「あはは、そうね、確かに知ってるわ。」

 

やっぱりか。

 

「...!?わたしのことを知ってるの!?だったら教ええ、私は誰!?」

「あはははは!ネプテューヌにお願いされるのも悪くないわね...まぁいいわ。

 教えてあげるわ。ただし、条件が一つ。」

 

「条件...?一体それは何?」

 

「簡単な事よ、私に勝負で勝ったら教えてあげるわ。ただし、

 その頃にはあんたは八つ裂きになっている頃でしょうよ!」

 

その女性は凜黒の刃を顕現させて、僕たち(正確にはネプテューヌさん)を襲撃してきた。

たった一瞬の動きでも分かる、この人はとても強い...!

 

「さぁ、かかってきなさい!」

 




次回、第10話「白銀の翼、甦る。」

感想、評価等、お待ちしてます。

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