銀髪スタンド使いの転生者はSAOの世界で第二の人生を過ごす 作:(´鋼`)
UWの3年間 初日
『2026年6月15日』
~和人side~
俺の幼馴染み兼お隣さんの『坂倉銀先』は、俺たちにとって光でもあった。
旧SAOに囚われていた時でも、誰かに手を伸ばし続けた。俺たちも例外ではなかった。最初の1ヶ月間は誰しも泣いたり怒りを露にしていた。
そんな俺たちの心を受け止め、変えるように仕組んだのは何時もアイツだった。
俺たちの怒りや悲しみに無理矢理入り込んで、自分だって辛い筈なのに、俺たちはそれに気付かず甘えていた。アイツの存在に甘えていた。
そしてそれは……大きな代償として現れた。
坂倉銀先が、俺の幼馴染みが、意識不明の重体に陥った。
何時目覚めるのか分からない程、その左腹部に付けられた傷は大きく、深かった。
先ず最初にこの知らせを受けて、真っ先に影響が出たのは詩乃と木綿季であった。
詩乃-最愛の人がその様な状態になった影響か、PTSDを再発。しかし銀のお陰で銃への恐怖ではなくなっているが、その代わりなのか『銀が死ぬ夢を何度も見る』という症状に陥っている。
木綿季-詩乃程影響は出ていないが、その知らせを聞いた後に急激な眩暈と共に入院。疲労によるものだったが、木綿季の心には大きな傷が出来ていた。
これ程までに大きかったのだ。銀のその手は、背中は、失った代償は……それほどまでに。
かくゆう俺も同じ様な事になっている。銀の知らせを聞いたときは、膝から崩れ落ち意識が途絶えた。そして目覚めたら自室のベッドで寝かされていた。この時、なぜ俺はアイツの言葉に気付いてやれなかったのかが理解できず、それからというもの他者との接触を拒んでいた。
ここまで俺たちの心に深く抉りこんだ物は、これ程までに、嫌という程に理解した。
『大切なものは失ってから気付く』ということを。
銀が傷ついて1週間が経ったある日。銀は別の場所に搬送されるというのだ。
それに真っ先に反応したのは詩乃であった。寝たきりの銀の体にしがみつき、自己主張を続けていた。誰にも渡さないという感情を抑えられずにいた。
その詩乃の行動を見ていられなくなったのか、銀将さんが詩乃を気絶させた。今回ばかりは銀将さんも、何時もの笑顔は無かった。悲しみに耐えていた。そんな顔だった。
そうして銀は、別の病院に運ばれる。……そう思っていた。
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『1週間経った日』
~銀先side~
あら?俺……確か……病院の筈だよな?
なのに……何で匂いが感じられる?何で音が聞こえる?何で皮膚に温度を感じられる?あれ?
その不思議な感覚を知りたい欲求が働き、俺は目覚める。
目覚めるとそこは……何かどっかで見たことある内装だった。否、絶対あれだ。そんな事を考えながら起き上がる。どうやら掛け布団で寝ていたらしい。
何故かある障子を開き、別の部屋を見る。うん、これあれだ。本当にどっかで見たことあるヤツだわ。
『おーい、聞こえるかーい?』
ふと、何処かから菊岡の声が聞こえた。まぁ菊岡ならある意味安心できるので取り敢えず答える。
「聞こえてらぁ菊岡」
『あ、良かった~。繋がらなかったらどうしようかと思ってた』
「ちょっと待て。繋がらなかったらってどういうこった?」
『あぁ、ごめん言い忘れてた。たまに通信不良が起きるんだよね。その世界』
「………もういい。それより、この部屋……いや家か?何だここは?」
『そこは君へのプレゼントというヤツだ。何せ【自分で腹を斬ってくれた】からね、そこは優遇しないと』
「プレゼント?……って、そういや俺の体元のまんまじゃねぇか。俺が知ってんのは子どもに戻って目覚めるかと思ってたが」
そう。俺の知ってる原作ならば、和人/キリトは5歳程度に退化して現れていた。ならば、俺もなるだろうと色々考えをしていたが、杞憂だった。
18歳のままなのだ。その要因は菊岡にあった。
優遇……俺が【自ら腹を斬ってくれた】事による影響がこれだ。
1:年は現実での年齢
2:家の支給
「んで?俺はこれから何をすれば良い?」
『じゃあ先ずは外に出て』
菊岡の指示で玄関に移動し、用意されたと思われる靴を履いて外に出る。どうやらここは2階だと直ぐに分かった。
階段が玄関から出て左の方にあったので、それを使い下に降りた。そして最初に目に入ってきたのが……
【万事屋】という看板だった。もう読者諸君お分かりだろう。
これ○魂じゃねぇかぁぁぁぁあああ!!!何でここまで来て万事屋の看板見なきゃいけねぇの!?何でここに来てまで和風の家屋を見なきゃいけないの!?何でここで万事屋をしなきゃいけないの!?確か禁忌黙示録みたいなの無かったっけ!?
『あ、最後の優遇ね。一部の禁忌黙示録の効果を無効化させたよ』
もうそれ意味ねぇじゃん!!禁忌黙示録の意味ねぇじゃん!!
『後は所持金の支給を一部しただけだよ。後は経過を見ていくからお願いねー』
それを気に菊岡からの連絡はなかった。
そして、翌日には万事屋を営む事になった。何故だかやって来た翌日に大工仕事やら何やら入ってきたのは可笑しいと感じた俺だった。