銀髪スタンド使いの転生者はSAOの世界で第二の人生を過ごす 作:(´鋼`)
【エギルのカフェ】
「うぉーい!!キリトー!!」
「何だよ?騒がしい」
「セブンちゃん何処!?」
「こっちに居るぞー」
「おぉ!!シヴァナイス!!」
このカフェに暑苦しい奴が入ってきた。というか一番メンドクサイ奴がカフェに入って来て、本当にメンドクサイ奴がセブンの元に誘導させる。
クラインはセブンの小さな背中姿を見た途端、熱弁を始めた。これは長いので書く必要は無い。
「……あのー、そろそろ顔を見せてくれませんか?」
そう、長い話の中でもセブンはクラインに背を向けていた。普通なら顔を見ながら話すことはセブンでも分かる常識。
「そんなに見たいの?」
セブンが背を向けながら語りかける。それにクラインは反応する。
「勿論ですとも!!」
「後悔したくないのかしら?」
「いや、後悔も何も顔は既に知ってますから」
「そう……それじゃあ見せるわね」
セブンがクラインに顔を見せる。瞬間、クラインが白く固まった。俺は真相を知っているので、どうとは思わない。
しかしクラインは知らないのでツッコミを入れる。
「何でイボォォォオオ!!!?」
そのままクラインは白くなって卒倒し、強制ログアウトに陥る。
「「ブッ!!ハハハハ!!!」」
顔が変化しているセブンと顔を変えた原因を作った張本人が笑う。2人ともツボに嵌まって腹を抱え目尻には涙を浮かべている。
「あー!!腹いてぇ!!」
「あ、あの反応が……ハハハハ!!!」
シヴァは笑いながら指をパチンと鳴らす。するとセブンの顔は元に戻る。
「あ、あなたの『クヌム神』だっけ?凄いわねそれ!!」
「いーヒッヒッヒッヒッ!!そ、そうそう!!あーダメだ!!」
脚をじたばたさせて地面を転がるシヴァ。セブンの顔が変化していたのはシヴァの幽波紋である。このイタズラはセブンあってこそなのでシヴァが頼んだところ快く承諾してくれたそうだ。
結果はこの有り様。簡単に引っ掛かってくれたクラインの反応を面白がっていた。
その笑いの中、またカフェにクラインが入ってくる。
「おいこらシヴァテメエ!!何て事してくれとんのじゃお前は!?」
「騙される方が悪いんだよ」
「何時から同じ顔だと錯覚していたの?」
「セブンさん!?何かシヴァに感化されてません!?」
「さぁて、何のことやら?」
「うぉいシヴァ!!テメエセブンちゃんに何を吹き込んだ!?」
今日も今日とて騒がしいエギルの店であった。
「営業妨害で出ていかせるぞ」
「「「ごめんなさい」」」
エギルには敵わなかったが。
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「えっ?アメリカに帰っちゃうの?」
「そうよ。色々あったし」
「俺を見んな」
セブンが帰省する事を俺たちに話す。まぁシャムロックの衰退やらクラスタの崩壊やら何やら起こって慌ただしいし、何よりセブンの心意気が研究に向けられているからな。
しっかしアメリカねぇ……俺は日本でのんびり家に庭園でも作って茶飲みながら詩乃とゆっくり過ごしたいがよ。関係ないか。科学者様は考えることが違ぇや。
「あたしの顔に何かついてるのかしら?」
「いんや、流石科学者様は考えることが違ぇなってよ」
「あなたの考えることも、あたしから見てみれば想像もつかないわよ。……そういえばシヴァ」
「んぁ?」
セブンは此方に体を向け、頭を下げた。謝罪、恐らく俺の事の謝罪だろう。後でシノンに聞いたがフィリアが口走ったらしいからな。
「んなことか……セブン、お互い謝る筋合いはねぇぞ」
「………へっ?」
「例え俺がどんな事したってもう過去の事なんだよ。例え俺がセブンに対して怒りを向けた事だろうが、俺があの時何した事だろうが、既に過去の話だ。セブンもモンスターになろうが既に過去の話なんだよ。気にする方が滅入るわ」
「………ふふっ、やはり変ね。あなたの考えが読みにくいわ」
「そりゃどうも……ん?」
ふとメッセが届いていたので開けてみる。見れば【あれ】の用意が終わったとフォルティから通告が確認できた。にやっと微笑み、返信をする。んで、今度は前領主の『シー』にメッセを送って終いと。
「お兄ちゃん、何のメッセ?」
「予定さ」
「おぉー!!じゃあ準備出来たんだね!!」
「準備?」
セブンが話に着いていけないので説明をする。
「今夜ライブがあるんだよ。このエリアで行われるんだよ」
「ライブ?一体誰がするの?」
「鎌持ったら狂喜乱舞する奴」
「あぁー………って、あの領主がやるの!?」
「そりゃあアイツ、何でプーカにしたのかの一番の理由って『歌が使えるから』なんだとよ。それが無かったら別種族にしてたらしいぜ」
「……そういえば、前にダンジョンで思いっきり歌ってた領主が居たって……あれプーカの領主だったのね」
「そうらしいな。あ、このエリアで午後9時にやるらしいから見ていけよ。アイツの歌最初聞いた時は上手かったからよ」
俺は席を立ち、カフェから出ようとする。
「あら、何処に行くの?」
「ちょっと用をな。まぁセブンは此処で楽しんどけ」
カフェを出て、工房から外に出る。向かうは………
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『時は経ち……ALO内午後8時50分』
このスヴァルトエリアの広場に、特設されたステージが準備されていた。普段は領主会議等に用いられる場所だが、今回はフォルティとそのバンド仲間との特設ライブに使われる。
しかし、所変わってヴォークリンデの転移門前。ここにセブンとシヴァとユウキが居た。セブンは何をするのか分からずにいた。
「シヴァ、ユウキ。何であたしたちだけフィールドに居るのよ?」
「まぁ、どうでも良いだろ。んな事より、ちょっと飛んで着いてこいよ」
シヴァとユウキは翅を広げて空中に留まり、セブンは翅を広げてシヴァとユウキに合わせる。
それを見たシヴァはある場所へと飛ぶ。それに着いていく様にユウキとセブンも飛ぶ。
着いた所は……ヴォークリンデにある花園であった。
「ちょっと、ここに何があるのよ?」
「お前の目は節穴か?あっこ見てみろよ」
「あれ?………あれは……レイン?」
セブンが目を凝らして見てみる。特徴的な赤髪をしているレプラコーンのプレイヤー『レイン』が居た。
何故レインが居るのか、それはセブンには到底理解できない。しかしシヴァはセブンの背中を軽く押しレインの元に行かせようとする。
セブンはレインに近付く。レインはセブンの姿を捉えると深呼吸をする。
何処から来たのかキリトが此方の隣に立つ。
「キリト、首尾よく出来たか?」
「お前こそ」
「kaimu嘗めんなよ、あれぐらい造作もねぇから提案したんだろ」
「それもそうか」
シヴァ、キリト、ユウキの3人は、これから起こる事を確認する。
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「セブン……」
「レイン、ここで何をしているの?」
「そう……だね。ちょっとした決意ってところかな?」
「何の決意?」
「セブンに……言わなきゃいけない事があるの」
「……あたしに?」
「セブンは……わたしとセブンは……いえ、七色は……
わたしの……妹なの
「……い、いきなり何を言い出すの?あたしは一人っ子だよ?」
「ううん……違う。わたしたちは小さい頃、一緒にロシアに住んでいたんだけど、両親の離婚が原因で離れ離れになったの。七色にはお母さんがいない……そうでしょ?」
「う、うん………」
「お父さんに引き取られた七色はアメリカへ、母親に引き取られたわたしは日本に行った。『プリヴィエート』、『ダスヴィダーニャ』……この言葉、あなたの口癖でしょう?」
「そうだけど……何の関係があるの?」
「この挨拶はロシア語。まだロシアに居た時に、わたしが七色に教えたんだよ……」
「!!」
「七色はまだ小さかったから覚えていないと思うけど……」
「あ、ぁあ……!!覚えてる……覚えてるよ!!あたしにその言葉を教えてくれたのは……お姉ちゃんだ!!……お姉ちゃんだったんだ!!それが誰だったのかは、ずっと思い出せなかったけど……今ようやく思い出した……」
「お……ねえ、ちゃん……?」
セブンはゆっくりと足をレインの方に歩ませる。
「うん……そうだよ……わたしが………お姉ちゃんだよ……」
「おねちゃん……お姉ちゃん!!」
最後の最後で、セブンはレインの元へ……姉の元へと駆け寄り、お互い抱きしめ合う。お互いの目尻から一粒の涙が浮かんでいた。
「よかった……やっと会えたね……わたしの名前は『枳殻虹架』。七色……あなたの姉よ」
「あ、あたしは……七色・アルシャービン……ううっ……」
涙は堪えれない。大切な人と漸く再開出来たのだから。
「お姉ちゃん!!……お姉ちゃん!!」
「七色……こめんね。ずっと黙っていて……わたし、バカだった……」
「kaimu!!アクティブモード移行!!」
セブンとレインがシヴァの方へ向いた。シヴァは刀を投げ、その刀は人型へと変貌を遂げる。
「ホログラム起動!!」
その刀からプレイヤーに変わったkaimuはキーボードを操作する。すると、セブンとレインの前にあの特設会場が展開された。
「こ、これは………?」
「ホログラムさ。セブン、レイン」
「キリト君!!ま、まだ居たの!?」
「そりゃな。アイツのサプライズってヤツに付き合わされてよ」
「「サプライズ?」」
「あの刀から人型になったプレイヤー居るでしょ?あれはお兄ちゃんと一緒に居るAIでね、そのAIにも手伝ってもらったんだ!!皆で2人を祝福するために!!」
その時、ぞろぞろとプレイヤーが集まる。奇兵隊メンバーは勿論の事、フォルティ以外の全領主やシー、スメラギやクリスハイトまで居た。
『さぁて!!お時間になりました!!ライブスタートだよ!!』
ホログラムで映し出されたフォルティの発言から少し経つと、音楽が流れてきた。
~♪【Some like hurt】~
フォルティは歌い始める。そのフィールドに居た全てのプレイヤーは、フォルティの歌声を聞いていた。
彼女らの……姉妹の再開を祝した歌を。
彼女らは歌を聞いた。聞き続けた。この歌詞から伝わる言葉が、彼女ら姉妹に酷似している事を選んでいるのを気付く。
その姉妹は辺りに居た全てのプレイヤーを見た。
彼女らと視線を合わせ、笑顔を向ける者、溜め息をつく者、それを叱る者、曲に合わせてリズムをとっている者、感慨深そうに彼女らを見ている者、同じ妹を持つ者。
それらが全て彼女らにとっては嬉しく感じていた。ここまでしてくれるバカな奴、それに付き合ってくれるプレイヤーたち……その事に、セブンとレインは笑う。
曲が終盤に近付くと、レインはセブンに伝えた。家族に使う言葉を。
それに対し、セブンも家族に使う言葉を言う。
「おかえり、七色!!」
「ただいま!!お姉ちゃん!!」