「うぅぅぅ…」
和音は今にも泣きそうで弱々しい声を上げていた。現在、和音と俺、そしてもう一人、ニコニコとした楽しそうな笑みを浮かべている桜色の髪が腰まであるロングヘアした女性と三人でとあるゲームをしていた。
長方形の木のブロックを15段まで組み立てられており、木のブロックを一本ずつ片手で抜き取るゲーム、ジェンガをしていた。俺たちがなんで、ジェンガをしているかというのは、ニコニコしている女性の一言がきっかけである。
事の始まりは朝日奈隊が防衛任務を終えたあとに皆が自由にそれぞれ好きなことをやっていた時に起きた。
「ねえ、和音と和葵」
「なに?」
「折角、防衛任務終わって暇だからさ。ちょっとゲームでもやろうよ〜」
桜色のロングヘアの女性、雪野 春は暇を持て余していた。その暇を潰す為に提案をしてきた。
春は朝日奈隊のオペレーターを担っている。外見は先ほどから言っているが桜色のロングヘアに緋色の瞳、整った顔立ちをしており、綺麗系な女性だ。客観的に見てもかなりの美人だと思う。ただし、そんな彼女にも残念な所はいっぱいある。まず勉強の方は最底辺なレベルまで陥っている。そして、かなり抜けていて、うっかりミスが多い。年齢は大人ぽさを感じされるが俺と和音と一つ年下の17歳である。性格は元気印な女の子で良くも悪くも嘘を付けない一直線な性格。どんな相手にもコミュニケーションを取ることが上手くて、その点は俺は凄いと思う。
話は戻すが、ゲームをやるという点にはみんな同意をした。けれど、どんなゲームをやるかという点で和音と春はそれぞれの主張を曲げず現在も言い争っていた。
「P◯4やろうよ!」
と春は元気な声を上げてP◯4を指を指しながら言って来た。しかし、和音はP◯4をやるのが不満らしく膨れた顔を浮かべながら、抗議をしていた。
「いやだよ。春とP◯4で張り合えるのは柚宇ちゃんだけでしょ! なら、楽しく出来る人生ゲームでもやろうよ!」
この部屋に片付けられているゲーム機類やボードゲーム類は全部、春の私物である。春はゲームが大好きでボーダーでもNO1ゲーマーと称されているA級一位部隊のオペレーターと張り合える位にゲームが上手い。正直、俺と和音では相手にならないだろう。
「そんなことないよ。みんなで楽しめる系のゲームをすればいいんでしょう」
「それなら、人生ゲームでもいいじゃん!」
「いーやーだ。今、絶対に人生ゲームしたくないもん」
春はそっぽ向いて文句を言い、和音は頑なに拒否していた。どっちもどっちの言い分であり、話に終わりが見える予感がせず、傍観者と化していた俺は足を組みながら珈琲を綴っていた。
「いいじゃん。楽しければ」
和音は言い分に春は自分の言い分を述べた。
「だって、ほら。私って運がないじゃん? だけど勝てないもん」
確かに、春は人生ゲームでかなりの確率で悲惨な結果で散っていたのを思い出した。春は純粋に運が悪いのでなく、一定の期間はもの凄く運が良い時間がある。その運を含めても春の運は良いか悪いかではとてつもなく悪い。
「ほら、人生ゲームやろ!」
和音は春の話をガン無視して、人生ゲームやることを勧めた。
「和音はどうして我が儘ばかりなの!」
「春こそ、いつも言うことを曲げないくせに!」
この二人はある意味、似た者同士だ。傍観者の俺から見てもかなり面白い図だ。早く終わらないかな〜と俺が思っていた頃、和音が俺を巻き込んで来た。
「和葵、和葵はどっちのゲームをやりたい?」
和音は顔を覗き込むように、俺に尋ねた。俺は心の中でどんな回答をしても互いが互いに納得をして貰えそうになく、少し考え込む仕草をした。
「うーん… なら、二人の案に無かったジェンガでもやろうか?」
俺の意見に、和音は心地よく同意してくれた。
「うん、いいね!」
春の方に目を向けた俺は春も不服ながら渋々、同意した。
「わかったよ。ジェンガも楽しそうだからジェンガにするよ」
と言い、
「じゃあ、ジェンガ大会を開催します!」
と和音が高らかに宣言して、ジェンガ大会(仮)は開催されて冒頭に戻る。
和音は泣きそうで弱々しい声を出して、今にも崩れそうなジェンガのブロックに手を伸ばしていた。春はニコニコした笑みを浮かべて眺めており、和音が手を出したところは明らかに重心が傾いているから崩れると俺も確信していたので少しハラハラしていた。
そういえば、和音は手先が器用か不器用かと問われると絶望的までに不器用である。何が原因か全く検討は付かないが… それなのにトリオン体での戦闘は器用に武器の入れ替えをしているところなどを見ると何でだろうなって考え込んでしまう時もあり、少し謎でもある。
俺がそんなことを思っていると和音は泣く直前の顔で俺の方をチラチラと見て、助けを求めていた。俺は小さくため息を吐いて、和音を助けることを決意し、アドバイスをした。
「和音、それは崩れるところだから危ないよ」
「えっ?」
春も俺の意図に気が付いたのか、この中でジェンガが1番上手い、春も隊長である和音の肩を持つようにアドバイスをしてくれた。
「和音、今持ってるやつはスルッと抜けないでしょう?」
「うん、抜けない」
ジェンガのブロックは隙間と隙間の間があるものは摩擦を生むことがなく簡単に抜くことが出来る。これがジェンガの基本的だ。しかし、和音はそんな基本も余り理解していないのか、これって思うブロックを抜こうと必死である。
和音は少し涙目を浮かべながら言い、春はジェンガをジィッと見つめて、下の方にある中央ブロックに指を指した。
「このブロックなら、大丈夫そうよ」
「でも… 危なそうじゃない?」
春のアドバイスに和音は半信半疑になりながら、聞いた。春は自信満々に答えた。
「大丈夫! これなら行けるよ」
春の言われた通り、和音はそのブロックに手を伸ばす。
ゆっくりと指一本でブロックの中央へ触り、突き出そうとしていた。しかし、和音の右手は予想以上に力が入っているのか思うようにジェンガを突き出せていない。
「力入ってるよ」
と俺に言われた後、和音は顔が強張り、ジェンガを戻して行く。その様子を見て春は立ち上がり、和音の後ろに回って、手を掴んだ。
「ほら、力を入れないで。こうだよ」
春の添えた手と和音の手は中央のブロックに撫でるように触って、ゆっくりゆっくりと押し出した。
半分以上ブロックを突き出したところで突き出した右手を引いて、和音は今度は引き抜こうと、反対側へ覗くように突き出したジェンガを確認して手を伸ばした。
「そっと、そっと引き出そう」
和音は小さく呟きながら、真剣な表情でジェンガを抜き出そうとしていた。
そして、和音は反対側のブロックを抜き取って、見事に取り除いてみせた。
「やったぁ!!」
「おめでとう!!」
抜き終えた和音は立ち上がり春とハイタッチしながら喜んだ。
「和音、よかったね」
俺の方も喜びを見せて、和音も満面な笑みを浮かべて、
「ありがとう」
と伝えた。
今回のジェンガは俺が崩してしまい、一回、休憩を入って俺は立ち上がった。
「ちょっとコーヒー買ってくるわ」
俺は作戦室の外へ歩みを進めようと思った所で和音が聞いた。
「部屋のコーヒーマシンはどうしたの?」
和音は部屋にある俺のコーヒーマシンを指を指した。
「今、豆が切れてる。だから、自販機へ行くわ」
「あっじゃあ、私も行く!」
「オッケー」
「うん、ならついでに春の分のジュースも買ってくるけど、何か飲みたいのある?」
「じゃあ、オレンジジュースお願い」
春は俺たちの方に振り向き、ジェンガを直していた行動を止めて、指を立ててお願いした。そして、すぐにジェンガのブロックを黙々と立て直すことに専念していた。
俺と和音は同意して、作戦室から出て、自販機に向かった。
*** *** ***
俺と和音は手を繋ぎながら、ボーダー内にある自販機に向かって歩いていた。
自販機に着くと、スーツを着た茶髪の男性が立っていた。俺と和音も良く知っている人物だった。
「二宮さん、こんちわっす」
和音は元気良く挨拶を交わし、二宮は買ったコーヒーを口に含んで、俺と和音を見据えて
「…お前らか…」
と高圧的な威圧感に醸し出しながら言った。
二宮 匡貴。B級一位の隊長でNO1射手であり、総合二位の実力者である。そんな二宮さんと互角に渡り合えるシューターは俺は二人しか知らない。
俺たちと二宮さんにはちょっとした因縁というか、同じ境遇のような状況のようなものである。俺自信、
俺も控えめに会釈をして、自販機で目的の飲み物を買った。俺と和音が買っている最中に二宮さんはあることを口にした。
「お前らは平気なのか?」
その言葉は俺と和音の手が止まった。そして、暫く沈黙が続いて、和音が口を出す。
「二宮さんこそ、まだあの件について真実を求めているんですか?」
「ふん、悪いか?」
「…いいえ、悪いとは思いませんけど、私は
その言葉に二宮さんは俺たちを睨み、ため息を吐く。
そして、コーヒーを綴り、あの話について繰り出す。
プロフィール
雪野 春
本部所属B級??位 朝日奈隊 隊員
ポジション:オペレーター
17歳(高校生) 4月10日
身長:160㎝ 血液型:B型
好きなもの
ゲーム
ボードゲーム
あんまん