ケルトに憧れた彼の話   作:里芋(夏)

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入学前の宿題容赦無さ杉ィ!

あ、明後日から3/28まで旅行に行きます(書かないとは言っていない)


ケルトに憧れた彼の解説

「…こいつが、その【獣眼】クエストのおっさん。因みに報酬は、経験値と金とSTR(筋力値ブースト)ポーション1個。【獣眼】のドロップ率が死んでることもあって序盤でSTRポーションを持ってる奴は全然いねーから、相場から6〜7割乗っけても買い手がつくぜ」

 

 

【獣眼】のおっさんと呼ばれたCPUは、真正面に立ったクセに二人で会話をするプレイヤーに困り顔。

 

まぁ、分かりやすくするためにカーソル合わせようと思うと自然にこうなっちゃうんだから、仕方ないよな。

 

 

 

 

…うん、非常に申し訳ない。

 

 

「ふぅん。…で、その相場はどのくらいなの?」

 

β版(ベータテスト)CPUの初期売値は確か1000コルジャストだったはずだ」

 

 

確か最初に出てきたのは、十…三か四階層だったような気がする。

 

 

「ってことは、1700円…じゃなかった、1700コル。普通の(HPリジェネ)ポーションにして17個。…うーん、STRポーションがどのくらい使えるのかわかんないから何とも言えないなぁ」

 

 

「…まぁボス戦くらいでしか使い道無いし、上に行けばNPCのショップでも売ってるし、効果自体も然程良くないからちょっと経てばズドンと下落すると思うぜ?あ、でも飲んだら出る赤いライトエフェクトがカッコいいんだよなぁ」

 

 

トラ○ザム!とか言いたくなるんだよ、無性に。

 

 

 

「……そう言えば、今更だけどどうやって売ったらいいの?スーパーのセールみたいに声張るの?」

 

それはそれで面白そうかも、と笑うストレア。

 

 

「あー、街中で忙しなく駆け回ってる奴に声をかけて、『これで一儲けしてみないか?』って言えばいい。もしかしたらもうちょっとボれるかも知れない。ああ、出来れば相手は男だ。お前、ルックスは良いし」

 

 

ついでにお茶にでも誘って、リアルでこの顔だって教えれば獲ったも同然だろーよ、と付け足す。

 

 

 

半眼で俺を睨めつける視線。

 

 

「…『ルックスは』って限定したところを深く問い詰めたいんだけど…まぁいいや。

…で、なんでその条件なの?」

 

ストレアの問いをガン無視して周りの露天の食い物を吟味する俺から、答える気が無い雰囲気を感じ取ってか、真面目に軌道修正したストレア。

 

 

「…絶対とは言えないが、そいつらは情報屋(・・・)商人志望(・・・・)だ」

 

 

 

 

「………なるほど。情報屋だったら、入手するのに必要なクエストの情報を引き出すのに金を乗っけてくれるってわけかぁ。商人だったらそれ以上の値段で売る自信があるから…ってとこかな?」

 

 

…こいつ、考えなしに見えるが実は理詰めタイプなのか。

意外…いや、わざとそう思わせないように行動している?

 

 

「…理解が早くて何よりだ。

…まぁ、フィールドマップで豚と戯れてるバカ(おのぼりさん)に効果を脚色して売るのも一つの手だとは思……うん?」

 

 

そこまで言った俺にストレアから向けられた侮蔑の視線。

 

 

 

 

「…端的に言ってクズの所業だよね、それ」

 

 

ストレア の ぜったいれいど !

こうか は ばつぐんだ !

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーとまぁ、これで一通り説明は終いってワケだ」

 

 

街中を周り、MMORPGをやる上で必要であろう知識を大体教え終えた頃には、陽は傾き、街は仄暗い赤に覆われていた。

 

 

 

 

「ありがとケルト!すごい助かったよ!」

 

直後、胸板に当たる女子特有の感触。デカい。

 

 

 

…って、

 

「おい、バカ!」

 

 

ストレアを無理矢理引き剥がし周りに目を向けると、視線が此方に集中しているのを感じる。

 

プレイヤーの嫉妬の視線よりCPUの微笑ましいモノを見る目の方が心に突き刺さる。

 

ヤメロォ!

 

 

「アハハ〜ごめんごめん…って、もうこんな時間!?ヤバッ、急いでログアウトしな(出な)きゃ!」

 

 

「…おー、じゃあなストレア」

 

 

 

 

さて、俺も俺でレベリング作業に戻りますかね…

 

右の踵を基点にクルッとターンし、さぁ待ってろよ豚共と意気込んだところで背後から聞こえた声。

 

 

 

「…ねぇ、ケルト」

 

「んあ?」

 

首だけ回してストレアを視界に収める。

 

 

「さっき、ログアウトボタンはメニューバーの一番下…って言ってたよね?」

 

ストレア(自由人)には似つかわしく無い、深刻な表情。

 

 

 

 

「…まさか、ログアウトボタンが無い〜、とかいう冗談抜かすなよ?」

 

 

その言葉に帰ってきたのは無言の肯定。

 

 

 

 

 

「…おいおい、マジか…!」

 

急ぎ自分のメニューを開いて最下部までスライドするも、突きつけられたのは現行ログアウト不可という現実(非現実)

 

 

 

普通、VR系列の(人体に干渉し得る)ゲームのログインバグやログアウトバグなんて、1番最初且つ1番多く確認する項目じゃ無いのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

…おいおいまさか、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー故意、だってのか…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メニューを閉じ、ストレアと目を合わせた瞬間、リンゴーン、リンゴーンという鐘の音が鳴り響いた。

 

 

まるで警鐘染みた音。

出処は…はじまりの街のど真ん中、っつーと…中央広場か?

 

 

瞬時に俺とストレア…いや、プレイヤー全員の身体が鮮やかな蒼の光に包みこまれた。

 

 

「ッ!強制転移か!」

 

 

直後、街から一切の声が(CPUの声すらも)消え、

 

 

 

プレイヤーは一堂に会すこととなった。

 

 

 


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