ボブの聖杯戦争 ~F/sn Unlimited Lost Works~   作:黒兎可

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虎『これは何です?』
?『極小虎聖杯』
虎『ごくしょうと・・・、 Could you mind repeating that?』
?『困ったときにこれを使うのニャ。そうすると・・・』
虎『そうするとどうなるんです?』
?『――――ャッニャッニャッニャッニャッニャッニャッニャ――――。
  心配するコトはニャい』


麻婆豆腐を食べYo! その3

 

 

 

 

 

 教会を立ち去りながら、遠坂、セイバーと今後のことについて話す。むろん、桜についてだ。

 

「治療に関しては、言峰を信頼するしかないし。それに……、今更、俺がどんな顔をすればいいってんだ」

「シロウ……」

「俺は、桜の傍にずっと居たんだ。なのに何も気付いてやれなかった。

 なら今、そんな俺が出来る事っていったら、桜を受け入れてやれるコトくらいだろ。だから、桜が帰ってこられるように、万全の状態にするんだ」

「ふぅん。つまり、衛宮くんの聖杯戦争のご褒美ってところじゃない?」

 

 そんな風に、楽しげに言う遠坂。

 

「聖杯戦争が終われば、桜が帰ってこれる。桜が貴方の日常だっていうなら、日常に帰る為に戦うってコトにならない?」

「……日常に帰るっていうのは、ちょっと違うと思うぞ? 遠坂。

 だって、もう桜は魔術師だって隠さなくていいんだ。お前だってもう、そういったしきたりがどうのこうの、言ってるどころじゃなくなってるだろ」

「そ、それは……」

 

 珍しく困惑する遠坂に、してやったりと笑みを浮かべる。が、それで逆襲に遭わないとは思わなかったのが俺の運のつき。このあかいあくまは、一歩上手を行く。

 

「ふぅん……。

 じゃあ、つまり、衛宮くんは私にも、毎日家に来て欲しいってことなんだー」

「――――!? は、はぁ!?

 な、なんでそうなる、お前」

「そりゃそうでしょ。学校でだってあんまり顔を合わせられないんだし、そうなったらプライベートな時間を使うしかないでしょ?

 だったら、桜が貴方の家に行く以上は、出入りしなきゃいけないじゃない」

「う……、それは……」

「じゃ、手始めに私も侵りゃ……、もとい、準備を開始しますか」

「おい、今、何て言いかけた」

 

 いや、それ以上に遠坂が常習的に、俺の家に入り浸る事になるというのに抵抗感があるのだが……。

 とか思っているうちに、俺の家。とくに何もなく「鍵開けて?」と待機する遠坂に、もう何も言うまい。

 

「じゃ、今日は私が作るわ?」

「は? 作るって……」

「衛宮くん、確か中華料理苦手なのよね。セイバーも?」

「いえ。美味しいものならこだわりはありませんが……、あの麻婆豆腐はいただけない」

 

 と。ものすごく、苦渋の選択を迫られたみたいな顔になるセイバー。

 

「セイバー、あれ、もしかして……」

「はい。大河にもらったお金で、少々」

「何の予備知識もなくあれって、冒険したわね、貴女……。

 でも、大丈夫。桜から聞いてるわよ? 衛宮くん中華料理に苦手意識あるって。ふっふーん?」

 

 にやり、と笑う遠坂は、そのままキッチンに入る。手伝うと言うと「待ってなさい、士郎は」と当然のように返された。

 

「三日連続で死に片足突っ込むんだから、少しくらい気を抜きなさい。それに」

「それに?」

「それは、後のお楽しみ、と……。じゃ、簡単なのからいくわよ」

 

 こたつに返されてしまった俺を見て、セイバーがほほえましそうに笑う。

 

「なんだよ」

「いえ、なんでも。

 それでは、私からも一つ」

「?」

「いいかげん、シロウは無茶をしすぎです。なのでペナルティを負ってもらいます」

「……そういえば、そんな話もしたっけ。で、何をすればいいんだ?」

 

 セイバーは真剣な顔で、こう言った。

 

「――――今日は土蔵へ抜け出さず、きちんと布団で就寝してください」

 

 ペナルティ、といいながらのこの言葉。明らかに俺を気遣ったそれに、流石に否とは言えなかった。それでもシンジを探さなくてはと、頭は眠りを拒否するだろうが。

 

 

 なお、遠坂のチャーハンと麻婆豆腐は、悔しいくらいに美味かった。

 胡椒と山椒を使い、あの灼熱のような赤さが抜けるだけで、中華料理の可能性を垣間見た気がした。

 

 

 

 

 

   ※

 

 

 

 

 

 体を起こしてふとんをたたむと、セイバーが隣の部屋からこちらに入ってきた。

 丁度、びしり、と左肩に亀裂(ひび)でも入ったような痛みが走ったタイミング。

 

「おはようございます。シロウ――――、シロウ?」

「あ、おはよセイバー。

 ……さすがにまだ治りきってはいないみたいだ」

 

 昨日のそれは、一昨日とかに比べてもっと大きく、殻の内外を損傷するものだった。バーサーカーの時よりはマシかもしれないけど、それだって限度がある。

 外に視線を向ければ、曇り空。日差しに力強さは無い。

 

「セイバー、いつもより早いんだな。まだ寝てる時間だと思ったけど」

「……私とて好きで眠っているわけではないのですよ? シロウ。魔力の温存をしているだけであって、サーヴァントは本来、睡眠を必要としません。緊急時のために寝ているのであって、今はその例外です」

「? 緊急時って、なんでさ。

 まぁいいや。朝食作ったら呼びにくるから、それまで休んでいてくれ。今日も、セイバーの力を借りることになるだろうし――――」

「……自覚がないのですか、シロウ」

 

 セイバーは唖然とした後、目を鋭くして遠慮なく言ってきた。

 

「そもそも、貴方は安静にしなければならない体だ。貴方が優先すべきことは、部屋で休み、体を癒すことです。

 それが判っていないとは言わせません。

 休息が必要なのは、間違いなく私ではなく貴方だ」

「……ありがとう。でも、部屋には戻れない。

 今日中にシンジを捕まえないといけない」

「何故ですか。今日中とする理由がありません。桜の限界が二週間だとしても、急ぐ必要がない。

 貴方はそれこそ、自分の傷を癒してから臨むべきだ。それからでも遅くは――」

「順番が違う。セイバー。

 どれだけの人間が犠牲になったか、お前、わかるか?」

 

 俺の言葉に、セイバーは視線を揺らがない。

 

「……死にはしなかったかもしれない。でも、中には一生、傷跡を残した人間もいたはずだ。

 あんなことが起こって、そこに居合わせて、俺には防ぐことが出来なかったんだ。命を救ったって、誰一人として助けられなかった。

 起きてしまったことを無かった事にはできんだ。だから――二度と起こさないためには、動くしかないんだ。

 だから、俺の体なんて後回しだ」

「――――」

「シンジのやつが何をするかは、おまえだってもう予想がつくだろ。わざわざ逃げるために桜を犠牲にしたんだ。またあんな結界を張られる前に、ライダーを倒す。サーヴァントが居なくなれば、シンジは何もできないし、桜も安定するはずだ」

「……貴方は、本当にそれだけのために戦うと?」

「桜だけじゃない。シンジには、責任をとらせなくちゃいけない。そのためにも、ライダーと切り離す必要は在る。

 それに――犠牲者を出さないために行動するなんて、当たり前のことだろ」

「…………そうですか。シロウがそう言うのならば、私は従うだけですが」

 

 言いたい事を抑えたような、そんなセイバーの口調。

 

 居間に行くと、遠坂からの書置きで「貸し一よ!」というのが残されていた。後が怖いけど、今は考えないようにしよう。

 胃腸にも良いものと考えて、とりあえず米を水にかける。俺の体調に合わせて良いといわれたので、消化しやすいようにおかゆを準備。

 

 うめぼしとか、味噌とか味付けに四苦八苦しているセイバーのフォローをしながら朝食。

 

「ところでシロウ。私はライダーの情報を、ほぼ持っていないに等しいのですが」

「あー、そうだな。一対一の戦いでなら、セイバーはまず負けはしないと思う。

 俺もシンジも魔術師じゃないから、たぶん戦闘は一対一だ。だけど……」

「あの魔眼。それと、宝具ですね」

 

 セイバーはそう言いながら、おかゆを一口。

 

「セイバーは、ランサーの時みたいに、あのライダーの心当たりはあるのか?」

「……はい。シロウも聞いた事があるはずです。

 おそらく、彼女の真名はメドゥーサ。ヘラクレス同様、ギリシャ神話に語られる反英霊です」

 

 メドゥーサについての説明は、なるほど確かにあの英霊の能力に合致しているかもしれない。

 桜の吸収という属性と、血を吸うという逸話にも合致する。最後にはペルセウスにこそ倒されたものの、あの姿はそれに至る以前のものということだろうか。

 

「魔術か、幻想種か。

 ライダーという以上、おそらくはそれに関するものなのでしょう。第四次のような形もあるかもしれませんが……」

「……前のライダーって、どういったものだったんだ?」

「……果てがありませんでした」 

 

 セイバーは、少し遠い目をする。

 

「彼の王の、王としての在り方が十全に正しいとは考えません。ですが、彼には私になかった一つの結実を持っていました」

「……?」

「すみません。ですが、多くは語るのを止めていただきたい。

 どちらにせよ、あの時、ライダーの背後から放たれようとしていたものは、直撃すれば私でも危険だ。そう直感しました」

 

 セイバーの直感は、未来予知のそれに近い。実物を目の当たりにしていないでも、こう直感するからには必ず理由があると思うべきだ。

 しかし、とすると……。

 

「……まぁ、それでもおそらく、私の宝具よりは…………」

「セイバー、どうした?」

「え……? あ、いえ、何でもありません。ええ、どちらが優れているかなど、追求するのは騎士にあるまじき思考実験と言いましょうか、はい」

「じゃあ、方針だ。

 大前提として、ライダーが宝具を用いるまえに倒すこと。ないし、ライダーに使われる前にシンジを倒すこと」

 

 学校は今日、休校。意外と元気そうな藤ねえにかけた電話によれば「流石に昨夜、みんな倒れた直後だからねー」とのこと。

 見舞いに行きたいが、今はそれもガマンしなくちゃいけない。なので、こうして声だけでも聞けるのはありがたかった。

 

『士郎も気をつけるのよ? ちゃんと家で勉強してるのよ』

「ん、わかってる。元気そうでよかったよ。

 じゃあ、また――――」

 

『――――あ、ちょっと待つニャ? シロウ』

 

 ……にゃ?

 

「どーした藤ねえ。虎からネコに宗旨換えか?」

『ふっふーん。気付けに一杯してるから、出来上がっているということにしておいて欲しいニャ』

「欲しいって、それ完全に出来上がってるじゃないか不良教師」

『ニャハハ、さて、ちょっとだけ真面目な話ニャ』

「?」

 

 どうも藤ねえなのだが。受話器を切ろうとした瞬間から、その声音がなんだか変な気がする。喉を痛めたりしているんだろうか。

 

『――――今がおかしい、というのを理解しておくニャ。セイバーちゃんも、シロウも、何かするならそれを理解しておくニャ?』

「……」

 

 何故だろう。まるで俺達が何をしているか、しようとしているか察しているようなその声音。

 

「……人に言う前に藤ねえの方こそだろ? 声変だし、とりあえず休むんだ」

『ニャハ! そうニャ。どうせしばらくして起きたら、藤村大河はクールに全てを忘れ去っているはずだし』

「?」

『じゃ、またニャ~』

 

 がちゃん、と電話を切って。俺とセイバーは坂を下る。

 

「シロウにはアテはあるのですか?

 いくら私がサーヴァントの気配を探れるとはいえ、ある程度は近づかなければなりません」

「ああ。たしかにアイツが何もせずに隠れている場合は、探すのは難しいかもしれない。

 でもあいつの性格から言って、昨日の今日で大人しくしているはずはない。おまけに、あいつは俺と同じでサーヴァントに魔力供給できない。とすると――――」

「ライダーのマスターではなく、結界を探すのですね」

「それなら俺でも探れるし、場所も特定できるだろ。

 学校を参考に考えれば、大きな建物で、人間が沢山集まるところ。そこに居るはずだ」

「……驚きました」

「俺だって考えなしじゃないぞ? セイバー」

 

 間桐の家で、シンジの気配もライダーの気配もない。あの老人については知らないが、それは後に回そう。今は一刻も早く、シンジを捕まえないといけない。

 

 新都までバスで出て、手当たり次第にビルを廻る。

 比較的大きいものから、見て廻っているが、今のところコレといった手応えはない。昼食を適当にとって(なおセイバーからは「ハンバーガーは雑です」と、少し不満そうな評価をもらったりもしたが)、継続。

 

 何件目かを廻った時点で。

 

「……シロウ、こちらに」

「? どうした、セイバー」

 

 そうして手を引かれる先――――見覚えのある、果てた野原。木々が生い茂るそこは、衛宮士郎(おれ)終わり(はじまり)の場所。

 何もないのにどうして、と問えば、セイバーは怒ったように言う。

 

「いいですから、ベンチに座ってくだい。後、黙って私に身を任せること。おーばー?」

「そんな、遠坂みたいなことなんで言うのか……。

 わかったから、そんな怖い顔は止めてくれって」

 

 言いながら、ベンチに座る。と――――。

 と――――。

 

 一瞬だけ、意識を失いかけた。

 

 違和感を覚える。みれば、額も、体も、汗にまみれていて。真冬だってのに、この状態は何だ?

 

 意識した途端。体中にきしみを覚える。金属と金属とがぶつかり合ってるようなそれは、間違いなく、治りきっていない傷が疼いているということか。

 

「……っ! ……、」

「深呼吸さえ出来ない。立ち上がることさえ出来ない。

 ……ここまでになって、ようやく自分の状態を理解しましたか」

「……すまん、シンジたちを追いかけるって言ったのに、いきなり。すぐ動けるようになるから、しばらく待って――――おわ!?」

 

 と。俺の有無を言わさず、隣のセイバーが俺の肩を引き、そのまま倒した。 

 状態としては、セイバーの膝の上に頭が乗る状態。俺の髪をすくセイバーの指先。即頭部に感じるセイバーの感触に、鼓動が跳ね上がる。

 やばい、ちょっと、これは――――。

 

「私が注意しているのは、そんなことではありません。……まったく。どう言っても無駄のようです」

「いや、あの、だからセイバー……? なんで、こんな状態に?」

「横になっていた方が落ち着くと判断しました。ただでさえ、貴方の体はほぼ連日、傷に犯されている。その自覚をしてください」

「……面目ない」

「それから。昨日、こうしていた方が何故か傷の治りが早かったので」

「傷の治りが……?」

 

 大真面目に応えるセイバーに、少しだけ体の緊張が解ける。 

 そういえば、俺の回復力はセイバーから、なんらかのエネルギーをもらっているんじゃないかと遠坂が仮説をとなえていた。ふとした疑問から、その話をセイバーにすると。

 

「え? あ、いえ。そのようなことはないと思います。私自身、魔力は余剰に消費していませんし」

「そうなのか?」

「ええ。……?

 いえ、あの。私と契約することで回復力が上がっている、というのならば、可能性は一つ……。いや、でもそれは……、――――」

「セイバー?」

「……なんでもありません。この仮説を検討するのは現実的ではない。

 シロウの回復力については、また後日考えるとしましょう。今は、呼吸を整えてください」

 

 微笑むセイバーと顔を合わせられず、でも状態的に動けないので、めいっぱい目を閉じて、深呼吸。少しだけセイバーの匂いが入ってきて、なおのことそれはそれで大変だったけど、それでも呼吸を繰り返す。賢明に、賢明に呼吸を繰り返して――――。

 

 

 ――――胸に開いた虚のことを思い出した。

 

 場所が悪かったのかもしれない。でも、だからこそ。自分があの時。倒れたのは単に休もうとか思ったんじゃなくて。手足が動かなくなるくらいに、傷を負ってしまったから。

 だから、取り乱さなかったんだ。もう助からないって判ったし。まわりもみんな、そうやって息絶えたのだから。 

 

 それでも助けを求めようとして、手を伸ばして――――。空を見上げて――――。

 

 切嗣が、心底嬉しそうに笑って。感謝の言葉を述べて……?

 あれ? おかしい。そんな胸に開いた傷の感触なんて、俺は覚えてないはずだ。

 

 目を開けて、胸元に手を中てる。

 記憶にあった、そんなものは確かにない。あんな傷があったら、いくら切嗣が助けてくれても、俺は死んでいたに違いない。

 

「……」

「…………って、おわ! 夜になってる!?」

「ええ。ですがその甲斐あって、シロウの顔色は良くなっている」

「ひ、人が悪いなぁ。休んでる暇ないって言ったろ? 起こしてくれて良かったじゃないか」

 

 体を起こす俺に、セイバーは少しだけ、いたずらっぽく笑った。……知ってるぞ。この顔は藤ねえがするやつにそっくりだ。

 

「休むこともまた戦闘です。それに、もとより寒くなってきたら起こすつもりでしたので」

「まぁ、確かに体の調子は良いけど……。なんでそんな楽しそうなんだ?」

「いいえ。少し、生前のことを思い出しました。あれはたいそう愛らしかった」

 

 そう語るセイバーの手の動きは、まるでペットでもあやすようなそれだった。……あー、さっきの俺ってその扱いだったのだろうか。

 

 でも、ここで眠っただけであんな残像を思い出すのだから……なんとなくそれが、癪に障った。

 

「シロウ?」

「あー、いや。……どうせ休むなら、ここじゃないところが良かったかなって。ここは、嫌な思い出がありすぎる」

「嫌な思い出?」

「セイバーには少し話したっけ? 覚えて無いけど」

 

 改めて、セイバーに語る。俺が切嗣の養子であること。元はここで暮らしていて、聖杯の大火災に飲まれ、それまでの全てが、家族が、妹が焼け落ちた。

 

「だから、あの時、シロウは――」

「あー、でも、セイバーや親父に恨みがあるとは言わない。言ったろ? そうしたことには理由があったんだろうって思ってるって」

「…………貴方が犠牲者を出すまいとするのは、それが理由ですか?」

「え? いや、それは……。どうだろう。それももっともだけど、たぶん、もっと単純だ。

 切嗣に助けられたあの時さ。俺、死を覚悟してたっていうか、本当にこう、胸の中ががらんどうだったんだ。そんな時に助けられて、ただただ嬉しかったんだ。

 けど、自分だけ助けられたっていうのは居心地が悪かった。俺だけ助かってみんなここに居るっていうのは。

 ただ一人、俺だけ助かって――それって、みんなを犠牲にしてるようなもんだろ」

「……」

「けどまぁ、起きてしまったことは変えられない。だったらせめて、これからのことを防ぐべきだ。

 あの時のようなことは起こさせない。それこそ、また起こしてしまったら、犠牲になった人たちに合わせる顔が無いだろ」

 

 だから、理由としてはその程度なのだ。

 

 そんなことよりシンジを探さないと。セイバーに声をかけ、オフィス街に向かおうとすると。

 

「…………」

「セイバー? どうしたんだ?」

「……シロウは、今朝、順番が違うといいました。貴方は同じ言葉を繰り返す。常にそのとき、自分のことはすべて後回しだ」

「…………?」

「だから、今、確信しました。貴方には、自分を助けるつもりが初めからないのだと。

 ……自分より他人を優先する。立派ですし、貴方の憧れたそれではあるかもしれない。ですが――シロウはもっと、自分を大切にすべきだ」

 

 それだけ言って、セイバーは俺に先行する。

 

「――――」

 

 何故かその時。俺は、返す言葉が思い浮かばなかった。

 

 

 

 

 




教会:

桜「先輩が……、他の女と、いちゃいちゃしてる……、」
金「寝言でここまでとは……、妄執よなぁ……」
言「セイバーとかもしれんぞ?」
金「たわけ・・・、かようなこと、起こるわけあるまい! フハハハハ!」
槍「(慢心してらこの英雄王)」

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