ストライク・ザ・ブラッド―混沌の龍姫― 作:アヴ=ローラ
翌日。時刻は朝の五時。古城は目を開けると、見知らぬ天井が映った。彼が横たわるベッドはとても柔らかい。
少なくとも、古城の寝室ではないことが分かった。そう、自分の寝室では―――
「はっ!?」
古城が飛び起きると、すぐ側にいた雪菜が、あ、と古城に気がつき、
「おはようございます先輩。よく眠れましたか?」
「ん?あ、おう―――じゃなくて!なんで姫柊がいんだ!?」
平然と挨拶してきた雪菜に、古城がすかさず突っ込みを入れる。
雪菜は無表情に見つめ返して、
「先輩が目を覚ますまで監視していました」
「え?マジかよ!?」
「冗談です。ちゃんと仮眠は取りました。一時間おきに、ですが」
「一時間おき、って二時間しか寝てねえじゃねえか!?」
大丈夫なのか、と雪菜を心配する古城。雪菜は、大丈夫です、と返して微笑んだ。
古城はホッと胸を撫で下ろす。が、古城は雪菜の顔をじっと見つめると首を傾げて、
「………大丈夫っていうわりには、瞼が赤く腫れているようだが」
「―――ッ!こ、これは!先輩が殺されて、それが悲しくて泣いていたんです!」
「………第四真祖は魔力そのものを無効化されない限り殺せない、って空無に教わったのにか?」
「う、それは………彼女の話を半信半疑に思っていたからです!」
三名の真祖とは無縁だ、と初めて会った時に嘘をつかれましたし、と雪菜はムッとした表情で言う。
古城は、それな、と呟き、
「あの時は空無の性格がひねくれてたんだから、嘘をつかれても仕方がないだろ」
「それは………そうですけど………先輩はどうなんですか?」
「俺か?………まあ、俺も首を落とされた状態から復活できるとは思ってなかったけどな」
古城も雪菜と同じで、復活できるとは思っていなかった。姫乃の話を半信半疑に思っていたのは彼も同じだった。
吸血鬼の真祖は、他の吸血鬼たちと違い神々の呪いを直に受けているため、首を落とされた程度で死ぬことはない。
〝 〟を封じるために、〝天部〟によって創られた殺神兵器―――第四真祖。その力を〝 〟から受け継いだ古城もまた、不滅の肉体を得ているため簡単に滅びたりはしない。
「たとえ心臓を貫かれても、頭を潰されても真祖は復活するんだってな。死にたくても死ねない………本当に呪い以外の何物でもねーな」
「そうですね。ですが、もしも空無さんの話が嘘だったら先輩は………」
「ああ。あの金髪ローブ野郎に殺されてたな」
古城の言う金髪ローブ野郎というのは、姫乃を連れ去った
「………金髪ローブ野郎はなんで空無を連れ去ったんだろうな。つか何者だよ」
「わかりません。空無さんが金髪の彼のことを〝やー君〟と言っていましたが―――」
「姫乃を拉致したのは異界に棲まう〝神〟だ。聖書の神、唯一神ヤハウェと呼ばれているな」
え、と聞き覚えのある声に振り向く古城。彼の目に映ったのは、豪奢なドレスを着た少女―――那月だった。
古城は那月の登場に驚き、声を上げる。
「………え、那月ちゃん!?」
「教師をちゃん付けで呼ぶな馬鹿者。なにを驚いている暁。ここは私の家だ、私がいてもおかしくはないだろう」
「は?那月ちゃんの家!?てことは、この寝室は那月ちゃんの」
「ちゃんではない。………ふん、ああそうだ。だが残念ながらこの寝室は私の部屋ではない。姫乃に貸してる部屋だ」
つまり、古城がついさっきまで寝ていたベッドは、いつも姫乃が眠っているベッドということだ。微かに甘い香りがしたのはそのためだ。
「ん?でもなんで俺と姫柊は那月ちゃん
「先輩、それはですね、倉庫街で倒れていたわたしたちを、南宮先生が運んでくださったんです」
雪菜の説明に、なるほど、と納得する古城。一方、那月は古城にちゃん付けを連呼されて不機嫌な表情をしていた。
那月は、ふん、と鼻を鳴らし、
「本当は姫乃に止められていたんだが、心配になってな。様子を見に行ったら、姫乃の姿はなくおまえたちがいたというわけだ」
まさか拉致されていたとはな、と複雑な表情を浮かべる那月。世界最強の
那月のその顔を見た古城は、申し訳なさそうな表情を浮かべ、
「悪い那月ちゃん。俺のせいで空無が連れてかれちまった」
「なに?姫乃は唯一神に敗北したわけじゃないのか?」
那月が怪訝な顔で訊くと、雪菜が、はい、と頷いて、
「空無さんを斃せるのは創造主だけだと聞いています。彼女が無敗を刻み続けているのは、創造主に与えられた力があるからだと」
「………待て、転校生。だとしたら姫乃が拉致られた原因は」
「ああ。空無の創造主、
ギリッと歯を噛み締める古城。創っておいて裏切るような真似をする
姫乃のことを〝愛娘ちゃん〟と呼んでいるにも関わらず、娘を敵に売るなんてどうかしている。
「南宮先生。先輩を殺そうとし、空無さんを拉致した金髪の少年を唯一神とさきほど言ってましたが………まさか、聖書に記されているあの………?」
「そうだ。奴自らが〝唯一神〟と名乗っていたからな。姫乃に〝やー君〟と言われてキレていた短気な奴だったが」
「………那月ちゃんもあの金髪ローブ野郎にあったのか!?」
ギョッと目を剥いて那月を見る古城。不機嫌顔で、ああ、と那月は頷く。
「
「那月ちゃんもあいつに襲われたのか!?」
「ちゃんではないが………ふん。そういうおまえも、〝殺神兵器〟という理由で殺されかけたようだな」
不機嫌顔で訊いてくる那月に、苦い顔で頷く古城。殺されかけた、というより実際に一回殺されたようなものだが。
那月は、古城と雪菜を見回すと、踵を返して、
「暁が起きたところだしな、私がおまえたちを家に送ろう。姫乃のことは私に任せて、おまえたちはちゃんと学校に行け」
「は?那月ちゃん一人で金髪ローブ野郎に挑む気なのか!?」
「そういうことになるな。だが、仮契約とはいえ姫乃の
それに約束したからな、いずれ真の
たとえ〝神〟が敵だろうと、姫乃は私のメイドだ。絶対に奪還してやる。
姫乃奪還に燃える那月。古城は、そっか、と呟き、
「そういうことなら、俺にも協力させてくれ」
「なに?」
「俺だって一日だけだけど空無の
主従関係として、姫乃は身を挺して古城を守ったのかもしれない。が、古城にとっては嬉しかった。それと同時に自分のせいで彼女が拉致されてしまったことに罪悪感があった。
故に、今度は俺が助ける番だ、と古城は拳を硬く握り締める。
そんな古城の拳に両手を重ねて雪菜が言った。
「先輩が行くのなら、私も行きます」
「姫柊………?」
「私は先輩の監視役ですよ。付いていくのは当然の義務です」
そういやそうだったな、と古城は苦笑する。たとえ古城が危険な橋を渡ろうとも、雪菜は監視役という名目で是が非でも付いてくるだろう。
それに、と雪菜が続けて口を開き、
「空無さんは恐ろしい存在ですが、考えが幼稚でした。ですから、彼女を取り返して―――教育します」
「は?」
「今まで好き勝手やってきたそうですからね。駄目なものは駄目だと、私が一から教えます」
「そ、そうか」
変なスイッチが入っている雪菜に、古城は苦笑いを浮かべた。
一方、那月はムッとした顔で古城と雪菜を睨み、
「待ておまえたち。付いてくる気満々みたいだが、私はおまえたちを連れていくつもりはないぞ」
「そう言わないでくれよ那月ちゃん!空無を助けたいのはあんただけじゃねえんだ!」
「ふん。相手は〝神〟だ。私はおまえたちを守ってやれないかもしれない。それでもなお、私と来る気か?」
「ああ。覚悟は決まってる。相手が〝神〟だろうがなんだろうが知ったことか!空無を取り返す、ただそれだけだ」
真剣な表情で言う古城。その瞳は退こうという気が微塵もない。
那月は、仕方がないな、と諦めたように溜め息を吐き、
「ふん、いいだろう。そこまで言うなら連れて行ってやる。その代わり、後悔しても遅いからな」
「ああ」
「はい」
こうして那月は、古城と雪菜を連れて姫乃奪還に向かうことになった。が、
「………ところで那月ちゃん」
「ちゃんではない。なんだ?」
「どうやって空無の居場所を特定するんだ?」
古城の尤もな意見に雪菜も、たしかに、と疑問に思い那月を見る。
那月は、ニヤリと笑って答えた。
「それなら問題ない。〝
まるで教会の聖堂のような天井の高い広い部屋。
壁際に並んでいるのは、直径一メートル、高さ二メートル弱の円筒形の水槽で、計二十基ほど整然と配置されている。
水槽の中には濁った琥珀色の溶液が満たされていた。
そこはただの実験室。廃棄された
「~♪」
「「「……………」」」
その場に不釣り合いな、黄金の装飾が施された豪奢な玉座があった。
その玉座に座るのは、金髪の少年、
彼の右腕の中に収まる
その玉座の傍らに控えているのは、金髪と左目に
上機嫌の
姫乃は漆黒の姫ドレスで、アスタルテは彼女とは対照的な純白の姫ドレスを着せられている―――
そんな主なる神を、流石のオイスタッハも表情が引き攣っていた。
どうしてこうなったのか、数時間遡ることにしよう。
【回想】
彼女の傷が癒えず瀕死の重傷を負ったまま気絶しているのは、彼女の創造主である
そういえば、
そんなことを考えていると、オイスタッハが不思議そうな表情で見つめてきた。
「我らの主よ。これから何を為さるおつもりですか?」
「ん?ああ。これから
「罰ですか?その娘を我らの主の玉座に座らせて、一体どんな罰を与えるおつもりなのですか?」
オイスタッハの疑問に、フッと笑って
「そんなのは決まってる―――
「………はい?」
オイスタッハは、
「起動せよ、我が聖書の原初の聖典―――〝
その瞬間、彼の手にする書物は輝きを増し、実験室を眩い光が満たしていく。
オイスタッハたちが眩しそうに瞳を細めているうちに、書物から溢れ出した光が、玉座に座る瀕死の姫乃を包み込んだ。
それを確認した
「我が名は〝聖書〟の偉大なる神ヤハウェ・エロヒム。禁忌を犯した汝、
すると、彼女の胸元の傷は一瞬で塞がり、閉ざされていた瞼がゆっくりと開く。
紅い瞳が完全に開かれた彼女へと、
「目覚めはどうだ、〝
原初蛇レヴィアタン。そう呼ばれた姫乃は、コクリと無表情に頷いて
その瞬間、
「……………ッ!」
驚いた姫乃は、
次第に恥ずかしさで頬を赤らめていく姫乃。
姫乃は、
「………離して、欲しい」
「断る!」
姫乃の懇願を、
しかし、
そして、
「くく、レヴィアタンよ。
え、と涙で濡れた瞳を見開かせて
「………本当?」
「ああ。
ニヤリと笑って言う
「………パ………パ?」
「うむ!」
これには姫乃はムッと怒ったような表情で彼を見つめ返し、
「………嘘、つき………!」
「はっ!?す、すまんなレヴィアタン。あまりにも可愛かったのでつい………!」
慌てて姫乃を解放する
だがしかし、彼女のその瞳は涙目であり、恐いどころか可愛い生物にしか見えない、と思った
一方、その光景を開いた口が塞がらない状態で眺めていたオイスタッハと、無表情なはずが驚愕したように瞳を見開かせているアスタルテの二人。
一体全体何が起きているのか、二人には全く理解できない。〝
オイスタッハは、愛おしそうに姫乃を見つめる
「我らの主よ。その娘に何を為さったのですか?まるっきり別人のように思えるのですが」
「ん?そうだ。
「改変、ですか!?」
ギョッと目を剥くオイスタッハ。かつて〝
「この聖典は、とある男が記したものが基になっているんだが、基となったものは〝
〝
とある男―――
所謂モーセ五書、聖書の最初の五つの書のうち、始まりの書である〝創世記〟は、ヘブライ語では冒頭の言葉をとって〝ベレシート〟というヘブライ語で『はじめに』という意味で呼ばれている。
ギリシャ語の〝ゲネシス〟は『誕生・創生・原因・開始・始まり・根源』の意味である。
その内容は、大きく三つに分けることができ、『天地創造と原初の人類』『イスラエルの太祖たち』『ヨセフ物語』なのだが、特に細かく触れるつもりはないので紹介程度にしておく。
「
その異界の神は言った。
『〝
『ならば、共に〝
探究という名の旅をしていくうちに、また別の神と出会い、彼も加えて三神に増え、また別の神が………と繰り返していくと、いつの間にか数十柱の異界の神々が集結していた。
その神々は、皆〝
そんななか、〝
『〝
その神の発言を聞いて、異界の神々がどよめく。龍神が蛇神だったということではなく、世界を破滅させてきた〝
「そして
〝
「………その娘が元は『善』というのは納得しかねますが………では何故、その娘は『悪』に堕ちたのですか?」
「ふん………それが解れば苦労はせん。だが、これだけは
「
高らかに宣言した。そんな彼を、姫乃は怒ることすら忘れてキョトンと見上げる。
「………パパ?」
「安心しろ、レヴィアタン。お前は
よしよし、と姫乃の頭を優しく撫でる
敵は多い。それは姫乃を守る派の神々よりも、殺す派の神々の方が過半数もいるからだ。
ふむ、とオイスタッハは考え込む素振りを見せたのち、
「なるほど。我らの主がその娘を連れ去った理由は、殺すのではなく保護することが目的だったのですね」
「そうだ。
なにせ、黒幕によってこの子が『悪』に改竄されたからといって、世界を滅ぼされた者たちの怨念が消えるわけではないからな、と
彼もまた、
「………それで、我らの主が生み出した秘呪とは一体なんなのですか?」
「む?………おお、そうだったな。つい熱く語ってしまった」
照れ臭そうにポリポリと頭を掻く
「
「神話の存在へと改変、ですか!?」
「うむ。この聖典〝
神はまた言われた。
『水は生き物の群れで満ち、鳥は地の上、天の大空を飛べ』
神は海の大いなる獣と水に群がる全ての動く生き物とを種類に従って創造し、また翼のある全ての鳥を種類に従って創造された。神は見て、良しとされた。
「だが、
海の大いなる獣の
「―――なら、こうしよう。創れないのならば、別の者にレヴィアタンになってもらえばいい」
そう言って
「そして、レヴィアタンに改変し得る存在こそが、本来は守るべき神々の
禁忌の邪龍ウロボロス。本来の役割と真逆の行為を行い、神々の
〝禁忌〟の烙印を押すことで、神々の生み出した秘呪は彼女を蝕む強力な呪いへと至るのだ。
「
オイスタッハとアスタルテは、先程の話を聞いて、
「ふむ。レヴィアタンの露出度高めのメイド姿もそそるが、
「………?」
何を言ってるんだこの人、的な表情で
「我が妻も、裸身の上にケープコートとはけしからん!オイスタッハよ………超グッジョブだ!」
「………はい?」
「私は
「………え?ワタシの母は、オマエ?」
オイスタッハが困惑し、アスタルテが否定しようとしたところに、姫乃が割って入ってきた。
アスタルテは一瞬固まったが、すぐに人工的な声音で否定―――
「……………
「その通りだ!レヴィアタンの母は、我が妻アスタルテ!オマエではなく〝ママ〟と呼べ!」
―――できなかった。
姫乃は目を瞬かせながらアスタルテを見つめて、
「………ママ?」
「―――――ッ!?」
〝ママ〟と言った。この瞬間、アスタルテの全身に電流が走ったように痺れ、
「………………可愛い」
思わず母性本能が刺激されたような感覚に襲われ、そんな言葉が口から洩れ出た。彼女の頬は微かに赤く染まっている。
オイスタッハは、感情の乏しいアスタルテが頬を赤らめている姿を見て、驚愕の表情を浮かべていた。
一方、姫乃とアスタルテを満足げに眺める
「
「「……………!?」」
逃げよう、と姫乃とアスタルテは顔を合わせて頷き合い―――
「どこへ行こうというんだ?我が妻と娘よ」
「「……………ッ!」」
いつの間にか二人纏めて
「さあ、着せ替えといこうじゃないか♪」
「「~~~~~ッ!!?」」
着替えではなく、着せ替えに変わっていることに気づいた姫乃とアスタルテは絶望した。
オイスタッハは、そんな憐れな
そして、
【回想終了】
そして時刻は戻り、朝の六時。姫乃とアスタルテの着せ替えを思う存分に楽しんだ
姫乃とアスタルテは、
オイスタッハは、呆れたような表情で
「………ふん。どうやら来たようだな」
「………敵襲ですか?」
オイスタッハが訊くと、
それから腕の中に収めていた姫乃とアスタルテを解放し、
「敵は三人か。例の〝殺神兵器〟と〝メトセラの末裔〟。それに―――〝魔女〟だな」
「〝メトセラの末裔〟!?まさか、あの時の剣巫のことですか!?それに魔女もいるのですか………」
オイスタッハが驚きと不安の混じった顔をすると、
「案ずるな。貴様には
「………!なんと!?この私めに、我らの主が御力を与えてくださるのですか!?」
「ああ。その背に担ぐ斧を
「はい!」
オイスタッハは歓喜の笑みを浮かべて、背に担ぐ巨大な戦斧を
戦斧から伝わる
「我が妻にも、力を与えよう」
「私は主様の………」
否定しようとして、チラッと姫乃を見る。彼女は私が母だと信じているんだっけ、と思い否定するのをやめた。
「………はい」
アスタルテが応えると、
「我が最高傑作にして、完璧なる獣―――〝 〟を眷獣として、汝に与えん!」
「……………っ!!」
アスタルテの人工の血に入り込むは、大いなる獣の魔力。激痛は、走らない。ただ、ちょっと身体が熱くなってきた気がした。
熱に魘される、そんな感覚に襲われて―――
「ママ」
「………!」
ギュッと姫乃に手を握られると、一瞬で熱が冷めて元の体温に戻った。
アスタルテは驚いたような表情で姫乃を見つめると、彼女はニコリと微笑んできた。
可愛い。アスタルテはまた姫乃を可愛いと思った。敵だった頃の彼女は、無感情無感動無表情の全く可愛いげの欠片もない少女だった。
だが、
愛らしい少女に変化したのは、
アスタルテは、彼女なら娘にしてもいいかな、と思う。流石に
姫乃を微かな笑みを浮かべてアスタルテが見ていると―――バァン、と勢いよく扉が開く音がした。
そして、
「―――金髪ローブ野郎!」
「む?」
少年の絶叫に似た声を聞いて、
「悪いが、空無は返してもらうぜ」
獰猛な笑みを浮かべる〝殺神兵器〟―――古城。
銀の槍を構えた〝メトセラの末裔〟―――雪菜。
漆黒の鎖〝
三人の侵入者と、
オリジナル設定
〝禁書〟―――異界の神々が協力して生み出した究極の秘呪。
〝禁書〟の正式名は『禁忌を犯した者に罰を与える呪いの書』………長いとか言わない。
名の通り、禁忌―――タブーの行為に走った者に罰を与える力のこと。
カインの〝聖殱〟のような力だが、この〝禁書〟は世界を書き換えるというよりは、自らの神話の存在に置き換えるというもの。本編で〝改変〟と記しているが、物語が進んでいくうちに〝置換〟という表記に変わる予定。