A シャルティア名誉挽回
「つかさーーーー!何とかして欲しいでありんすーーーー!!」
夕方、自宅でセコセコ人形を作っていたら、シャルティアが飛び込んできた。
「ええ?ってか、どうやってここを?」
「そんなことどうだって良いでありんすっ!!」
シャルティアは目に大量の涙をあふれさせていた。
シモベとしての本能なのだろうか、反射的に僕はシャルティアを胸に抱きしめる。
「どうしたんです?」
「わらわは……わらわは………、もうおしまいでありんすよーーーー!!」
僕は何も言わずにシャルティアが落ち着くのを待つ。
「………うえっく、…ひ、っく、……うえーん……。」
「何があったんです?」
頭を撫でていると、ようやく落ち着いてきたのか、ポツリポツリと語り始めた。
「わらわは武技を使う人間をさらって来るよう任務を言い付かったでありんす。」
「セバスと、ソリュシャンが囮になって、わらわは盗賊のねぐらを襲いんしたが、そこで見つけたターゲットを取り逃がして、後から来た冒険者にも裏をかかれて一人取り逃がして、そして事もあろうに精神支配を受けてしまったんでありんすー。」
再びシャルティアはだばだば涙を流し始めた。
「え?ヴァンパイア、それも
「それが在るらしいえ。ワールドアイテム・傾城傾国と言うのが……。」
ソロプレイヤーには未知の領域だ。ワールドアイテム所持なんて端からあきらめてる。対処法もワールドアイテムを持つ位しか知らない…。
「そして、助けに来たアインズ様を攻撃して、……死闘を繰り広げて……殺してしまうところだったんでありんすよーーー!!」
「………………。」
それは、何と言うか……。
再びシャルティアは声を上げて泣き始めた。
NPCにとって、所属プレイヤーに尽くす事は何よりのご褒美と言う。その真逆の事を支配されていたとは言え、この子はしてしまった。
掛ける言葉が見つからない……。
「うわぁぁぁぁぁん!」
シャルティアは
「まさか、これを使うときが来るとはね…………。」
僕は
装備者に人形に掛けた物理、魔法攻撃を受けさせやすくするのだが……。
僕はシャルティアの髪をすいて、その抜け毛をワラ人形の中に入れる。そしてシャルティアに両手で抱かせる。
「
本人の協力もあって、何とか効いてくれたようだ。シャルティアはくうくうと、寝息を立て始めた。
「…メッセージ。」
「つかさか。シャルティアが世話になったようだな。ありがとう。」
どうやら心配して見ていた様だ。
「いえ、その、今回は、その…何といったら良いか。」
「ああ。私の親友の愛娘を……はは、何だか、目の前がチカチカして……。」
僕はぎょっとした。いつものアインズさんの声がさらに低くなっていた。相当激怒しているのだろう。だがそのたび沈静化されるのでイライラが募るといった感じか?
シャルティアを罠に掛けた連中、これは相当な覚悟を決めないといけないだろう。
「犯人は分かってますか?」
「いや。しかし今、アルベドに命じて犯人を突き止めさせている。彼女は優秀だ。直ぐに何らかの情報を仕入れてくるだろう。」
「………。」
「プレイヤーが絡んでいると私はにらんでいる。」
「………ですか。」
「プレイヤーは一人とも限らん。私とシャルティアが戦っている間に出てくるかとにらんでいたのだが、あてが外れてしまった。それなりの用意はしていたのだがな……。」
「見つけたら、惨殺、ですか?」
「うむ。こんなふざけた事をしたんだ……、止めても無駄だぞ。」
「止めません……。」
ここにおいてはどうやらカルマよりシモベとしての精神状態の方が上のようだ。
「しかし、シャルティアには気にするなと言っておいたのだが……。」
「それは、無理と言うものですよ。この子は心の底からアインズさんを愛しているのですから…。その愛する人に剣を向けてしまった………。できることなら死んでお詫び……。」
「ならん。」
底冷えするようなアインズさんの声。
「つかさ、シャルティアがそんな愚かな考えをしないよう、見ていてくれ。」
「はい。」
「後はそうだな、家出娘にお尻ぺんぺんはしておいてくれ。」
「それは、僕が殺されます。」
「それから、シャルティアがこの事を吹っ切れるよう、何か知恵を授けてくれるとありがたい。」
「考えてみます。」
「頼んだ。ではな。」
「はい、また。」
とはいえ、そう簡単に自分を納得させられることなんて都合よくあるわけがない。
「やっぱり失態以上の手柄を立てさせるしかないのだろうけれど………。」
家を後にする前に、シャルティアのそばに人形を一体置いた。
起きたとき、一人きりだと心細いだろうから、直ぐに帰れるように…。
そしてもう一体は家の玄関の前に。
もしニグンさんとか来たら、遊び半分、腹いせ半分でシャルティアに殺されてしまうかもしれないから……。
僕は森を抜ける街道の開通を計画している現場に来て見た。
レイナース領へ抜ける道だ。
とりあえず樹はマーレに頼み込んでどけてもらった。はじめは渋ったが、1kmでぶくぶく茶釜さん情報を一つといったらアウラに尻を蹴られながらやってくれた。
樹をトレントのように、自らの根で立たせ、自分の好きな場所へ根付かせる。まあエコな、それで居てめちゃくちゃ簡単な方法だった。
「森の賢王とかがモモンさんに退治されてなかったら、それを排除させるとかできるんだけど……。」
森の賢王のテリトリーはこの道を80%くらいもうらしていた。
逆に森の賢王の支配がなくなったから道を作ろうと考えたのでもあるが……。
「ん?」
何処からか、戦いの音が聞こえる……。こんな深夜に…盗賊か?
それにしてはかなり高レベルな、戦いが繰り広げられている。
「ニグンさん!!」
戦っていた、と言うより一方的にニグンが攻撃されていた。
相手は三人。
「大丈夫ですか?!
「聖…お気を付け………。」
ニグンは僕の腕に抱かれると安心したのか、気を失ってしまった。
「貴方達は何なんですか?」
「驚いた。ヴァンパイアがニグンを助けてる。」
「しかも鬼ボスより高位の治癒魔法使った。強敵。」
双子だろうか?同じ姿、色違いのニンジャ?
「ああ、しかし、ってこたぁ奴さん、信仰系
こっちは男。あ、いや、漢と書いた方がしっくり来る。
跳んでかわし、樹の陰にニグンを横たえると、僕は彼から距離を取って戦禍が及ばないようにする。
「驚き、驚き。気の利いた戦いをする。」
「こんなヴァンパイア初めて見た。」
「中位ゴーレム作成、アイアンゴーレム。中位人形作成、ガーデンノーム!」
森の中ならやはりノームが威力を発揮する。
「おい!何だアイツ!サマナーじゃねぇか!!」
「でもゴーレムなんて我等の敵じゃない。」
ガーデンノームが2体、ニンジャらしき娘達へ飛び掛っていく。
「
「っむ……。」
「結構強い!」
「普通のゴーレムじゃない?」
「当社比2.5倍。」
「このっ!人形がっ!うっとうしいぜっ!!武技・不落要塞!」
「だったら…。」
何か仕掛けてくる!
「中位ゴーレム作成!ミラーゴーレム。」
「頭を叩く!」
以前、プレアデスと戦ったとき、アサシンが使った戦法。まさに同じ事を敵の中の一人が行った。
「チェック!」
カシャーン!
「なっ……。」
鏡が粉砕され、破片がニンジャ少女に突き刺さっていく、と思われた。
「変り身の術!」
破片はしかし直ぐに丸太にどすどす突き刺さっていく。
「意外。結構強い。」
ニンジャ少女は飛び退り、対峙するように動きを止めた。
「もう一度聞きます。貴方達は誰ですか?何故僕らを襲うんですか?!」
「俺等は蒼の薔薇だ。ヴァンパイアが聞いたことあるか?」
「リ・エスティーゼの英雄ですか?」
「私達すごい?」
「うん。ヴァンパイアの世界にも知れ渡った。」
まあ、普通にこんな村の近くにヴァンパイアが住んでれば英雄なら退治しようとするだろうな。
「僕を襲うなら分かる。でも、何でニグンさんを?!」
「アイツは法国の特殊部隊。」
「以前も、ビーストマンの子供を殺してた。」
「こっちも聞きてぇな。お前さん、何で奴の味方をする?奴は、奴こそヴァンパイアと見りゃ退治するような奴だろうが?」
「彼はそんな悪い人じゃない。何か訳がある。」
「何か、混乱する。」
「悪人を助けるヴァンパイア。」
「完全に向こうが悪。…なのに……。」
「「こっちが悪いことしてるみたいに聞こえる。」」
ハモるな、指差すな!
「まあ、ここまでやっちまったんだ。とりあえずボコろうぜ。話はその後だ!」
「ちょっと、何て暴論!!」
「それだけの事をあいつはやってきてるんだよ!あいつの味方するならお前さんも同罪だ!!」
「全く何て漢前な!」
「あ゛あ゛?!!俺は女だ!!」
……………………………。
「………え?なんて?」
「そうなる。」
「わかってた。」
「お前らっ!!!」
「とりあえず、本気出してみる。」
「とりあえず、奇襲をしてみる。」
あー、もう、韻を踏んでてキレイだね。
「奇襲返し、ライトニング!」
「水遁!煙霧!」
ライトニングが水飛沫に拡散されてしまった。
「奇襲返し返し、火遁!炎魔手裏剣!」
「ゴーレム!」
アイアンゴーレムに突き立ったクナイが爆発する。
「
「水遁!鏡面水月!」
「奇襲返し返し返し返し!」
「お前らっ!!初めから奇襲になってねぇことに気付け!!」
漢はゴーレムと力比べをしていた。もう、何ていうか、規格外だ。力だけならガゼフを凌ぐんじゃないか?!
「奇襲って言葉に失礼だ!!」
「「「お前は女と言う言葉に失礼だ!!」」」
「お前らっ!!!」
「1対3か、おい?!何で俺が1の方になってんだよ!!?」
「ショタの敵だから?」
「血が青いから?」
「ただなんとなく?」
「よーし分かった、お前ら全員敵だ!!全員まとめてかかって来い!!」
「いい加減馬鹿話はやめろ!!頭痛くなってきた。」
見れば空中に誰か浮いていた。
「イビルアイ……。」
「……イビルアイ?」
………。
「……………。」
「むぅ。何だろう、お前からは強さ以外の何かを感じる。もしかしてお前は“えぬぴいしい”か?」
「NPC?やはり君もプレイヤーか?」
もしかしてシャルティアに一杯食わせたのは。
「も、だと?」
「なるほど、分かった。全ては君の差し金だったんだね……。」
「ぬおっ!」
「雰囲気が変わった!」
「本気出した?!」
「
HPはジャミングされてる。とするとほとんど見えないと思っていた方が良いか?
「
「む、
今までの感じ、圧倒的実力差があるとは思えない。
ならば…。
「
「
「
「むっ!」
「今度は組み手か…。色々な攻撃手段を持ってる奴だなしかし。」
ソロだからね。ガチビルドには歯が立たないが、汎用性の高さはハンパ無い。
「とはいえ、飛んでちゃ応援には行けねぇな。」
「声援はできる。」
「がんばれー。」
3人は戦時食を食べ始めた。
膝蹴りからひじ打ち、回し蹴りの三段。最後の一撃をイビルアイは腹に食らってしまう。
「ぐふ…。ちっ!お前、
「
「何?」
七本の水晶の短剣が僕の周りを飛び回って襲ってくる。
「っく、スキル・フローターキャプチャー!」
「スキルだと?!やはりお前は……。」
僕の周りに浮いていた短剣は無力化した。
今のLVでは1日2回のみのスキル……。同じ魔法、そんなに使ってくれるなよ。
………………
おかしい、飛び回ってもうだいぶ経つってのに……。
「
パキ…。
「く……。」
「
パシャーン。
「くあっ…。」
僕の方のフローティングシールドが壊れた。
次いでマジックアローを一つまともに食らってしまった。
おかしい、戦うほどに僕の方が明らかに分が悪くなっていく。
それに、どうやらプレイヤーでもないようだ……。
「君は、もしか、して…?ハッ、ハッ、ハ……。」
「おかしい、お前、ヴァンパイアではないのか?」
「……………。」
「……はぁ、はぁ、はぁ………。」
「疲労するヴァンパイア等初めて見た。」
「
「
「ぐ、っは……。」
腹に
「さて、聞かせてもらおうか。」
僕の襟首をつかんで引き上げるイビルアイ。
「何を、でありんすか?」
「……は?」
イビルアイの後ろには笑顔のシャルティアが居た。
思わず飛び退くイビルアイ。
シャルティアは僕の腹に突き立った
「グホッ…。」
「相変わらずイイ顔をする子でありんすなぁ。はぁはぁ…。」
イッテェェェ……。
「お前、何者だ?」
「何者、ねぇ。わらわの一番のおきにをおんしら………。」
ブワッと殺気があふれる。
「よくもやってくれたな!」
「っく……。」
「なんだ?この不快な仮面は?」
シャルティアは一瞬でイビルアイの真正面に立つと、仮面を軽くつかんで粉々にした。
「……ちょーっと、やばそうだ。」
「ヴァンパイアの親玉がやってきた。」
「私達も手伝う。あれはやばい。」
「お~やおや、おんしも
「っどおおおっらぁぁぁぁぁ!!!」
ガキン!!
「な、バカな……。」
漢の
「バケモノ……。」
「さ~て、撫で斬りにしんしょうかえ……。」
「ストップ!……ハッ、ハッ、……。」
「つかさ…、何を止める?何故止める?」
心底分からないと首を傾げるシャルティア。
「シャル……、シャム様、この娘達、は…、ハァ、ハァ…武技が使えます。」
「おや…。」
「ハッ、ハッ…、それに、その双子は、ニンジャ…です。とても、珍しい。そして、この地に居た
シャルティアは僕の傷を回復してくれる。
「御方の下に連れて行けば、今回の、汚名の、返上、間違いなしです…。」
「おお。…おお、おお。やっぱりつかさ、大好きでありんすよーー!」
やっぱりかわいいなぁ、シャルティア様……。これでSっ気を無くしてくれれば…。
「何か、やばい雰囲気。」
「魔王殿かどこかに連れてかれそう…。逃げよう。」
「大丈夫です。御方は、取って、食ったり、しません。ちゃんと話して、貴女方の、技や、武技、魔法を見せてあげれば、殺される、事は、ありません。」
「信用できん!」
「じゃあ、ここで、シャム様に、八つ裂きに、されますか?」
「……………。」
僕等はニグンさんを家に寝かせると、シャルティアの
ナザリックの内部を見て蒼の薔薇の4人はその絢爛豪華さに度肝を抜かれていた。
謁見の間に到着すると、ユリとルプスレギナが扉を開ける。
「我が君、今回は無断で飛び出して、申し訳ありんせん。」
「よい。つかさが既にお前に罰を与えたと聞いている。それは不問にしよう。」
「それで、先程連絡のあった、武技を扱う戦士達と言うのがその者達なのだな?」
「はい。」
「その他にもユグドラシルではありえないタイプのニンジャと、地元の
「はい。」
「シャルティア、良くやったぞ!!」
大きく手を広げるアインズさん。
4人の前でシャルティアの名を言ってしまっているが、彼女の気持ちをちゃんと理解しているアインズさんの優しさが感じられる。
「は、はい!!」
天にも昇るような表情になるシャルティア。
「今回の件で、お前の失態は帳消し、いや、一転、大殊勲者になった。」
「も、もったいなきお言葉。」
「そうだな、褒美を与えたいと思うのだが…、つかさ、何がいいと思う?」
「ひざの上で抱いて、頭を撫でてあげればいいと思います。」
「そ、……そうなのか?」
それだけで良いのか?と首を傾げているアインズさん。
よいしょといった感じでひざの上に抱き上げ、シャルティアの頭を撫でてあげるアインズさん。
コロスコロス………と声が聞こえてくる気がする。今、アルベドと目が合ったら……呪われそうだ。
シャルティアは大感激してアインズさんの首に手を回す。
「わらわの初めて、貰ってぷきゃら……。」
アルベドがシャルティアに拳骨をくれていた。
「つけあがるのはそこまでにしておきなさい。そこまでの成果は挙げていないはずでしょ。」
「お~やおや、嫉妬でありんすか?顔が面白いことになっていんすよ。大口ゴリラ!」
「面白い事を言うわね。涙と鼻水でぐちゃぐちゃになってつかさの所へ逃げ込んだヤツメウナギ!」
アインズさんはそそくさと膝の上から後ろのアルベドの方へ向かってシャルティアを押し付けると、蒼の薔薇に向き直る。
「さてと、自己紹介がまだだったな。私はアインズ・ウール・ゴウンと言う。
「おーばーろーど?」
「ようこそナザリックへ。君達がこの世界での初めての客になる。歓迎するよ。」
今まで呆気に取られていた4人だが、その言葉で少し安心したようだ。
「俺は蒼の薔薇のガガーラン。戦士です。」
「ティア。ニンジャ。」
「ティナ。ニンジャ。」
「私はイビルアイ。
「うむ、よろしく頼む。」
「さてと、じっくり武技とか忍術とかを見せてもらいたいところなのだが、今回は顔見せだけで済ませようと思う。」
「顔見せ…ですか?」
「と言うのも、今、我々は引っ越してきたばかりで色々準備が整っていなくてね。」
……本当のところはシャルティアの件での報復準備だろう。
「この豪華絢爛な設備を引っ越してきたばかりで?」
「それに君達も驚いただろう?人外ばかりが集まってできた組織など。」
「それは、まあ。」
「何かあればつかさにメッセージを送れば私に連絡を取れる。イビルアイとやら、同じヴァンパイア同士、つかさと仲良くしてやって欲しい。」
「…………。」
「おい!」
ガガーランに肘で突っつかれるイビルアイ。ちょっとふて腐れている様子だ。
「分かりました。」
…とっても嫌そう。
いや、ボコボコにされたの僕の方だから。遺恨あるの僕の方だから。
「まあ、君達は恐らく直ぐにつかさとは打ち解けると思う。」
「ああ、何か。」
「うん、分かる。」
双子のニンジャは僕の両肘を取って肩を組ませる。
「こいつは、」
「良い奴だ。」
「「それに面白い!」」
ハモるな!お前らのほうが面白いから。
「さて、今回わざわざ来てもらって、手ぶらで帰すのもアインズ・ウール・ゴウンの名に泥を塗ってしまうな。」
パンパンと手を叩くと、ユリとルプスレギナが大小つづらを持ってきた。
「君達にどちらかをあげよう。好きな方を選ぶが良い。」
すずめのお宿か?!
小さい方が良いよガガーラン。
ガガーランが小さいつづらを持ち上げようとすると。
「うおっ、おもって……。」
中を開けると砂金がぎっしり詰まっていた。あの大きさからすると200kgは下らないだろう。
「おい、これ、さっきメガネのメイドさん、軽々と持ってなかったか?」
全員がユリを見る。
ユリはにっこり微笑み返した。
全員の頬に冷や汗が流れる。うん、あの人も怖いんだよ。
「ちなみに大きい方は何が入っていたのですか?」
僕が聞くと、アインズさん中を空けてくれた。
「あー、マジックアイテムでしたか。」
「お化けかと思ったか?」
お茶目だ。何か骸骨がウインクでもしたみたいだ。
「言い忘れていたが、まだ誰にもナザリックの事は話さないで欲しい。」
4人は顔を見合わせる。
「あー、ウチのメンバーでリーダーのラキュースって神官戦士が居るんですが…。」
「君達の仲間なら是非もない。しかし他には……。」
「分かりました。」
「うむ。ではカルネ村まで送らせよう。シャルティア……。」
シャルティアはアルベドと取っ組み合っていた。
ビキッ!!
アインズさんがスタッフで地面を突付くと、あたり一面が氷の世界になった。
「いいかげんにせんか!客人の前だぞ!!」
「「も、申し訳ございません!」」
アルベドもシャルティアも、と言うか全員が恐怖で引きつっていた。
蒼の薔薇もアインズさんを怒らせると怖いと思い知ったことだろう。
「ねえー、皆どこーーー?」
明け方、森の中でラキュースの寂しそうな声がこだましているのであった……。
続く