二人の約束   作:雪箱 珈琲店

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高速銃手と変幻自在の剣の戦い

転送の光に包まれて、気がついたら、俺は和音と戦う為のフィールドの舞台に立っていた。

 

『ランク戦、10本勝負開始』

 

無機質な機械音がランク戦開始の合図を示していた。何処にでもありそうな素っ気ない街中の中、ちょうど十字路に立たされていた俺は転送が完了すると同時に素早く行動を開始していた。

 

 

 

俺は、走りながら、和音がどの辺りにいるかレーダーで確認しながら、疾走していた。

 

街角を曲がり終えると眼前に和音は攻撃手用トリガーである日本刀に模した、孤月を構えて待っていた。

 

「あっはははははは!

待っていたよん」

 

和音はいつもの調子で笑い、まるで俺が来るのを分かっていたように俺のことを待っていた。俺の方も和音の待ち伏せに少し不満が募り

 

「ずりぃな、おい」

 

と思わず口に出しながらも銃手用トリガーである、ハンドガンを抜きながら、和音に向かって、正面から突っ込んでいった。

 

疾走する俺に居合の構えで待ち構える和音、一瞬で決まるような勝負はここでしか味わえない緊張感が醸し出していた。

互いにすれ違う刹那、和音の孤月は俺に向かい胴体真っ二つの要領で斬り抜いたがその攻撃は虚しく空を切っていた。

 

俺は和音の攻撃の軌道を読み取りしゃがんで、ハンドガンを和音の胸に標準を定めて撃ったが、和音の胸には六角系の半透明状のようなもので銃弾が守られていた。

 

 

これは、ほぼ全隊員が持っているシールドというトリガーである。今のような銃撃や刃への攻撃を防ぐ防御用トリガーだ。

 

 

和音は胸に通常サイズより、防御範囲を狭めた小さいシールド、通称、【集中シールド】というもので俺の弾丸は防がれていた。シールドは防御範囲を広げることで幅広く守り、今のように防御範囲を狭めることで耐久度を跳ね上げる。

和音は防いだ後に流れるように孤月で斬り払ったが、俺は咄嗟に後ろへ飛んで回避をしていた。

 

「ちっ、やはりそう簡単には行かないか…」

 

「当然でしょ!」

 

和音は余裕綽々な表情で言い、俺は左手にあるサブトリガーを起動した。和音は俺がまた仕掛けてくると瞬時に察知をして、身構えた。

 

「グラスホッパー」

 

俺はそう唱えて、足元にジャンプ台のようなものを出現させて、足で踏んだ途端、和音の方に加速した。

 

 

グラスホッパーはジャンプ台のようなオプショントリガーで立体機動による空中移動を可能とするトリガーだ。

 

 

そして、加速した俺は新たに策を講じた。和音の付近に幾つものジャンプ台のトリガー、グラスホッパーを設置して、

 

乱反発(ピンボール)

 

と呼ばれる技を使用した。三次元の高速移動を可能とする技、【乱反発(ピンボール)】により、和音は文字通り翻弄されていた。

 

「ちょっと、タンマ。速すぎぃぃ!!」

 

和音の言葉を無視して、高速で飛び交う中、俺はハンドガンで撃ち続けていた。急所には当たっていないものの和音のトリオン体には着実にダメージが蓄積され、孤月を持っている利き手である腕を吹き飛ばし、足を削って、判断力を奪い、最後には頭を吹っ飛ばして、和音はベイルアウトした。

 

 

ベイルアウトとは、戦闘離脱出来るシステムであり、ボーダー隊員は戦闘体が危険な信号を送っていると即座に戦闘から脱出出来るシステムだ。

 

『トリオン供給機関破損、ベイルアウト』

 

無機質な機械音が和音の耳に残り、転送される時、和葵の顔を見ると少し不気味な笑みを浮かべているのを見て和音はベイルアウトした。

 

和音はベイルアウトによりブースのベットに転送されて、和音は悔しそうな表情を浮かべていた。

 

「やられたわ!!」

 

和音は1人でベットをバタバタしながら、今さっきやられたことを嘆いていた。

 

 

 

そして数秒後、再び、戦う為にフィールドに転送された。和音は和葵が次取るべき行動を考えた。

 

(やっぱり、初見ではないけど、和葵は速いなぁ。だからこそ何とかして動きを止めないと)

 

 

 

和葵の持ち味は移動用トリガーを駆使した高速戦闘の白兵戦である。銃手にとってもあそこまで速く動かれても標準がブレブレになってしまうが和葵の動体視力は他の人より断然良くて、動体視力の恩恵であの高速戦闘を可能にしている。

 

 

 

和音は移動しながら、思考しているうちに和葵は既に背後に迫っていた。そして銃で撃ってくるまで和葵の存在には気が付かなかった。

 

「それ、せこいよ」

 

「なら、確認しとけよ」

 

和音は咄嗟に回避しており、腹部に軽くトリオンが漏れているものの互いに軽口を叩いており、俺はサブトリガーを起動した。

 

(テレポーター)

 

俺は心の中でそう唱えて、和音の後ろに奇襲を仕掛けた。

 

 

テレポーター、視線の先に数十メートル、瞬間移動するオプショントリガーである。トリオンの消費は他のトリガーより激しいが、今みたいに相手の背後に回ったりなどの利点がある。

 

 

俺は背後に回って、ハンドガンで何発か撃とうと動いたが、俺の手は既に斬られていた。

 

「あっはははははは!

残念! 和葵がテレポーター使うの分かってたからね」

 

和音はいつものように笑って俺が背後に回るのを読んでいたようで背中から羽のような刃が気が付けば俺の手に落としており、和音の策にハマっていた。

 

 

スコーピオンは攻撃手用トリガーで孤月と違って、身体の何処へでもスコーピオンを出すことが出来て、変形も可能で自由自在である。

 

 

俺は手を落とされ少なからず、動揺をしていた。その隙を和音は逃すわけなく和音は攻撃手用トリガーのレイガストを取り出し、俺の方に向けて、

 

「スラスター・オン!」

 

 

レイガストは防御向きの攻撃手用トリガーで、通常状態のブレードモードと攻撃力を下げる代わりに耐久力を上げるシールドモードがある。

そして、今、和音が利用したのはレイガスト専用のオプショントリガーのレイガストの刃を加速するオプショントリガーを起動した。

 

 

俺は加速するレイガストに抑え込まれて、後ろにある壁まで追い込まれた。

 

「ふふん、チェックメイト!」

 

和音は嬉しそうに無抵抗な俺の首を掴んで、スコーピオンで首を刺した。

 

『トリオン体活動限界、ベイルアウト』

 

俺の耳に無機質な機械音が流れて、俺はベイルアウトをした。

 

 

俺はベットまで転送で運ばれて、今の策はやられたなぁと痛く感じた。

 

 

和音の戦闘スタイルは他の攻撃手にはない唯一無二の戦闘スタイルである。攻撃手でバランスが取れている孤月、奇襲向きで使い手の発想力でどんな攻撃も可能にする攻撃重視のスコーピオン、防御向きで重量級のレイガストの3種類のトリガーである。その三つの攻撃手用トリガーを状況に合わせて使い、更に高速換装することで相手を翻弄することが出来るのが彼女の持ち味である。

 

 

 

和葵と和音の戦いは高速戦闘で自分のペースに持ち込む和葵とそんな和葵を自由な発想で打ち破る和音。

それが2人の戦いである。

 

 

 

*** *** ***

 

 

そして、9本目まで終わり、現在のスコアは俺が3本取って、和音が6本取られて既に負け越しである。

 

『どうだ、和葵!』

 

俺は和音の声が聞こえると同時にベットから身体を起こして、ブースにある内部通信に俺も口に出した。

 

「ああ、やられたよ」

 

小さなため息を吐きながら、和音は先ほどやられた策について聞いた。

 

『1戦目からトップスピードだったけど、珍しいね』

 

「まあ、和音は常に見られているから、最初から全力で仕掛けただけさ」

 

俺が喋り終えたところで和音は思いついたように、ある提案をした。

 

『あっそうだ。最終戦に勝った方が何か奢るはどう?』

 

「そうだね、まだ終わってないからね。次の一本、俺に勝ったら、商店街のクレープを奢ってやるよ」

 

『ほんとう?』

 

「うん、本当だ。俺は病院前のコーヒーでいいよ」

 

『オッケー、負けないよ!』

 

和音は弾むような声で言い、俺と和音の最終戦は始まった。

 

 

 

 

 

 

 




プロフィール

朝日奈 和音(あさひな かずね)

本部所属B級??位 朝日奈隊 隊長
ポジション:攻撃手
18歳(高校生) 1月28日生まれ
身長:158㎝ 血液型:O型

好きなもの
・甘いもの
・トリオン体の運動
・和葵!

備考
・とある病気持ち

望月 和葵(もちづき かずき)

本部所属B級??位 朝日奈隊 隊員
ポジション:銃手
18歳(高校生) 10月10日生まれ
身長:173㎝ 血液型:B型

好きなもの

・キャラメル
・コーヒー
・本

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