週刊ソーサーラーの取材を回避した俺は『妖精の尻尾』の記事を読み、改めて受けなくて正解だったと思った。ろくなことが書かれないことは身を持って知っていたが、まあひどい。
ラクサスがこの件でキレたのも少しわかる気がした。
「でもミラとガジルのデュエットは見たかったなあ。どうしてこうなったかは知らんが」
「ガジルくんが私の代わりに無理やり歌おうとしたから、それなら一緒に歌うように誘ったの。楽しかったわよ」
嬉しそうにガジルとのデュエットについてミラは語る。
そういえば原作だとミラを拘束して代わりに歌ってたような……あっ、多分返り討ちに遭いましたね。
自業自得とはいえ、半ば強制的にデュエットさせられたであろう憐れなガジルは、現在掲示板の前でルーシィと言い争っていた。これはタイミングが悪くてチームのメンバーの誰ともクエストに行けなかった時だな。
「どんな仕事やろうが、俺の勝手だろーが。はりつけんぞ、バニーガールさんよぉ」
「キィーーー!!!くやし〜〜〜!!!」
目星を付けた依頼書を取られて地団駄を踏むルーシィ。
それにしてもガジルに突っかかるとは、ルーシィは将来大物になるだろう。
ルーシィの度胸の大きさに感心していると、今度はナツに助けを求めていた。だがエーテリオンを食べたせいで調子が出ないナツには相手にされず、撃沈した。
「うう……ここで諦めたらおしまいよ、あたし!他の依頼を見ましょう!」
ナツに断られてもめげずルーシィは再び掲示板から行けそうな依頼を探す。
するとある依頼書に目が止まった。
「ヒーローショーへの出演……これならあたしでも行ける!報酬も結構いいし!」
ついにルーシィは俺が仕組んだ依頼書にたどり着いた。ルーシィが言うヒーローショーとは俺とミラが出演した遊園地のヒーローショーのことである。
俺はミラと結ばれて以降も1人でヒーローショーを見にちょくちょく遊園地に通っていた。その時にたまたま遊園地のオーナーと知り合い、話していくうちに意気投合した。聞いたところによるとあのショーの発案者はオーナーらしいから、気が合わないわけがない。
そして今回はそのオーナーに「またミラジェーンと一緒に出てくれないか?」と頼まれたのだ。ミラジェーンもそうだが、俺が演じた「アナール大佐」も受けが良かったらしい。
俺としては二つ返事で了承したかったが、恥ずかしい目に遭ったミラも了承してくれるとは考え難い。
そのためオーナーにはミラを諦めてもらい、代わりに『妖精の尻尾』に依頼を出させたのだ。報酬も通常より割高にし、ルーシィがかかってくれるように。
ヒーローショーという建前があるので、あまり過激なことはできないが、ルーシィにはショーに集まる紳士らのオカズになってもらおう。
ヒーローショーの当日。
やる気満々の俺は配役である「ハラセク伯爵」へと姿を変えた。ハラセク伯爵の姿はタキシードに赤いマントを羽織ったドラキュラをイメージしたものになっている。
前のアナール大佐は正体が露見することを恐れ、廃業になった。
「えっと今日はよろしくお願いします」
俺がハラセク伯爵のキャラを固めていると仮面ウィザードへと着替えを終えたルーシィが打ち合わせのために部屋にやってきた。ミラと同様に体のラインが露骨に出るヒーロースーツを着たルーシィは少し恥ずかしそうな表情を浮かべている。
ステージ上ではもっと恥ずかしい目に遭うのに、格好だけで恥ずかしがっていたら保たんぞ?
その後前回と同じく流れを説明され、過程も任されることが伝えられた。ルーシィはほとんどアドリブで成り立たせることに驚いていたが、クエストで劇場に立った経験もあるので大丈夫だと胸を張った。
確かにルーシィの胸には大きな信頼が詰まっているな。
ショーの開始時間になり、俺は部下を引き連れてステージへと登場した。
「本日はわたくしハラセク伯爵の催しにお集まりいただきましてありがとうございます。早速ですが、皆さんの中から本日の生贄を選びたいと思います」
俺は作り笑顔を浮かべながら持っている杖で観客の誰かを選ぶ仕草をする。子供たちは自分が選ばれるんじゃないかと震えている。
『とんでもない敵が現れたぞ!みんなの声を合わせて仮面ウィザードを呼ぼう!せーの……』
「「「助けて!仮面ウィザード!!」」」
司会のお兄さんの掛け声とともに仮面ウィザードの名前が叫ばれる。
すると激しい光の演出魔法の中、仮面ウィザード・ルーシィが登場した。
「瞬く星の使い、仮面ウィザード!ハラセク伯爵、あなたを成敗しに来たわ!」
「わたくしを成敗するとは大きく出ましたね。部下たち相手をしてあげなさい」
「開け、金牛宮の扉!タウロス!!」
「MOーーー!!」
部下をけしかける俺に対し、ルーシィは星霊を呼び出して対抗しようとする。現れた巨躯の牛の星霊タウロスに観客は歓声を上げた。
「むむ!ルーシィさん、今日の乳はいつにも増してセクシーですな」
「「「わかる!!!」」」
「くだらないこと言ってないでちゃちゃっとやっちゃいなさい!」
タウロスと観客の声を無視して、ルーシィは攻撃するように指示を飛ばした。見た目からもわかる圧倒的なパワーで、部下たちはどんどん宙に舞っていく。これには観客も大盛り上がりだ。
「その牛は相手にするな!仮面ウィザードを直接狙え!」
俺は部下に牛と戦わないように言うが、斧によって攻撃範囲が広いタウロスを通り抜けられる者はいない。
やがて部下も軒並み倒されてしまい、残すは俺のみ。
「覚悟は出来てるかしら?ハラセク伯爵!」
「覚悟も何もわたくしの勝利が揺らぐことはありません」
俺は杖に仕込まれていた刀を抜き出した。タウロスは俺が刀を出したのを見て斧を振り被る。
俺の力では受け止めることは困難だと判断し、回避して刀でタウロスに斬りかかる。タウロスはそれを読んでいたのか、俺の刀身をあっさりと斧で受け止めた。
ずるずると押し返される刀を受けて俺は後退を余儀なくされる。
「いいぞー牛!」
「すげー力だぞ!」
「ここまで褒められると照れますMO」
観客に讃えられ、満更でもないタウロス。俺の方はルーシィをどうピンチに持っていくか考えていた。
魔力切れまでひたすら耐えるのもありだが、観客が飽きてしまうかもしれない。
「タウロス!カモン!」
「?」
俺は刀を構えるのをやめ、タウロスを手招きした。タウロスは頭に疑問符を浮かべるも、素直にこっちにくる。
「タウロス、これがヒーローショーってことはわかるか?」
「MOちろん、状況を見て察してますが……」
「ショーの流れでルーシィをピンチにしないといけないから一時的に寝返ってくれないか?」
「MO!?」
俺はタウロスに耳打ちで寝返るように打診した。タウロスは俺の提案に驚いている。
「しかしショーとはいえ、ルーシィさんを裏切るのは……」
「今なら合法的にルーシィのエッチな姿を拝めるぞ」
「MOーーー!!俺は今からハラセク伯爵の手先MO!!」
俺の甘言によってあっさり寝返るタウロス。これにはルーシィも唖然としている。
「タウロス!ルーシィを拘束しろ!!」
俺の指示でタウロスはルーシィを羽交い締めにする。ルーシィの力ではタウロスの拘束を解くことが出来ない。
まさかの超展開に観客はある意味盛り上がっていた。
「こうなったら強制閉門で……」
「させません!!」
慌てたルーシィはタウロスを強制閉門をしようとしたので、俺は彼女の鍵を奪取し無力化する。
「ははは、味方の星霊に裏切られる気分はどうですか?仮面ウィザード」
「あなたどうやってタウロスを!?」
「なーに少々交渉しただけですよ」
俺はニヤニヤしながら拘束されたルーシィの体を舐め回すように見る。ピチピチのスーツで強調されるムチムチボディはスーツの光沢で艶かしく彩られる。羽交い締めを解こうと抵抗することで揺れるおっぱいは煽情的である。
ルーシィは自分に向けられるいやらしい目線に気付き、俺を睨みつけた。
「さあさあ、ここからが本当のショーの幕開けだ」
「本当のショーって一体何をするつもりなの!?」
「まずはこれだ!!」
そう言って俺が取り出したのは鳥の羽。ルーシィはポカンとしているが、観客の大きいお友達は何をするか気付いて期待の眼差しを向けている。
「どんなことをするかと思えば羽って大したことなさそうね」
「それはどうかな?そーれ!」
「あっ、そこは……あははははははは!!」
はE・サンダーを帯びさせた羽でルーシィの無防備な脇をくすぐり始めた。くすぐりに抗えないルーシィの笑い声が響く。
「もうやめて!やめ……んひひひひひひひひ!!」
ルーシィの制止をよそに脇だけでなく脇腹や足の裏をしつこく羽でくすぐる。くすぐりを耐えるため体を捻り誤魔化すルーシィだが、それによるおっぱいの揺れに観客やタウロスは釘付けだった。
やがてくすぐりが止むとルーシィはぐったりとした表情を見せていた。その顔は赤みを帯びており、笑い過ぎたせいか息が荒い。暴れたこともあって汗も流れており、色っぽさを掻き立たせている。
「くすぐりはそんなに気持ちよかったですか?仮面ウィザード」
「よくもあんなことをやってくれたわね!この変態!!」
「……変態?ただくすぐっただけなのにあなたは何を思ったんでしょうね?」
「くっ」
ルーシィが悔しそうに俺を睨みつける。
だが俺はそれを意に介さず、次の行動の準備を始める。
「続いてはこれだ!」
俺が舞台裏から持ってきたのはクリームパイだった。くすぐりといい、地味な嫌がらせに見えるかもしれないが、一応ヒーローショーだ。表面上はらしくしなければならない。
「パイ投げってなんでまた……ぶほっ」
「ストラーイク!どんどん行きますよ」
俺はルーシィに向かって全身がクリームパイだらけになるまで投げ続けた。
「なんなのよ、この罰ゲーム感……」
予想と違う展開にきっとクリームパイの下で憂いた表情をルーシィは浮かべているのだろう。ツッコミはきちんとするところはルーシィらしい。
「いつのまにかクリームだらけになってしまったな」
「誰のせいよ!!」
「このままではかわいそうだ。どれどれ」
俺はルーシィの頬に付いたクリームをペロッと舐めた。
その瞬間ルーシィに得体の知れない嫌悪感が走る。
「ちょっと、まさか」
「舐めて拭き取ってあげましょう」
「いやあああああああああ!!!」
「「「いいぞー!!もっとやれ!!」」」
「よくない!!」
観客の声援を糧に俺はルーシィに付いたクリームを舐め始めた。ルーシィはくすぐりの時とは比べものにならないくらいやめるように懇願するが、俺は止まらない。
「仮面ウィザードの脇クリームペロペロ〜」
「やめろ!!ど変態!!んふっ」
先ほどの名残か、ルーシィは脇を舐められ怯んでしまう。
もはや健全とは言えないヒーローショーだが、子供も大きいお友達も一丸となって見守っている。
「すごい、アナール大佐以来の神展開だ……」
「なんだかいけないことを見てるような気がする。でも目を離せられない」
「俺も仮面ウィザードペロペロしてぇ」
先ほどまで仮面ウィザードに声援送っていた観客たちはもういない。みな仮面ウィザードに性的な視線を送り、ハラセク伯爵を応援している。
「そろそろメインディシュに参りましょう」
俺はルーシィの大きな2つのクリームパイに目を向ける。
クリームの上からでも感じる確かな重量感。
エバルー屋敷の時には手を出すことが出来なかったそれが、今目の前にある。
限界だった俺はルーシィの左のクリームパイを口に含んだ。スーツ越しにクリームパイの感触が口を満たしていく。
「やっだめ……あっあっ」
先端を探り当て、クリームとともに俺は吸引する。その乱暴な吸い方は紳士さを微塵にも感じさせないものだった。
「あの……さすがにこれはアウトでは?」
「何を言う、タウロス。哺乳類の動物はみな母乳を吸って育ちます。すなわちそこにやましさなんて何もありません」
「いや、しかし」
「あなたも吸ってみれば、崇高な母性を見出すでしょう」
「騙されちゃダメっ……んんっ」
俺は必死に左のクリームパイを吸いながら右のクリームパイを力強く揉む。
タウロスは俺の言葉でどうするべきか迷っている。しかし俺の行為を羨望の目で見ているのは一目瞭然だ。答えは分かりきっている。
「そこまでだ!!」
タウロスがこちら側に堕ちかけていた時、制止する謎の声。
「君の悪事はここで終わる」
「何者だ!?」
「僕はライオン仮面。仮面ウィザードの相棒だ」
現れたのはスーツ姿にライオンのマスクを被った男。声と格好からして間違いなくロキだ。
自由にこちらに行き来できるのは知っていたが、来てしまったか。
「ライオン仮面だかなんだか知りませんが、わたくしに逆らおうとはいい度胸ですね」
「MOーー!イケメン死すべし!!」
「君たちには王の光を味わってもらおう」
この後ロキにコテンパンにされたのは言うまでもない。