銀髪スタンド使いの転生者はSAOの世界で第二の人生を過ごす 作:(´鋼`)
……何時かの誰かが言っていた。
『背負った重荷の重さを知るのはその重荷が失って気づく』
この破壊神は業を持っている。幾つもの誰かの重さを背負ってる。幾つもの守るべきものを背負っている。この神は、その重荷を外そうとはしなかった。
……何時かの誰かが言っていた。
『俺に背負わせてくれ』と。
己が定めた誓いに従い例え誰かが心配かけようが、この破壊神だけは止められなかった。
誰かを守る為に、己を犠牲にする神。何時も誰かの危険を、その身1つで守り己の誓いと誰かを守り続けてきた。
しかし、この破壊神は出会ってしまった。命が失われる瞬間を。誰かを救えなかった苦しみは、この破壊神にとって心に深い傷を負ってしまう。
例え仮初めの命でも、誰かを救えなかった苦しみ。そして、その破壊神の前に命を失ってしまった原因とも言える者が現れた。
瞬間、彼の脳裏に何かが走る。『殺せ』と。
そしてそこから……彼は何も考えず動いていた。気付いた時には、彼は鬼に止められていた。
彼は怒りから身を離し、魂が抜けた脱け殻の様に目から光が失われていた。
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『坂倉家』
気付けば彼は自分の部屋の天井を見つめていた。右手にアミュスフィアを持ち、左腕で両目を隠す。
そして、ベッドから起き上がる。
そんな時、扉が開かれる。現れたのは詩乃と木綿季の2人。自分が守らなければいけない妹と彼女。
「お兄ちゃん……大丈夫……だよね?」
木綿季が途切れ途切れの言葉でそう伝える。その言葉を聞き銀先は妹に近付き、ゆっくりと抱き抱える。頭を優しく撫でる。
「大丈夫だよ。……お兄ちゃんは平気さ」
そう呟くと、詩乃が銀先の肩に手を乗せる。詩乃の方に向くと笑顔を向けている詩乃の顔が近くにあった。
その時、詩乃からある提案を受ける。それは……
「ねぇ、銀。何処か出掛けない?木綿季と私と銀の3人で」
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『ALO内 空都ライン エギルのカフェ』
~キリトside~
ここに1つの緊張感が走っていた。シヴァ、シノン、ユウキを除いた残りの者と、先程エンドフレイムとなって消えたスメラギ、シヴァに危害を加えられたセブン。
これだけでもピリピリとした緊張感が走っているのが理解できる。尚且つシャムロックのメンバーやクラスタが黙っていない事も必然的。……そこは領主様々だな、一瞬で黙らせられるから事を必要以上に荒立てない。その点は感謝している。
「さて……だ。セブン、君にしてしまった事については謝罪しよう。肝心のアイツは少し落ち着かせてから謝罪させるよ」
「別に良いわ。まぁ、あの領主様の事は追々聞くとして……キリト君、アスナちゃん、リーファちゃん。私の願いを叶えてくれないかしら?」
「……それは、あの時の『実験』……【クラウド・ブレイン】とやらに関係する事なのか?」
「ご名答よ、キリト君。私たちと一緒に実験の最終段階を手伝ってほしいの」
「どんな実験なんだ?」
それを言うと、セブンは事細かく教えてくれた。
【クラウド・ブレイン】……意思がもたらす驚異の能力を、ネットワークを介して新たな力を作り出す事を目的とした実験だと。その為にシャムロックやクラスタという大人数のギルド等を作り出したらしい。
人の脳が持つ演算処理能力をネットワークで1つに纏め上げクラウド化して共有する。そして、コンピューターのCPUには作り出せないハイスペックかつ情緒的な演算処理システムの構築。それが、この実験の内容だった。
「私は協力しないよ」
この実験に意義を唱えるフィリアに、全員の視線が向く。
「わたしはキリト君に頼んでるのよ?何で貴女が答えるの?」
「『私は』協力しないって言ったの。私だけでも貴女の実験を止める」
「!?フィリアさん!?そんな無茶な!!」
「私は……何でシヴァがあの行動をしたのか理解できた。それを踏まえて、貴女たちには協力はしない。何としてでも実験を止める」
「……何故、あの領主様が出てきたのかしら?」
「……本当は言わない方が良いのは分かってる。でも言わせてもらうよ」
「ッ!!……フィリア」
「キリト、後でシヴァに謝っておくから」
フィリアは意を決したかの様に深呼吸をした後、話し始める。アイツの過去を。
「昔、シヴァが話してくれたんだ。あのデスゲームに囚われていた時の2023年8月、シヴァは人を殺した」
『!?』
「事の詳細までは分からない。でも、その時は殺人プレイヤーの集団の討伐作戦って言ってた。本当ならね」
「本当なら……?」
その言葉に疑問を唱えたエイド。それにフィリアは答える。
「シヴァは、誰からも犠牲を出したくなかった。だからこそ1人で殲滅させた。……これはシノンから教えてもらったんだ」
でも……と言葉を詰まらせるが、また深呼吸して言葉を綴る。
「だからこそ分かるの。シヴァは例え、この世界で本人が死ななくても、仮初めの命でも、シヴァは命が失われるのをとっても嫌っていた。だからこそシヴァの意思に従って、私は貴女たちを止める。命を奪った事を許したくないから」
「そう……それなら良いわ。キリト君はどうするのかしら?」
「俺は……………」
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~銀先side~
午後2時、林道。今の時間帯は誰も居なかった。木綿季は林道を駆け回っていたり、詩乃は俺の左腕に自分の右腕を組んで木綿季を見て笑っていたり。
俺は上を見て、木と木の隙間から漏れる光を見ていた。
虚ろな感情を抱きながら歩いていると、隣に居た詩乃が服を引っ張ってくる。何かと思い、詩乃の方に向く。
詩乃は先程の笑顔のまま、俺に向けられる。
「……詩乃、どうした?」
「ふふっ、何でも♪」
溜め息をついた後、俺の右腕に木綿季が来る。俺の腕を上げたり下げたり、伸ばしたりと遊んでいた。
「ねぇ銀」
「……何?」
詩乃は歩みを止める。それに合わせて俺と木綿季も歩みを止め、詩乃に向き合う。
「頼ってよ」
「………んっ?」
「だから、頼ってって言ってるじゃない。毎回毎回銀が無茶する度に心配するの私たちなんだから」
「んぁ?………って、あぁ。あん時のか」
あの時、自分の中で何かが切れた時、俺は何も考えず動いていた。だからこそ、アイツらが俺を止めてくれる。背負うことを一緒に付き添ってくれる。
だが、未だ何処か不安が過る。アイツらの背中に背負わせれば、俺は後悔するのではないのか?俺はアイツらの重荷を軽くする為に何をしてやれる?
俺は何を……そう考えていたら、こんどは詩乃が無理矢理顔を両手で挟んで詩乃に向けさせられる。
「銀は……もう十分背負ってくれた」
「……」
「だから、その重荷は捨てちゃいなさい」
「……それは……その……」
「……私が言ってるのは、『キリトたちへの過保護ぶり』っていう重荷を捨てちゃいなさいっていう意味で言ったのよ」
「あ、そっち?……って、それも無理」
「キリトたちだって、何時までも銀の物じゃないでしょ?」
「………」
「だからさ、さっさと捨てちゃいなさい。そんなお荷物。それで、キリトたちを……私たちを信じなさい。銀」
「………」
……何故だろうか、不思議と気分も良い。辛かったのだろうか?話して楽になったのか?
『背負う』んじゃない『支える』事をすれば良いのか?って思った。不思議と体と思考が軽くなった気がする。
その軽くなった思考で、あることを思い出さした。
「……急で悪いが詩乃、木綿季」
「「????」」
「ログインするぞ」
2人はお互いの顔を見合い、笑みを浮かべた後
「「了解♪」」
敬礼のポーズをして、俺に意思表示する。
家に戻り、ALOへとログインする。