ストライク・ザ・ブラッド―混沌の龍姫― 作:アヴ=ローラ
「〝若い世代〟、下がる」
〝若い世代〟の吸血鬼の男に、下がるよう促す姫乃。ああ、と首肯して彼は姫乃から少し下がった。
一方、法衣の男は、得体の知れない
「ロドダクテュロスの一撃を、指一つで受け止める貴女はいったい何者ですか!まさか、最近この島に出没したという」
「うん。ワタシは、オマエの想像通りの存在。異界の楽園に棲まう龍神」
「な………ッ!?」
姫乃の正体を知った法衣の男と
まさか、魔族狩りをしていたら
法衣の男か、冷や汗を滝のように流していると、姫乃がじっと見つめてきて、
「………オマエたち、御主人様が捜してる魔族狩りの常習犯の特徴と似てる」
「………!?」
『似てるもなにも、彼らが南宮那月ちゃんが捜してる、魔族狩りの常習犯だよ』
「やっぱり、そう」
「オマエたちをこれから御主人様の下に突き出す。逃亡も抵抗もしなければ、痛い思いはしない」
「―――ッ!?」
法衣の男の顔が強張る。御主人様というのが誰かは知らないが、ここで捕まるわけにはいかない。
しかし、相手は
そんな彼を庇うように、
「
仄白く輝く透き通った腕で姫乃を攻撃した。が、腕が姫乃を殴打するよりも早く―――
「―――ガッ!?」
「アスタルテ!?」
法衣の男は、血相を変えてアスタルテと呼ばれた少女の下へ駆け寄る。
彼女は幸い目立った怪我はなかったが、地面に背中を強く打ち付けたのか、苦悶の表情をしていた。
「貴様………!」
法衣の男は、怒りに任せて姫乃に襲いかかった。彼が戦斧を振り上げた刹那―――バキャン、と
「―――ガハッ!?」
不可視の攻撃を受けて法衣の男の着用していた強化服も砕け、彼の巨躯な身体は呆気なく吹き飛ばされた。
地面に倒れ伏す彼を見た〝若い世代〟の吸血鬼は、唖然とした表情をしていた。自分と
〝若い世代〟の吸血鬼が見るからに、姫乃は一歩も動かず、指一つ数回振っただけだった。まるで、杖を振って魔法を行使する魔法使いのように。
地面に倒れた彼らの確保に向かおうとする姫乃。すると、不意に〝若い世代〟の吸血鬼が姫乃を呼び止めた。
「ま、待ってくれ!」
「ん?」
「俺の
必死に懇願する〝若い世代〟の吸血鬼。姫乃は、うん、と首肯し、
「獣人の彼はまだ生きてる。ワタシが彼の傷を癒せるから、ちょっと待つ」
「ほ、本当か!?す、すまん………どうか、俺の
「うん、わかった」
姫乃は了承し、指を振る。たったそれだけで、瀕死だった獣人の男は、まるで時間が巻き戻るかのように再生していった。
そして、完治した獣人の男の下へと〝若い世代〟の吸血鬼が駆け寄る。
「おい、無事か!?無事なら返事してくれ!」
しかし、獣人の男からの返事はない。代わりに、姫乃が〝若い世代〟の吸血鬼の下へ歩み寄ってきて、
「大丈夫。ワタシの能力で眠らせてるだけ。じきに目覚める」
「そ、そうか………よかった」
ホッと胸を撫で下ろす〝若い世代〟の吸血鬼。その彼が姫乃をじっと見つめて、
「………なに?」
「いや。昨日会った時のあんたとは、まるで別人だなと思って。天使みたいに優しくしてくれるからさ」
「天使、違う。ワタシは龍神」
「あ、ああ。そうだったな………悪い」
頭を掻きながら謝る〝若い世代〟の吸血鬼。そんな彼は、完治した獣人の男を背負い、
「本当にありがとな、あんた。この恩は一生忘れない」
「うん。ナンパはほどほどに」
うぐ、と姫乃の忠告が〝若い世代〟の吸血鬼の胸を抉る。今回のケースは、向こうから誘ってきたわけだが、その言い訳は飲み込んで頷いた。
「じゃあ、俺たちはこれで」
「うん」
獣人の男を背負って、〝若い世代〟の吸血鬼は去っていった。
姫乃は、彼らの背を見送り、法衣の男たちが倒れている方に向き直ると、
「―――!」
不意に光の槍が、姫乃の眼前に迫ってきた。
その不意打ちに、姫乃は小さな拳で殴りつけて粉砕する。
姫乃は、光の槍が飛んできた方向に視線を向ける。するとそこには―――
「ほう?貴様が弱者を守り、命まで救うとは驚きだ」
黄金の髪と蒼い双眸を持つ、純白のローブを着た少年がいた。
神々しい力、
「………
「誰が、やー君だ!
やー君もとい
しかし、姫乃は華麗に無視して、彼の背後に目を向けて小首を傾げる。
「………人間と
「ん?ロタリンギア殱教師、ルードルフ・オイスタッハと、
「―――――え?」
「………あの
「驚くところソコかよ!?名前がアスタルテだから、かつての
「地中海世界各地で広く崇められたセム系の
じっと
「
「はあ!?なにを馬鹿なことを言ってんだこの駄龍は!?」
『なるほどねえ。たしかに、
「
姫乃の紅い双眸の奥に潜むであろう〝
『ボクが愛娘ちゃんを
「ふん、どうだか―――って、だから
「………昔、
「だー!それは、貴様の、見間違いだ!」
そんな彼から、
『うわあ!愛娘ちゃん逃げて!
「ロリコンじゃねえって言ってんだろ!って、誰が
自然な動きで離れていく姫乃に激怒する
姫乃は、
「………
「やー君言うなと言ってんだろ駄龍!ん?
姫乃の質問に答える
「
「………!」
だが、
「今、貴様と
「うん。
姫乃の言葉に頷く
全能者同士の戦闘は、宇宙の法則を容易く捻じ曲げ、世界を破滅させるほどのものだったのだ。それを経験している二人だからこそ、
「けど、
「ああ。貴様に敗れた
聖書に記された龍蛇たちの創造の権能を
姫乃は、うん、と頷いた。
「
「………ふん。貴様は様々な
そう。神々が姫乃を倒せずにいる真の理由は
全能の
例えば、〝全能者は、自分でも持ち上げられない石を造ることは可能か?〟という質問をされたとする。
全能者はその質問に〝
が、それを造れるということは彼は『その石を持ち上げられない』。即ち、
逆に、全能者はその質問に〝
本来、この
だが、この
それ故に、神々は姫乃の
「―――だが、
「………ワタシを
「そうだ。ククク………
高らかに笑う
姫乃は、そう、と呟くと、薄く笑って返した。
「わかった。
「ふん。すぐに
「え?」
「それではな―――未来の
意味深な発言を残して、異空間へと消え去る
姫乃が小首を傾げていると、
『………ヤハウェくん、やっぱりロリコンだね。ボクの愛娘ちゃんに〝パパ〟と呼ばせたいなんて』
「パパ?」
『愛娘ちゃん。この
「………それは、嫌。よくわからないけど………
身震いする姫乃。苦笑いする
そんな二人(?)は、深い溜め息を吐くと那月家へ帰宅するのだった。
聖書の神に特殊な性癖(ロリコン)を設定しました。
オリ主の創造主は単なる親バカです。ロリコンではありません。
前回、北欧神話のニーズヘッグがオリ主の子という謎設定が登場していましたが、オリ主が龍族と蛇族の始祖と呼ばれている由縁は、各神話の龍蛇の創造権を神々から奪ったからだったんです。
ちなみに、この裏事情は古城たちは知るよしもありません。知っているのは、喧嘩売られた神々だけです。