つくづくフラグは立てるものじゃないと思う。
俺はX783年のS級試験の受験を許された。先のS級試験の内容を知っていた俺は「受かるとは思えないし、記念受験すっかー」と、軽いノリで受けてしまった。
受かってしまった。S級魔導士になってしまった。
度重なる奇跡、運命の悪戯に俺は泣くしかなかった。
さらに不幸なことはS級魔導士になったことで俺の噂に火がついたことだ。「神をも屠る手を持っている」、「バラム同盟が最も恐れる最悪の男」などとんでもない噂が広まっていく。
付いた異名は『
俺は名が広まったことを逆に利用することにした。対人戦では必ず名乗りをあげ、心理的なアドバンテージを得ている。勝手に混乱する様は滑稽だ。
ただ一般人にも恐れられるようになってしまい、外に出ると視線が痛い。お前たちが恐れる俺は、女性魔導士を狙う変態なだけだぞ。
そんな俺でも『妖精の尻尾』のメンバーは仲良くしてくれる。誰かが「『妖精の尻尾』はみな家族だ」みたいなことを言ってた気がするが、まさにそれを実感していた。みんなの優しさが身に染みる。
だが俺は『妖精の尻尾』の女性魔導士に手を出すことをやめない。優しさにつけ込むのは常套手段だ。
相変わらず慌ただしい毎日を送る俺はS級になってから絡むようになった魔導士が1人いる。
カナ・アルベローナ。いつも露出度の高い服装をしており、見かけると大抵酒を飲んでいる飲んだくれ。カード魔法を操り、過去何度もS級試験に挑んでいることからも実力は高い。
カナは父親であるギルダーツに娘だと名乗り出るためにS級魔導士に執着している。しかし俺が挑んだS級試験を含め、合格出来ないでいた。……どうして俺は受かってしまったのだろうか。
このようにカナはS級魔導士にコンプレックスを持っており、自分よりも新人で1回で受かった俺に思うところがあるようだ。夜に遭遇すれば、必ず飲みに誘われる。そして俺が酔い潰れるまで飲まされるのである。
なんだかいいようにされて悔しい俺は、今日こそあの飲んだくれに勝ってやると決心した。ついでにお持ち帰りまで出来れば完璧だ。
カナよ、俺に関わったことを後悔しな。
俺は決戦に勝利した。途中何度も意識を失いそうになったが、エロスのために踏ん張りを見せた。隣のカナはすっかり酔い潰れ、眠ってしまっている。
カナを背負い、俺は飲み屋を出た。『妖精の尻尾』の女子寮に男の俺は入れない。
ゆえに俺の家へと向かう。
俺自身も相当飲んでいるためか視界がぐらつく。気を抜けばそのまま倒れてしまいそうだ。それにしても背中への感触が、カナが薄着なこともあってどっしり伝わってくる。こういう不可抗力のシチュエーションも今後は増やしてもいいかもしれない。
俺は家まで我慢出来ず、掴んでいた手をカナの脚からお尻へと変える。眠っていることをいいことに、カナのデカ尻をこれでもかと揉みしだく。
「んっ……ぁん」
感じているのか、眠っているはずのカナから色っぽい声が漏れる。その様子が拍車をかけ、起きるリスクも考えず、俺は欲望のままにカナのデカ尻を揉み続けた。それは家に着くまで止まらなかった。
帰宅後、カナをベッドに寝かせ、眠け覚ましのため俺はシャワーを浴びた。シャワーを浴びて部屋に戻ると、なんとカナが目覚めていた。
カナは呂律が回らず意識は正常ではないが、眠っている彼女に悪戯しようとしていた俺の目論見は崩れた。
俺ががっくりして項垂れていると、カナはまだ酒を要求してきた。もう限界なはずなのにこいつはまだ飲もうとしているのか。
「今日はもうやめておけ」と俺はカナの要求をつっぱねる。それが不満だったのかカナは「え〜、いいだろぉ?」と俺の腕へと抱きつき、誘惑するようにねだってきた。さっきまで背中にあった感触が、俺の腕へと伝わってくる。男心を弄ぶカナの行動に、理性が突き破れそうになるのを堪えて「酒は飲んでも飲まれるものではない」と戒めた。カナは何か言いたげな顔をしていたが、おとなしく引き下がってくれた。
酒を飲ませなかった代わりにカナから質問攻めを喰らった。主にミラとは最近どうだとか、なぜそんなに強いのかなどである。改めて聞く勘違いからの質問に俺は苦笑いをするしかなかった。
そんな中、カナは俺にマッサージを頼んできた。エバから俺がマッサージが出来ることを聞き出していたらしい。……エルザやミラの耳に入ってないか不安である。
とにかく予期せぬ好機に俺はすぐ首を縦に振った。酔っていてE・サンダーを使うのは難しいが、向こうも酔っているため少々やり過ぎても大丈夫だろう。
カナに「服の上からだと効果が薄まるから下も脱いでくれないか」と言ったら、あっさり脱いでくれた。元々上は下着同然の姿だったが、下も脱いでしまったことで、よりそれらしくなる。
続けてカナにベッドの上でうつ伏せになってもらい、いよいよマッサージが始まる。
俺は極点眼は発動せず、まずは普通のマッサージを行った。エバの件から勉強していた俺のマッサージに、カナは「中々うまいじゃないか」と褒めてくれた。
俺は油断したカナに極点眼を発動し、背中の快感のツボめがけて指圧を加えた。「ひゃうん!」とカナらしからぬ声を漏らしてしまう。
続いて目標は下半身へと移る。ここでも普通のマッサージを行い、時に快感のツボを押して、カナを焦らしていった。
カナは何か物足りないような表情を浮かべている。
その後はカナに起き上がってもらい、俺にもたれかかる形で胸部へのマッサージに移行した。決していやらしくならないように心がけ、カナの胸を刺激する。先端ポイントを見定めると、直接触らずにかすめるようにして、カナへの焦らしを貯めていく。
「……お尻に当たってる硬いのはなんだい?」
順調かと思われていたが、痛恨のミスを犯してしまった。カナの指摘に俺のキングが鎧を着て、彼女のお城に突撃していたことに気付く。
下心があることがバレてしまい、慌てた俺は彼女の股を開き、勝負に出た。
「おい!そこは……あんっ!」
彼女のクイーンではなく、内股に終始して刺激を強めていく。ハリのある内股に俺の指が食い込み、ぐにぐにと刺激を誘発する。
「いい加減に……しろ!」
だが俺の最後の足掻き虚しく、カナのエルボーによって俺は撃沈した。
次の日の朝は酔いによる頭痛が止まらず、最悪の目覚めとなった。カナは昨日のことはマッサージをされたという事実しか覚えてなくて、なんとか事なきを得た。今度は飲んでない時にマッサージを頼まれたが、ひやひやしたのでしばらくはごめんだ。
カナは昨日俺以上に飲んだとは思えないくらい平気そうにギルドに行った。対する俺は二日酔いがひどすぎてギルドを休むことにした。
次は綱渡りにならないようにしようとベッドの上で反省していたら、ミラが俺の様子を見に来た。ミラに「お酒を飲むのはいいが、カナのように飲みすぎないこと」とありがたいお言葉を頂いた。俺も懲りたため、これには二つ返事で了承した。
ミラとしばらくたわいもない話が続き、俺は変に天然なところを除けばレビィと同じ癒しだよなあと、幸せを感じていた。
その幸せも昨日のカナの話になると終わりを告げた。ミラは俺がカナを一晩泊めたことに怒っていた。
しかしミラも一人暮らしの俺の部屋に普通に遊びに来てるのは不用意ではと思う。その事実を指摘すると、彼女は「私は問題ない」とのたまった。確かにミラに下手に手を出せばサタンソウルでワンパンだが、そういう問題ではないだろう。
その後もミラは色々と屁理屈を捏ねあげた末に、自分も今日は泊まると言い出した。持ってきたやけに大きい荷物はそういうことか。
断ることも出来ず、押し切られるようにミラのお泊まりは決まった。普段なら大チャンスと見るが、おそらくミラは俺に下心があったのではないかと疑っている。警戒状態の相手には迂闊に手を出すべきではない。
俺は悔しさを飲み込み、今回は静観することを決めた。
それからミラは手料理を振舞ってくれたり、膝枕で耳かきをしたり、逆にマッサージをしたりしてくれた。恋人プレイで俺を揺さぶるとは、今回のミラは本気だ。
何より風呂上がりにバスタオル1枚で姿を現した時には、俺も驚いた。さすがに恥ずかしそうにしていたが、その覚悟に俺はただただ冷や汗をかいた。
でもミラのバスタオル姿はしっかり映像ラクリマに収めた。
就寝の時間になり、ミラは最後の罠を仕掛けてきた。
俺はベッドにミラを寝かせ、自分は床に布団を敷いて寝ようとしていたのだが、あろうことかミラは同じベッドで寝ないかと言ってきた。
露骨すぎる罠に俺は即座に断った。しかしミラは瞳を潤いながら「ダメ?」とねだってきて、俺は罠にかかってしまった。
1人用のベッドのため、エルザの時とは比べ物にならないくらい近い。ミラから漂う甘い香りや吐息が俺の理性を壊そうとする。
だがそれではミラの思うツボだと必死に自分に言い聞かせ、理性を保つ。ミラは一向に寝る気配がない。俺が手を出す瞬間を狙っているのだろう。
残念ながら俺はその気はないと、頭の中でバルカンの数を数えながら眠りに落ちた。
俺はミラよりも早く目覚めた。ミラは俺が手を出さないと判断し、寝たのだろう。無防備に寝ているミラに手をかけようとするも、狸寝入りの可能性が頭をよぎり、すんでのところで思い留まった。
煩悩を打ち払いながら俺はキッチンに向かい、朝食の準備を行った。
しばらくしてミラが起きてきて、朝食をともにした。ミラは随分眠たそうにしており、手間をかけてすまないと心の中で謝った。
朝食を終えた俺たちは支度を済まし、ギルドに行くとみんながなぜか大騒ぎしていた。どうやら俺とミラがあらぬ関係になったと誤解しているようで、俺は慌てて誤解を解いて回った。
しかしみんなから「ヘタレ!」や「お前そこまでされてもダメなの?」と不満が殺到した。特に女性陣からのブーイングはすごく、俺の癒しのレビィにさえ「1回人生をやり直した方がいいんじゃない?」と言われた。すみません、これもう2回目みたいなものなんです。
ミラは俺への口撃を止めようとしているが、元はと言えばお前が原因だぞと、心の中で嘆いていた。
この騒動はギルドの外にまで広がり、俺は「男としての機能が死んでいる」、「
何を思ったかこの騒動を知ったエンジェルが「ヘタレ野郎に会いに来たゾ」と煽りに来たので、キレて勝負を挑んだら返り討ちにされた。ジェミニでミッドナイトをコピーしてくるのは卑怯だ。
俺は様々な形でハートブレイクされ、悲しみに沈んだ。惨めな俺を憐れに思ったミラが「私と付き合えば解決じゃない?」と言ってきた。心が荒んでいた俺は「お前とは絶対に付き合わない」と強い口調で言ってしまい、その言葉でミラを泣かせてしまった。これにギルドの面々がキレたり、またも噂が広まり事態の悪化を招くこととなった。
もう俺は何も喋らない方がいいんじゃないかと思いながら、事態の収拾に奔走した。