ボブの聖杯戦争 ~F/sn Unlimited Lost Works~ 作:黒兎可
剣「0レンジ、カリバー!」
「――――アゾット剣……?」
自分の胸にささったそれを。炸裂したそれを、不思議そうに見る言峰。
遠くに焦点が合っているようなその様子。セイバーの鞘で聖杯の泥を退かせ、走り。遠坂から預かったアゾット剣を突き刺し、炸裂させ。
セイバーもぎりぎりなのか、今、不思議と投影できるイメージがわかない。泥のせいもあるかもしれないが、かなり精神力も、体力も持って行かれた。
言峰は、俺に問う。
「どこで、拾った?」
「拾ったんじゃない。預かったんだ。遠坂から」
「――――――」
深く息をつき、ぐらりと、対峙してから一歩も動かなかった身体が、傾いた。
「そうか。思えば、これは因縁のある凛に手渡したのだったな。あれはたしか十年前か。
気丈に振舞う顔も悪くはなかったが――――なるほど、懐かしい。回顧する程度には、私も、衰えたか」
ぐらりと倒れた神父は。しかしその表情はどこか晴れやかで。まるで門出を祝う、普通の神父のような納得がある表情をしていた。
倒れたまま、そのまま、泥の内に沈む身体。
「……」
結局、この男のことは最後まで理解できなかったけど。それでも、お前のことは忘れない。求めるものこそ違ったが、俺に少し似た、がらんどうな中身を持った男を。
倒すべき敵がいなくなったことで、いよいよ残るは、あの虚。頭上にあいた黒い孔。
あふれ出る泥こそ止まったものの、空洞自体は閉じる気配なく胎動し続ける。
「――――って、イリヤ!?」
ぐらり、と落ちるイリヤを抱きとめ、ボロボロになったジャージを着せて寝かせる。とりあえず命に別状はなさそうでほっとするけど……。それは、家に帰ってから考えよう。大丈夫、遠坂が看ればきっと目を覚ます。
境内の威圧感も消えた。最後に見たのは生命の奔流の光。令呪越しに感じるセイバーに、この戦いの勝利を確信する。
もう誰も、こんな馬鹿げたことのために争う事はない。
舞台が終わった以上、あとは役者が身を引くばかり。
聖杯戦争が終結すれば、サーヴァントは姿を消す。
別れは済んでいる。なら、後は幕を引くのみ。
夢は覚めるのだ――たとえ、どれほど覚めたくない、美しい夢であっても。
黒い孔を見上げる。膨大な怨嗟と共に、何か、俺に語りかけてきたようなその孔に。ことこの場において、恨んでるとか、憎んでいるとか、そういう感情は沸かなかった。ただそれでも――――これを壊すことだけは、決めている。そう、俺達は誓ったのだから――――。
そして、彼女はやってきた。座っていた俺を見下ろすように。出会った時と何もかわりない、まっすぐな、美しい姿で。鎧こそなくなっているものの、沈みかけている月を背に。
何も言わず差し出される手をとり、立ち上がる。ほんの目と鼻の先に、彼女の顔があった。
それでも、俺達は言葉を交さない。もう交す必要はない。
やるべきことは、もう、一つだけ。
――――聖杯を破壊する。
「――――
驚いた顔をするセイバー。一瞬その顔が、認識が揺らいだが、それでも俺はあえて手にする。黄金の剣――――彼女を選んだ、その剣を。
「言ったろ。一緒に戦うって」
「――――――はい」
共に一歩、一歩、前進。
やがて間合いに入ったのか足を止め、セイバーが俺の手に自分の手を重ねる。ともに腰のあたりに振り被るように構える。
聖杯を破壊すればセイバーは消える。いや、自らの意思で聖杯を求めないならば、セイバーはそもそもサーヴァントになることはない。自らの意思で世界との契約を断つということは、彼女は永遠に、遠い春の楽園で、夢を見る事になるはずだ。
「――――命令を。マスター。貴方の声で聞かせて欲しい」
自らの意思で契約した以上、セイバーは自分の意思では聖杯を破壊できない。だからこそ、最後の命呪を使えと言う。ことこんな構えた体勢になってまで、ここに残ってくれ、と。心のどこかが、その未練を叫ぶ。
だけど、それは、死んでもできない。
どれほど報われずとも、生涯、理想を守り通した――――それを美しいと感じ、守りたいと願ったこの身は。
自らの意思で、ふたたび眠りに着くと決めたその意思を、台無しにすることは出来ない。その誇りを、一時の
「――――セイバー。責務を――俺達の願いを、果たそう」
――――溢れる光。
セイバーが主体的に振り抜いたそれは、切り上げるように空を焼き、跡形もなく孔の存在を消し飛ばした。
あれほど酷く変色した池も、いつの間にか普段通り。寺もいくらか消し飛んだところはあるだろうけど、ここほど酷くはないはずだ。なにせこの山頂だけ、一部分完全に荒野となってしまったのだから。
その光の跡の隙間から、日が昇る――――地平線に指す輝きが、ユメの終わりを告げるように。
黄金の剣が、示し合わせたように形を消す。
――――終わったのか、と彼女は言う。
――――もう何も残っていない、と俺は返す。
――――約束を果たせてよかった、と彼女は笑う。
――――よくやってくれた、と俺は笑う。
言葉が途切れ、彼女は俺から数歩離れる。
――――最後に一つだけ、と彼女は堪える。
――――どんなことだ、と俺は強がる。
「――――貴方を、愛している」
俺の名を呼び。振り返って、全く後悔なんてないような声で。
それだけ言い残して。一瞬の風と共に、あっけなく。一面の荒野だけを残して彼女は消えた。
きっとこうなんじゃないかと、どこかで思っていた。出会いが唐突であったのなら、きっと別れだって一瞬だと。
何を呟いたか――――その呟きに、後悔を抱いてはいけない。失くしたもの、残ったものを胸に抱き、その荒野に一歩、踏み出す。
この光景を忘れぬよう。黄金に輝く、彼女が駆け抜けた草原に似たこの光を。
※
「――――」
暗かった土蔵に差し込む光。扉を開けて声をかけたのは、桜だった。
「おはようございます、先輩。そろそろ時間ですよ?」
いつもより三十分早く起きた、という彼女の証言を聞いて、はたと気付いた。藤ねえが監督するという名目のもと、イリヤと藤ねえと桜と、四人で寝起きするようになったこの家だけど。圧倒的に藤ねえに問題があるのは間違いなく、俺は叩き起こすために走る。
昨夜遅くまで作業していたんで、
「ちょっとサクラ! 今日はわたしがシロウ起こすって言ったじゃない!
それにそもそも、貴女、あんまり無茶すると――――」
十分で戻ると言い残して走ると、イリヤと遭遇。
何故か怒りながらサクラに文句を言いに土蔵に向かうイリヤだが、こういう光景はそう珍しくない。
リズとセラ(イリヤのメイドたち)からタイガー共々、イリヤをしばらく頼むと言われた。国に帰らないと言い出したのが根本的な理由だが、何より城の改修工事が終わっていない。バーサーカーとアーチャーが戦って、アーチャーと俺が戦って、アーチャーとギルガメッシュが戦って……、そんなこんなロクな目に合わなかったせいか、ちょっと、地盤の方から調整が必要になってしまったらしい。
その間、ホテル暮らしで篭りっぱなしなんていやー! と叫んだイリヤだった。
「くれぐれも、くれぐれもお頼み申し上げます。
いえしかし藤村様はともかく、衛宮様になど何故わたしが頭を下げねば……(ブツブツ)」
「セラ、わがまま、よくない」
「な――――――元はと言えばリーゼリット! 貴女が味方をしないから、私が孤軍奮闘することになって――――」
……まぁ、メイドさんの方はメイドさんの方で色々あるらしく、イリヤがいるせいか時々家に来て、料理を振舞って自慢げな顔をしたり、桜にあっと驚かされたりといったことはあるにせよ。
城が戻るまでの間は、扱いは藤村組預かり。少々イリヤが押しているようだけど、相性は悪くないみたいだ。
それは桜に対してもと言える。ちなみになんで桜が我が家で居候してるかといえば、ちょっと驚くべきことにシンジの働きかけだった。
「なんか爺さんが妙なことを企んでるみたいだし、しばらく衛宮のところで預かって貰えよ。爺さんも、別に文句は言わないみたいだし」
「兄さん……」
「大丈夫だよ。何かあっても爺さんは僕には興味ないし。これを機に、僕も何か、真面目に進路とか考えようかなって」
聖杯戦争終了後。退院したシンジとはまた話すようになった。それは以前のようにとは、まだ完璧にはいかないが。でも、それでも少し、卑屈さみたいなものが抜けたように感じることはある。
ちなみに退院といえば美綴もちょっと前に暴漢に襲われていたらしいが、何故かアレ以来、メガネをかけた背の高い、長髪の女性を見るとびくり、とするようになっていた。なんだろう、ちょっと意味が分からない。
しかし、藤ねえを叩き起こして居間に向かった先。やっぱり力関係はイリヤの方が上みたいだ。
「うぅ、なんでさぁ。臨時ボーナスあげたのに、どうして起こしてくれなかったのさぁ……」
「当然よ。タイガを待ってたらわたしまで遅れる、ちゃんと起こそうとするとタイガより『あっち』の方が先に起きちゃうし。そもそも日本から離れない理由の一つに、それもあるんだしね」
「なんの話?」
「こっちの話。わたしのことよりも、タイガはライガに貸してもらったお金の返済を考える事ね。給料日、五日前なんでしょ?」
「お、お爺様ぁ!?」
その歳になってまだ御爺さんからこづかい貰ってるという事実は置いて置いて。ことタイガーに向けるイリヤの悪魔っ子っぷりは、どこかの誰かさんを彷彿とさせるものがあった。
一足先に出た桜に続いて、俺と藤ねえも出る。
驚くべきコトに、俺たちが聖杯戦争をしている最中で勉強して、先月、免許をとった藤ねえがスクーターに乗り走る。遅刻が革命的に減った事実から、一部でロケットダイバーとかロケットタイガーとか、そんな別名が追加されたのを本人は知らない。
あれから二ヶ月。
変化は意外と些細で……、いや、明らかに些細じゃないこともあるけれど、それを除けばさほど変わらず。
少し成長はしたつもりだけど、それでも見違えるような自分になったわけじゃない。流石に
「――――おはよう士郎。奇遇ね、朝から顔を合わせるって」
「おっす。今日は晴れてよかったよな、遠坂。桜もさいてるし。
去年なんてアレだったし」
「あー、割とここ近年って気候がヘンだしね。地球寒冷化?」
「温暖化な。それ、ちょっと情報古いぞ遠坂」
「う、うるさいわね、学校の図書室で調べた程度の情報しか知らないわよ!」
と、ここ最近よくニアミスする遠坂が手を挙げる。今まで頻繁に出くわすことがなかった分、奇遇という言い回しには違和感があるような、ないような。
「出くわすって、貴方ね……」
「何、妙なことを言ったつもりはないさ」
「それ、アーチャーみたいだから止めてくれる? 言い方から嗤いかたまでそっくり」
「え゛? あ、いや、そんなつもりは……。でも、俺と遠坂の家って反対方向くらいだろ? だったら遭遇するには、同じくらいのタイミングで家を出る必要があるじゃないか。
そう考えると、遠坂の登校時間が変わったと考えるのが妥当というか……。大丈夫か?
下手に朝弱いところを不特定多数になんてみられたら、オレサマ、オマエラ、ミナゴロシくらいするだろ」
「し、しないわよそんなの!
まったく、人の起床時間なんてどうでもいいでしょ、どうでも。あんまりナマイキ言ってると、面倒見てあげないわよ?」
「すみません、それはご勘弁を……」
と、このように我が師匠は色々とアレである。
聖杯戦争が終わった後、どういう風の吹き回しか遠坂が俺の魔術を見てくれることになった。藤ねえも家に泊まるようになった関係で、時々、遠坂の家に出向いてという条件は着くが。
でもまぁ、大体その時は桜も一緒に行くので、結構ほほえましかったり何だり。
歩きながらそんな会話を交わしている。今の所、人だかりは見えない。以前、一成が臨時で引っ越した際に送りつけられたらしい写メール(なお遠坂は、自力でデータフォルダを探すことさえできなかった)の話題とかをしながら。
眼下の町並は、すっかり春の趣に変わっていた。
「なに、そんなにバイト入れてるの? 私のところに来る時間も含めて、休む暇ないじゃない」
「え? いや、今週は休みもらってる。
弓道部の新人歓迎会をやるっていうから、シンジに誘われた。せっかくだから、イリヤも連れて遊びに行こうかと」
「中々すごい度胸よね、貴方……。平気な顔してイリヤを連れて行く辺り、大物だわ」
「なんかまずいか? イリヤも喜ぶと思うんだけど」
「そりゃ暇つぶしにはなるでしょうけど、セイバーを連れて行ったときよりまずいと言えばまずいでしょ。
……そういうことなら、私もフォローに行くわ。慎二には悪いけど」
「それはありがたい」
と、遠坂は唐突に。
「そういえば、士郎は弓やらないの? せっかく行くんだし」
「その言い回しは、美綴あたりから何か聞いてるか?」
「あと桜と藤村先生。せっかく上手いのに全然やらないんだーって言ってたから」
なんという包囲網。いや、この俺が知ってる範囲に俺を知ってる身内が多いというだけの話なのだけれど。
でも――――いや。そういえば、そんな話をしていたっけか。
「……そうだな。じゃあ、今度は久々に、やってみようかと思う」
「今度?」
「嗚呼。『今度は』、な」
「ふぅん……。じゃ、ちょっと期待しておいてあげる」
「――――けど、ちょっと意外だったな」
不意に、そんなことを切り出す遠坂。
何がだと問い返すと、口元を押さえて。
「……うん。正直、士郎はもうちょっと落ち込むって思ってた。
しばらく立ち直れないだろうなって思ってたのよ」
流石にそこまで言われれば、何を、誰を、指した言葉なのかはわかる。
「アーチャーのことがあって、大分ダメージを受けていたときにアレだったでしょ? その後のことなんて何も考えられないってくらい、猪突猛進だったけど。
でも、それでも翌日には案外ケロっとしてたでしょ? その時に、こいつ大丈夫かなーって思ってたのよ」
「なんでさ?」
「こう、何て言ったらいいのかしら。次の日、買い物に出かけたりするときにあっさり事故に巻き込まれて死んじゃうようなっていうか。友達の結婚式に向かったら、突然誰かに刺されて死んじゃうような、そんな雰囲気だった」
「なんだそりゃ。なんで平気なのに、あっさり死ぬんだよ」
「そういうこともあるの。人間、一生涯の目標があっさり叶っちゃうと、ぽっくり逝っちゃうこともあるのよ。
心を満足とか充足感が占めてるときに、赤信号なのに車が突っ込んできたり、自分で刑務所に送った犯人が脱走して目の前に現れたりするんだから」
「……すまん、例えが難解すぎる。大往生?」
「ニュアンスは近いかもね。短くとも、後腐れがないんだから。
だから逆に心配だったっていうか……。むしろ派手に落ち込んでくれていた方が、安心できたっていうかね」
だったら、そんなに落ち込んでいたら慰めてくれたのだろうか。
「そりゃ、士郎にならするわよ。でもその前に、背中に蹴り入れて先にしゃきっとさせるけど」
どうやら、どうあがいても遠坂は遠坂であるらしい。
でも、というか、アレ? 何か今、とんでもない発言を聞いてしまったような気が……。
「じゃあ、もう未練はないんだ。セイバーがいなくなっても」
空を見上げた遠坂の呟きに、俺は少しだけ苦笑い。
「……全くないって言ったら、嘘になるかもしれない。
でも、セイバーを送り出したことに関して、後悔はない」
強がってるわけじゃない。自分が幸福にならなければと言われた以上、俺は、俺自身が未練に思っているかというところについて、もう正確に把握は出来ない。
でも、あの時の選択は、間違っているはずはない。それだけは――――唯一、正しいことなのだから。
だったら、そこに未練はない。
俺と、あいつとの間で。あの時、あの最後までに、すべてがあったのだから。
だから、今でもあいつの部屋だった隣の部屋に、デートの時に買ったライオンは飾ったまま。もう少しだけ、その残滓を残しておきたい。
きっと、彼女を夢に見ることだけはこの先もずっと。
いつか記憶が薄れて、何もかもを忘れてしまっても。それでも――――この想いだけは、ずっと覚えているはずだ。
俺の言葉をきいて、なんでか楽しそうに笑う遠坂。足早に坂を駆け上がり、早くしろなんて言う。
見上げる空は、遠く、青く。
こんなにも近いのに、手を伸ばしても届かない。
それでも、掴むことができなくても、胸に残ったものがあるはず。
いつか消えゆく面影であったとしても、同じ時、同じものを見上げたのだから――――きっと、遠く離れたとしても、そのつながりだけは信じられる。
――――だから、今は走り続けよう。
踏みしめるこの足跡が、いつか、何かの答えに至ると信じて。
※
戦いは終わった。
「あら、久しぶりーセイバー」
……?
「って、え?」
呆然と、彼女は思わずそんな声を上げてしまった。
視界に映る光景がまず異常だ。元来、カムランの丘で力尽きるべきこの身。だが実態はどうだ。何だろうこの、己のマスターが学校を更に古くしたような構成の部屋は。
そこで何でこう、机を挟んで「彼女」と対面しているのか。
というか、壁にかかった「外道」と書かれた額縁はいったい……。
「…………アイリスフィール?」
「どうもー。ここではアイリ師匠って呼んでね?」
「あ、え、え?
何をふざけているのです、アイリスフィール。それ以前に、何故貴女が。というよりも、そもそもここは何処で――――」
「――――
「アーチャー?」
現れた男に、セイバーはますます困惑する。
己よりも前に脱落したこのこの男が、何故、このわけのわからない場に現れるのか。いや、しかしこの教室風の部屋の中においても、果たして何故ここまで違和感を感じる風体なのか。
「俺だけじゃないぞ。『何人か』残ってる。……かの魔女のように自力で脱走したのもいれば、どこぞの趣味の悪い王様のように問答無用で取り込まれたのもいるがな。
元より規格が大きすぎることもあったが、さすがはアイリ師匠というところか。『ここにおいて』はほぼ無敵だな」
「それは、どういう――――」
「ホントよねー。
唯一希望を持てたメディアさんはギルガメッシュのせいで逃げちゃうし、こっちのシロウくんが唯一の希望というか」
がた、と。セイバーは椅子から立ち上がり、距離を取る。
不可視の剣を呼び出し、構える。己の見知った彼女でありながら、己の見知った彼女では絶対にしないだろう笑みを浮かべる彼女に。
「アイリスフィール、貴女は……、いえ、『おまえは何だ』?」
「だから、『もう一度入れ直す』みたい。
――――貴女は高潔な騎士だったけど、その満足では、
気が付けば、セイバーの足元にはどこかで見た黒い――――これは、聖杯の虚のそれか。いや、それとも「桜が自分たちを、教会から逃がす際に使った」ナニカか。
――――俺のような「反転」を召喚する聖杯なんぞ、絶対にまともな代物ではない。勝ち残ったところで、間違っても願ってはくれるなよ。
最初に出会ったころ。バッドニュースだと、そう言ったアーチャーの言葉が脳裏を過ぎるセイバー。
「完璧な世界じゃないらしいけれど――――『私は、かく望まれし』存在だから。
でも、イリヤが来なかったことは嬉しいわね。ティーちゃん、ちゃんとやってくれたのかしら」
そしてそれ以上に恐ろしかったのは、その影が、アイリスフィールの足元から伸びていること――――。
この影の、よくないものの感覚は、以前、どこかで。
例えば、あの燃え盛る街――――――――。
「く――――!? では、これは……」
「ごめんなさい、セイバー。キリツグもシロウくんも、その選択は正しかったけど――――今回は、別な誰かの方が上手だったようね」
薄れていく意識の中で、事実に気付いたものの。いかに嫌悪すれど、脱出するために魔力を振り絞ろうとしても、もはやこの手に力を成す事は出来ない。
契約は切れた。自分と彼とは――別れは既に済んでいるのだ。
「――――シロ、ウ」
胸のうちに抱えていた我侭を振り払い、なお自分の背を押して、送り出してくれた彼に。最愛のかのマスターに懺悔をしながら、やがて――――望む英霊のカタチが変わり。
「……見るに耐えんな」
瞳は
BAD END
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タイガ「…………」
イリヤ「…………」
タイガ「…………はっ、げ、幻術か!? ってこれ、一体どーゆーことなの弟子1号!」
イリヤ「お、押忍。師匠。どうも、フラグの立て方をちょっと間違えたみたいです。リンの」
タイガ「ってそっちかよ!」
イリヤ「そもそもリンのアーチャーが、どうしてこんな変なことになっているかっていうのが、そもそもの問題っていうか・・・。最初の時点で異変に気付いていれば問題はなかったはずなんだけれど」
タイガ「んー、まぁ確かに、デトロイトでラップ一本に搾って、ブッディズム被れなボブ感は漂ってるけど、別に遠坂さん、シロウがディスコで踊り狂ってる写真とかを触媒には使っていないわよね」
イリヤ「そんなもの使っても、せいぜいどっかの映画監督が物好きで出てくるか来ないかってくらいじゃないかしら。知らないけど・・・。っていうか、シロウ、そういうことやるの?」
タイガ「ともかく! えーっと、一応救済用Q&Aだし、アドバイスらしいアドバイスを考えないといけないのかしら」
イリヤ「考えるまでもないでしょ。シロウたちは生きてるんだから。例えセイバーたちがどうなったとしても、未来を作っていくのは今を生きる者の特権なんでしょ?」
タイガ「それはそうなんだけど、なんというか釈然としないというか、私の師匠が結局未だあのままなのかなーっていうか・・・」
イリヤ「まぁ、お母様でなくなったら次はシロウだろうし、痛し痒しね」
タイガ「ん、なんでシロウ?」
イリヤ「それじゃあ、また次の道場で~」
タイガ「あ、ちょっと弟子1号? なんか見覚えがあるような、ないような、なんとも言えないネコっぽいのが入ってきたんだけど」
イリヤ「押忍! あれは、Fateルート第2回の道場で追い払ったナマモノであります!」
ナマモノ「仕事しろジャガー!」
タイガ(?)「語尾はちゃんと守るんだニャアアアアア!」
※次回も普通に続きます