健全魔導士目指します   作:秘密の区域

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祈る者と煽る者

 ミラがあの1件から積極的に迫ってきて困惑している。前からクエストは一緒に行ってたが、最近は食事や買い物に付き合わされる。

 つい「もしや俺に気があるのでは?」なんて魔が差したことを思ってしまうも、すぐにそれを否定する。

 そして先のモヤモヤした感情の正体に気付いた。

 

 俺は期待してしまっているのだ。いつもとは違ったいい雰囲気に流され、純粋な関係を結ぶことを。

 馬鹿なことを考えてしまっている。俺まで勘違いの泥沼に浸かる理由はない。ミラが何を思って俺に近付いているかは不明だが、それはそれで利用させてもらおう。

 

 問題はギルドの連中の何人かが俺とミラの仲を疑っていることだ。その1人であるラクサスには「ミラとはどこまで進んだ?」と直接聞かれてしまった。「ミラとはそういう仲じゃないんだが」と否定するも、ラクサスはからかうように笑うばかりだ。

 今度クエスト中に絶頂させようと心に誓った。

 

 こんなこともあり、心休まりたかった俺は久しぶりに1人でクエストに行った。

 

 いつもの3人から誘いがあったが、「悪い。今日は1人で行きたい気分なんだ」と言って、申し出を断った。クエストも「小規模の山賊の討伐」という簡単なものにし、気分のリフレッシュを図った。

 俺もまだまだとはいえ、だいぶ戦えるようになっていたため、この時は高を括っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 山賊を討伐するまではよかったが、その山賊は『破壊の蠍(クラッシュスコーピオン)』という闇ギルドの末端組織だった。

 

 『破壊の蠍』の増援によって敗れた俺は捕らえられ、奴らのギルドに連れて行かれた。拷問や死を覚悟していたが、『破壊の蠍』のマスターは何を思ったか俺をギルドに勧誘してきた。

 『破壊の蠍』は『六魔将軍』の傘下の闇ギルドで、反旗を翻すために力を蓄えていたらしい。近々争いを起こすことを企んでおり、戦力の増強にと俺を誘ってきたようだ。

 しかし俺は増援時にあっさりやられ、誘うような人材でないことはわかっているはずだ。この疑問をぶつけると「お前はなんだかこちら側の匂いがする。それに只者ではない雰囲気が漂っている」と言われた。「只者ではない」は間違っているが、初めて俺のことに勘付く人物の登場に涙しそうになる。

 

 しかし承諾する理由にはならない。マスターの魔法はミラやエルフマンと同じ接収である。俺が見たのは蠍のモンスターに変身して毒を操るもので、俺はそれにやられてしまった。

 負けた俺が言うのは滑稽かもしれないが、マスターの魔法がこの程度ならおそらく『六魔将軍』には勝てない。6人でバラム同盟の一角を担うだけあって、『六魔将軍』の実力は本物だ。

 『破壊の蠍』のマスター以下のメンバーは、大したことなさそうだったので、最後の頼みの綱はマスターになる。そのマスターは客観的に見て『六魔将軍』を凌駕しているとは思えなかった。

 

 マスターは俺が考えていることに気付いたようで、「お前の疑念を晴らしてやる。付いて来い」と地下牢に案内された。投獄するわけでもなく、ある牢の前で立ち止まる。

 

「知っているかな。彼女は『六魔将軍』のエンジェルだ」

 

 マスターは思っていたよりやり手だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『六魔将軍』が1人、エンジェル。ふざけた語尾と胸元がぱっくり開いた痴女的なファッションが特徴だ。彼女は星霊魔導士で、普通は出来ない2体同時開門を可能にしている。

 

 こんなにも早くエンジェルの姿を見れるとは思わなかった。大胆に晒されたおっぱいがセクシーだ。

 俺がエンジェルの胸をガン見していると、マスターに「お前も物好きだな」と言われ、エンジェルには思いっきり睨まれた。

 その睨み、俺にとってはご褒美だぜ?

 

 それにしてもどういう手段を使ってエンジェルを捕まえたかはわからないが、マスターが有能なことはわかった。マスターも「これで疑念は払拭したかい?」と自信満々に問う。

 もちろん入るつもりはない。『妖精の尻尾』に入っておく方がおいしいというのもあるが、それ以上にやはり『六魔将軍』には勝てないだろうと思ったからだ。

 エンジェルは確かに強いが、星霊魔導士だ。つまり星霊を呼ぶ鍵さえ奪ってしまえば何も出来ない。エンジェルもきっと鍵を奪われ、このような事態に陥ってしまったのだろう。よって懸念は払われない。

 だが断るとなると俺はまた『破壊の蠍』を相手にしないといけなくなる。

 

「いいでしょう。その代わりエンジェルを俺の好きにさせてください」

 

 俺は『破壊の蠍』攻略のため、エンジェルの身を要求した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所はギルドの酒場に移る。牢屋で事に及んでもよかったが、マスターが「どうせならギャラリーがいた方がいいだろう?」と悪魔の囁きをしてきた。完全に俺と同類だと思った瞬間である。

 今から行われようとしているショーへの期待から、酒場は大いに盛り上がっている。拘束されたエンジェルを見るみんなの目はギラギラしており、彼女もその異様な雰囲気に戸惑いを見せていた。

 

 マスターから今回の催しの趣旨が発表され、酒場のムードはさらに盛り上がる。エンジェルは下衆な面々に怒っているが、その体が震えていることを俺は見逃さなかった。

 

「『六魔将軍』でも恐怖を感じるんだな」

 

「! そんなことあるわけないゾ!!」

 

「その威勢はどこまで保つかな」

 

 俺はエンジェルの尻を力強く掴んだ。服の上からでもわかるむちむちな柔肌の感触。エンジェルはお尻を触られながらビクビクと反応しているが、強気な姿勢は崩さない。

 

「早めのお披露目だ」

 

 俺はエンジェルの卑猥な服を無理やりズラす。すると半ば見えていたおっぱいが全開となり、周りから歓声があがった。

 『妖精の尻尾』の巨乳にはずれなし!

 

「お前は絶対許さないゾ!」

 

「許してもらうつもりはない」

 

 2つの小さな禁具スライムを召喚した俺は、エンジェルの先端へとくっつけた。

 

「何を……はふぅん!」

 

 禁具スライムはエンジェルの先端に執拗に絡みつく。エンジェルの嬌声が激しくなり、ギャラリーは思い思いの下卑た言葉をエンジェルへと投げかける。

 俺はエンジェルの胸を堪能しながら、彼女にあることを耳打ちした。

 

 しばらく俺とスライムの責めが続き、エンジェルはなんとか抗おうとするも、彼女の顔はすっかり雌の顔になっている。

 ここで俺はマスターにエンジェルの星霊の鍵を渡してくれと頼んだ。当然マスターは渡そうとしなかったが、「彼女の大事な部分を弄るのに、自らの魔法の要である鍵を使われたら、さぞかし屈辱的でしょ?」という俺の言葉を聞き、渡す方向に傾いた。

 

 俺は鍵を渡されるとエンジェルの拘束を解き、彼女に鍵を渡す。

 

 マスターは突然の俺の凶行に困惑の色を見せた。

 

「これはどういうことだ!?」

 

「どういうも何もあんたならわかるだろ?」

 

 『破壊の蠍』を倒したい。

 

 だが俺の実力では敵わない。

 

 だったら他人の力を借りるしかなかろう。

 

「お前たち、生きて帰れると思わない方がいいゾ?」

 

 天使による虐殺の始まりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『破壊の蠍』の全メンバーが始末された後、エンジェルは俺にも攻撃をしようとしてきたため、彼女の快感のツボを突いてダウンさせた。やはり星霊は強いが、本人はそこまでじゃない。

 エンジェルは弱っていて世紀のチャンスではあるも、彼女に戦闘を任せっきりには出来ず、俺も疲弊しているためそのまま帰ることにした。

 あのマスター、星霊に目もくれずエンジェルを狙ってきたりして最後まで苦労した。

 

 俺の一撃でエンジェルは動けなくなってしまい、途中まで担いで送ってあげた。エンジェルは「なぜ私を見逃す?」と聞いてくる。「それは後に入るルーシィの踏み台になってもらうためです」とは口が裂けても言えないので、「俺はお前に助けてもらった身だからな。それといい思いをさせてもらったしね」と返した。

 エンジェルは「私だけ色々やられて不公平だゾ」とジェミニを使って俺の恥ずかしい情報を得ようとするが、当のジェミニが俺をコピーした途端に錯乱し、情報が開示されることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の帰りが小規模の山賊を倒すには遅すぎることで、みんなから問い詰められた。黙っておくわけにもいかず、「山賊の上にいた闇ギルドの相手をしていた」とエンジェルの存在を隠して話した。

 みんなから心配やお叱りの言葉が飛び交う中、「闇ギルド1つを壊滅させるとはさすがだな」というエルザの言葉でまたやってしまったと後悔した。

 

 さらに数日後、家に予期せぬ来訪者がやってきた。疲れすぎて幻覚でも見えているのだろうか。

 

 目の前に『六魔将軍』のブレインが立っているような気がする。

 

 追い返すことも出来ず、家に入れて訪れた理由を聞く。ブレインはエンジェルに俺のことを聞き、興味が湧いたから来たそうだ。……あの野郎、次会った時覚えてろよ。

 ブレインがエンジェルに聞いた話によれば、俺は「巧みな話術で敵を扇動し、洗練された体術で敵を圧倒する外道」ということになっている。「外道」以外の部分、嘘っぱちにもほどがあるだろ。

 

 偽りの印象を持たれている俺はブレインから『六魔将軍』に勧誘された。神はそんなに俺に闇ギルドに入って欲しいのか?下手な断り方をすれば、俺は消し炭になってしまうだろう。

 俺は下に見られないよう「俺を誘いたいなら、お前の中で眠っているマスターを出してから言うんだな」と言ってやった。

 

 『六魔将軍』ブレインはギルドの司令塔のような役割を果たしているが、彼はマスターではない。ブレインの中に眠るもう1つの人格「ゼロ」こそがマスターなのである。ゼロはその凶悪さから『六魔将軍』のメンバーとつながった生体リンクにより、『六魔将軍』のメンバー全てが倒されない限り出てこない。

 

「その名を知っているとは驚いた。うぬは想像以上に大物のようだ。しかしその名を出してただで済むと思ったのか?」

 

「ただで済むと思っているのはそっちの方じゃないか?ゼロの人格を呼び出されたくなければとっとと帰りな」

 

 ここで俺はハッタリを仕掛ける。今すぐゼロを呼び出すなんて出来るわけないが、知るはずのないゼロの名前を出したことで、真実味を帯びてくる。

 

「そのようなこと……」

 

 かつて魔法開発局に所属し、多くの魔法の開発に携わった経験から、ブレインは否定出来ない。

 

 その後ブレインは俺に手を出さず、退散していった。お前は光と闇を入れ替える中二魔法に熱心になっとけばいいんだよ。願わくば2度と関わらないで欲しい。

 

 退散はさせたものの、かつて感じたことのないプレッシャーに俺は少し漏らしてしまっていた。仮ボスだけに威圧感は凄まじい。『破壊の蠍』がゴミに覚えるほどである。

 それにしても『六魔将軍』と関わることになるとは想定外だ。エンジェルのような女の子なら大歓迎だが、ブレインとかいう色黒ロン毛野郎はやめていただきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はまた危機を回避した。

 

 しかし新たに生まれた勘違いにはまだ気付いていない。

 

 浴室で漏らしたパンツをのんきに洗う俺は、これから起きる壮絶な勘違いを知る由もなかった。


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