fate/lostmoon   作:茜谷

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プロローグ・キャスター

 恐怖とは、どのようなものなのだろう。

 恐れるとは、どのような感情なのだろう。

 自分は、それを知らない。

 ただ、怖いという一言が、理解できないだけなのだ。

 

 怖いを知りたくて入ったオカルト研究部。

 みんな怖いを知っている。

 わたしも、怖いを知りたい。

 そんなある日、とある男の子が持ってきた本の中に、

 その中の、一冊の古びた本に、

 書いてあったの。

 聖杯戦争という言葉が。

 わたしは思った。

 これは、チャンスなんだって。

 だから、チャンスは逃さないの。

 

 月が見えない、曇りの夜。

 わたしは一人、倉の中で。

 

「満たせ、満たせ、満たせ、」

 

 見つけたお話。

 聖杯戦争と呼ばれる、殺し合い。

 それに参加すれば、少しは怖いという感情も理解できるのではないか。

 そう期待して、魔法陣を描く。

 

「閉じよ、閉じよ、閉じよ、」

 

 わたしがわたしである意識。

 つまり、人間の本能。

 それが、抜け落ちているのだと思う。

 怖いとみんなが言っていたテレビ、全然面白くない。

 電車にひかれそうでも、全然平気。

 痛いとは思うけど、別に大丈夫。

 

「繰り返すつどに三度、ただ繰り返される恐怖を忘却する。」

 

 痛いことは、怖いことじゃない。

 楽しいことは、怖いことじゃない。

 怖いって、どういうこと?

 死にたくないって、どんな気持ち?

 

「―――Anfang」

 

 言い表せぬ高揚感。

 

「――――――告げる」

 

 まるで、ここが一つの舞台のようで。

 

「――――告げる。

汝の身は我が神に、我が命運は汝の声に。

聖杯の寄るべに従い、この心、この忠誠に従うならば求めよ」

 

「畏怖を此処に。

我は常世総ての善を壊す者、

我は常世総ての悪を想う者。

 

汝三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、混沌の支配者よ―――!」

 

 部屋が、暗い部屋が、光った。

 

「問おう、貴女が私の、『主人』か?」

 

 真っ黒な人。

 痩せた、枯れ枝のような人。

 見るだけで、飲み込まれそうな、そんな、「怖そう」な人。

 

「わたしは、貴方に教えてほしい、感情を、恐怖という思いを。」

 

 わたしは本能的に、導かれるようにその場に跪いた。

 その人の背後にはうごめく影、

 わたしの隣には得体のしれない「何か」がいる。

 

「ならば聞かせよう、今宵、わが身は貴女と共にある。そして、唄おうか、この世界に、この人々に、『宇宙的恐怖』を味合わせてやるのだ……!」

 

 卑屈な笑み、狂った顔、むき出しの悪意。

 ああ、それこどが恐怖だとしたら、

 ああ、この感情に名前をつけるのだとしたら、

 わたしは誓いをたてよう。

 この人に、

 そして、この心に。

 

 

「アルファ定時報告。ラビットがサーヴァントの召喚に成功。クラスはキャスター、真名は不明。エコーに応答及び救援を依頼。」

 

「エコー了解。直ちに向かう。」

 

「ブラボー定時報告。47地点での人間が、大群でエリア49地点に移動確認。追尾します。」

 

「……すべては、『蓮』のために。」

 

 




 キャスターの真名は、仄めかす程度にしておきました(大嘘)
 恐らくわかる人には滅茶苦茶分かる。
 ここで二次創作を読んでいる人は、大方知っていると思います。

 この奇妙な主従(?)は結構設定をつけるのに迷いました。
 最初は卑弥呼とかでもいいかな~なんてね。
 でもね、自分の趣味に忠実ですのでね、こんなことにね、なっちゃったんですよ。
 シャーマンが書きたかったんですけど、今回は某作家です。
 てへへ。

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