モテない軍師の非日常   作:虎武士

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モテない軍師と始まり

 ロウside

 

 カムイ王子の護衛に鎧を着た初老の男────ギュンターの爺さんとメイド服の少女────フェリシアが付き、戦闘を開始した。

 

 二人から戦闘での説明を受けつつカムイ王子は王族に与えられし力────竜脈を発動させる。

 

 竜脈とは竜の血を受け継ぎし者────つまり王族だけが使える力で、戦場では様々な力となるっぽい。

 

 ちなみに今回は体力を回復する為の床を顕現させた、その光景にリンカちゃんを含めた白夜兵が目を見開いた。

 

「炎の部族の力…思い知れ!」

 

 リンカちゃんは助走を付けて跳び、フェリシアに向けて棍棒を振り下ろした。

 

 驚いたフェリシアは転けてしまったが、幸い彼女の奇襲から逃れた。

 

 フェリシアは暗夜王国の氷の部族の村の出身、氷では流石に分が悪いと判断したのか爺さんが彼女の相手を務める事に。

 

 一方カムイ王子は白夜の忍び────確かスズカゼと名乗った其奴と攻防を繰り広げている。

 

 そう言えばさっきカムイ王子の名を聞いて一瞬驚いてたけど、俺の脳内に一つの可能性を考えた。

 

 だがそれは敢えて言わずに心の中に閉まっておく、そして懸命に戦うカムイ王子を心配する声が耳に入ってくる。

 

「カムイ様…大丈夫かしら」

 

 頭巾を被った少女────厩舎係のリリスちゃんである、つーかメイドとかリリスちゃんとか…カムイ王子に天は二物を与え過ぎだろ! 

 

 あのスズカゼってのも俺より顔が整ってイケメンだし、あんな顔だから色んな女の子にモテモテなんだろうな! 

 

 マークス王子もレオン王子にも似たような話がチラホラ聞こえるし、何で俺には女の子が寄り付かないんだよ!! 

 

 ────なんて自問自答していると、白夜兵はカムイ王子の持つ魔剣の力に圧倒されて地面に突っ伏していた。

 

 彼等の腕前をカムイ王子が讃えていると、あの国王(老害)が横槍を入れてきた。

 

「カムイ…何をしている。早く止めを刺さぬか」

 

「父上…? この者達は既に戦えません」

 

 それは愚かな行為だと言うのにこの国王(老害)はカムイ王子にそれを強要する。

 

 王子は頑なに拒むが奴は聞き入れようとしない、つーか自分の邪魔する奴は全員殺すって考えだし。

 

 やばいと思った俺は魔導書を開いて、放たれた雷で白夜兵を吹っ飛ばす。

 

「ガロン王様が直接手を下すまでもありません」

 

 その意図に気付いたのか、レオン王子も魔導書────暗夜に伝わる神器・ブリュンヒルデでリンカちゃんとスズカゼを吹っ飛ばす。

 

「父上…不出来な兄に代わりに僕とロウが止めを」

 

「ですから王よ、心をお静め下さい」

 

「…もういい、追って沙汰を下す」

 

 興が冷めたのか、ガロンはその場を去っていった。

 

 その後レオン王子共々カムイ王子に責められたが、レオン王子に言い包められてカムイ王子も気付いた。

 

 マークス王子の指示によってリンカちゃん達を彼の居館へ運ばれる事に、その際カムイ王子に優しさが仇になる…と忠告していた。

 

 取り敢えず先程の攻撃はあの国王(老害)を悟られない為、威力を弱めておいた。

 

 意識が戻ったリンカちゃん達を見送り、リンカちゃんに至ってはカムイ王子に皮肉を言っていた。

 

 そんなツンデレ発言も良かったのでアプローチをかけたんだが、今度はグーで殴られた。

 

 

 

 

 それから暫く日が経過して、カムイ王子はエリーゼ王女を同伴する形で国王(老害)に謝罪しに王室へ向かった。

 

 しかも無限峡谷の白夜領偵察任務と言うありがたくないおまけつきで戻ってきた。

 

 カムイ王子の任務には爺さんやフェリシアも同伴する、王子に対して若干…いやかなりの過保護なカミラ王女は心配そうな表情をしている。

 

 エリーゼ王女とレオン王子が戯れている傍らで暴走しそうな彼女、其処にあのマクベス(下衆軍師)がやってくる。

 

 此奴曰くこの任務はカムイ王子の為の試練で王子に国を治められる素質があるのかどうか試すらしい、他人が手助けをしたとしたらおじゃんになる。

 

 確かにその通りだが、此奴の言葉は全く信用ならねーし胡散くせぇ。

 

 早速カムイ王子は行こうとしたが、国王(老害)がそれを止める。

 

「…この者を連れて行け」

 

 その言葉と共に現れたのは筋肉質なガタイのハゲ男、如何にも悪そうな面構えだ。

 

「この男はガンズと言う…見ての通り王国きっての怪力の持ち主よ」

 

 名前だけなら聞いた事がある。

 

 確か略奪や殺戮を幾度となく繰り返し、最近まで投獄されていたとか。

 

 いやーな予感がしてきた。

 

 

 

 

 カムイ王子達が出発してどれくらい時が経っただろうか、俺は自室で女子達の写真が載っている愛読書を捲っている。

 

 むさい野郎共に囲まれるより、俺は可愛い娘達とハーレム作る方が何倍もいいわい!! 

 

 なんて虚しい事を言いつつ、俺は鼻息を荒くしながら眺めていると────

 

「ローウ!」

 

 この国の末姫が乱暴に扉を開けて現れた。

 

 同時に俺は愛読書を手早く机の引き出しの中に戻して、色紙を羽根ペンで書く姿勢になる。

 

 …我ながら完璧な動作だ。

 

「エリーゼ王女…自分に御用があるのでしたら、ノックをしてもらえたら嬉しいのですがね」

 

「ねぇロウ! カムイおにいちゃん、帰ってきている!?」

 

 幼い王女がそれをはぐらかし、兄王子の事を聞いてきた。

 

「…? いえ、カムイ王子は此方にいらしておりませんが」

 

 もし帰ってきたのならばとっくに噂も流れるし、馬音も聞こえる筈だ。

 

 それなのに馬音どころか鳴き声すら聞こえない…つまり。

 

「えぇ!? それじゃあ…おにいちゃん…」

 

 あー…なんだか面倒な事になったよ。

 

 同時にこの出来事は世界の運命を揺るがす事件の、第一歩に過ぎなかったそうだ。

 

 続

 


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