ラブガイル!   作:いろはにほへと✍︎

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悲観主義者は風にうらみを言う。

楽観主義者は風が変わるのを待つ。

現実主義者は、

帆を動かす。

―ウィリアム・アーサー・ウォード―




遅刻は許せません

  チリリリーー。

  無機質なアラームの音が部屋中に響いた。

  「まだ寝てたい……」

 誰に言うわけでもなく一人ごちる。

 なぜ夜は寝たくないし、翌日の朝早く起きれば良いなどと考えるのだろうか。朝の辛さを忘れてしまうのだろうか――。

 いつものように一時間の二度寝コースに入りかけたところで今日も学校があるということを思い出す。

 そう、いつまでもこうしてはいられない。今の俺には、マイスイートエンジェル小町ちゃんがいないのだ。

 マイスゥイート天使とつかたんはいる。

 つまり、自分で朝食を作らなくてはいけない。

 とりあえず時間だけでも確認しようとして顔を上げ、時計の方を向く。

 

 AM 10:40

 

 ……おはようございます。

 

× × ×

 

 校門についた俺はゆっくりと生徒玄関への歩みを進める。

 今は十分の休憩時間なのだ。もし、絢瀬先輩にでも見つかったら何をやらされるか分からない。

 生徒玄関前に着くと、そーっとドアを開ける。生徒用の玄関が空いているとは思ってなかったがラッキーだ。職員玄関は先生に会う確率が高いからな。

 だが、この時間に鍵が開いているなんてセキュリティ甘すぎるんじゃないか? この学校。気を付けないと、中学生の頃に女子に誘われ、待ち合わせ場所に行くと誰も居なくて五時間待って通報された目の腐った不審者が入ってくるかもしれませんよ……。

 昔よく見た忍者のように忍び足で靴箱へ近づく。昔というのは小さい頃の話で中学生で病気を患ってた時の話じゃないよ断じて。

 一人くだらない思考に陥っていると視界の端に最近見慣れた金髪ポニーテールが入った。やっぱこうなるのね……。

 「あら、比企谷くんじゃない。重役出勤かしら? ……ってどうして泣いてるのよ!」

 絢瀬先輩は俺をいじろうと思ったようだが、目の腐った不審者のくだりから涙が止まらない俺を見ると言葉を潜めた。

 「だから、前も言ったじゃないですか……思い出し泣きだって」

思い出し泣き、なんて言葉があるのかは定かではないがそんなことはどうでもいい。早くしないと十分休みが終わってしまうのだ。

 「ハラショー……」

 少しというか、かなり引いている絢瀬先輩を尻目に、教室に向かう。一刻も早く行って最初からいた体を装わなければいけない。幸い俺は影が少し薄い。少し。

 だから、今まで遅刻しても一度もバレたことがない。

 いや、一回あったわ。

 

 × × ×

 

 教室前に着き、背後のドアから教室内の様子を伺う。

 ……先生は来てないな。他の奴らもおしゃべりに集中している。入るなら今しかないだろう。

 「あ、おはよっ! 比企谷くん!」

 俺が教室に入ると高坂がこちらに向かって大きく手を振る。

 おかげで教室中の視線が集まった。

 てか、何で気づいたのん? ステルスヒッキーは?

 「比企谷くん来ないから心配してたんだよ〜」

 南がほっとしたように言った。

 「八幡! 心配したんだからね? 先生もみんなも」

 あ、先生も知っているんですね。ありがとう高坂さん。絶対あなたですよね。というか戸塚……、かわいい。

 「寝坊したんだよ、おはよう」

 そう一言だけ返し、鞄を机に掛けて俺は眠りについた。

 次は数学だ。

 

× × ×

 

 「比企谷くん! アイドル活動手伝ってくれるんでしょ?!」

 なぜ四時限目に寝た俺が昼食も食べないで放課後まで寝て入れたのかは分からないが、今は放課後だ。

 いや、体育どうしたんだよ……。

 「私達はそう聞いていたんですが、違いましたか?」

 俺が何も答えなかったのを不審に思ったのか園田が問い直す。

 「あぁ、理事長さんのご指名だ」

 俺が皮肉っぽく言うと南が反応した。

 「ごめんね、うちのお母さんが」

 なんかあれだな。南からは天使のオーラを感じる。小町・戸塚に似たようなオーラ。

 「いや、別に気にしてない。……とりあえずこれからよろしくな」

 「こっちこそよろしく! 比企谷くん!」

 人と話し慣れてなくて会話のキャッチボールができない俺に高坂が優しく反応してくれた。あれ? 目の腐った俺にこんなに優しいなんて実は俺のこと好きなんじゃね?

 ……大丈夫だ。勘違いなんてしない。

 ふと顔を上げると、戸塚と目が合った。

 見ると、あははと困ったように笑っている。

 やべ、超かわいい……。

 

 

 

 

 




とつかわいいしか書いてない気がする。

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