Fate/false protagonist   作:破月

19 / 46
弓「キャラクターがぶれているように思うのだが、大丈夫かね?」
槍「大丈夫だ、問題ない」
弓「それはフラグだ」
槍「テメェこそ大丈夫か?」
弓「はっはっはっ、いったい君はなんの話をしているのかね?」
槍「おい」


Kapitel 4-5

(side:Lancer)

 

 

 

 

ぶつり、と。何かが断ち切られたような気がした。しかし、マスターとのラインはちゃんと繋がっているようで、戦闘には十分な魔力が淀みなく流れ込んできている。

 

 

「――――おや、貴方は」

 

 

女の声がする。じゃらり、と鉄と鉄が擦れる音と共に、黒一色の女が姿を現した。手には短剣。坊主の腕を貫いていたそれと、全く同じものだ。そこから伸びる鎖は、オレが手に持ったそれと繋がっている。―――コイツだ。間違えようもない。

 

 

()()()()()()()()()()()()―――ランサー、貴方なのですね」

 

 

見当違いの事をぬかしやがる。だが、今はそれでもいい。

 

 

「御託は良い。坊主を傷つけやがったからには、覚悟は出来てるんだろう?なあ、ライダー」

「フッ――――」

 

 

妖艶に笑った女は、鎖を引いてオレの手元から短剣を引き戻す。当て推量で口にしたが、否定する気はないらしい。まあ、三騎士がこっちに揃って、バーサーカーがあの白い嬢ちゃんについていることを考えれば、後はキャスターかアサシンかライダーか。バゼットの話が確かなら、わざわざ神殿から離れるキャスターはいねぇだろうし、アサシンはそこの門の護衛でもしてるんだろう。ならば、相手の正体(クラス)は容易に絞れる。

 

 

「流石、と言っておきましょう。……ですが、そうですね。それが判ったからと言って、()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「――――違いねぇ」

 

 

くっ、と喉が鳴る。別段、相手の真名が判ったわけでもなし。ならば、全力で潰しにいけばいい。倒してしまえば、相手がどんな英霊か、などと気にする必要もないのだから。―――オレは()()()()()()()()()を求めて現界した。そして、渇望していた願い(それ)が目の前に転がっている。目の前の獲物は、上質だ。欲を言えばバーサーカーとも死合ってみたいが、それは今でなくとも機会はある。おそらく坊主は嬢ちゃんのところに戻っただろう。アーチャーの野郎がどこで何をしてるかは知らんが、他のサーヴァントを倒せるというこの好機を逃す奴でもない。タイミングを見計らって闖入してくる可能性は捨てきれない。むしろ、オレ共々、目の前のサーヴァントを屠ろうって算段を付けているかもしらん。……あり得る。大いにあり得る。だがそれは()()()()()()()()()()

 

 

「来ないのですか?」

 

 

散らばりかけた思考をどうにかまとめ、腰を低く落として槍を構える。

 

 

「ほざけ――――直ぐにその首、狩り落としてくれる……!!」

 

 

同時に地面を蹴り、互いの懐へと肉迫する。得物の間合いはこちらが上、しかしそれは有利にはなり得ない。相手の得物にぶら下がる鎖が邪魔だ。アレに絡めとられれば、勝機を逸すことにもなりかねん。それではいけない、この闘いを楽しむことすらできない。

 

 

「はぁ――――!」

「っ――――」

 

 

ジャラジャラと鳴る鎖が、獲物を狙う蛇のようにすら見える。一合、二合、三合。切り結ぶ数が重なるごとに、速度は上がっていく。ライダーとは初顔合わせだが、手加減など出来そうにない。

 

 

「――――くはっ」

 

 

自然と口許が吊り上がっていく。こらえ切れぬ感情が笑みとなって零れ落ちた。―――そう、これだ。オレが望んだのは闘い(これ)なのだ!

 

 

「つぁ――――!!」

 

 

奔る短剣を流し、空いた懐に槍の穂先を突き込む。しかし刃は届かず鎖が行く手を阻む。巻き取られる前に引き戻し、一足で数メートルの距離をあけた。呼吸を置かず距離を詰め、眉間、喉、肩、心臓と貫いていく。それを苦心しながらも躱すライダーに、さらに追撃をかけるべく浅くはない一歩を踏み込む。回し蹴りを柄で受け、こちらも蹴り返す。すかさず高速で打突を繰り出し、短剣を弾き、押し留め、後退させる。どうやらステータスはこちらの方が上の様だ。だが、一刺しで仕留めるのではつまらない。どうせならもう少し、長く―――()()、この時間を楽しみたいものだ。

 

 

「「ランサー!!」」

 

 

二つの声が重なる。一瞬目をそらした隙に、手堅い一撃を喰らった。それでも、決定打とは程遠い。――――距離が開く。

 

 

「……どうやらここまでのようですね」

 

 

矛先を収め、ライダーは言った。追いついてきた嬢ちゃんと坊主の姿を認めて、足早に雑木林の奥へと姿を消そうとしている。

 

 

「待ちなさいよちょっと!!」

 

 

鋭い声が飛ぶ。嬢ちゃんの声にライダーは一瞬動きを止め、次いで坊主に視線を移すと、にやり、と笑った。その次の瞬間、

 

 

「――――テメェ!!」

 

 

いつ仕掛けたのか、短剣が再び坊主に襲い掛かる。全力でもって距離を詰め、それを紙一重で弾き返して睨む。しかし、そこには既にライダーの姿はなかった。

 

 

「――――――――」

 

 

一度ならず、二度までも。してやられた。まったく、ついていない。

 

 

「ランサー、今のは……サーヴァント、だよな?」

 

 

応急処置しただけの腕をさすりながら、坊主が言う。おう、と頷いて何やら憤っている嬢ちゃんに視線を投げる。ふるふると震える握りこぶしを振り上げ、その苛立ちを発散させるように魔力の塊を打ち出した。ガウン、とまるで重火器のような音が響き、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。……恐ろしいな、おい。

 

 

「わたしのサーヴァントはこんな時に―――なんで!()()()()()()()()()()()()()()()()!?」

 

 

――――待て。今すげぇ聞き捨てならねぇ言葉を聞いた気がする。オレの気のせいとかじゃなければ、嬢ちゃんは()()()()()()と言わなかっただろうか?

 

 

「と、遠坂……?」

 

 

坊主も、嬢ちゃんの口から出てきた言葉に唖然としている。どうやら、聞き間違いや空耳などではないらしい。つまり、嬢ちゃんのサーヴァントであるアーチャーは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。主婦かアイツは。……ああ、いや、()()か。所帯染みたサーヴァントとはどうなんだろう。家計には優しいかもしれないが、魔術師としてのプライドが高い嬢ちゃんには侮辱以外の何ものでもないのではなかろうか。

 

 

「はあ……もういいわ。疲れちゃったし、もうこのまま衛宮くんの屋敷に帰りましょう?」

「いいのか?どこかに寄るとか言ってただろ?」

「そのつもりだったけど、もういいわ。だって、そんな気力なくなっちゃったんだもの……」

 

 

うんざりだと言いたげな表情を浮かべた嬢ちゃんは、坊主に鞄を手渡すと雑木林を後にする。その後を坊主が追いかけ、そしてオレに振り返る。

 

 

「何してるんだよランサー。帰ろうぜ」

 

 

『何してるの■■■。帰ろう』

 

 

「――――――――」

 

 

その表情が、言葉が、一瞬、誰かの姿と重なった気がして。

 

 

「ランサー?」

「――――ああ、いや」

 

 

一人、得も言われぬ違和感を抱えてその場を後にする。

 

 

 

 

 

― ― ― ― ―

 

 

 

 

 

見渡す限りの花畑に、空高く聳える幻惑の塔。その最上部に位置する物見に陣取り、俺を見下ろす影を見つける。―――これは夢だ。明晰夢とかいうやつだろう。ふわりと巻き起こった風に色とりどりの花びらが舞い、吹雪にも似たそれの中から現れたのは、物見にいた筈の魔術師だった。

 

 

「やあ」

 

 

気安く。気軽に。まるで、何十年と付き合ってきた友人にするかのように。片手を挙げ、そう言った魔術師に俺は苦笑を浮かべる。

 

 

「初めまして、のはずだが」

「そうだねぇ……()()()は、そうだろうさ」

 

 

魔術師はそう言う。つまり、俺とこいつは、初対面ではない、と。

 

 

「遠い未来か、遥かな昔か。それとも、()()()()()()()()()()()()かもしれない。君と私は出会い、互いを認め、研鑽し、そして()()()()。それは、過去の話であり、現在の話であり、未来の話でもある。君と私は本来相容れぬ存在であるからして、こうして私が君を()()()ということも本来ならば有り得ない。―――そう、彼女に頼まれていなければ、こんな労力を費やすこともなかったのだけれど。そこのところ、君はどう思う?」

 

 

実に軽快なテンポで、俺のことなど全く気にした様子もなく紡がれる言葉は、まるで唄のようだった。左右に行ったり来たりしながら、最後には俺の目の前に立って肩を竦める。

 

 

「ああ、まったく。手のかかる子は嫌いではないけれど、君は論外だ。こんな大馬鹿者で、頓珍漢なヒトもそうはいないだろう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?それじゃあ、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

――――呼吸が止まる。いや、夢の中なのだから呼吸が止まってもどうにかなるとは思うが、流石に目の前にいる魔術師が魔術師なので安心も出来ない。何か、とても大事なことを言われているのに、その言葉の意味を理解しようとすることを、脳が拒否する。鋭い痛みが走り、思考がばらけていく。ふざけた話だ。このいけ好かないクズな魔術師が、折角、己の領域にまで俺を呼び出して話をしてくれているというのに。ポンコツな頭は、思考を放棄している。

 

 

「反論はなし、か。いや、反論する機能が停止しているのか。まったく、()()()()も厄介なモノを君に植え付けたね。物は言いようで、()()()()()()()()とはちゃんちゃらおかしな話だ。君は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

呆れた、と言いたげな表情。けれど、紡がれる言葉はどこまでも親身で真摯だ。俺を嫌っているとも思えるような発言が目立っていたが、確かに、認めてくれているのも本当らしい。しかし、いったい何がどうして、この魔術師と()は知り合いになったのか。()()()()には、()()()()()()()()()()()()()()()し、あったとしてもそれこそ架空の存在だ。現実(リアル)を生きていた()には、何の接点もない、画面越しのさらに奥にある存在。そんな魔術師と、どうやって()が。

 

 

「ああ、ほら。そうやって難しく考えすぎる!まったく、少しは■■■■■■■■を見習ってほしいな……彼ほど前向き―――とはちょっと違うかな?んん!兎に角、彼のような子もそうそういないからね」

 

 

それは、()()()()()()()()()()()

 

 

「――ああ、そうか。()()()()()()()()()()()()()。いや、あって当然か。そうでなければ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ああ、いや、まさか、うん――――つくづく思うけど、()も大概チートだなあ!」

 

 

そこで夢は終わった。寝起きは最悪、一発でいいから顔面に拳を叩き込めばよかったと思いながら天井を見つめる。士郎達が帰宅してから2時間後のことだった。

 

 

 




Status Menu
 CLASS:ランサー
 マスター:衛宮 雪嗣
 筋力:A     魔力:B
 耐久:B     幸運:C
 敏捷:A+     宝具:B


 CLASS:ライダー
 マスター:????
 筋力:B     魔力:B
 耐久:D     幸運:E
 敏捷:A     宝具:A+



言峰がマスターだった時より、ランサーの能力値は全体的にランクアップ。
雪嗣の恩恵が一番わかるのは幸運値の上昇率。
ワンランクどころじゃない、これはかなりでかい。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。